桜才学園での生活   作:猫林13世

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受験開始にまで行くと中途半端だったので、今回のネタはバレンタインで。


モテ男のバレンタイン

 入試間近と言う事で、生徒会の業務は何時にも増して大変だ。そんな中で暖房で部屋が暖まってるので会長が欠伸をした。

 

「ふわぁ~」

 

 

 それにつられるように、七条先輩と萩村も欠伸をする。みんな眠いんだな……まぁ部屋が温かいのもあるんだろうけども。

 

「欠伸って人に移ってしまうな」

 

「そうですね」

 

「でも津田君はしてなかったよね?」

 

「適度に気を抜いていたからでは? 緊迫した雰囲気で欠伸をされたら移ってたかもですがね」

 

 

 最近会長が俺に仕事を回してくる量が増えてるので、こうして四人で作業する時は怒られない程度に気を抜いてるのだ。だから移らなかったのだと俺は思ってる。

 

「だが君は欠伸を活用するべきでは無いのか?」

 

「如何いう事です?」

 

 

 欠伸を活用って、俺は別に酸素が足りてない訳じゃ無いんですが……

 

「だって、欠伸を利用すればイ○○○オも簡単だろ? 開いたところにズドンと!」

 

「君は何の話をしてるんだい?」

 

 

 欠伸の話をしてたら猥談に変わっていた……まぁ何時もの事か。

 

「そういえばシノちゃん、入試の前にバレンタインだね」

 

「そうだったな。今年はもらう側じゃなくなれば良いんだが……」

 

「去年はシノちゃんが学園トップだったもんね~」

 

「畑め……何処で数を数えたんだ?」

 

 

 あの人はまったく……ジャーナリズムを履き違えてるんじゃないんだろうか。

 

「だけど今年は男子も入学してますし、会長がトップじゃなくなるんじゃないですか?」

 

「でも津田、会長の人気は高いし、それほどモテてる男子って居たっけ?」

 

「………」

 

 

 萩村の冷静な分析に、俺は言葉を無くした……そういえば柳本も他の連中もあまりそう言った話題を出してこなかったような……

 

「畑さんに言って、今年は集計しないように頼みます?」

 

「だが、如何やって調べたかも分からないんだ。止めようがない」

 

「大丈夫ですよ。最悪新聞部を脅せば……」

 

「萩村、怖いから止めてあげて」

 

 

 俺の黒さが移ったのか、萩村が真っ黒な事を言い出した……この間コトミを任せたのが失敗だったのだろうか。

 

「今年もシノちゃんがトップだったら、もうシノちゃん男の子で良いんじゃない? 胸もあまり無いし」

 

「ケンカウッテンノカー!!」

 

「片言!?」

 

 

 何故七条先輩は会長に喧嘩を売るようなことを言うんだろう……普段仲良しなのに、此処らへんが良く分からん。

 

「やっ!」

 

「畑さん」

 

「今月分のエッセイをもらいに来ました」

 

「あれ? 締め切りまだですよね?」

 

「津田君は何時も早めに上げてくれるから、もう出来てると思って」

 

「はぁ……まぁ一応出来てますが」

 

 

 畑さんに完成したエッセイを手渡そうとしたのだが、途中で会長に取られてしまった。毎月ながら何故先に読む……

 

「相変わらず胸打ついい話じゃないか」

 

「感動だよ~」

 

「これだけは津田に勝てないわね」

 

「いや、他の分野で萩村に勝ててないから……」

 

 

 そもそも萩村が本気出したらきっと俺より凄いものを書ける才能はあると思う。凡才は頑張っても天才にはなれないのだから……

 

「これは早めに今月分を仕上げなくては! バレンタイン前に発行するのでこれで!!」

 

「……何が狙いだ、あの人?」

 

 

 何時もは月の中頃過ぎに発行するはずなんだが、今月はまぁ日数少ないし早くても仕方ないのかもな。

 

「シノちゃん、対抗馬が出てきたかもね」

 

「強敵だ……」

 

「?」

 

 

 誰が対抗馬で、何が強敵なのか分からずに、この日は生徒会業務に没頭する事にした。どうせくだらない事だろうしな。

 そしてバレンタインの三日前、新聞部が校内新聞を発行した。最近新聞本来の内容よりエッセイ目当ての人が増えていると聞いたが、果して本当なのだろうか? 畑さんが俺を調子に乗せて何かネタを狙ってる可能性を考えてしまうのは俺が歪んでるから?

