桜才学園での生活   作:猫林13世

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一話に入りきらなかった……


お泊り 前編

 台風で電車も止まり、頼みの綱だった出島さんの車も車検ということで、私たちは津田の家に泊まる事になった。もちろん事情は親に話したし、津田の誠実さは私たち全員が知るところなので襲われるなどの心配は皆無だ。むしろ私たちが津田を襲う可能性の方が高いのではないかとも思う。

 

「順番にお風呂に入っちゃってください。着替えはコトミので大丈夫ですよね? キツイ人がいるのなら俺のシャツを貸しますけど」

 

 

 津田のシャツだと!? いや、でもコトミの服で私や萩村は事が足りるしな……

 

「じゃあ津田君、悪いけど貸してもらえるかな? サイズは大丈夫そうなんだけど、胸の所がね」

 

「私もですね。コトミさんのでも何とか入りそうですが、寝る時に窮屈な思いはしたくないです」

 

「出来れば私も貸してもらえないでしょうか? 普段寝る時はダボダボの格好ですので、コトミさんのですとピッタリなんですよ」

 

「分かりました。では三人は俺のシャツを貸しますのでそれを着てください。今着ているものは洗濯機に突っ込んどいてくれれば洗濯して明日には乾くでしょうしね」

 

 

 何とも主夫的発言なんだ。普通の高校生なら、女子高生が身に着けていた下着や洋服なんて宝の山だと思うのではないだろうか。

 

「俺は最後で良いので、コトミ後は任せるぞ」

 

「分かったよ! みんなの体液が溶け込んだお湯を飲むんだね!」

 

「来月の小遣いは無しで良いんだな?」

 

「本当に申し訳ありませんでした!」

 

 

 コトミのボケに対して、津田は容赦のない言葉をかけた。パワーバランスがより津田に傾いてるように感じるのは気のせいでは無いだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全員風呂からあがり、リビングでのんびり過ごしていたらふと思いついたようにコトミが呟いた。

 

「なんだかパジャマパーティみたですね」

 

「パジャマパーティ?」

 

「そのままの意味ですよ。寝る時の格好でワイワイやるんです」

 

 

 萩村の説明に七条先輩は納得し、だがしかし申し訳なさそうな顔になった。

 

「パジャマパーティなら私、寝る時裸だから脱がなきゃ」

 

「「「やめなさい!」」」

 

 

 俺、森さん、萩村のツッコミトリオが言葉だけで七条先輩の奇行を止める。女子だけならまだしも一応俺だっているんですから……少しは自覚してくださいよね。

 

「私は寝る時に拘束具を付けているので、今すぐに……」

 

「「「だからやめろ!」」」

 

 

 七条先輩が治まったと思ったら、今度は魚見さんが立ち上がり変な事を言った。そもそも何故拘束具? しかもそんなもの家にはありませんよ?

 

「じゃあ私の部屋から持ってきますねー」

 

「……コトミ、何でお前がそんなもの持ってるんだ?」

 

「あっ……」

 

 

 コトミが墓穴を掘ったのだと全員が理解したのだろう。まさか五人揃って合掌するとは思わなかった。

 

「ひっ!?」

 

「停電か?」

 

「落ち着け。とりあえずブレーカーを探そう……ん? なんだこの物体は?」

 

 

 会長が何かを見つけたようだけど、そんなところにブレーカーは無いだろ。夜目の聞く俺は立ち上がりブレーカーの場所まで移動する。移動してた時萩村と森さんが若干震えてたのは気のせいだな。

 

「おぉ! アリアの乳房だったのか!」

 

「大声で変な事言うな!」

 

 

 リビングから聞こえてきた会長の声に、思わずツッコミを入れてしまった……何で自宅でこんなに疲れる思いをしなければならないのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきの停電で火がついたので、私とシノッチの企画で部屋の灯りを消して怪談をする事になった。ちなみに津田さんは呆れたのか自室に戻り宿題を片付けると言ってここにはいません。

 

「そういえば、皆さんって何処で寝るんですか? リビングを片づけたとしても三人くらいしか寝れませんよ?」

 

「他には何処で寝れるんだ?」

 

「そうですね……私の部屋に一人なら大丈夫ですけど、それでもあと一人いますしねぇ」

 

「津田の部屋は如何だ?」

 

 

 食いぎみにシノッチがコトミさんに訊ねる。あれで自分の恋心を隠せてると思ってるあたり、シノッチも可愛いですよね。

 

「タカ兄の部屋ですか? 大丈夫だと思いますけど、タカ兄が許可してくれるかなぁ?」

 

「何か問題でもあるのか?」

 

「以前寝静まったと思ってタカ兄の部屋に忍び込んだんですけども……」

 

「何で忍び込んでるのよ……」

 

 

 話の途中でスズポンがツッコミを入れる。細かい事は気にしちゃ駄目な場面なんだよ?

 

「その時にこっ酷く怒られましたから……私が聞きに行っても駄目だって言われるでしょうね」

 

「ではその交渉は我々がやろう!」

 

「もちろんです!」

 

 

 シノッチと二人で立ち上がり津田さんの部屋へと向かう。

 

「津田、少し入っても良いか?」

 

『会長? 何かありましたか?』

 

 

 部屋の中から返事があり、少し待って津田さんが部屋に招き入れてくれました。

 

「津田、私と一緒に寝てくれ!」

 

「はぁ?」

 

「シノッチ、ニュアンスがだいぶ違いますよ」

 

「おっとそうだったな……」

 

 

 事情を説明すると津田さんは神妙に頷き一人だけならと許可をくれました。

 

「では早速誰が何処で寝るかを決めなくてはな!」

 

「リビングに戻って大乱闘ですね!」

 

「出来れば平和的に決めてください……」

 

 

 津田さんが紙とペンを差し出してきました。つまりはあみだくじかそこらで決めてくれとの事なのでしょう。これは運頼みもありますが、引きの強さも重要になってくる場面。ここで津田さんの部屋に泊まれれば他の相手より数歩リード出来ますからね。

 

「ウオミー、さっそく下に戻って作成だ!」

 

「不正が無いようにしっかり作りましょう!」

 

 

 意気揚々とリビングに戻っていく私たちを、津田さんは呆れながら見送りました。




誰がタカトシの部屋で寝る事になるのか……

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