桜才学園での生活   作:猫林13世

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この人は役に立つのだろうか


引率役は

 パリィちゃんとお出かけする予定を立てる為に、私たちは急いで宿題を片付けた。コトミちゃんは一教科だけだったけども、これを継続できれば早く宿題から解放されるでしょうね。

 

「それで、何処に行きますか?」

 

「パリィは日本文化に興味津々だからな」

 

「それだったら、七条グループが経営してる歴史体験ツアーに参加するっていうのはどう?」

 

「相変わらずのスケールだな」

 

 

 シノちゃんたちは慣れているはずだけど、こういう話題の時は大抵驚いてくれる。別に自慢してるわけでもないし、私が経営しているわけでもないのでそもそも自慢にならないけど、こういう反応を示してくれるのは嬉しい。

 

「でも少し遠くにあるから、一泊旅行になるかもね」

 

「泊まりですか……そうなると引率が必要になるんじゃないですか?」

 

「課外活動扱いになるだろうから、そうなるな」

 

「出島さんにお願いしようか?」

 

 

 出島さんなら車も出してくれるだろうし、引率としても十分な役割を果たしてくれると思ったんだけど、シノちゃんは首を左右に振った。

 

「生徒会としての活動になるから、横島先生に頼もう」

 

「というか、タカ兄がいれば十分じゃないですかー? 横島先生よりも先生らしいですし」

 

「確かにな……」

 

 

 コトミちゃんの言う通り、横島先生や出島さんよりも、タカトシ君の方が引率らしい雰囲気は持っているし、過去に引率として役立たなくなった二人の代わりを立派に務めた実績があるのだ。だがさすがに大人がいないのは問題なので、横島先生に確認の連絡をすることに。

 

「――という訳なのですが、引率をお願いしても良いでしょうか?」

 

『あぁ、問題ないぜ。どうせ一人で飲んだくれる日々だろうし……』

 

「そ、そうですか……あっ、くれぐれも引率先で酔いつぶれたりしないでくださいね? 泊まりとはいえ、面倒には変わりないんですから」

 

『分かってるっての! というか、これ以上津田に怒られるのはな……』

 

「何かあったんですか?」

 

 

 シノちゃんと横島先生の会話を横で聞いていた私たちも同時に首を傾げる。普段の横島先生ならタカトシ君に怒られることに快感を覚えていたはずなのに……

 

『今度タカトシに怒られたら、そのまま学園長に呼び出される流れになってしまってな……今後の給料やボーナスの査定に響いてくるんだ……』

 

「それは……」

 

 

 タカトシ君に給料の額を握られているのと同義というらしいので、横島先生は暫く大人しくなると私たちは安堵したが、その程度で本当に大人しくなるのだろうかという疑問が、心の隅に残った。

 

『というわけだから、監視の目は厳しくいくからな! 間違っても津田と合体なんてさせないからそのつもりで!』

 

「初めからそんなつもりはありません。まぁ、どうしてもと言われたらやぶさかでは無かったですけども」

 

「シノちゃん、本音が漏れてるよ」

 

「おっと」

 

 

 私だってタカトシ君に求められたら喜んで応えただろうけども、あのタカトシ君がそんなことをしてくるはずもないって分かっているので、期待はしていなかったのだ。まぁ、何時までもこんな関係なのは少し寂しいけど、急激に変えられるものじゃないしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 買い物から帰ってくると、何故か旅行の計画を決められていた。まぁコトミも同行するということなので、義姉さんに家のことを頼む必要は無いのだが。

 

「というか、女子だけで行ってきたらどうです? そっちの方が楽しめると思いますが」

 

「無理! 会長に七条先輩、横島先生にコトミ、そしてパリィの相手を一人でするなんて、絶対に無理だから!」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 スズに全力で拒否を叩きつけられてしまったので、俺が行かないという選択肢は消滅した。まぁ、俺も言ってみただけだし、ここで行かなくてもいいとなったら暇を持て余していたところだ。

 

「それじゃあ参加メンバーは、私とタカトシ、アリアに萩村、コトミとパリィ、そして引率の横島先生の七人だな!」

 

「区切りに欲望を感じましたが、それで決定ですね」

 

「というか、何でコトミまでくるんだ? 大人しく家で勉強してろ」

 

「息抜きだよ~。まぁ、宿題を持っていって旅行先でもやるというのが、会長たちから出された条件なんだけど……」

 

「そういうことか」

 

 

 確かに会長たちが居なかったら、こいつが宿題をやるという思考にすらならなかっただろう。義姉さんだって結局はコトミに甘いのか、息抜きで許したゲームを一緒にやっているということも多々あるし。

 

「ところで、何処に行くんですか?」

 

「七条グループが経営している歴史体験ツアーだ!」

 

「それって参加費はどれくらいなんですか? 二人分となると、早めに用意しておかないと」

 

「大丈夫だよ~。費用はウチで出しておくから」

 

「ですが――」

 

「まぁまぁタカ兄。せっかく奢ってくれるっていうんだから、素直に奢られておこうよ~」

 

「お前は気楽で羨ましいよ……」

 

「?」

 

 

 これは近い内にアリア先輩に何かお返しをしておかないと、後々厄介な頼まれごとをされそうな予感がする。俺は一日デートまでならと腹をくくり、素直に奢られることにした。




あまり奢られてるとタカトシの人生が決定してしまうような……

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