桜才学園での生活   作:猫林13世

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90話目です。100話が見えてきましたね


貴重品の基準

 校内の見回りを終えて生徒会室に戻ってきたら、会長の席に横島先生が座っていた。偶に生徒会室に来ては無駄話をして帰っていく先生だが、今日はいったい何のようがあって来たのだろうか……

 

「こら、アンタたち。生徒会室の鍵が開けっ放しだったわよ。無用心過ぎるわ」

 

「別に盗られて困る貴重品は無いですし。それにそんな輩も居ませんよ」

 

 

 まぁ貴重品は持ち歩いてるし原則として生徒会室は関係者以外は気軽に入れる場所ではない。加えて成績上位者が集まってる空間に近づきたくないという理由で、最近は用事があってもなかなか来たくない場所だと噂されているくらいなのだ。

 

「貴重品ならたくさんあるでしょうが!」

 

「例えば?」

 

 

 横島先生が立ち上がり力強く会長に怒鳴りつけたので少し会長が驚いた。その横で俺は先生が言う貴重品が何なのか気になり聞いてみたのだ。

 

「女子高生のカバン、女子高生の体操服、女子高生の飲みかけのお茶、女子高生の落ちている髪の毛……」

 

「多いな……」

 

 

 いったい誰に向けての貴重品なのかは兎も角として、先生が言う貴重品はものすごい数存在していた。

 

「とりあえず休憩にしましょう。コーヒー淹れるわね」

 

「あぁ、頼む」

 

 

 横島先生が移動して会長が定位置に座る。萩村がコーヒーの準備をしている間に会長が横島先生に話しかけた。

 

「それで、今日は何の用で来たんですか?」

 

「落し物を拾ってな。届けに来たら誰も居なかったんだ」

 

「落し物ですか……」

 

 

 会長が横島先生から受け取ったのは靴下。部活動をしてる人が落としたのだろうか……

 

「ふむ……脱ぎたてでは無いようだな」

 

「……何故俺を見て言う?」

 

 

 意味ありげに視線を向けてきた会長を睨み問いかける。すると会長は少し恥ずかしそうに視線を逸らしたのだが……そんなに怖かったのか?

 

「いいな~シノちゃん」

 

「あの目は興奮するだろうな~……ってコーヒー零した!?」

 

 

 萩村から受け取ったコーヒーを啜りながらしゃべってた横島先生がコーヒーを服に零してしまった。

 

「何か拭くものとってきますね」

 

「別にいいって。黒い服だから汚れも目立たないし」

 

「そんなものですか?」

 

「そう! だから私は黒いパンツを愛用しているのよ!」

 

「何処から服の話じゃなくなった? あと、これタオルです」

 

 

 いつの間にか変わっていた話題にツッコミを入れ、備品のタオルを横島先生に手渡した。

 

「津田、そういえば柔道部に呼ばれてたんじゃなかったか?」

 

「ランニングの付き添いを頼まれまして……バテた人の回収が主らしいですけど」

 

 

 十キロマラソンだと言っていたが、中里さん曰く六リットルの水分を背負って走らされるらしい……まさか俺も背負わされるのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 津田が居なくなり横島先生も職員室に戻っていった後、会長が大きく伸びをした。

 

「最近肩が凝って堪らん」

 

 

 背を伸ばし目一杯腕を伸ばしている後ろを七条先輩が通る……シャツの隙間に会長の手が入り込んだ。

 

「もう! ブラのホックが外れちゃったよ~!」

 

「スマン……」

 

「このハプニングは予想出来なかった……」

 

 

 しかし今七条先輩、わざと会長の傍を通らなかったか? 津田が居れば別のツッコミが発生したのかも知れないけども、私ではこの状況にツッコミを入れることは出来なかった。やっぱり最近津田に頼りきってたからかしら?

 

「しかし最近めっきり暑くなってきたな」

 

「もう夏ですからね。窓でも開けますか」

 

 

 この部屋は構造的に窓を開けると強い風が入ってくる事が多い。まだ本格的な暑さでも無いので、入り込んでくる風は熱風と言うわけではないので丁度いいだろう。

 

「きゃ!」

 

 

 丁度強い風が入り込んできたタイミングで立ち上がっていた七条先輩のスカートが風で捲れる……やっぱりわざとだよね?

 

「アリアのアンダーヘアーは茶色なのか」

 

「てかまたパンツ穿いてないのかよ! ……でもこのハプニングは予想出来た」

 

 

 津田が居たら私と会長でボコボコに殴ってたかも知れないけども、津田は今ムツミに呼ばれて柔道部員たちと校外を走っているはずなのでそんな事は起こらないんだけどね。

 

「七条先輩、普段は津田も居ますし下着は穿いたほうが……」

 

「津田君になら見られてもいいけど、他の人に見られる可能性もあるのよね~。なら生徒会室だけ脱いでいようかしら」

 

「常に穿けー!」

 

 

 私の絶叫が木霊し、外に居た津田に後で何事かと尋ねられた……外にまで響いてたと考えると、かなり恥ずかしいわね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バイトも休みで特にする事も無かったので街をブラブラとしていたら見知った顔を見つけた。

 

「津田さん?」

 

「ん? 森さん、それに魚見さんも……お二人は生徒会の用事ですか?」

 

「そうです。備品の買出しを兼ねたデートを……」

 

「あーそういうのは聞いてませんので」

 

 

 俺のツッコミに満足したのか、魚見さんは備品の買出しを再開した。

 

「そういえば津田さんはここで何を?」

 

「予定が無かったのでブラブラと。本屋でも行こうかと考えてたところでお二人に会ったんですよ」

 

「そうだったんですか」

 

「ところで津田さん」

 

「はい、何でしょうか?」

 

 

 魚見さんに話しかけられ、俺は反射的に答えた。

 

「この後の予定は何かありますか?」

 

「いえ、今日は本当に何も無いんですよ」

 

「なら、この備品を英稜まで運ぶのを手伝ってくれませんか? もちろん校内までとは言いませんけど」

 

「別に良いですけど……他の役員の人は如何したんですか?」

 

 

 会長と副会長だけと言うわけでは無いだろうし、買出しなら男の役員を連れてくれば良かったんじゃないだろか……

 

「都合が悪くなってしまったのです。そして英稜の生徒会に男子生徒は居ませんので」

 

「はぁ……ん? 俺、声に出してました?」

 

「いえ、顔に書いてありましたので」

 

 

 そういう事か……

 

「分かりました、手伝います。可能なら校内まで運びますが、さすがに私服では拙いですかね?」

 

「大丈夫ですよ。生徒会長と副会長の権限で何とでも出来ますので」

 

「職権乱用では……まぁ大丈夫なら良いですけど」

 

 

 こうして英稜の生徒会の手伝いで予定が埋まった。ブラブラするよりはよっぽどまともな時間の使い道になったのかな?




それを貴重品と呼ぶのは如何かと……次回ちょっと脱線予定です

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