転生したら、ロケット団の首領の娘でした。   作:とんぼがえり。

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幕間.ツンツン頭

 俺様は、幼い頃から誰よりもポケモンを扱うのが上手かった。

 初めて手に入れたポケモンはポッポ。怪我をしていた所を手当してやったら懐いてきやがったので、この俺様が直々に躾けて鍛え上げたポケモンだ。

 此奴と俺は以心伝心、視線を交わすだけで俺の手となり、足となって戦場を飛び回る。

 

 おかげで地元じゃ最強よ、マサラタウンには俺に勝てる奴なんて誰も居なかった。

 

 だからお爺ちゃんのポケモン図鑑を完成させるのだって俺様の役目。とはいえだ、俺様だってカントー地方の隅々まで足を運べる訳じゃない。

 あくまでも旅の主目的はジムチャレンジ、その先のセキエイ高原で開催されるポケモンリーグ。そしてカントーチャンピオン、最終目標は全国統一チャンピオンだ。ポケモンの育成にジムチャレンジ、やるべきことは多い。俺様だけでは取りこぼしてしまう事もあるかも知れない。

 そこで役に立つのがレッドとブルー、あの二人には俺の取りこぼしを拾ってもらう役目がある。

 

 お爺ちゃんからポケモンを貰える時も、俺様は先に選ぶ権利を二人に譲ったね。

 お爺ちゃんの研究、ひいては俺様の手伝いをやらせるのだ。それくらいの役得は譲ってやるさ、なんせ俺様には相棒のポッポが居る。

 レッドがヒトカゲ、ブルーがフシギダネを選んだ後、大人な俺様は悠々とゼニガメを手に取った。

 

 三匹の内、どいつだって構わなかった。

 何故かって? どんなポケモンであったとしても、この俺様が世界一のポケモンになるまで鍛えてやれば良いだけの話だ。

 事のついでにレッドには、ポケモンバトルについてレクチャーもしてやった。

 

 当然、俺様の勝ちだ。

 

 あいつの悔しがる顔が今でも忘れられねえぜ!

 悔しかったら早く強くなるんだな! じゃないと辛い思いをするのはポケモンの方なんだからよ!

 まったく、俺様の手持ちになれたポケモンは幸運だぜ!

 

 マサラタウンを出た後、ゼニガメを鍛えながらトキワシティを目指して歩いた。

 

 誰よりも早くにトキワシティに着いた俺様は、暫くポケモンセンターを拠点に近場を探索することに決めた。

 近場のポケモンの生態を調べるのは勿論、旅慣れしていない二人がちゃんとトキワシティまで来られるか確認する必要があった為だ。

 何処かで野垂れ死にになっても後味が悪いからな!

 それに旅も碌にできないようじゃ、お爺ちゃんの研究の手伝いもさせられねえ!

 この先にあるトキワの森は危険という話も聞いている。ニビシティまでは面倒を見てやるさ、こういう余裕を見せられるのは強者の特権。そして俺様はマサラタウンの誰よりも強い! 弱者に手を差し伸べるのは当然ってもんよ!

 待っている間にトキワジムのジムリーダーも帰って来るかも知れないしな!

 

 そんなわけで、レッドとブルーがトキワシティに来るまでの間に22番道路の調査を進める事にした。

 どんなポケモンが何処に住んでいるのか。それだけが分かるだけでも良いって言っていたので、新しいポケモンを見つける度にメモ帳に記録する。端末で写真を撮り、そのポケモンと出会う頻度も記載した。

 そんな時だ、草叢の向こう側でポケモンバトルをしているのを見た。

 

 金髪の少女がペルシアンと戦っているところだった。

 見るにペルシアンは相当、強い。金髪の少女が押されているところを見て、これはあぶねえ、と思って飛び出してペルシアンと対峙する。

 まあ、結果的に余計なお節介だったけどな。

 ペルシアンは少女の親父のポケモンで、ポケモンバトルの練習をしていた所なんだってよ。

 まったく、ややこしいぜ。

 

「ポケモントレーナーなら目と目が合ったら勝負の合図だぜ」

 

 それはさておき、少女にポケモンバトルを挑んだ。

 この辺りは野良ポケモンが多い。少女一人で歩かせるには心配だったし、実力の程を見ておきたかったってのもある。あまりにも情けないようであれば、俺が家まで送ってやれば良いし、ポケモンバトルについてレクチャーしてやっても良い。

 そんな気持ちで勝負を挑んだんだ。

 

「なん……だって……?」

 

 しかし金髪の少女に対して、俺は手も足も出なかった。

 使ったポケモンはスピアー一匹。ゼニガメは一撃で倒されて、ポッポは成す術もなく圧倒された。トキワシティに来るまでの道中で新しく捕まえていたコラッタは出すまでもない。ただ蹂躙されるだけの結果になるのは目に見えていた。

 完膚なきまでの敗北に、ただただ目の前が真っ暗になる想いだった。

 

「これがポケモンバトル、初めての感覚ね」

 

 ドキドキしたわ。と告げる少女に最早、愕然とする他になかった。

 今まで、俺様は自分が中心で世界が回っていると思っていた。俺様は誰よりも天才で強いと思っていた。

 気づいた時には少女は居なくなっていて、俺様は一人、立ち尽くす。

 

 このままじゃ駄目だと思った。

 今までのやり方では、アイツには勝てない。本物の天才を目の当たりにして、自分が特別じゃないことを思い知った。

 それでも、負けたままで居ることは俺様のプライドが許さない。

 

 俺様には、俺を信じて付き従ってくれるポッポとゼニガメが居る。

 

 此処で挫けている場合じゃない、立ち止まっている場合でもない。

 他の奴に気を使っている余裕なんてない。

 俺は、ポッポとゼニガメの為にも強くならなきゃいけない。

 

 草叢の搔き分ける音がしたので、振り返れば、レッドの姿があった。

 とりあえず、安堵する。ここまで無事に一人で来られたようだ。

 いつもの俺なら、小粋なジョークのひとつも飛ばす処だが、生憎、今はその余裕がない。

 

 レッドを押し退けて、次を目指した。

 あいつは、絶対に俺の前に立ちはだかる敵になる。

 強く、ならなきゃ、いけなかった。




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◆グリーン
ポッポ♂:Lv.12
ゼニガメ♂:Lv.9
コラッタ♂:Lv.2

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