転生したら、ロケット団の首領の娘でした。 作:とんぼがえり。
は、はえ~。ここまで来ると嬉しいよりも驚きの方が強いです。
高評価、感想、お気に入り。ありがとうございます。
書く栄養にしています。
少し前話に手を加えました。
変更内容は、女の子の名前の明言を避けるようになっています。
笑い声を上げるのは相手に余裕を見せつける為のもの、そういう意味があるとラムダに教えて貰ったことがある。
だから私はとりポケモンに連れ去られそうになっている女の子を叩き落した後、左手を腰に当て、指先までピンと立てた右手を頬の横に添えることで「オーッホッホッホッホッ!!」と笑ってみせる。様にはなっている、とランスお墨付きの高笑いだ。
これには挑発的な意味合いが込められている。敵意を私に向けさせる為、地面に倒れたままの女の子から意識を逸らさせる為のものだ。
「残念だったわね、この私が来たからには好きにさせないわ!」
ピジョンに向けて、片手を突き出す。
スピアーとオニドリルが私を守るように前に出して、その隙にサイホーンを女の子の側まで移動させて守らせる。
ポケモンバトルは基本、タイマンだけど、この人命が掛かった状態で躊躇はしていられない。
そもそも野生のポケモン相手にルールを守る義理もなかった。
「…………」
「…………」
暫し、睨み合った後、ピジョンは私達に背を向けて飛び去った。
追いかけるつもりはない。強そうなポケモンではあったが、私にはオニドリルが居る。
そして私のオニドリルは、世界一なのだ。何故なら私のポケモンだから!
「そんなことよりも……!」
地面に倒れている女の子の手当をしなくては……!
駆け寄ろうとして、ガサリ、と背後から音がした。
咄嗟に振り返る。スピアーが私を守るように構えを取った。
そこにはボロボロになったピカチュウが居て、瀕死といっても大差ない状態にある。
ピカチュウは身を引きずり、その視線の先は女の子を向いている。
手の針を突き付けるスピアーに気にも留めず、少しでも女の子の側に近付こうとするピカチュウを見た私は――――
「えいっ!」
――とりあえず、モンスターボールで捕まえた。
手当するにも、その方が都合が良いと思ったから、後で思うと女の子のポケモンだったかも知れない。
その意識が完全に抜けていた。
けど、モンスターボールで捕まえられるってことは、そういう事だ。
とりあえず女の子とピカチュウの手当を急がないといけない。
◆
瞼を開ける、目を醒ますことができた。
もう死んでしまったと思ったけど、しぶといようでまだ生きていた。
でも、もう、ダメかな。お腹が空いて、力が出ない……
ピカチュウが私の頬をペタペタと叩いているけど、体を動かす気力が湧かなかった。
何度でも言うけど、こんな私に付いてきてくれてありがとうね。
「ん~、ピカチュウ? どうしたの? ……って、あっ! 起きた!?」
ゆっさゆっさと体を揺すられる。
ピカチュウが助けを呼んできてくれたのか、どうなのか。
しっかりと目を開けると、女の人が私の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫? お腹は空いてるのかしら?」
知らない、お姉さんの顔が、そこにあった。
ぽけっとしていると、保存食しかないけどね、とお姉さんがクッキーを齧る。
頭の後ろに柔らかいものを感じる、膝枕をされているらしい。ピカチュウが、ポンポンと私の頭を叩いた。
どうやら、私は助かってしまったらしい。
そう思うと、くうっと、お腹が鳴った。
お姉さんは薄っすらと笑って、私にクッキーを手渡してくれた。
ゆっくりと体を起こして、クッキーを齧る。堅い食感、ほんのりとした甘み。ピカチュウを見ると、ピカチュウは少し開けた方を指で差した。
そこではサイホーンとオニドリル、スピアーがポケモンフードを食べていて、ちゃんと御飯を貰ったようで、ほっとする。
安心すると、ポロポロと涙が零れ出した。
手で涙を拭っても、止まらず、止められず、かといってクッキーを食べる口も止められない。
