桜才学園での生活   作:猫林13世

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春休み短いってツッコミは無しでお願いします……


コトミの入学式

 春休みというのはそれほど長い訳でもなく、あっという間に新学期となった。

 

「これから我々生徒会は壇上に立ち新入生を迎える訳だが、決して興奮して絶頂などしないようにな!」

 

「どんな注意事項だよ……」

 

「えー駄目なの?」

 

「アンタら最上級生なんだからもっとしっかりした方が良い」

 

 

 相変わらずのツッコミのキレに安心しながら、私たちは体育館へと移動する。これなら今年度も私がツッコミを入れる機会は少なそうね。

 

「誰かツッコミが入学してくれないかな……」

 

「他人任せはよくないよ?」

 

「だったらもう少しボケる回数減らしてもらっていいですかね?」

 

 

 七条先輩の言ってる事はある意味で正しいけども、津田に当てはめるならそれは正しいとは言えない。少しくらいは楽をしたいと思う気持ちは良く分かるものね……

 

「津田、進行役はお前に任せるからな」

 

「会長は?」

 

「私は答辞やらなんやらで忙しいのだ」

 

「そうですか……」

 

 

 津田が少し疑いの目を向けたけども、特にツッコむ事は無く壇上へと到着した。

 

「新入生入場」

 

 

 津田がそう告げると、ゾロゾロと新入生が体育館へと入ってくる。それにしてもみんな私よりもデカイわね……

 

「あっ、コトミちゃんが居たよ」

 

「去年は自分があそこに居たと思うと、時間って早く流れてるんですね」

 

「そんな事無いだろ。数字で表せば途方も無いぞ。何せ365回もイッた事になるんだからな!」

 

「……何の話してるの?」

 

 

 津田のツッコミで変な空気になりかけたこの場所も、津田がそのまま進行していったのでおかしな空気にはならなかった。

 

「在校生答辞。在校生代表天草シノ」

 

「はい」

 

 

 良いなー会長。津田に呼び捨てにされて。

 

「変な事考えてるな、あの表情は……」

 

「そうなの?」

 

「傍から見たら緊張してる風に見えるのが性質が悪いよな、あの人」

 

 

 私から見れば緊張してるのかと思ったけど、津田には会長の表情の違いが分かるのね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入学式も終わり、HRで顔合わせをして放課後になった。私はタカ兄を探す為に二年のフロアに行こうとしたんだけど、途中で見知った顔を見つけたので声をかける事にした。

 

「スズせんぱーい」

 

「………」

 

「あれ? 聞こえて無いのかな。スズ先輩!」

 

「……え? ゴメン、聞こえなかったわ」

 

「もーう。結構大きな声で呼んだんですよ? あっ、タカ兄」

 

 

 スズ先輩とおしゃべりしてたらタカ兄がこっちを見ていた。何かスズ先輩に視線を向けてたけど、やっぱりタカ兄ってペドなのかな?

 

「萩村、今日は生徒会の業務も無いからって会長からメールが着てた。このまま解散だって」

 

「そう、じゃあアンタたちも家に帰るの?」

 

「いや、俺は昼食の買出しに行かないといけないから」

 

「我が腹を満たすのもソチの勤めじゃ」

 

「……今日は何のキャラだよ」

 

 

 タカ兄が呆れながらツッコミを入れてくれたタイミングで、後ろから声をかけられた。

 

「コトミー一緒に帰ろうよ」

 

「あっマキ。うん良いよ、でもタカ兄は……ムグゥ!?」

 

 

 一緒じゃないと言いかけたら口を塞がれた。相変わらずタカ兄には気持ちを伝えてないんだね。

 

「八月一日さん。高校でも妹をよろしく」

 

「は、はい! 此方こそコトミちゃんとは仲良くさせていただきます。それでは」

 

「えーもうちょっと話せば良いのに~」

 

「良いから行くわよ!」

 

「じゃあね、タカ兄」

 

 

 マキに引き摺られながら下駄箱までやって来た。

 

「良いの? せっかくまたタカ兄の後輩になれたのにさー」

 

「良いの! こうやって話せるだけで十分なんだから」

 

「純情少女だねー。私なんかタカ兄で毎日してるのにさー」

 

「アンタは変態少女だ!」

 

 

 マキと話していると、同じクラスの子が何か困ってるように突っ立て居た。

 

「如何かしたの?」

 

「あ? 靴のサイズが合わねぇんだよ」

 

「それ、左右逆……」

 

「……あ」

 

 

 あれ? このドジっ娘は……

 

「もしかして受験の時に私の席に座ってた」

 

「お前はあの時の」

 

「一緒のクラスだったんだねー。私は津田コトミ」

 

「私は時……」

 

「トッキーだね!」

 

「最後まで聞け!」

 

「え? 何トッキー」

 

「……もう良いや」

 

 

 こうしてトッキーとも自己紹介を済ませて一緒に帰る事にした。

 

「津田って人の話し聞かないのか?」

 

「まぁ、コトミはいろいろとね……」

 

「あー! マキとトッキーだけで話してるなんてズルイ! 私も交ぜてー!」

 

 

 こうして駅まで三人で楽しくおしゃべりしながら帰った。トッキーも今度タカ兄に紹介しなきゃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校でのタカ兄の動向を探ろうとして一日見張ってたけど、かなりの数の女性から声をかけられていた。

 

「タカ兄ってモテるんだね。この学校には私のお義姉さん候補がいっぱい居るねー」

 

「何の話だよ。いきなり生徒会室にやってきて」

 

「駄目だなー津田君は。つまりコトミちゃんが言いたいのはねー」

 

「何です?」

 

「竿姉妹って事だよ!」

 

「ん? 竿姉妹って事はコトミも津田の事を……」

 

「いやですね~。まだ経験はありませんよ~」

 

 

 何時かはと思ってるけども、タカ兄ってガード固いし、寝静まった時を狙ってもその日に限って起きてたりするからなー。

 

「それにしても竿姉妹かー、そんな間柄って憧れるよねー」

 

「そうだな。何時かは出来ると良いな! 竿姉妹」

 

「そうですねー」

 

「「「あははははは」」」

 

 

 会長と七条先輩と笑いあってると、背後からもの凄い怒気が放たれているのに気がつき、私たちはゆっくりと振り返った。

 

「さーて、誰から説教してやろうか」

 

「え? 何で怒ってるのタカ兄?」

 

「とりあえず落ち着け! な?」

 

「そうだよ~。そんなに怒ってると血管が切れちゃうよ~?」

 

 

 何とか宥めようと努力はしたが、タカ兄の怒りは鎮まる事は無くそのまま一時間お説教された……正座で。しかも一発拳骨も喰らわされた。

 

「この痛み、快感に変わるんだよな~」

 

「分かるよ~。私ももうビチャビチャだし」

 

「先輩方もタカ兄の拳骨の虜になってますね~」

 

 

 小声で話していたのだけど、タカ兄にはバレバレだった。もう一撃拳骨を振り下ろされ、私たちは揃って意識を失ったのだった……次に気がついたのは自分の部屋。

 

「まさか! 瞬間移動を会得したとでも言うのか!?」

 

「俺が運んできたんだ! いい加減門を閉めないといけなかったからな」

 

 

 何だ、タカ兄が運んでくれただけか……

 

「天草会長と七条先輩は?」

 

「出島さんに運んでもらった。さすがに三人は無理」

 

 

 タカ兄は疲れた顔で私を見つめ、深くため息を吐いて部屋に戻って行った。あんなに深くため息吐かなくてもいいじゃないか……でも興奮したー!




次回は彼女の説明とタカトシのクラスメイトですかね……

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