本作品が初投稿となります。これまでは見る専だったのですが、楽しそうだったので投稿してみることにしました。よろしくお願いします。
まずは入学編です。では、どうぞ。
1‐1 龍の入学
―魔法―
それが伝説の産物や御伽話ではなく、現実の技術となってからおよそ一世紀が経とうとしている。
当初は「超能力」と呼ばれていたそれも、研究を重ねていく過程で、少しずつ「魔法」を伝える者たちが表舞台に姿を現し、いまや「超能力」は「魔法」で再現可能となっていた。「超能力」は「魔法」によって技術体系化され、やがて「魔法」は「技能」へと変化し、「超能力者」は「魔法技能師」と呼ばれるようになる。
世界各国は魔法技能師(通称:魔法師)の育成に競って取り組んでいるが、魔法教育には教育機会の均等などというものは存在しない。
徹底した才能主義。
残酷なまでの実力主義。
そして…生物の原点たる圧倒的な弱肉強食主義。
それが魔法の世界なのである。
だが、いつの時代にも例外や規格外、理屈だけでは説明できないものが必ず存在する。
国立魔法大学第一高校。本日はその入学式。ここに波乱を巻き起こす者たちが入学されることとなる。
第一高校の校門前に一人の男子学生が佇んでいる。身長は高く、目測だけで180cmは超えている。比較的細身でありながら、ピンと背筋を伸ばした背筋や物静かな雰囲気がより少年を大きく見せている。後ろ髪を伸ばしており、しかし無造作ではなく一纏めにされている。何より特徴的だったのがその瞳であった。気怠そうにしていながらも鋭く、睨まれれば唯では済まされない雰囲気を醸し出していた。
およそ少年が醸し出す空気ではない。しかし第一高校の特徴である緑と白の制服を着用していることから間違いなく生徒である。そして少年は目の前の校舎を見上げ…
「めんどくせぇ…」
と気だるげに呟いた。実際彼は本当に面倒だったのだ。しかし…
「友達ができれば世界観が変わる、ねぇ」
それは彼がここに訪れる前にある人物に言われたことであった。
『確かに君は魔法師として優秀の域には収まらない才能、実力を兼ね備えているよ。更には<魔法師の現実>というものをその年で理解し、受け入れている。この世の誰よりも圧倒的に<魔法師>として完成されているといっていい。』
『でもね…君は同時に<人間>でもある。私の目から見ても、君は圧倒的に<人間>としては未熟だ。それこそ赤子同然とも言える。』
『怒らないでくれよ。それは言外に認めているようなものだよ?』
『そこで君に提案だ。学校に通うといい。』
『何もふざけてなどいないさ。学校は別に勉学だけをしに行く場所ではない。たくさんの同世代の考えや行動に触れて、自らの可能性を広げることができる。今の君が<人間>として成長するには最適な場所さ。もしかしたらそこで出来た友達が君の見る世界を変えてくれるかもしれない。』
『学んでくるといい。魔法師を。人間を。そして友達をね。』
「あいつの口車に乗っちまった気もするが…まあいい。せいぜい学ばせてもらうとしよう。」
少年…龍童蓮司(りゅうどう れんじ)はそう呟き、門をくぐっていく。
同時刻、第一高校の講堂前で男子生徒と女子生徒が言い争いを終えようとしていた。
女子生徒は万人が認めるほどに容姿の整った美少女。名を司波深雪。
男子生徒は平凡な容姿ながら鋭い目つきが特徴の少年。名を司波達也。
ここに、波乱を巻き起こす生徒たちが集結しつつあった。
「納得できません!」
「まだ言っているのか?」
入学式の講堂の前で男女が言い争っていた。
女生徒は司波深雪。今年度の魔法科第一高校の主席である。男子生徒は司波達也。主席たる深雪の兄である。
「なぜお兄様が補欠なのですか?入試の成績はお兄様がトップではありませんか!」
「お前がどこから入試結果を入手したかは横に置いておくとして…魔法科高校なんだからペーパーテストより魔法実技が優先されるのは当然じゃないか」
どうやら兄の待遇に納得がいかず、妹が不満を漏らしているらしい。そして深雪がさらに不満を述べた瞬間、達也は張りのある声でそれを制止した。
「分かっているだろ?それは口にしても仕方のないことだ」
「ですが…」
「それに気持ちはすごくうれしい。お前が俺のことを考えてくれているように、俺もお前のことを思っているんだ」
「そんな、お兄様…想っているだなんて///」
会話の流れが変わったのか、今度は深雪が頬を押さえて悶えている。会話の主導権は今や達也にあった。
「それにな、深雪。俺は楽しみなんだ。可愛い妹の晴れ姿をこのダメな兄貴に見せてくれ」
「お兄様はダメではありません!…ですが分かりました。我儘を言って申し訳ありません。それでは…行ってまいります!見ていてくださいね!」
「ああ」
そこで会話が終了し、深雪は元気に体育館へ向かっていった。
(さて、これからどうしようか?)