目と鼻から液体を垂れ流しながら、クッキーを咀嚼する。美味しかった、とっても美味しくて涙が止まらない。あの時は死んでもいいや、って思ったのに、薄情なもので、身体はこんなにも生きたがっている。お姉さんがクッキーから渡されたクッキーを頬張る。二枚、三枚と遠慮なく腹に詰め込んだ。
生きなきゃ、生きなきゃ、まだ死にたくない。まだ私は何もやってない。
「あ、ほら、落ち着いて! 食べていいから! そこにあるの全部食べていいから、もっとゆっくり! ほらっ、むせた!」
げほっ、ごほっ、と咳き込んだ。
それでもクッキーを詰め込もうとすれば、お姉さんが水筒を手渡してくれたから口に付けて一気に飲み干した。
落ち着いたのは、クッキーを一ダースも食べきった頃合い。
ごめんなさい、って謝ったら、お姉さんは苦笑しながらも許してくれた。
「それで貴女の名前はなんて言うのかしら?」
後ろめたさから、咄嗟に声が出せなかった。
横を見ると、ピカチュウの姿がある。
元気付けようとする仕草、その黄色い姿を見て私は口を開いた。
「……イ、イエローです」
レッド、グリーン、ブルー。イエロー。四つ目の色、その名を名乗った。
「ふうん、それで家は何処なのかしら? トキワシティ?」
「マ……あ、いえ……」
マサラタウン、と言いかけて、レッドお兄さん達の事を思い出す。そして、言い直す。
「ニ、ニビシティでひゅ……」
その日、私は嘘を吐いた。
「ふぅん? なら、こんな森とも、そろそろおさらばしないとね!」
お姉さんは指示を送って、オニドリルを空に飛ばして、森の枝葉を突き抜けさせた。
オニドリルが、ある方向を示しながら鳴いたのを見た後、お姉さんは満足げに頷き、私の身体をサイホーンの上に乗っける。
ピカチュウも私の膝上に乗っかった。
「その子ね~、間違えて私が捕まえちゃったのよ。でも貴女に凄く懐いているし……まあ、とりあえず私のポケモンとしてポケモンセンターまで連れて行くわ。その後に適当な場所で野に放つから後は好きにしなさい」
そう云うと、お姉さんはゆるゆると歩を進める。
珍しいポケモンや植物を見つける度に足を止めて、嬉しそうに笑って観察するので、なんというか生きているのが楽しい人なんだと思った。優しくて、格好良くて、誰かの為に手を差し伸べられる。まるでお兄ちゃん達みたいに素敵な人だった。
私も、こういう風になりたいな。って、そう思った。
◆
無事にトキワの森を抜けた私達は、まずニビシティのポケモンセンターに足を運んだ。
ポケモン達の疲労を取る為に宿泊施設を予約して、その部屋に荷物を置いた。部屋にはイエローが居る、トキワの森で拾った女の子。一度、家に帰った方が良いと思うけど、どうにも、やんごとなき事情があるようで家には帰り難そうだった。ピカチュウが治るまで、と、そう言って、此処までやって来てしまったのだ。
まあ、その気持ちは分からないでもない。でも、私も八歳の子を連れ歩く訳にはいかなかった。
どうしたものか、ニビジムの対策だって考えなきゃいけない。
オニドリルとスピアー、サイホーン。いわタイプ相手には、不利な編成だよね。と頭を悩ませる。火力を出すならサイホーン、でも相手だってじめんタイプの技を使ってくる可能性が高い。
まあ、この程度を突破できないようじゃポケモンリーグなんて夢のまた夢なんだけど。
とりあえず、まあ、先ずはイエローをシャワーに入れないとね。
身体の汚れとかはこの数日で、ちょっとは慣れたけど、臭いがきついのは女性として駄目だ。
私の身体を洗うついでに、イエローの身体もしっかりとしてあげないといけない。
短いけどボリュームのある茶髪のポニーテイルが可愛らしかった。
髪をまとめた方が動きやすそうよね、私も結んじゃおうかしら?
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▼パープル
オニドリル♂:Lv.28
スピアー♀:Lv.30
サイホーン♂:Lv.25
ピカチュウ♂:Lv.22
▼イエロー
※レベルは目安。