桜才学園での生活   作:猫林13世

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気にしちゃうのは女の子だから


タオルの枚数

 引率役として同行するはずの横島先生は――

 

「こういうのは教師が一緒にいると楽しめないだろうから、私はホテルの部屋でゆっくりしている」

 

 

――と、早速職務放棄をした所為で、私たちの引率役はタカトシが代行することになった。何故会長や七条先輩ではなくタカトシなのかといえば、説明の必要がないくらいそっちの方がしっくりくるからだ。むしろ、横島先生よりも教師らしい雰囲気なのだから仕方がないのかもしれない。

 

「というわけで、早速教師がいなくなってしまいましたが、一応生徒会活動の一環という位置づけになっていますので、必要以上にはしゃがないようにお願いします。特にコトミ」

 

「分かってるよタカ兄~。というか、やらかしたらお小遣い減らされるんだから……」

 

 

 事前に家で釘を刺してきたのか、コトミはタカトシの言葉に素直に頷く。まぁコトミの場合、小遣いを人質に取られたら何も出来ないしね。

 

「しかし、随分と作り込まれていますよね。タイムスリップした気分です」

 

「「「「………」」」」

 

「どうかしました?」

 

 

 私が素直な感想を零したら、会長、七条先輩、コトミ、パリィがじっと私のことを見詰めてきた。

 

「今『タイムっ、ストリップしたい気分』って言った?」

 

「聞こえた」

 

「聞こえた」

 

「キコエタ」

 

「言ってねぇよ! というか、公の場で何を言ってるんだアンタたちは!」

 

「はぁ……砂利の上で正座したいんですか、貴女たちは?」

 

「「「ひっ!?」」」

 

 

 タカトシに睨まれ、パリィ以外の三人はすくみ上り頭を下げ、パリィはキラキラした目をタカトシに向けている。

 

「パリィ、どうしたの?」

 

「タカトシの眼力、まるで黄門様の印籠ね! 見せたらみんな平伏する」

 

「タカトシを怒らせたら怖いからね……」

 

「パリィも、あまり大きな声で変なことを言わないように」

 

「了解ね、タカトシ」

 

 

 とりあえず出鼻を挫かれた気分ではあるが、ようやく私たちはテーマパークの中に入ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歴史体験ツアーということで、私たちは着物に着替える事にした。洋服のままでも平気なのだが、せっかくの機会なので全員で着替えようと私が提案し、アリアとパリィが積極的に、萩村は消極的にではあるが賛成してくれ、コトミも乗り気だったのだが、タカトシだけは何処か後ろ向きだった。

 

「どうかしたのか?」

 

「なんでもありませんが、後でグチグチ文句を言って来ても知りませんからね」

 

「?」

 

 

 タカトシが何を気にしていたのかその時は分からなかったが、着物を着つけてもらう時にようやく理解出来た。

 

「和服って身体の線が出ないようにウエストにタオルを巻くと良いんだよな」

 

「それって浴衣じゃないんですか?」

 

「着物は寸胴な体型な方が綺麗に見えるんだよ~」

 

「つまり、凹凸が少ない方が美しく見えるんだ!」

 

 

 早速ウエストにタオルを巻くが、これは萩村以外大差ない感じだったが、問題はその後だった。

 

「胸も潰した方が良いんですかね?」

 

「ある程度は潰した方が綺麗に見えるしね~」

 

「でも、さらしって苦しくないですか?」

 

「帯に胸が乗っちゃうとみっともないし、ある程度は我慢するしかないよ~」

 

「………」

 

 

 タカトシが何を危惧していたのか、今になってようやく理解した。あいつは着付けも自分でできるくらいだから、こういう事態も想定していたのだろう。アリアやコトミにはその工程が必要になるが、私はそれをしなくても平気で、私が自分の体型にコンプレックスを懐いていることも知っているタカトシだからこそ、先に手を打ってきたということか……

 

「萩村、さっきは憐憫の視線を向けてすまなかった」

 

「どういう意味だ!」

 

 

 子供体型の萩村ならあまりタオルを巻く必要もないだろうなという感じて見ていたのだが、まさかここに来て自分も必要無い状況に陥るとは……

 

「というか、早いところ行きましょう。これ以上見ているのは精神衛生上よろしくありません」

 

「そうだな……」

 

 

 とりあえず着付けが終わっているので、私と萩村はそそくさと集合場所に移動する。するとタカトシが女子大生グループにナンパされていた。

 

「お兄さん一人なら私たちと一緒に行こうよ」

 

「いえ、連れがいますので」

 

「え~? さっきから見てたけど、お兄さんずっと一人だったじゃん」

 

「というか、お兄さんの連れなら別に一緒でも良いよ~?」

 

 

 何と言うか、見慣れてるから忘れていたが、タカトシはかなりレベルが高い男だったんだと改めて思い知らされる光景だな。

 

「待たせたな」

 

「いえ、女性の方が時間が掛かると分かっていますので。それで、他の人はまだ?」

 

「えぇ。私たちは先に終わったから出てきただけ」

 

 

 私と萩村で女子大生たちに牽制の視線を向けると、向こうは素直に引き下がってくれた。まぁ、どれだけ誘惑しても梨の礫だったからだろう。決して、私たちの目が怖かったからではないだろう。

 

「すみません、助かりました」

 

「というか、相変わらずの人気だな」

 

「着物が珍しいんでしょう」

 

「分からないフリはしなくても良いんじゃない?」

 

「………」

 

 

 萩村の指摘に、タカトシは無言を貫いた。そうこうしている内にアリアたちも出てきたので、私たちはいよいよ歴史体験を味わうことにするのだった。




あまり出ていたらみっともないですが、気にするほどではないかな

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