転生したら、ロケット団の首領の娘でした。   作:とんぼがえり。

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多くの高評価、感想、お気に入り。ありがとうございます。
書く栄養にしています。
また誤字報告、大変助かっています。本当に感謝するばかりです。

昨日は申し訳ありません。
なろう作品の「稲荷様は平穏に暮らしたい」を読んでいました。
面白かったです。100話分程度、一気読みしてました。


6.ニビジム③

「あ、あの、もう少し持っていた方が……良いかも……知れないです……」

 

 ニビジムの予選リーグを無事に突破した私は、ニビシティの郊外でイエローにピカチュウを返そうとしているところだった。

 逃したポケモンを再度、私が捕まえた形になっちゃったので、おや認定は私になっちゃっている。だから私が逃して、イエローに再び捕まえ直してもらおうっていう算段だった。

 しかし、それをイエローが拒否。理由は、

 

「も、もしかすると、明日のジムリーダーで、必要になっちゃうかも、知れ、ないから……」

 

 そのしどろもどろで取って付けたような理由に、私は溜息を零す。

 要は、家に帰りたくない、と彼女は言っているのだ。彼女を見つけて二日目、彼女の言を信じるに一週間程度、少なくとも家出して三日、四日程度は過ぎている。そうなると、まあ、あと一日くらいは良いかなって、そう思ってしまった。

 とりあえず今日もまたポケモンセンターにポケモンを預けて、ひと休み。

 

 イエローの髪を乾かしたり、梳かしたり、編んでみたりと遊んだ後に彼女を抱き枕代わりに就寝する。

 幼い頃はよく昼寝する時はペルシアンを抱いて寝ていたことを思い出す。

 明日のバトル、イエローのピカチュウを使うつもりはない。だって、それは私達で勝ったとは言えないからだ。

 

 

 レッド、グリーン、ブルー、パープル。ジムリーダーへの挑戦権を得た四人がニビジムに集っていた。

 その観客席にイエローも居る。イエローはパープルが誘った。ポケモンセンターから出る時は渋ったが、それが知り合いに知られたくない為だと察したパープルが彼女にキャップ帽子を被せた。ついでに衣服も買い込んで、これで変装もバッチリ! とパープルは満足げにパンパンと手を打ち鳴らす。黒のインナーに赤と白のジャケット、青色の短パンを履いたイエローの姿はボーイッシュな女の子だ。可愛らしいポニーテイルが少し気になったので、帽子の中に丸めて詰め込み、これで何処からどう見ても男の子になった。可愛い男の子、女装をしても違和感ない感じだ。何を云っているのか、パープルにも分からない。

 支払いに、パープルは御父様から借りたクレジットカードを使った。

 

 あんまり無駄遣いするつもりはないけども、必要だと判断した時は躊躇しない。

 長年の豪邸暮らしで、この辺りの金銭感覚は緩んでいる。御父様が結構な金持ちで数百万程度なら懐も痛まないし、金目当てだとしても頼ってくれる事に喜びを感じる御父様なので、使うかどうかはパープルの心持ちひとつだった。ちなみに娘側からの提案で、月々の限度額が設定されている。最初、サカキが渡そうとした黒色のクレジットカードを見せた時、ヒュッ、とパープルは息を漏らした後、触れるのも嫌だといった様子で断固拒否した。それでも月の限度額は百万円なので、色々とぶっ飛んでいる。

 そういう事情もあって、イエローは今、レッド、グリーン、ブルーとは目を合わせないように観客席に座っている。

 

 待ち構えていたタケシが、四人に向かって予選リーグ戦での健闘を讃えた後、そのままバトルに移行する。

 順番はブルー、レッド、グリーン、パープル。予選リーグ戦で見た実力が低い順。今日のバトルもネットでの配信が行われており、トキワシティにある屋敷では、サカキと四幹部がパソコンの前でスタンバイしていた。

 さておき、レッド、グリーン、パープルが控え席に戻り、ブルーだけがフィールドに残される。

 

 タケシとブルーは、もう一度、挨拶を交わした後にバトルを開始した。

 使うポケモンは、お互いに二匹ずつ。タケシの手持ちはイシツブテとイワーク、ブルーの手持ちはロコンとフシギダネ。二人のバトルはブルーの粘り勝ちとなった。タケシの指導を交えた戦法と助言、ブルーは導かれるように奮闘し、最後はフシギダネとイワークの衝突の末、フシギダネが予め仕込んでいた()()()()()()()が功を奏して、あと一歩を掴み取った。

