さて、蓮司君と達也君の戦い後編です。どちらが勝つと思いますか?期待してください!
それでは、どうぞ!
ギャラリーは静まり返っていた。それもそのはず。最初から最後まで予想に反することが起き続けていた。何よりの予想外は、蓮司が達也に押され続けていることだった。
「す、すごい…」
「複数デバイスの操作なんて普通かなり難しいわよ…それを何でもないことのように」
「しかも先ほど龍童君の拳のサイオンを吹き飛ばした魔法。あれは一体…」
「恐らく術式解体だろう。圧縮したサイオンの塊を砲弾のように対象物へ直接ぶつけて爆発させ、そこにある起動式や魔法式といったサイオン情報体を吹き飛ばす強力な対抗魔法の一つだ。だが、消費するサイオン量が多いことや、射程が短いことからあまり実戦向きではないとも言われるものだ。」
「達也君もまた、規格外の側だったのか…」
上級生たちは一様に達也の実力を褒めたたえている。一科生の蓮司を二科生の達也が追い詰めるなど、誰も予想だにしなかった。
一方の深雪は、不安に駆られていた。
(体術、複数デバイス操作、術式解体…ここまで手の内を曝したにも関わらず、いずれも有効的な攻撃には至っていない。同じ手を曝し続けてしまうのはまずい…驚くべきは龍童君の対応力ですね)
そう、ここまで手段を曝したにもかかわらず、まだ決着がついていない。
(本来ならお兄様にもまだまだ手段がある。ですがそれは相手を抹殺してしまうもの。こんな模擬戦で使うわけにはいかない…。それでも…それでもお兄様なら)
深雪はそれでも達也を信じた。それは純粋に兄の力を知っており、信じているからこそ。なにより…
(お兄様…気づいておられますか?戦いが続く中でお兄様は…笑っているんですよ?)
そう、達也は確かに笑みを浮かべていた。次に何が起こるか、どんな手で対抗しようか。それを考えることが楽しいようだった。
こんな兄の姿は見たことがない。いつもどこか達観としている兄が、こんな楽し気な姿を見せたことは、今まで一度もなかった。
(龍童君、こんなことを考えるのはおかしいのかもしれませんが…ありがとうございます。この学校に来てくれて。そして…お兄様のお友達になってくれて)
半ば自分の我儘で同じ高校に通うことになったにも関わらず、そんな自分のせいで差別を受ける兄の心を、目の前の対戦相手は引き出してくれている。深雪はこの巡り合わせに感謝していた。
(お兄様…)
そして同時に、深雪はこの世で最も敬愛する兄の勝利を信じ、祈り続けるのだった。
だが、この場にいる全員が忘れていることがある。それも致命的なことだ。
「…く、ふふ、くははははははははっ!!!」
笑っていた。蓮司がとても楽しいと言わんばかりに大笑いをしていた。周りが再度静まる中、ひとしきり笑った蓮司は改めて達也を見る。
「な~にが『俺が勝てるわけがない』だ、このペテン師め。単純にこの学校の魔法評価項目が合ってないだけで、お前も一流じゃねえか」
「別に評価項目は間違っていない。それに俺じゃ、魔法師としてはC級ライセンス程度が限度さ」
「なら国の評価が間違ってるな。まあ、今はそれはいい。」
そこまで話を続け、改めて蓮司は構える。だが、先ほどのよう肉弾戦の構えではない。そして一度呼吸を整えた後、達也の姿を視界に収める。その眼差しはとても鋭く、しかし以前のような威圧感や冷徹さはない。目の前の存在を正しく敵と認め、己に強い誇りを持つ強者の眼だった。
「…いいだろう達也。俺はここに来て、まだお前のことを甘く見ていたようだ。だからこそ、こんな醜態をさらしている」
そう話しながら、蓮司は左手で右腕にあるものを僅かにいじる。
「ここからは第2ラウンドと行こうか。だがこの先は温くはいかない。だから…」
その瞬間、蓮司の後ろに一瞬で20個の魔法弾の射出口たる魔法陣が完成し、完成とほぼ同時に魔法が放たれた。
「死ぬ気で耐えて見せろ」
全員が忘れていた致命的なこと。それは…
「なっ…」
今度は達也が驚愕に包まれた。僅かな動作で体勢を整えるのと同時に攻撃を放ってきた圧倒的なスピード。もう術式解体で全てを弾き飛ばすことは不可能であった。何より達也は、自身の失敗を猛省していた。
(あのサイオンコントロールに気を取られすぎた。あれはただ
今更ながら、油断していたであろう自分を責めるも戦いは続く。先ほどの魔法陣から放たれた攻撃魔法は、ただ達也に向かって放つのではなく、達也が回避するであろう方向にもいくつか放たれていた。
(俺の動きは予測済みか!質の悪い!)
