桜才学園での生活   作:猫林13世

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セリフでメロメロでもよかったんですけどね……


水泳大会 前篇

 本日は水泳大会当日。我々生徒会は実行委員と連携して準備を進めてきたのだ。

 

「やっほーい!」

 

 

 コトミがはしゃいでるのを、津田があきれながら眺めている。まさか実の妹の水着姿を見て興奮しているのだろうか。

 

「コトミ、はしゃぎすぎだ。さっさとシャワー浴びてこい」

 

「そのセリフを実の兄から言われるとは思わなかった!」

 

「エロいね!」

 

「エロいぞ!」

 

 

 兄妹の会話を聞いていた私とアリアが加わりコトミと三人で興奮した。だが津田はイマイチ原因が分かって無く首を傾げていた。

 

「つまりだな、男女の営みの前に身体を綺麗にしてこいという意味でさっきのセリフが使われる訳でだな……」

 

「はぁ……バカな事言ってないで会長たちもさっさと準備してください」

 

 

 呆れ顔を隠そうともしなかった津田の態度に、私たちは更に興奮したのだった。

 

「それにしても紫外線が強いな……」

 

 

 このままでは肌が焼けてしまうので、私は水着の上からシャツを羽居る。これで大丈夫だろう。

 

「シノちゃん、次のレースのスターターを頼みたいってさ」

 

「アリア。お互い紫外線対策は苦労するな」

 

 

 パーカーを着て前まで閉めていたアリアに、私はそう返した。

 

「あっ、これは勃っている乳首隠してるだけ」

 

「さっきの津田の視線か」

 

「あれは興奮したよねー」

 

「会長、七条先輩も。遊んでないでさっさと仕事しろ」

 

「「は、はい!」」

 

 

 津田の命令口調に更なる興奮を覚えた。これでは私も紫外線対策ではなく興奮している事を隠してる風ではないか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二年の自由形勝負が始まり、先頭のネネが三位、次の津田・ムツミと他を寄せ付けない泳ぎでトップを獲得した。

 

「次、スズちゃんだよー!」

 

「うん……あっ! ゴーグル忘れちゃった」

 

 

 あれが無いと水中で目を開けるのがね……ゴミが入っちゃうし、何より痛いし……

 

「私ので良ければ貸すよ? 自作のだけど」

 

「へーどんなの?」

 

 

 ネネの自作のゴーグルという事で、何となく嫌な予感がしているのだが……

 

「ヤンデレ風ゴーグル」

 

「……パス」

 

「じゃあ、アヘ顔風ゴーグル」

 

「……諦めよう」

 

「萩村、これで良ければ貸すぞ」

 

 

 津田が手渡してくれたゴーグルを装着して、私はスタート位置に立つ。ネネのゴーグルより何千倍もマシよね、津田のゴーグルは……

 

「(ん? これって津田がさっきまで使ってたゴーグル!?)」

 

 

 何となく恥ずかしい気分になったけども、私は会長たちとは違う! 断じて津田が使ってたものを手にとって興奮したりなどしない!

 

「(萩村のヤツ、飛び込みが怖いのかな?)」

 

 

 飛び込み台の上で悶えだした私を見て、津田がそんな事を考えていたなど気づきもせず、だけどレースでは落ち着く事が出来、私もトップでゴールしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一年の競技が始まるのを待っていたら、津田のところにコトミとトッキー、あと八月一日が来ていた。

 

「如何かしたのか?」

 

「組み分け用の帽子が足りないようなのですが」

 

「帽子? そういえば……」

 

 

 即席で代理の物を用意しなければ……

 

「これでよし!」

 

「さっすがかいちょー!」

 

「……ちょっと待ってろ」

 

 

 そういって津田がフェンスを飛び越え校舎に向かって走っていく。相変わらずの運動神経だな……

 

「マキ、何見惚れてるのかなー?」

 

「み、見惚れてないわよ!」

 

「またまたー。マキは嘘吐くのが下手なんだから~。私なんて今のタカ兄の動きを見て濡らしたもんね~」

 

「分かる~! 今の津田君の動き、ものすごいカッコよかったもんね~」

 

 

 コトミとアリアが濡らしたと宣言しているが、正直私もちょっと濡らした。よく見ればプールサイドでクネクネと身体を動かしている女子生徒が大勢いる……つまりそういう事なのだろう。

 

「お待たせ? 何でしゃがんでるんだ?」

 

 

 津田が戻ってきて、また同じような動きを見せられて我々は絶頂してしまった。それを見た津田が不思議そうに首を傾げるのだが、その答えを津田が得る事は無いだろう。

 

「まぁいいか。これ、予備の帽子。これ使って」

 

「あ、ありがとうございます。津田先輩」

 

「いいって。生徒会役員だから」

 

 

 津田のさりげない言葉に、我々は再び興奮して絶頂するのだった……ここがプールでホント良かった……濡れてるのを誤魔化せるからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前の競技が一通り終わったところで、俺の傍に畑さんがやってきた。

 

「……何か?」

 

「忘れたのー? 客寄せパンダの件よ」

 

「……今年もですか」

 

 

 去年生徒募集の為という事で俺が泳いでる場面を録画し、それを学園のホームページに載せたところ……ものすごい数のアクセスがあり、入学希望者も前年度の倍近くあったとか聞いたのだが……おそらく俺だけの力では無いんだろうな。

 

「今回はプールで溺れた女子生徒を津田君が颯爽と救い出す映像がほしいの」

 

「……前にもましてわざとらしいぞ」

 

 

 大体プールで溺れるってどんな状況だよ……

 

「ッ!?」

 

 

 呆れて畑さんから視線を逸らすと、何故か五十嵐さんが溺れている。

 

「あれって仕込み?」

 

「いえ、あれは素で溺れてますね」

 

 

 畑さんの返事を聞いてからの俺の動きは迅速だったと言えよう。数歩プールサイドを走り、そのままの勢いでプールに飛び込む。ゆっくりと五十嵐さんを抱え上げて会長たちに手伝ってもらい五十嵐さんをプールサイドに上げた。

 

「まさかこんな映像が撮れるとは」

 

「ホントに仕込みじゃないんですか?」

 

「仕込みならもっと上手くやるわよ~」

 

「まぁ確かに……」

 

 

 とりあえず五十嵐さんの救助は間に合い、大事には至らなかった。なんてタイミングで溺れるんですか貴女は……




あのセリフでメロメロだと、桜才大丈夫か? になるので別の行動でメロメロにさせました。

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