桜才学園での生活   作:猫林13世

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長時間の正座はキツイ……


森さん、瞑想中

 隣で魚見会長が喝を入れてもらっているのを気に掛けながら、私も精神を集中させる。

 

「(静かだ……五感が研ぎ澄まされる……)」

 

 

 普段なら気にならない物音がはっきりと聞こえてきて、私は集中出来ていると実感する。

 

「(タカトシ君なら、特に意識することなく精神統一できるんだろうけどね)」

 

 

 いろいろな意味で私たちとは違うタカトシ君のことを思い出し、私は心の中で笑みを浮かべる。

 

「(まさか、ここまで仲良くなるなんて思ってなかったな)」

 

 

 初対面の時はここまで親密になるなんて思っていなかったし、むしろ異性ということで少し距離を置きたいとすら思っていたかもしれない。

 

「(桜才の五十嵐さんほどではないけども、私だって男子の視線は苦手だったんだけどな……)」

 

 

 今でもタカトシ君以外の露骨な視線は気になるし、だらしなく人のことを見てくる男性の視線も嫌だけども、タカトシ君からはそんな感情を一切感じないのだ。

 

「(異性に興味がないわけではないって言ってたけど、あれだけの美人に囲まれながらも欲望を表に出さないなんて、並大抵な精神じゃないはずだし)」

 

 

 同性の私から見ても、天草さんや七条さん、魚見会長たちは魅力的な女性だと言える。その面子に割って入るなんて出来ないはずなのだが、広瀬さんは私も十分綺麗だと言ってくれている。

 

「(あっ、足がしびれてきた……)」

 

 

 ずっと正座しているからか、足がじんじんとしびれてきてしまった。このままじゃ体勢を崩しそうだが、粗相をする前に座禅の時間が終わってくれたので、私は速攻で足を崩してその場で休むことに。

 

「う~~~~~~、足がしびれた~」

 

「森先輩は正座でしたからね」

 

「青葉さんも何度か喝を入れられてたけど、何を考えてたの?」

 

「えっ、あっ、いや……ちょっと余計なことを……」

 

「ふーん……」

 

 

 良く会長と盛り上がっているのを見る限り、青葉さんもそっち側なのだろうけども、具体的に何を話しているのかは分からない。

 

「私もしびれたっす!!」

 

「広瀬さんも?」

 

 

 ずっとあぐらを組んでいたはずの広瀬さんが、何故足がしびれているのだろう……

 

「煩悩を払う為に、髪の毛以外すべて剃ってきてたなんて!」

 

「急ぎ過ぎて、ちょっとヒリヒリするけどね」

 

「……もう一回喝を入れてもらった方が良いんじゃないですか?」

 

 

 神聖なる場所でなんてことを話してたんだ、この人は……というか、広瀬さんもそこは感心するところじゃないんだけどな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず座禅を満喫したけども、本来の目的は煩悩を払うことではない。

 

「それで、肝心のお土産はどうしよう……」

 

「お香はどうです?」

 

「同じ匂いなら、入浴剤の方が使いやすいと思いますよ?」

 

「んー……」

 

 

 サクラっちや青葉っちが真剣に選んでくれているのは分かるけども、それならわざわざここまでくる必要が無かったのではないかという話になってしまう。お香や入浴剤なら、近所のスーパーでも売ってるわけだし……

 

「いい匂いっすねー」

 

「ユウちゃんは色気より食い気だね」

 

 

 お饅頭の匂いにつられているユウちゃんを見て苦笑いをしたけども、確かに良い匂いだ。

 

「せっかくだし、皆で食べよっか」

 

「賛成!」

 

「ここは、先輩の奢りっすよね?」

 

「えっ?」

 

 

 この面子で、ユウちゃんと青葉っちは一年生、サクラっちは二年で私は三年……先輩の奢りということは、私が四人分を払うということなのだろうか……

 

「会長、ご馳走様っす」

 

「ご馳走様です」

 

「あっ、うん……」

 

 

 既にユウちゃんと青葉っちの中では私の奢りということで話がまとまってしまっているようだ。

 

「(会長、半分出しますよ)」

 

「(あ、ありがとう)」

 

 

 私もバイトしているのでお饅頭の四人分くらい払えるのだが、急に言われて動揺してしまっていたようだ。サクラっちが半分出してくれると言ってくれたお陰で、ようやく冷静さを取り戻せた。

 

「それで結局、桜才の人たちへのお土産はどうするんすか?」

 

「うーん……」

 

「あっ、会長。ここ、焼き印でオリジナルキーホルダー作れるんですって」

 

「キーホルダーか」

 

「良いこと思い付いた! 生徒会の役職を入れたキーホルダーを作りましょうよ。私たちと桜才のみんなの分をそれぞれ作って持つんです。これで絆アップ!」

 

「(無自覚でタカ君とペアルックしようとしている……?)」

 

「別にそれでもいいっすけど、私庶務っすよ? 桜才に庶務の役職なんていましたっけ?」

 

「あっ……萩村さんは会計だし、二人だけ揃ってなかった……」

 

「あっちの生徒会は、タカ君が庶務も兼ねてるからね」

 

 

 むしろタカ君が会長兼副会長兼書記兼会計兼庶務のような気もしないでもないが……

 

「というか、津田先輩が生徒会顧問ぽくないっすか? あの人、森先輩と同い年とは思えないくらい落ち着いてますし」

 

「それって私が落ち着きがないって言ってる?」

 

「そんなことないっすよ。森先輩が年相応で、津田先輩が落ち着き過ぎているって言ってるんです」

 

「まぁ、タカ君の人生を考えれば、あれくらい落ち着いてないとやってられないんだと思うよ」

 

 

 結局お土産はお饅頭ということになったが、まさかタカ君の人生を考えることになるなんて思わなかったな……




何個兼任してるんだか……

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