しかし、それでも試合であるため、ある程度コントロールされていたのだろう。放たれた魔法攻撃は地面をはじく程度の威力であり、なんとか対応することができた。目の前のいくつかの魔法を術式解体でギリギリはじき、僅かにできた攻撃の穴に突っ込むことでギリギリ回避できたのだ。
「お兄様!!」
深雪が悲鳴を上げる。それでも回避を成し遂げた達也が前を見た瞬間、
「休んでる暇があるのか?」
既に蓮司は30個の魔法陣を完成されており、うち20個は達也を囲うように配置され、残りはいつでも逃げた先へ放てるよう準備されていた。
(これは…躱せない)
瞬時に状況を理解する達也。これが実践なら達也にはまだまだ手段はあった。だが試合、それも他に自分たちを見ている者たちがいる状態では手段がない。
「…どっちがペテン師だ。お前の方が質が悪いだろう」
「簡単に手の内を明かさないのが魔法師だ。魔法は本来秘匿されるべきもの。情報をいかに隠せるか、それが戦況を左右する…それで?返答は?」
まるで模擬戦が始まる前のようなやり取りだった。そして
「…ああ、俺の負けだ」
決着がついた。
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「…し、勝者、龍童蓮司…」
弱弱しく、摩利はそう呟いた。他の者たちも、言葉を発することができない。それほど圧倒的な光景だったのだ。
前半の戦いを見て、ギャラリーは達也が勝つ可能性が高くなったと考えていた。二科生という立場にありながらその戦い方は洗練されており、終始蓮司を圧倒していた。深雪は最初から信じていたが、他の生徒たちは徐々に達也が勝つのではと考え始めた。
だがその考えは一瞬で覆された。蓮司が右腕に着けた腕輪型のCADを僅かに操作したかと思うと、一瞬で魔法陣が数多に形成され、達也を襲い始めた。僅かな隙間を作り出し何とか達也が回避しても、それまでの間に次の攻撃手段を整え、反撃の隙を一切与えない蓮司。その姿は圧倒的だった。
そして紡がれた達也の敗北宣言。それによって決着がついた。
「お兄様!」
誰よりも早く深雪が駆け寄る。最愛の兄が模擬戦とはいえ危険な目にあったのだ。その最中で駆け寄ることができなかったのは、とても心苦しかったことだろう。
達也のもとへたどり着き、達也の状態を確認する。
「け、怪我は!?お怪我はありませんか!?」
「大丈夫だ深雪、ありがとう」
「い、いえ、そんな…///」
そんな深雪に、慈愛を持って応える。頭をなでる達也に対し、顔を朱色に染めながらほほ笑む深雪。いまやこの場の主体はこの二人であり、魔法が発動していないのに甘ったるい空間が出来始める。
「…勝ったの俺だよな、なんか敗北者な気分だが…。お前らやっぱ夫婦だろう」
そう呟くと深雪がわたわたとし始める。
「い、い、いやですね龍童君いくら私たちの仲が良く見えてもそれは言いすぎですよそもそも私たち兄妹なのであって世の中にはたくさんの兄妹のありようがあってわた、私たちはその中の一部なのでだからつまりその///」
「分かったから喋るなこの残念娘…周りも呆れてんぞ」
そう答えると深雪ははっとして周りを見る。皆が苦笑いで(唯一十文字は無表情だった)深雪を見ており、それに気づきさらに顔を赤くする。そうこうしているうちに達也が立ち上がった。
「改めて、すごかったな蓮司。実技試験主席の名は伊達ではなかったか」
「そういうお前は評価の方向性を間違われすぎだろう。誰だよこいつを劣等生とか言いやがったやつ…」
二人は自然と会話をしていた。先ほどまでの雰囲気が嘘のようだった。
「そんで先輩方。達也の風紀委員会入りは?」
蓮司がそう問うと、皆が口を開き始める
「そんなの、言うまでもないわね」
「ああ。君の実力、この目でしっかり確かめさせてもらった」
「これなら、校内で荒事があっても十分対応できます」
「私には何がなんだか…」
「実力は申し分ない。状況判断力も高いものだ。今後も期待できる」
皆がそれぞれの感想と評価を述べる。そして最後に服部が締めくくった。
「…司波達也。先ほどの暴言を謝罪する。目が曇っていたのは私の方だ」
「いえ、自分も生意気を言いました。そもそもこの騒動の原因は俺です」
服部も達也の実力を認めた。よって満場一致で達也は風紀委員となったのだ。
はい、というわけで第11話でした。いかがでしたでしょうか。
ということで、今回の試合は蓮司君の勝利でした。達也君の勝利を考えていた方、本当に申し訳ございません。
さて、蓮司君の戦闘描写について規格外感は出せているか、ちょっと心配です。
蓮司君が得意なのは確かにサイオンコントロールで間違いないのですが、厳密にはこれは魔法ではありません。NA〇UTOに出てくるようなチ〇クラコントロールのようなものをイメージしてもらえると分かるかもしれません。ちなみに私はNA〇UTOが大好きです。
達也君も惜しかったですね...最初から魔法も警戒していたらまだ対抗できたかもしれませんが、なんせ自分が見たことのない戦闘手段を目の当たりにしてしまったことで、そちらに意識を割きすぎてしまいました。これは彼の失態ですね。
そして最後の服部君の謝罪。これは対象を達也としました。これだけ高度な技術を目の当たりにすれば、たとえ二科生であっても認めざるを得ないわけです。このお話の服部君は原作より素直な性格なのです。
さて、今話はここまでとなります。最後までお読みいただき、ありがとうございます。では、次話を楽しみにしていてください。それでは!