 

 続いて、タケシ対レッドのバトル。

 タケシのポケモンは先程と変わらず、イシツブテとイワーク。対するレッドの手持ちはイーブイとヒトカゲとピカチュウというタイプ的に不利な構成だった。しかしレッドは機転を利かせた攻撃でタケシを攻め立て、二匹目のイワークとのバトルは()()()()()()で真正面から打ち倒す。

 

 三人目はグリーン、彼の手持ちはゼニガメ、ポッポ。控えにコラッタ。

 ゼニガメでイシツブテを圧倒するグリーンを見たタケシは、此処で二匹目の手持ちを入れ替える。繰り出したのはオムナイトであり、見慣れないポケモンにグリーンは警戒心を高めた。太古の昔に存在したと云われるポケモンの一匹。最近になって化石から復元する装置の開発をしたことは知っていたけど、実際に動いているところを目にするのは初めてだ。

 タケシは、育成中のポケモンだと前置きした後で「タイプ相性だけで突破されるとジムの意味がないからな」と、本来、試験用のポケモンではない為、グリーンの手持ちを一匹増やしても良いとした上でバトルを再開する。

 

 グリーンは苦しめられた。

 ポッポで時間を稼ごうとした時は()()()()()()()で打ち落とされて、コラッタ相手には()()()()()でジワリジワリと締め落とされる。ゼニガメを出した後も、()()()で的確に攻撃を防がれて、苦戦を強いられる。それでも最後に勝ったのはグリーンだ。彼は周りが岩石地帯であることを利用し、岩石が積み重なっている場所の地面を()()()()()()で緩くした後、()()()()()で岩石を崩した。それに巻き込まれたオムナイトは()()()()()()も耐え切れず、ほとんど瀕死状態で倒れていたところをゼニガメの()()()()()でとどめを刺される。

 タケシは地形を利用したグリーンの作戦を褒め称えて、グレーバッジを授与した。他二人もバトル後にバッジを受け取っている。

 

 最後の一人、パープルがフィールドに出て挨拶を交わす時、タケシは彼女に歩み寄った。

 そして、バトル前だと云うのに彼は彼女にグレーバッジを差し出したのである。

 

「君はもうグレーバッジを受け取るに相応しい能力を持っている。だから、ここから先はエキシビジョン戦だと思って欲しい」

 

 そう前置きした上で、彼が出したポケモンはイワーク。

 しかし、先程まで見たイワークとは別次元の存在感。ひと目見ただけで分かる、その力量。その威圧感。有無を云わせない緊張感。あまりにも、この場にそぐわないポケモンに、思わず、パープルはタケシを見た。

 タケシは笑みを浮かべたまま答える。

 

「ジムリーダーの本気が、どれだけ強いのか君も興味あるだろう?」

 

 ブルーは、二人のやりとりに困惑した。

 グリーンは舌打ちを零し、パープルの底を測る為に意識を集中する。

 レッドは頷いた後、二人のバトルを注視する。

 おじさんは付箋だらけの手帳を開き、ボールペンを構えた。

 

 パープルは不敵に笑って、モンスターボールを翳す。

 

「ええ、興味が尽きませんわ!」

「君に与えられるものがないとなってはジムの意味がないからな。胸を借りるつもりで来ると良い!」

 

 パープルがモンスターボールを投げる。

 出したのはスピアー。様子を見るだなんて崇高な真似はしない。

 出し惜しみはなしだ、と最初から全力全開で突っ走る。

 

「ニビジムのジムリーダーの実力、骨の髄まで味わせて頂きますわッ!!」

 

 何時ものポーズと共にニビジムに高笑いが響いた。

 

 

 鉄骨で入り組んだ天井、吊り下げられた幾つもの照明がフィールドを余すことなく照らしつける。

 岩石地帯をモチーフにしたフィールドには、障害物として大小様々の岩が設置されており、地面は乾いた土で構成されている。

 

「それでは行くぞ!」

 

 しかし、目の前のイワークは、そんなものは関係なしと蹂躙する。

 その巨体を余すことなく使った錐揉み回転による()()()()()、幸いにも溜めは大きかった。その予兆を予見して、早めの回避を命じた次の瞬間、全てを削る勢いで()()()()()をぶちかましてきたのだ。

