転生したら、ロケット団の首領の娘でした。 作:とんぼがえり。
多くの高評価、感想、お気に入りを入れてくださった皆様のおかげです。
書く栄養になりました。
屋敷の庭、晴天。四幹部が見守る中、対峙するのは御父様。
御父様の傍に立つのはペルシアン。目を細めて、悠々と私を見据える。
これは試験だ、私が旅に出られるかどうかを決める分水嶺。
気を引き締め直して、御父様と対峙する。
「パープル、何時でも良い。どこからでも掛かって来なさい」
その余裕がある言葉に、ゆっくりとモンスターボールを構える。
行け、とか。ポケモンの名前を呼んだり、とか。そんな事はしない、する必要もない。
振り被らず、手首のスナップを利かせてボールを投げる。
本番重視のバトルに余計な言葉は必要なく、入念な戦術と必要最低限の指示があれば良い。
モンスターボールが、まだ開き切る前に飛び出すくちばしポケモン。
オニドリルが、その自慢の嘴で相手を貫かんとペルシアンに目掛けて一直線に飛来する。指示をせずともオニドリルから繰り出される技は
不意打ちを上手く対処されてしまった事に舌打ちする、同時に笑みが零れる。
「じめんタイプのスペシャリストを名乗っている以上、ひこうタイプの対策を怠る事はせんよ」
余裕たっぷりの渋い笑みを浮かべるロケット団首領の姿を見て、やっぱり御父様って格好いい! と思わず目を輝かせてしまった。
距離が空いた。よし、今だ! と相手に次に出す技を知られる事も構わずに声を出した。
「もう一度、
ストン、と華麗に着地するペルシアンのふかふかな横っ腹に鋭い嘴を突き立てる。
だが、ペルシアンは長い胴体を捩り、余裕を以て回避する。
その擦れ違い様、至近距離で
まるで黒板を引っ搔いたような音に意識がくらりとくる。
そのバトルから気が逸れた隙に、ペルシアンは鋭い爪でオニドリルの身体を
体勢を立て直す為に、距離を取るように指示を送る。
私の言葉に反応したオニドリルが飛び退こうとした瞬間、その胴体にペルシアンの
とはいえ威力は低い。
満身創痍ながら、なんとか距離を取ることはできた。
ふらふらと空を飛ぶオニドリル。ペルシアンは
「ペルシアン、とどめだ」
その言葉の後、ペルシアンの身体がぱちぱちと静電気が帯びる。
次の技は、恐らく
もうポケモンを変えている猶予はない、どうする? どうする?
「……オニドリル、
せめてもの最後っぺ。
オニドリルが睨んだすぐ後に
放電が終わって、黒焦げになって倒れる私の相棒。
やはり御父様のペルシアンは段違いに強い。
「よくやってくれたわ」
私は労いの言葉を掛けてからボールに戻す。
此処で一度、息を入れる。
やっぱり正面からでは御父様には勝てない、それは分かっていたつもりだ。しかし実際に戦ってみると、その差が絶望的なまでに開いているってことを痛感する。勝てるかな、勝つのは難しそうだ。この絶対不利の状況において、私はウキウキとドキドキで堪らない。
次はどうしようかな? それを考えるのが楽しくって仕方なかった。
よし! と気を取り直し、交換でサイホーンを出す。
「御父様、行きます!」
サイホーンにハンドシグナルを送る。
伝えた技は
二歩、三歩とよろめくペルシアンを見て、サイホーンとスピアーを交換する。
「
ハンドシグナルで親指と人差し指、中指を同時に立てる。ここで仕留める。と、ありったけの手数で猛攻を仕掛ける。
ペルシアンは後ろ足で地面を踏み締めた後、退かぬ意志、鋭い眼光を見せた後に
猛攻の半分以上が、ペルシアンの爪捌きによって弾かれた。
しかし、此処で退くとまた、ペルシアンは必ず追撃を仕掛けてくる。
主導権を取れている今、ここは畳みかける一手だ!
「
連続で繰り出し続ける手数の多さに、ペルシアンの表情に苦悶の色が浮かび上がる。
これだけでは倒せないことは分かっている。耐え切れず、大きく後ろに跳躍して逃れるペルシアン。追撃はせず、スピアーには次の攻防の為に
ふんす、ふんす、と意気込むスピアー。
手数だけでは勝てない、かといってサイホーンだけで倒し切れるとも思ってない。
せめて、毒の状態異常くらいは与えておきたい!
「強くなったな、パープル……だが!」
と御父様がペルシアンに何かの指示を出した。
何が来るのか、身構える。しかしペルシアンはそっぽ向いた後、ゆっくりと前のめりに倒れ込んだ。
……どゆこと~?
「どうした?」
御父様の言葉に反応せず、ペルシアンは面倒臭そうに大きく欠伸をする。
まるで試合を放棄するかのように。毒の影響もあったのか、ちょっと気怠そうだった。
困惑する御父様、私もどうすれば良いのか分からない。
四幹部も戸惑ってしまっている。
「ええっと……私の勝ちで良いってこと?」
ペルシアンはニャアってひと鳴きした後、のそのそとその場に体を丸めて眠り出す。
まるで、これ以上は必要ない、とでも言うかのように。なんとも言えない微妙な空気が、辺りを包み込んだ。
なんか釈然としない。そんな事を思った瞬間、ペルシアンが鋭い目つきで私を睨み付けた。
えっ、やんの? やってもいいけど? みたいな。
「……や、やったあ! 勝ったあ! パープルちゃん大勝利~!」
うん、やっぱりさ!
人の善意を無碍にしちゃいけないよね!
ポケモンだけど!
◆
屋敷の執務室にて一人、月夜を肴にグラスを傾ける。
娘を引き取ってからは自然と吸わなくなった葉巻が、今では少し恋しくなる。
引き取ったのは今から八年前、母親が死んだ時、その遺言に従って私のところに連絡が来た。
あの日の事は今でも忘れない。
親は犯罪組織の首領、その身元を隠す意味でも娘を適当な孤児院に入れる予定もあった。
いや、今になって思えば、あの時は手間を惜しんだだけに過ぎない。
結局、娘を手元に残した最大の理由は、手間が掛からなかった為だ。
必要以上に泣かない。
そしてポケモンに好かれる素質を娘は持っていた。
遊び相手にも困らないので、我儘をいう機会も少なかったように思える。
もしかしたら遠慮をしていたのかも知れない。
そうやって昔のことを思い返していると、
ニャア、とペルシアンが器用に扉を開けて、この執務室に入って来た。
この部屋には入らないように躾けていたはずだが……ペルシアンは何かを訴えてくることもなければ、何かをすることもなく、部屋に備えたソファの上で眠り始めた。肘掛けのところに顎を乗せて、なんともまあだらしない姿を晒す。
「……パープルは、大丈夫だろうか?」
なんとなしに零してしまった言葉に、ニャア、とペルシアンは面倒くさそうに鳴いた。
ペルシアンとの付き合いも、随分と長くなる。
昔、全国を旅をして回っていた時からの手持ちだった。
序章は此処まで、此処からゲーム原作に合流します。
最初、技は最新のもので統一しようと思いましたが、
あまりにも違和感が強すぎる為、GBA時代のもので統一しています。
今後とも、よろしくお願いします。
たぶん、ペルシアンは技を覚えてから進化したんだと思います。
お気に入りと感想、評価をお願いします。
▼パープル
オニドリル♂:Lv.27
スピアー♀:Lv.29
サイホーン♂:Lv.25
ペルシアン♂:Lv.51
※レベルは目安。