そして達也は入学式までの時間をどう過ごすか考え始めるが…そこで周囲の声がわずかに聞こえてくる。
―なにあの子、二科生じゃない。こんな早い時間に来たの?―
―所詮スペアなのに。何を気合入れてんだか。—
そんな内容だ。
(やれやれ。まあ仕方ないのかもな)
ここ第一高校では生徒が主に二分されている。上位100名は一科生と呼ばれ、優秀な証でもあるエンブレム付きの制服を着用している、通称「花冠(ブルーム)」。残りの生徒はエンブレムのない制服となる二科生、通称「雑草(ウィード)」。両者の間には明確な差があることから、二科生はスペアと呼ばれることもある。
(まあそれ自体は正直どうでもいいがな)
そんなことを考えながら時間つぶしに読書をするために適当にベンチを探している時だった。
「キャッ!」
そんな女生徒の声が聞こえたためそちらに振り返る。そこには大柄な男子生徒と、恐らく男子生徒にぶつかったであろう、先ほど達也をスペアと侮辱していた女生徒たちが向き合う構図になっていた。
男子生徒は恐らく180~190cm程はありそうな背丈をしており、大柄というよりは長身痩躯という言葉が合いそうである。髪は長く後ろで一纏めにしており、その目は気怠そうにしている。だがその視線はとても鋭く、目の前の女生徒を睨み下ろしていた。
「ちょっと、危ないじゃ…」
「おい」
女生徒が怒りの言葉を放とうとしたとき、男子生徒が先に言葉を発した。
たった一言。しかしそれは圧倒的な存在感を放っていた。
「どけ。邪魔だ。」
またしても言葉は少ない。それでもその男子生徒からの威圧感が放たれていた。
「は、はい!」
「すみません、すぐ!ほら行こ」
そう言って女生徒たち慌てては走り去っていく。やり取りとしてはわずかな時間。しかしその時間は、達也の中で強く印象に残るものだった。
(なんだ、あいつの圧倒的な存在感、威圧感は?まるで巨大な力の塊そのもののような…)
制服にはエンブレムが付いており、一科生と判別できる。しかしそういったことを抜きにして、達也はその生徒から目が離せなかった。その時、その男子生徒はこちらを横目に見た。しかし見たのはわずかな時間であり、すぐに視線をそらし入学式の会場へ向かっていった。
(やつは一体…)
達也の思考はその生徒のことで埋め尽くされていた。
一方視線を向けられていた男子生徒、龍童蓮司も同様に自分を見ていた相手のことを考えていた。
(制服を見る限り二科生。普通に考えれば気にする必要はない。…だがなんだ?あいつからはただの生徒じゃない「何か」を感じた。)
そう、考えていたのはその男子生徒の視線そのものというよりその視線を放っていた時の雰囲気だった。興味本位で見物していたのかと思ったが、それにしては観察していたような、何かを見極めようとする類のものを感じた。
「人間を学べ、か…。確かにあんな奴がいるなら、それは面白そうだ。」
そう独り言ち、入学式会場に入っていった。
はい、最後までお読みいただきありがとうございました。
擁護、というわけではありませんが、蓮司君は極端にはっきりとした性格なんです。今回女生徒相手に冷たかったのは、完全に向こうがよそ見してぶつかった挙句、文句を言おうとしたために威圧しました。次話以降に彼の人間性がさらに分かっていきます。
では、また次話でお会いしましょう。