【未完】人間界に召喚されたったwwwwwww   作:烏何故なくの

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リラの冒険 (4)

ジョージの目に、ゆっくりと攻撃を始める肉天使の姿が見えた。

瓦礫の山に手を突っ込み家庭用アンテナを槍投げの選手のように構える。

 

(逃げなければっ……!)

 

死の気配。

今までにない程に濃密なそれが、ジョージに絡みつく。

思考を鈍らせ、自身の足が拘束されているのにも関わらず逃げの手を打たせようとする。

 

逃げなければ。

逃げなければ。

逃げなければ死んでしまう。

 

 

 

そう思い、後ろを振り返った所で。

ジョージは地面に倒れ伏す、アガリーの姿を見つけた。

 

(———ダメだ。俺が逃げたら、アガリーさんに当たるかもしれない)

 

さらに、ジョージの視界がゆっくりになった。

思考が研がれて研がれて鋭利になる。

「観察と洞察を怠るな」。脳裏にアガリーの言葉がよぎった。

 

(…攻撃のタイミングは、分かる)

 

肉天使は、攻撃の際に3秒かかる。

何度も攻撃を食らった。その間、ジョージはアガリーの言葉通りに観察も洞察も怠らなかった。

 

(攻撃が狙うかも、半分勘だが予想は出来る)

 

最初に肉天使に会った時、馬を攻撃された。

さっきも頭や胸じゃなく、肩をやられた。

ジョージは肉天使に気づいていなかった。いくらでも殺せた。しかし今ジョージは生きている。

規則的な行動しか取れない奴らの欠点だろう。

手足をもいでからトドメを刺す、という生前の行動を繰り返すしかないのだ。

ジョージの左手が使い物にならなくなり動きを止めた今。狙ってくるのはおそらく心臓か胸。

 

1。

2。

3。

 

きっかり3秒経ってから、肉天使はアンテナをジョージに投げつけた。

風を噛みちぎりながらアンテナがジョージの心臓目掛けて疾走する。

 

 

(攻撃を受け止めるだけの盾も…ある!)

 

 

ジョージは全力の力で右足を引き上げた。

ジョージの足に引っ張られる形でアンディが地上に引っ張り出される。

そのまま足を高く上げアンテナの射線上に人モドキの肉体を置く。

一瞬の衝撃。

その後、驚愕の顔で固定されたアンディの顔からぬぅっとアンテナが生えた。

 

アンディの頭部を貫いてなお勢い止まらぬアンテナを、ジョージは右手で掴み取る。

手の皮が剥がれ血が吹き出すがアンテナはジョージの鼻先で確かに止まった。

 

「おおおおぉおおおおっっっっ!!!」

 

ジョージが吠えた。そして腕の力のみでアンテナを肉天使に投げ返す。

アンテナは、投げたジョージ自身が驚く程の速度で肉天使へと飛びかかる。

 

「くったばれぇっっ!!!」

 

ぞる。肉の裂ける音。そして、パシッというガラスが砕けたような音。

肉天使の腹に穴が開く。

ジョージの投げたアンテナはミサイルのように肉天使の腹を穿ち食い荒らしたのだ。

そしてそれは肉天使を突き破っても勢いを殺さず、肉天使が守護していた結界の核にも穴を開けていた。

 

ピシッ、パシ。瞬く間に異界を覆っていた透明なドームにヒビが入っていく。

次の瞬間、ドームは粉々に砕け、雪のように細かい結晶になって空中へ溶けていった。

 

 

■■

 

 

「あ、ああああぁあああ」

 

リラは目の前の地獄から目が離せなかった。

脳みそがぐちゃぐちゃになる。手足が冷えていく。

思い出の中でのみ自分に笑いかける母の顔が、人モドキの頭部にくっついていた。

 

目の前の人モドキが足を前へと踏み出す。

咄嗟に逃げようとして、初めてリラは自分の腰が抜けている事を理解した。

 

「り、らぁああああっ?」

「う、うぷ…」

 

リラは気分が悪くなった。

視界がぼやけ、何も考えられなくなる。

目の前の肉塊が、母の声を出している事実に吐き気が込み上げてきていた。

ポチを呼ぶ事もなく、リラはただただ棒立ちするしかなかった。

 

ポチに頼めば、一瞬で目の前の人モドキを倒す事が出来るだろう。

しかしリラには出来なかった。母親を攻撃する意思が持てなかった。

 

(母さんなら、いいかな…)

 

何となく、リラはそう思った。

母さんが私を殺そうとするなら、沢山迷惑をかけた母が私を殺そうとするなら。

なんとなく、仕方がないと思えた。

 

「ごめんねぇっ」

 

だから思ってもいない言葉が人モドキから飛び出した時、リラは思わず顔を上げた。

 

「ごめんねぇっ、からだがよわくってごめんねぇ」

 

そう言いながら人モドキはリラを締め上げる。

食欲を植え付けられた彼女らは、獲物を前にしてはそうする事しか出来ない。

 

(やめてよ………。そんな姿になってまで、私に謝るのやめてよ…………!)

