桜才学園での生活   作:猫林13世

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仲良くはなれそうですし


新たな付き合い

 魚見会長と森先輩、そして青葉さんと一緒に出掛けていると、見覚えのある男性と見たこと無い女子が一緒にいるところに遭遇した。

 

「津田先輩、こんちはっす!」

 

「こんにちは」

 

「そちらの女子は?」

 

「コトちゃん、こんにちは。タカ君とお出かけ?」

 

「荷物持ちに駆り出されました……」

 

「会長、知り合いっすか?」

 

 

 どうやら魚見会長以外にも森先輩もこの女子のことは知っているようだ。

 

「コトちゃんはタカ君の実の妹だよ。中身は兎も角、見た目は結構似てると思うけど」

 

「言われてみたら確かに……」

 

「お義姉ちゃんたちもお出かけですか?」

 

「私たちは英稜生徒会の親睦会をね。長期休みになって会う機会も減ってきたから」

 

 

 会長と親しそうに話す妹さん。そう言えば会長と津田先輩は遠縁だって言ってたから、それなりに妹さんとも付き合いがあるのだろうな。

 

「そうだ! タカ君たちも一緒に行く?」

 

「何処へです?」

 

「これから四人でボウリングにでも行こうって話してたんだけど、どうせだからタカ君とコトちゃんも一緒に。たまには息抜きしないと疲れちゃうでしょう?」

 

「賛成! タカ兄、せっかくお義姉ちゃんが誘ってくれたんだし、一緒に行こうよ!」

 

「お前は勉強したくないだけだろ」

 

「うっ……」

 

 

 津田先輩に睨まれた妹さんは、苦しそうに声を出している。まぁ、私も勉強したくない組だから気持ちは理解できる。

 

「まぁまぁタカ君。ここ最近コトちゃんも頑張ってるんだし、たまにはね?」

 

「義姉さんはコトミを甘やかしすぎじゃないですか?」

 

「そうかな? でも、あまり締め付けすぎるとパンクしちゃうし」

 

「パンクする程詰まってるとは思えませんがね……さっきも復習を兼ねた小テストで五割程度でしたし」

 

「気持ちの準備が出来てなかったんだよ! それに、制限時間もあったし……」

 

「普通テストには制限時間はあると思うんだが?」

 

「それは…そうですが……」

 

「まぁまぁ津田先輩。息抜きした方が勉強に気持ちを持っていけるかもしれませんし」

 

 

 さすがに妹さんが可哀想に思えたので、私は助け舟を出す。すると津田先輩は一瞬だけ私を見て、すぐにため息を吐いて首を左右に振った。

 

「少しだけだからな」

 

「やった! ありがとうお義姉ちゃん! それと……」

 

「広瀬っす。広瀬ユウ、高1っす」

 

「おー同い年だー! 私は津田コトミ! よろしく」

 

 

 明るい性格のようで、私とコトミはすぐに打ち解け、青葉さんを交えた後輩三人衆で楽しくお喋りをすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如タカトシ君とコトミちゃんも加わったけど、交流会は順調に進んでいる。といっても、会長はコトミちゃんたちに交じってお喋りをしたり、私やタカトシ君に楽しんでいるかを聞いて回ったりと、忙しそうではあるが。

 

「これって俺たちが参加してる意味あるのか?」

 

「どうだろうね。でも、コトミちゃんが加わったことで、青葉さんと広瀬さんの距離が縮まった感じはしてるよ」

 

「あの愚妹が役に立っているなら良いが」

 

「大変だね、お兄ちゃんは」

 

「サクラにお兄ちゃんって呼ばれると変な感じがするがな」

 

「そう? 私はタカトシ君みたいなお兄ちゃんなら欲しいなって思ったことがあるから、何だかくすぐったい気分だよ」

 

 

 タカトシ君のようなお兄ちゃんがいたら、私もコトミちゃんみたいに家事ができなかったのかな? それともお兄ちゃんと一緒に家事をすることで、今以上にできるようになっているのだろうか。

 

「サクラみたいな妹なら、しなくても済んだ苦労は多そうだな」

 

「そうかな?」

 

「少なくとも、コトミのように思春期全開じゃないし」

 

「まぁね。でも、コトミちゃんの気持ちも少しは分かるよ」

 

「どういうことだ?」

 

「だって、こんなカッコいいお兄ちゃんなら、少しくらいはそう言うことを考えちゃっても不思議じゃないかなって。もちろん、実際にそういう関係になりたいとかは思わないだろうけど」

 

「そんなものなのか?」

 

「タカトシ君だって、綺麗なお姉ちゃんがいたと仮定したら、少しは分かるんじゃないかな?」

 

「うーん?」

 

 

 首を捻って考え込むタカトシ君。珍しい光景を視れて、私は思わず笑みを浮かべた。

 

「さっぱり分からん。たとえ姉がいたとしても、身内としか思えないだろうな」

 

「まぁ、それが普通だよね。私も実際にお兄ちゃんがいるわけじゃないから、仮定としか言えないし」

 

「そう考えると、俺の周りで異性の『きょうだい』がいる人っていないな」

 

「そう言われれば……」

 

 

 確か五十嵐さんはお姉さんがいると聞いたことがありますが、それはあくまでも同性。タカトシ君とコトミちゃんのように異性の『きょうだい』ではない。

 

「さっきからタカ君とサクラっちは楽しそうですね。本格的にカップルになったんですか?」

 

「そっちで盛り上がってるんですから、俺とサクラが弾かれるのは自然な流れだと思いますが? そちらに混ざりたいとも思いませんけど」

 

「タカ兄、これからユウちゃんと遊びに行って良い?」

 

「明日何時も以上に厳しくなっても良いならな」

 

「……大人しく帰ります」

 

「相変わらず凄い威圧感っすね……」

 

 

 お兄ちゃんから保護者の顔に変わったタカトシ君に、コトミちゃんはもちろん、広瀬さんも気圧されたのだった。




この世界で異性のきょうだいがいるのって他にいたっけ……?

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