 

「津田君、毎月感動をありがとう」

 

「共学したての時は男の子なんてって思ってたけど、津田君が入学してくれてホント良かったわ!」

 

「これが毎月タダで読めるんだからね!」

 

「……まさか学外に販売してるとか?」

 

 

 だとしたらあの人を懲らしめないと。

 

「でも学園から許可出てるってランコが言ってたけど」

 

「………」

 

 

 敵は俺が思ってたより強大だった……学園公認で商売してるとは……

 

「何でも英稜高校が大量に仕入れてるって聞いたけど」

 

「あの人か……」

 

 

 脳内に英稜の生徒会長である魚見さんの姿が浮かぶ。何買ってるんですか貴女は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エッセイ販売が発覚してから数日、何だか今日は校内がざわついてるような……

 

「おはよう、タカトシ君!」

 

「……誰だお前」

 

 

 目の前に髪の毛をオールバックにし、眼鏡を新調した柳本が立っている。コイツ、何でこんなに気合が入ってるんだ?

 

「おいおい、随分と冷めてるな。今日はバレンタインだぜ?」

 

「だから? 今日気合入れても作ってもらえないだろ?」

 

「ガビーン……そうだった!」

 

 

 バカは放っておいて早く教室に行かないと遅刻扱いにされる。俺は靴居れを開けると中から大量の箱が降ってきた。慌てて避けると、その箱はいじけていた柳本の脳天に次々と落ちていく……痛そうだな。

 

「何だこれは?」

 

「ま、まさかこれは……下駄箱にチョコ!? しかも大量に!?」

 

「やはり津田か! 津田なのか!!」

 

 

 てかお前ら、何処に居たんだよ……

 クラスメイトの男子を引き連れ教室に向かうと、俺の机が酷い事になっていた……

 

「これ全部?」

 

「笑うしかないな、こうなると」

 

「……持って帰れと?」

 

 

 如何頑張っても持って帰れない量なんだが……

 

「大量だね~津田君」

 

「今年のトップは津田だな」

 

「会長? 七条先輩も……何か用事ですか?」

 

「いや、君にチョコを持ってきたんだ。何時も世話になってるからな!」

 

「私も津田君にはお世話になってるからね~」

 

「そんな、俺は大した事してませんよ」

 

「「主に夜!」」

 

「……はい?」

 

 

 夜って何だ? 俺は会長や七条先輩とは学校でしか会ってないんだが……

 

「津田、これあげる」

 

「あっ、どうも」

 

 

 通り過ぎるついでに萩村からもチョコを貰った。そういえばあの大量のチョコ、如何やってお返しすれば良いんだ?

 

「津田君」

 

「あっ、五十嵐さん。何かありました……よね」

 

 

 あの大量のチョコは風紀的にアウトだろ。

 

「こ、これ!」

 

「あ、どうも」

 

「それじゃ!」

 

「五十嵐さん、廊下は走っちゃ駄目ですよ」

 

 

 風紀委員長が校則を破ったらマズイだろ……

 

「何故津田ばかりモテるんだ……」

 

「それは多分、俺たちが物語りに関係無いからだよ」

 

「「「「なるほど、関係無いな、俺たち!」」」」

 

 

 変なところで結束するな! 結局チョコは持って帰れないので、七条先輩に協力してもらい車で運ぶ事になった……当分はチョコ買わなくて良いな……

 

「津田さん」

 

「こんにちは」

 

「魚見さん、それに森さんも」

 

 

 帰り道で英稜の生徒会二人と出合った。丁度良いから説教するか。

 

「魚見さん、ウチの新聞部から大量に新聞を購入してるそうですが、何が目的です?」

 

「もちろん津田さんのエッセイです。我が校にも津田さんのファンは多いんですよ」

 

 

 何て事だ……これ以上胃に負担を掛けたく無いから、来年からエッセイをやめさせてもらおうと思ってたのに……この期待に満ちた眼差しは……俺には無理だ。

 

「それとこれ、英稜高校の女子生徒全員から津田さんにチョコです」

 

「……これを運べと?」

 

「それとは別に、これは私からです」

 

「ついでに私からもあります」

 

 

 ……英稜の女子って、何で大きいチョコ一つで済ませたんだ? 小さいので良いから分けろよ……運べないじゃないか。

 結局チョコは勉強のし過ぎ(コトミ談)で脳が糖分を欲したコトミが大体片付けてくれた。お返し如何しよう……




モテ過ぎだよ……

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