生前、母の口から何度も聞いた言葉。

それを壊れたテレビのように繰り返す姿。

どうしようもない現実に憤った、嘗ての自分の感情が蘇る。

 

「かあさんげんきになるから、ら、ら、ら」

「…………」

「そしたらこうえんに、ばばら、バラ、見に行こうねぇ」

 

(そういえば、母さん、サンズリバーの花壇が好きだったっけ…)

母の口から飛び出した、前向きな言葉。

余命が残り少なく荒れていた母のイメージに邪魔をされ、記憶の底に沈んでいた母の趣味。

 

こんな言葉、母から聞いた覚えは無かった。

「モドキは生前の行動を再現するだけだ」と言っていたジェシカの言葉が思い出される。

 

(もしかして、母さんはずっとこうしたかったの…?)

 

自分と一緒にバラを見に行きたかったのだろうか。

元気になった体で、自分の足で立って自分を抱き上げたかったのだろうか。

そう思った瞬間、リラの中で色んな思いが湧き出た。

そしてその思いはリラの中で渦巻いていた恐怖や嫌悪と混じり合い、それらは怒りという矢印に引っ張られ、一つの方向を向く。

 

「ポチちゃん!!!!」

ありったけの力で雷の猟犬へと呼びかける。

空中に現れたポチは、何処か測るような目でリラを見た。

 

「お願いっ! 母さんをやっつけて!!!」

リラは叫んだ。目には怒りの火が燃えていた。

一刻も早く母さんを解放させてやりたい。母さんに私を殺させたくない。

こんな異界(ばしょ)を作った奴が許せない!!

猟犬はその思いに応えるように光を纏う。

 

その瞬間、ガラスの割れるような音が響いた。

リラが反射的に窓から外を見れば、異界を覆っていた半透明のドームが粉々に砕け散っている。

 

リラの体がガクンと落ち、尻を床に打ち付ける。

人モドキの腕が根本から吹き飛ばされたからだ。

 

狩りの魔神が、人モドキの後ろに立っていた。

3mはある巨体は部屋に高さに収まりきらず身を窮屈そうに縮めている。

 

ジェシカは腕を振る。

人モドキは前のめりに倒れ伏し、動かなくなった。

ジェシカはリラへ向き直り、右手を差し出す。

 

「リラ。……ほら、母さんだ」

そう言って差し出されたジェシカの手のひらには、蝋燭のような輝きを放つ光球が握られていた。

 

「母さん、って…」

「お前の母の魂だ」

 

光球は蝶のようにふらふらとした動きでドームの無くなった空へとゆっくり、ゆっくり飛び去っていく。

リラはそれをぼぉっと目で追いかけていた。

 

光球が見えなくなった後、リラは後ろを振り返る。

そこには穏やかな顔をして倒れ伏す母の顔があった。

もしポチに攻撃をしてもらっていたら所々消し炭になっているグロテスクな肉塊が出来上がっていただろう。

……自分の友人は気遣いも出来るらしい事を、リラは学んだ。

 

「…リラ。あそこを見ろ」

ジェシカが指を指した前には、何かの裂け目のような物が宙に浮かんでいる。

その裂け目からは青い空とコンクリートで出来た街が見えた。元の世界だ。

 

「あそこから帰れる。先に帰っていてくれ」

「…分かった」

 

リラは頷く。ジェシカの声には有無を言わせぬ迫力があった。

これから自分は邪魔になるという事が嫌でも察せられた。

 

「ジェシカ。勝ってね」

「おうよ」

 

一言だけで十分だった。

ジェシカの暴の恐ろしさを、リラはよく知っている。

 

「全部終わったら、バラ。見に行きたい」

「死亡フラグやめーや」

 

ジェシカの軽口に吹き出しながら、リラは窓から外に出て裂け目に向かって走った。

 

 

■□

 

 

163:1

なんか知らんけど結界が壊れた

復活したわ

 

164:名無しの悪魔

イッチほぼほほ役に立ってないの バ レ バ レ

 

165:名無しの悪魔

幼女ちゃん身を張って庇った所くらいしか褒める所がない

 

166:名無しの悪魔

復ッ 活ッ

イッチ復活ッッ

イッチ復活ッッ

イッチ復活ッッ

なおほぼイベント終わった模様

 

167:1

もうあらゆる制限がなくなったので 今から龍を全力でぶち殺す

オフ会、開催します

 

168:名無しの悪魔

!?!???

