勉強も一区切りがつき、リビングに下りていくと机の上には皆が持って来たプレゼントが置かれていた。
「津田さん、お疲れ様です」
「森さん、まぁ妹ですから」
ちなみにそのコトミは俺の部屋で頭から湯気を出している。それほど詰め込ませたつもりは無いのだが、許容量を超えたらしいのだ。
「津田さんはプレゼント、何にしたんですか?」
「ペンダントですよ。俺以外全員女の子ですからね」
誰に当たっても良いように、あまり個性の強いものは選んで無い。シンプルなデザインのものだ。
「誰に当たるんでしょうね」
「如何でしょう、自分に当たるなんてオチはいらないですね」
「大丈夫じゃないでしょうか? 丸くなって回すって言ってましたし」
「誰がです?」
「七条さんが」
主催者が言ってたなら確実だな。だが何だか動いてる箱が沢山あるのは何でなんだろう。
「あれ?」
「如何かしました?」
「いえ、数が……」
参加者に対して一個多い気が……
「それは私のです」
「あっ、出島さんも参加するんですね」
それなら丁度だ。
「でも、何で動いてるんですか?」
「大丈夫です、男性でも使えますから」
「「………」」
森さんと二人で、無言のツッコミを出島さんに入れる。
「あぁ! その目、たまらなく興奮します!」
駄目な大人なんだな……俺と森さんの中で出島さんはそう位置づけされたのだった。
いよいよパーティーとなり、何と私が乾杯の音頭を取る事となったのだ。
「今日は無礼講だ! だからS男の都落ちもありだぞ!」
「S『男』って俺だけじゃねぇか! 何か見られてるし……」
普段ドSな津田が私たちに罵倒されて興奮する姿を想像して、私は少しパンツにシミを作った。如何やらウオミーやアリアも同じような想像したようで、二人共私同様クネクネと足を動かしている。
「おや? 何で五十嵐さんもクネクネしてるんですかね?」
「魚見さん、カエデちゃんは私たちの同類だから」
「まったくけしからん風紀委員長だ!」
「勝手に同類にしないでください!」
「大丈夫ですよ、五十嵐さん! 私もタカ兄がMだったらって想像しましたから!」
さすがは次世代を担うと期待されてるだけの事がある。コトミも想像してたとはな。
「津田、アンタが如何にかしなさいよね」
「ゴメンなさい、私もちょっと無理そうです……」
「ハァ……全員正座」
津田が偶に見せる本気で蔑んでる目を見て、私たちは軽くイキそうになる。あの目、眼鏡でも掛けてれば完璧だったんだがな……
「あの、津田君……私も?」
「貴女も想像してたんですか?」
射抜くような視線で見られた五十嵐は、男性恐怖症とは別の理由で気を失った。
「おい、五十嵐のヤツ下着濡らしてるぞ」
「津田君に睨まれてイッちゃったんだね」
「やはりエロスですね」
「タカ兄! 私にも冷たい視線ちょうだい~!」
もちろんこの後私たち四人は津田に鉄拳制裁をされた後で長々とお説教された……これが愛のムチなのか。
気を失っていた五十嵐先輩も復活して、いよいよプレゼント交換の時間になった。ちなみに私が用意したのは大人の玩具だ。ネット通販は便利だよね。
「それではお待ちかねのプレゼント交換で~す! 真っ暗な部屋で音が止むまでプレゼントを回し続けるルールです! それじゃあ、灯り消すよ~」
さっきタカ兄に殴られた箇所がジンジンするけども、これはこれで快感だよね。
「何だか暗闇の中って興奮するね~」
「分かるぞ! 何時触られるか、また誰に触られるかを想像すると……」
「シノッチ、そこは津田さんが触ってくると想像しなくては」
「そうだったな!」
さすが私が認めた先輩たち、しっかりと別の楽しみ方をしてるよ。それにしてもタカ兄って、こんなに美人な先輩に囲まれてるのに全然自家発電してないなんて……ひょっとして若くして枯れちゃったのかな……
「はい、今持ってるプレゼントがあなたので~す!」
音楽が止まり明かりを点けると、私の手には何だか重たいものがあった。
「えっと……参考書?」
「あっ、それ私のだわ」
「何でよりによって参考書なんですか~! クリスマスプレゼントですよ!!」
「あれ、これ誰の?」
「スズ先輩のは私のですね~」
ちゃんと分からなくなるようにシャッフルして回したのに、何で私がスズ先輩のでスズ先輩が私のなんだろう……
「これ、津田さんのですよね?」
「あっ、森さんに当たりましたか」
「何ッ!?」
「森さん、是非私のと交換を!」
「これって魚見さんの?」
「これはお嬢様からの蝋燭と○ーター!」
そして五十嵐先輩には、天草会長からのプレゼントであるバ○ブが当たったようだ。
「それで、タカ兄のは何だったの?」
「タオル」
「あっ、それ私のです」
ちなみに、天草会長には出島さんからのプレゼントであるバ○ブが、魚見さんには五十嵐先輩からの小説が当たっていた。
「一つ確認なんですが、何故皆さん変なものをプレゼントに?」
タカ兄が言うへんなものと言うのは、きっと五十嵐先輩が持ってるようなものを指してるんだろうな……
「特にコトミ、お前如何やって買ったんだ?」
「最近はクリック一つで何でも届くんだよ!」
「それじゃあ先輩たちも?」
「私は自分で店に行ったぞ! 機械操作は苦手だからな!」
「私も~。普段から愛用してるお店から選んだのよ」
「恥ずかしながら、私は始めて専門店に足を踏み入れました」
如何やらネットショップは私だけで、後の三人はちゃんとお店に行ったらしい……クッ、これがJCとJKの差なのか……
「まぁ、変なのが当たらなくてよかった」
「そうね……って、私は十分変なのよ!」
「スズ先輩でも使えますよ~?」
いくらロリでもちゃんと感じられるんだから……おっと、タカ兄が怖い目をしてるからこれ以上考えるのは止そう。
「そういえばシノちゃん、小さい頃靴下ぶら下げなかった?」
「おお! そういえばやったな!」
天草会長たちの会話を聞いたタカ兄が、遠い目をしていた。
「如何かしたの?」
「いや、昔のお前の奇行を思い出しただけだ……」
「ああ!」
そういえば五歳の時に、サンタさんの性癖をタカ兄に聞き、サンタさんを喜ばせようと靴下じゃなくってパンストをぶら下げてたっけ。今思えばお父さんを喜ばせてもしょうがなかったな。
「それじゃあ改めて……」
天草会長がグラスを持ち上げ、二回目の乾杯をする。
「「「「「メリー・クリ○○ス」」」」」
「津田、アンタが処理してよね……」
「私は魚見会長にしか出来ませんので……」
「お前らもう一回正座だー!」
こうして、クリスマスパーティーは賑やかに幕を下ろしたのだった。
タカトシ以外プレゼント感ゼロ……