【未完】人間界に召喚されたったwwwwwww   作:烏何故なくの

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コメント、気のきいた返信ができないので返信はしておりませんが一つ残らず目を通しております。大変励みになっております。

今回は天使視点。


間話(2)

ジェシカが人間界にくる数ヶ月前の事。

とある街の外れに小さな教会があった。

一人の牧師が切り盛りしている、何の特筆すべき点もない小さな教会。

 

何気ない昼下がりの事だった。

その教会の裏手の墓地から鈍い音が響いた。唐突に湿った何が弾ける様な不快な音が響き、墓地の静寂を破る。

 

「………?」

 

その音に気づいたのは、教会の内部で掃除をしていた一人の牧師だけだった。

くすんだ色の金髪を揺らし、紙モップを使って黙々と掃除をしていた牧師、モナハンは掃除の手を止め、窓から教会の裏手を覗き込む。

モナハンは数秒視線を巡らせ、異常を見つけた。

 

「……は?」

 

血塗れの少女が墓地の隣に倒れていた。

驚愕と同時にモナハンは窓を開け乗り越える。勢いそのままに、教会の裏手に飛び出した。

全力で少女に駆け寄る。

モナハンの鼻に凄まじい鉄の臭いが飛び込んできた。

少女の体からは血が流れ続け大地を赤く濡らしている。

地面は少女を中心に円状に窪み、まるで強い力が少女を地面に叩きつけた様に見える。

 

明らかな緊急事態。

モナハンは躊躇いなく()使()()()の行使を始めた。

彼の黒いガウンを突き破り、背中から翼が伸びる。

 

「聖なるかな、聖なるかな……」

モナハンが讃美歌を小さく歌うたび、まるで映像を逆再生する様に地面に落ちた血が少女の体に戻っていく。

赤く染まっていた大地は元の色を取り戻し、墓地は普段どうりの景色を取り戻す。

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

モナハンの力は正直に言って大した物では無い。

天使の階級でも最下位、九階位(エンジェル)たる彼には他者の怪我を治すと言う高度な魔術の使用は厳しい物がある。

 

最低限の応急処置を済ませた後、教会の近くにいる自身より上位の天使に念を送る。

(ふぅっ………これでこの少女の命は助かるだろう)

モナハンは荒い息を吐き出しった後、もう一度治療に取り掛かった。

天使の力は万能では無い。もしかすると天使の力が上手く作用していない傷口があるかもしれない。

モナハンは少女の頭部に手をかざし、今すぐに命に関わる様な傷が無いかどうかをスキャンしていく。

脳から頭蓋骨、喉。ゆっくりと手を下に下げ、少女の体を隅々まで調べていく。

 

「ーーーーは?」

 

スキャンを続けていたモナハンの口から間抜けな音が吐き出される。

モナハンはゆっくりと少女の胸部の上に手を当て、自身のスキャンに間違いが無いか何度も確認する。

 

(ーー間違いない。この少女、心臓が二つある…!!)

 

心臓が二つある人間。いや、心臓が二つある人型の生き物。

モナハンはそんな存在に聞き覚えがあった。

悪魔が生み出した禁忌。

人から作られた人でない者。制御不能の魔人。生まれながらに最も菩提から遠い生き物。

 

「かっ家畜にーーーー」

「こんにちは」

 

少女が目を開ける。サファイアの瞳がモナハンを見据える。

少女はゆっくりと立ち上がった。

(さ、最低限の手当しかしていないのに、もう動けるのか!?)

家畜人間の恐ろしさが噂どうりなら、モナハンが生きていられる保証はどこにもない。

恐怖に目を開くモナハンに、少女が声をかける。

 

「……治療」

「え」

「治療、してくれたンすか?」

少女はパチパチと目を瞬かせながら、心底疑問そうに小首を傾けた。

 

「………は、ハイ」

「気持ち良かったっス。ありがとうございました。…でも何で治してくれたんです?」

「そ、それは貴方が血塗れで倒れていたから……」

 

噂からは想像出来ないほど理知的な質問が返ってきた事に安堵するモナハン。

何とか気を取り直し彼女に返事を返す。

 

(ーー待て、彼女が血塗れで倒れていたと言う事は、彼女を、家畜人間を打ち倒せるほどの存在がこの付近にいる……!?)

怪我には原因がある。殺人事件には犯人がいる。

当たり前の事ではあるが、モナハンは度重なる驚愕の連続で思考が追いついていなかったのだ。

上位悪魔すら素手で容易く葬り去るらしい家畜人間をここまで痛め付けられる存在がいるならば、今すぐにでも七大天使に来てもらわなくてはいけない。

 

「あ、あの! 一体貴方に何が…」

「この傷っスか? さっきウチ、自殺してたンすよね」

モナハンは頭が痛くなってきた。

 

 

「……自殺、とは…………。何ゆえ…?」

「ウチの家族、みんな寿命で死んじゃったンすよ。それで話し相手もいなくて、生きるのに飽きちゃいまして。それでこう、あの山のてっぺんから思いっきりジャンプを」

少女は教会の裏手の奥に聳える山を指さす。

小さい山だが、500m程はあっただろうか。

 

「………つまり、山の頂上から跳躍してここまで跳んできたと?」

「はい」

「身投げの為に」

「はい」

モナハンは目眩がしてきた。

余りにも規格外が過ぎる。

人知を超えた魔人の肉体を持つ少女。

「生きるのに飽きた」と語る彼女の顔からは微塵の悲しみも感じられない。

本当に“ただ飽きたから”で死ぬ生き物。

あまりにも虚な生き物。

 

「…………ええと。話相手がいないのなら、私が話相手になりましょうか?」

「いいんです?」

自分はこの状況で何をするべきか。

モナハンはしばらく悩んだ後、牧師として行動する事にした。

他者の悩みを聞き、悪心を退けるのが牧師たる者の役割。

 

「ええ、私は常に教会に居ますので。何なら泊まって行ってもらっても構いません」

「じゃあ、泊まって行ってもいいっスか? 家族が居ない家にいても暇なだけなんで」

この提案には彼女を野放しにはして置けないと言う打算もあったが、彼女を放って置けないと言うのもモナハンの本音だった。

 

「はい。…私はモナハン。貴方の名前は?」

「パルミラっス」

 

モナハンはパルミラの顔を見やる。

これからモナハンが応援に呼んだ天使たちがくる。パルミラの事は天使長に報告されるだろう。

もしパルミラが制御不能の危険な存在だと判断されたら、彼女は殺されてしまう。

(…パルミラを保護したのは私だ。私が彼女の内面をしっかり見極めねば)

 

「パルミラ。生きるのに飽きる、と言いましたが…。何か趣味などは?」

「趣味…」

「何か楽しかった、心がスッとする事などは?」

「んー。…あ、形のある物を壊すのは心がスッとします!」

パルミラは元気よくそう言った。

モナハンは胃がキリキリしてきた。




飼い慣らしてる(指示はあんまり聞かない)。

天使:ルールを重んじる、人間に友好的な種族。基本的にまとも。
神父や牧師として人間界で活動している者も多い。
基本的に悪魔と正反対の性質をしており、悪魔と仲が悪い。

次回はもっと早く更新できるはず
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