 

169:名無しの悪魔

オフ会……!? 

そっかこいつ上位悪魔やったわ 多重召喚術使えるんやな

 

170:名無しの悪魔

オフ会とか何百年ぶりだよ……たぎっちまうな…………

 

171:名無しの悪魔

そっか 異界には天使の目もない!

ハッスルしても問題ないのか!

 

172:名無しの悪魔

も り あ が っ て ま い り ま し た

 

173:名無しの悪魔

興奮しすぎて尻が暑い 排熱の為にパンツ脱いだ

 

174:名無しの悪魔

お尻蒸れ蒸れ兄貴正直好きだよ

 

175:名無しの悪魔

オデ……敵、コロス………………

 

176:名無しの悪魔

>>17

魔法陣のリンク貼っとく

 

177:名無しの悪魔

きたぁあぁあああぁああああ

 

178:名無しの悪魔

イクゾー!(でっでっでででで カーン

 

179:名無しの悪魔

サバトだ!

 

180:名無しの悪魔

有休取ってきた 遊ぶぞ〜

 

181:名無しの悪魔

有休取ってないけど仕事が嫌になったからそっち行くわ 暴れるぞ〜

 

182:名無しの悪魔

龍のサンプル集める為に仕事でそっちに行くわ めんどくせぇなぁ…

 

183:名無しの悪魔

暴力! 暴力! 暴力!

 

 

 

■■

 

 

ジェシカが唸る。

その度に魔力が飛び散り、風1つなかった異界に風が吹き出す。

 

ジェシカの巨体を極小の嵐が覆い始めた。

この前ジョージを廃ホテルに閉じ込めた時とは規模も風速も何もかもが違う。

それもその筈、この風は狩りの魔神を獲物の元へと連れて行く嵐の戦車なのだ。

 

ジェシカは足に力を込め、解放。

その体を弾丸に変えて真っ赤な空へと飛び出す。

 

ジェシカは悠々と空を泳いでいた龍の姿を視認すると、その側面に全力で体を叩きつけた。

 

「おおおおぉおおぉっっ!!!」

 

旋風が肉を刻み、龍の体を真っ赤な花火へと変える。

ドリルと化したジェシカはそのまま肉の塊を掘削し続け、ついに龍の巨体を貫いた。

龍は鳴き声一つ上げずにピクピクと痙攣した後、人間のような口をジェシカに向け、ガチガチと歯を鳴らす。

 

「何だ、威嚇のつもりか?」

 

拙い威嚇を、狩りの魔神は笑い飛ばす。

 

「威嚇とはな、こうやるのだ」

 

凄惨な程の獰猛な笑みを浮かべたジェシカの背中に、膨大な量のエネルギーが溢れた。

気圧されたように動きを止める龍の前で、ジェシカの背中から後光のように魔法陣が広がっていく。

 

「うくく」

「きひひ」

「うひゃひゃひゃ」

「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!」

「テーマパークに来たみたいだぜ。テンション上がるな〜」

「ぶっ殺すどすえ」

「お、オデ、肉、見たい!」

 

魔法陣から、異形の人型が溢れ出した。

緑の肌に尖った牙の男がいた。上裸で梟の頭を持つ男がいた。臓物をぶら下げた首が空に浮かんでいた。舞妓のような格好でエセ京都弁を話す女がドスを振り回していた。

龍が吐き出すのが人モドキなら、こちらは亜人の群勢と言った所か。

三者三様、纏まりのない混沌の軍勢がジェシカの背後から溢れ出す。

爪が、拳が、炎が、ドスが、殺意を持って龍の体をちぎり取っていく。

 

はるか昔、悪魔が人間界にまだ居た時代。

彼らはその力を持って災害のような祭り———祭り(オフ会)を開いていた。

嵐を纏い行進する異形の軍勢。

人間はこれらを百鬼夜行(ワイルドハント)と名付け恐れたのだ。

 

