桜才学園での生活   作:猫林13世

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そんな事を思う人はそうそう居ないだろ……


大雨の翌日

 夜も更けてきた頃、私は窓の外を見る。明日は校門で服装チェックだと言うのに外ではもの凄い勢いで雨が降り続けている。

 

「これは服装チェックは延期かもしれないな」

 

 

 さすがに豪雨の中で服装チェックを行うのは難しい。傘を差しているとはいえびしょ濡れは確定だろうしな。

 

「せめて晴れてくれれば良いのだが」

 

 

 明日の降水確率はそれほど高く無い。夜のうちに雨が止んでしまえば服装チェックには何も支障は無いのだがな……

 私の祈りが届いたのか、朝になったら雨はすっかり止んでしまい服装チェック日和になった。

 

「それにしても昨日の雨は凄かったな」

 

「そうですね」

 

 

 まだそれほど生徒たちも登校して来てないので、私たちは校門付近でおしゃべりに興じていた。

 

「水溜りには気をつけなければな」

 

「跳ねますからね」

 

 

 津田が相槌を打ってくれてるが、あまり興味は無さそうな感じだな。確か昨日もバイトで遅かったらしいし眠いのかもしれない。

 

「いや、うっかり水溜りの上に立ったら、お漏らしと間違えられるかもしれないからな」

 

「……うっかり立っちゃってるよ」

 

「しまった!?」

 

 

 津田にツッコまれて初めて私は水溜りの上に立っていることに気がつく。良く見るとアリアが何処からか持って来たレモンティーを水溜りに混ぜようとしていた。

 

「こらアリア! 私はお漏らしなんてしてないぞ!」

 

「分かってるよ~。ただちょっとした戯れでね」

 

「まったく!」

 

 

 その後は真面目に服装チェックをしていて、時間になったので校門を閉める事にした。

 

「待ってくださ~い!」

 

「コトミ……また遅刻かよ」

 

「だって誰も起こしてくれないんだもん!」

 

「高校生だろ。自分で起きろ」

 

 

 校門を閉めるギリギリのタイミングでコトミたちがやって来た。

 

「コトミに付き合わされる八月一日さんや時さんの身になれば自ずと早起き出来るんじゃないか?」

 

「え? 何でマキやトッキーの気持ちになれば早起き出来るの?」

 

 

 如何やら津田のいった事はコトミには伝わらなかったようだった。

 

「それよりもトッキー! 服装が乱れてるぞ」

 

「そういえばトッキーって何で着崩してるの?」

 

「昔嫌な事があってな」

 

「「?」」

 

 

 コトミと同じタイミングで私も首を傾げる。何か着崩す理由があるなら聞くべきだな。

 

「ズボンの中に服を入れたと思ったら、その下のパンツに入れてて凄い恥かいたんだ」

 

「「やっぱりドジっ子かー」」

 

「人がトラウマの話ししてるのに和んでるんじゃねぇ!」

 

「今回は注意で済ますけど、次遅刻したら反省文書いてもらうからな」

 

 

 トッキーのトラウマ話は気にせず、津田がコトミに注意している。さすがは私の跡を継ぐ男だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み生徒会室で弁当を食べていると、会長が急に占いの話しを始めた。

 

「実は今日のラッキーカラーは青なんだが、校則に反しないもので青いものが無くてな」

 

「そうですか」

 

「そこで津田、ちょっと付き合ってくれ」

 

「何処行くんです?」

 

 

 急に立ち上がった会長にしょうがないからついていく事にした。まぁ食い終わってるし後はのんびりするだけだったしな。

 会長について行って来たのは屋上。何で屋上なんだ?

 

「私の顔、青くなった?」

 

「今幸せー?」  

 

 

 そういえば会長って高所恐怖症だったな……だけどそこまでしてラッキーカラーを求めるんなら、ハンカチとか何かで青いものは無かったのだろうか……

 

「津田、何してるんだ?」

 

「別に何も……それよりもお前たちこそ何してるんだこんな所で?」

 

 

 会長に付き合って屋上に来ただけだったのだが、何故か傍にクラスメイトたちが居た。別に屋上は立ち入り禁止って訳では無いから居ても良いんだが、明らかに挙動不審な感じがクラスメイトたちからはするのだ。

 

「な、何だって良いだろ!」

 

「ああ構わないぞ。その後ろに隠してるものが何なのかにもよるがな」

 

 

 俺があっさり指摘すると、クラスメイトたちは慌てて隠そうとした。てか隠せてないから俺にバレてるんだろうが……

 

「おや? これは何だ?」

 

「か、会長……」

 

 

 俺に背中を向けているという事は、屋上に居る会長にはその背中が丸見えなのである。従って背中に隠したところで会長にはバレバレなのだ。

 

「なかなかエロいな!」

 

「さすが会長、分かりますか?」

 

「ウム! マニアックなのは良いことだ! 津田、占いも当たるものだな!」

 

 

 ……そんなので幸せを感じるなら、本屋にでも行けば良いだろうが。俺はくだらない事に付き合いきれなくて先に生徒会室に戻る事にした。もちろん風紀委員にクラスメイトたちの事は報告しておいて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バイトも一週間以上やれば慣れてくるものです。津田さんと魚見会長と同じシフトのおかげもあるのですが、私も特に問題無くやれています。

 

「それにしても、津田さんも森さんも順応力高いですよね。一週間程度でもう立派な店員になれてます」

 

「魚見さんの教え方が良いんですよ。俺はそれほど順応力高いとは思ってません」

 

「私もです。魚見会長のおかげですよ」

 

「そうですか。ではお礼は身体で……」

 

「「此処でボケなきゃ尊敬出来るのに」」

 

 

 津田さんと同じタイミングで呆れると、バックで書類整理していた店長が拍手していた。如何やら本格的に魚見会長の相手は私と津田さんに任せるようですね。

 

「では今日は津田さんと森さんでレジをお願いします。私は裏で作業しますから」

 

「分かりました」

 

「ちょっと不安ですが頑張ってみます」

 

 

 何時までも三人一緒のシフトって訳にもいかないでしょうし、何時かはこんな時が来るとは思っていたのですが、意外にも早かったですね……

 私は緊張しながらレジ対応をしていた隣では、津田さんがまったく緊張を感じさせない態度でレジ対応をしていた。やっぱり津田さんは凄いですね。

 

「お疲れ様です。今日はもう上がって構いませんよ」

 

「魚見くんも今日は上がりで良いよ。もう次の人が来てるから」

 

「そうですか。ではお疲れ様でした」

 

 

 挨拶を済ませてロッカールームに下がる。それにしても今日は何だか女性客が多かったような気がするんですけど……気のせいですかね?

 

「津田さんと森さんのおかげで凄い集客率でしたよ。これならすぐに給料も上がるでしょうね」

 

「そうなんですか?」

 

 

 津田さんは兎も角私も? いったいどんな理由で客が来たのでしょうか。とりあえずバイトも大分慣れてきましたし、あとは成績を下げないように気をつけるだけですね。




ドジっ子トッキーの過去に和む人たち……

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