 その迫力、その風圧、立ち上る砂煙に、ただただ圧倒される。

 

 私、パープルは目を見開いて、その鍛え上げられたイワークを見つめた。

 そして、笑みを浮かべる。やってやる。やってやれと言われたなら、やってやらない道理はない。

 スピアーにハンドシグナルで指示を送った。

 

 あの巨体でスピアーを捉えるのは難しいはず、兎に角、どく状態にすれば──そう思って、イワークの懐に飛び込ませた。

 隙はある。むしろ、大きいくらいだ。錐揉み回転の()()()()()は攻防一体の特殊技ではあったが、放つ前には溜めがあり、放った後にも隙がある。

 だから、ヒットアンドアウェイで繰り返し、攻撃を続けることもできるはずだ。

 

 そう考えた、その考えが甘かった。

 

「イワーク、()()()()()!」

 

 イワークはその巨体を器用に巻いて、蜷局(とぐろ)となり、懐に入ったスピアーを締め上げようとした。

 

「そこから逃げて! 早く!!」

 

 咄嗟に距離を取るように指示すれば、退き際の時にイワークは口を大きく開いて()()()()()()()を放ってくる。

 それもまた声で方向を指示して回避させたが、しかし僅かに掠った。掠っただけで、スピアーはふらついた。その隙を突いて、イワークが巨体を大きく横に振り被った。「次、来るッ!」と声を荒げる。イワークの尻尾がスピアーを()()()()()ようとしたが、間一髪、逃れることはできた。

 ほっと息を吐いたのも束の間、舞い上がった砂煙が、一向に止む気配がない。

 

 ──いや、これは!

 

「気付いたか? もう遅い!」

 

 激しく吹き荒れる砂嵐、この時点でもう手遅れだった。

 

()()()()()だ!」

 

 まるで竜巻のように荒れ狂う砂塵の中、スピアーは為す術なく体力を削られていった。

 イワークが()()()()()を繰り出しながら尻尾を黒く固めているのを見て、私はスピアーの降参を告げる。イワークが次に備えていたのは()()()()()()()。突破口があるとすれば、あの砂嵐を突き破って突破する事だが、それができる力量が今のスピアーにはなかった。

 負けの決まった以上、必要以上に痛めつけることはない。

 

 砂嵐が止んで、ボロボロになったスピアーをボールに戻す。

 これ以後、スピアーは瀕死になったものとして扱う。

 頬に伝う汗を拭い取った。あまりにも違う実力に身震いする。

 でも、一矢は報いてやると顔を上げた。

 

「次、行きますわ!」

「まだ心は保っているようだな! 来い!」

 

 次に繰り出したのはオニドリル。

 何処まで出来るか分からないけど、やれるところまではやってやる!

 

 

 今は廃墟化した研究所、地面にはヒビ割れた写真立て。

 写真には、まだ健在だった頃の研究所の様子。白衣を着た研究員の中に老人が一人。その首から下げた職員カードには、フジとある。その背後にあるホワイトボードには、単語の羅列が書き連ねてあった。

 太古のポケモン、化石の復元。月の石。ゆびをふる、月の神秘。全ての技を扱える。

 ほぼ同時刻に起きた悲劇の物語は、今はまだ語るべき時ではない。




ランキングの順位も落ち着いてきたので、徐々に投稿ペースが落ちていくと思います。
気付けば、週間2位。良い夢を見せて貰いました。
分不相応かも知れませんが、本作を読んでくれる皆様方の期待を裏切らないように緩く頑張っていきたいと思います。

それはさておき、モチベになりますので、お気に入りと感想、評価をお願いします。

▼パープル
オニドリル♂:Lv.29
スピアー♀:Lv.30
サイホーン♂:Lv.26
ピカチュウ♂:Lv.22

▼レッド
イーブイ♀:Lv.12
ヒトカゲ♂:Lv.14
ピカチュウ♂:Lv.9

◆グリーン
ポッポ♂:Lv.15
ゼニガメ♂:Lv.14
コラッタ♂:Lv.10

▼ブルー
ロコン♀:Lv.13
フシギダネ♂:Lv.12

▼タケシ
イワーク♂:Lv.57:たいあたり

※レベルは目安
※記載のある技は、通常の効果以上に鍛え上げた得意技。

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