 

□□

 

 

「んん……っ」

身体中に響く痛みに急かされ、アガリーは目を覚ました。

 

(‥…アタシは、えっと。なんで…倒れて…? えーと、床、が…)

そこまで思い出して、アガリーは跳ね起きた。

未だ戦いの真っ最中、今動かなければ全てが終わってしまう。

そう思い傷ついた体を無理矢理持ちあげ、辺りを見回す。

 

アガリーの目に、見慣れない黄色が入ってきた。

 

「あ、起きましたか」

「………じ、ジョージさん?」

 

アガリーは声をかけられて漸く、目の前の黄色い物体がジョージだと認識した。

ジョージの体、服、髪には黄色い液体がべっとりとついており、遠目からだと人間かすら分からない。

 

「アガリーさん、安心して下さい。結界の核と肉天使は、俺が破壊しました」

 

ジョージの指を刺す方を見れば、家庭用アンテナで串刺しになっている結界の核に穴が空いた肉天使の姿が。

控えめに言って意味が分からなかった。

 

(え……? ち、超人ってこんなにヤバいんですか……?)

アガリーはジョージが“超人”と分類される特殊な人間である事を知っている。

人類の中で時折生まれる、異常な身体能力の保持者。人間界が人間の世界である理由。

そもそも、アガリーがジョージに接触したのは生の超人を観察する為であった。

 

だが、それはそれとして全身真っ黄色なのはどういう訳なのだろうか。

 

「え、あ、え…。それは良かったです……。それでそのジョージさん…? なんか、き、黄色いですよ…」

「…あ? なんだコレは…? 膿でも潰れた…訳じゃないよな…?」

 

(自分の事なのに分からないんです…?)

 

ますます意味が分からない。

とりあえず、人モドキ由来の異常で有ればジョージの体に有害である可能性が高い。

アガリーはジョージの体に近づき観察をする事にした。

よくよく見れば、黄色は傷口の近くについている。

まるで血液が流れ出る最中に黄色くなっていったのかの様に。

 

(血の色の変化……血の色の変化……? …か、覚醒始まってる———ッ!!)

 

「えーと、ええと、あの、あ、あ、アーッ!」

「ぶっ」

アガリーは地面に埋まっていたコンクリート片を引き抜き、ジョージをぶん殴った。

ジョージは突然の一撃に抵抗する事も出来ず、モロにコンクリート片を顔面にくらいぶっ倒れた。

ジョージが地面に倒れ伏すと、体についていた黄色の血は元の赤色に変わる。

 

「はぁーっ、はぁーっ、危なかった……」

 

この状況下でジョージの覚醒など、笑い話にもならない。

時折訪れる、超人の覚醒という現象。

それは天使達が人間界に居る理由であり、人間を助けるという名目で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()でもある。

あらゆる可能性を孕んだそれをこの場で目覚めさせる訳にはいかない。

最悪、龍より余程恐ろしい怪物が顕現する。

 

「ちょ、ケルピー? ジョージさんを頼んでいいですかね……」

 

自身の相棒である精霊馬を呼び出し、ジョージを背に乗せる。

幸いな事に、結界は既に崩れている。このまま帰還する事は出来るだろう。

何事もなければ、だが。

 

「おそうざざあざざいがやすいよぉおおおおおお」

「むしとりむしとりむしとり………」

 

2体の人モドキ達が、虫のように瓦礫の下から這い出てくる。

三桁に及ぶ人モドキが結界の核を守るように集まっていたのだ。

地面にカチ上げられシェイクされても生き残っていた幸運な個体がいてもおかしくはない。

 

「ここが正念場ですかね…」

アガリーが懐に手を突っ込み、人形を取り出そうとする。

 

 

その瞬間、2人の人モドキの首が同時にちぎれ飛んだ。

 

 

「ふぇぇえ…今度はなんなんです…?」

立て続けに起こる事態に、アガリーの口から泣き言が漏れる。

そんな彼女に、下手人である少女はサファイアの瞳を瞬かせながら話しかけた。

 

「大丈夫ッス…じゃない、大丈夫ですか? …もう安心ですよ。ウチらは正義の味方ですんで」

 

三日月のような笑みを浮かべながら手についた血を舐めるシスター服の少女は、何処からどう見ても正義の味方の対義語みたいだった。

 

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