偶然の革命
「………一体どういうことかな?」
「それは此方の台詞ですよ、雲雀恭弥…」
雲雀恭弥と六道骸、部屋に入るなり睨み合う2人の男達に、沢田綱吉はやはりこうなるかと内心溜め息を吐きたくなった。
少しずつ殺気が部屋に充満する中で、綱吉は殺し合いになったら、巻き込まれるだろうなーと他人事の様なことを考える。
「……いい加減に、緊急で呼び出した理由を説明してくれるかな?沢田綱吉…じゃないと、君から噛み殺すよ。」
「そうですね。いい加減にそのマヌケ面を引き締めて、本題に入ってほしいものです。」
綱吉は、相変わらず変なところで仲が良いなとも思ったが、流石に口に出したりはしない。
綱吉が、彼等にとって不愉快なことを考えていることを察知されたのか、眼力が増した気がしたので、綱吉は咳払いをして本題を切り出した。
「……門外顧問機関のダミー会社系列からの情報で、『死ぬ気の炎』の表社会への流出が確認されました。」
綱吉の言葉への反応はわずかな驚きと疑いの籠った視線だった。
「…裏の流出元は何処だい?」
「不明です。」
「組織的な行為の可能性は?」
「今のところ可能性は無いそうだ。」
綱吉は2人の質問にいくつか答える。
殺気は消えていて、その場には事の重大さを理解しているからこその沈黙があった。
「バミューダやマーモンからの情報では、裏社会で怪しい動きはなかったそうだ。」
「
「僕らを此処に呼んだのは、その事を伝えて調査を頼みたかったという所かな?事が事だし、並盛の風紀の乱れにつながりかねない。だから調査は勝手にするけど…それで良いかい?」
「はい、御願いします。雲雀さん。」
失礼するよと部屋を出ていく雲雀と、それに続こうとする骸を綱吉は引き留める。
「なんですか?沢田綱吉、まだ何か。」
「骸、お前には潜入を頼みたいんだ。」
「…ほう、炎の秘密を知ったものの暗殺でしょうか?貴方も随分と外道になったものだ。くされマフィアに近づいてきましたね。」
クフフと笑い出す骸に、綱吉は口の端しをひきつらせて机を叩いた。
「潜入だって言ってるだろ!このフルーツ!」
「……随分クロームと仲が良くなり、調子にのっているようですね沢田綱吉。」
槍を構え出す骸に、綱吉もまたリングを着けた右手を前に向けた。
「それで、潜入先は何処なんです?」
「九鬼だ。」
「なるほど。僕に頼むだけあって、それなりのターゲットではあるようですね。」
フムと顎に手を当て考えるような仕草で、骸は綱吉に視線を向ける。
その視線に綱吉は、お前の考えている通りだ。と言うように視線を返した。
「九鬼に既に情報が漏れているとは、かの財閥も中々に手が早い。」
「問題は最初に情報が漏れた表の企業が、倒産まで数ヶ月以内と思われていた企業だったことだ。」
「なるほど。内実がその通りだった企業が、偶々手に入れた宝の在処を安売りしてしまったと……」
「それだけなら、情報の拡散は狭く済んだかも知れない。だが、情報を売ったのはヤミ金の方だった。」
「……情報の価値を理解できないからこそ、余計に情報が拡散した。さらに、倒産間近の企業は完全に潰れてしまったと……愚かですね。」
企業もヤミ金も…とは口には出さずに骸は溜め息を吐いた。綱吉としては、追い詰められていた企業に同情しなくもないが、もう無くなってしまったものについて深く考えても仕方がない。
「…クロームも表から潜入、いや入社して貰おうと思ってる。」
「僕だけで充分ですが、そもそもクロームを選んだのは何故ですか?」
不満がアリアリと感じられる骸の表情に、綱吉は言い訳を考えていた。
単純にクロームを骸の補佐につけるだけのつもりは端からなく、クロームの素直な面が九鬼のトップとの穏便な接触をすることに役立つだろうとの判断だった。
「優秀だし、九鬼は表の荒事に慣れている人材も多い、クロームなら色々な面で重宝される。」
「…クローム自身の戦士として実力はともかく、貴方の考えそうな事ですね。」
全く甘いと、心底呆れたような表情をする果実に、わずかな苛立ちを覚えながら、綱吉はクロームへの連絡を行った。
「来週から日本に飛んでくれ。別行動を取るかの判断は任せる。」
「クフフ…分かりました。報酬に期待させて貰いますよ。では、失礼…」
クフフ…と最後まで笑い声を残して、ドアも開けずに霧となって去って行った骸に……
「普通に帰れよ…」
思わず呟いた綱吉の声は、部屋の中に消えていった。
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「……非常に困りましたね。」
「…これどうすんだ?あずみ?」
「どうすっかな。李、ステイシー、アタシはアイツが嘘を吐いてるように見えなかったんだが、お前らはどうだった?」
「…特に怪しい所はありませんでした。」
「李に同感だな。演技なら相当だ…」
「だよな……はぁ…」
忍足あずみ、
それは、今回の入隊者の面接内容についてだった。
「クローム・髑髏、女、22歳。筆記試験、身体能力テスト、総合1位。問題は……」
「
「ああ…」
「あのボンゴレだってのが本当なら、相当クレイジーだぜ?」
イタリアンマフィア ボンゴレファミリー
裏に関わった期間が長い者ほど、その名を聞けばそれなりの反応を示す巨大マフィア。
ヒュームやクラウディオ等の従者部隊の相談役連中は当然知っているだろう名前を口にしたのは、自分達と歳もあまり変わらない女だった。
「まぁ、だとしても面接内容は今日の会議で報告するしかないな。」
「ですね。」
「だな。」
内心に溜め息を我慢しながら、3人は会議室に向かって足を進めた。