話をまとめられたので投稿します。そして今回、シリアス回と前回お伝えしましたが、、、正直話の内容は極端です。反対意見が出ることも重々承知の上で出してます。ただ、こういう側面もあると思いますのでそれをまとめてみました。
それでは、どうぞ!
襲撃事件後、保健室にて壬生紗耶香の聴取が行われていた。
その場には一校の三巨頭をはじめ、壬生を直接確保に向かった達也と深雪、そして達也と行動を共にしたレオとエリカ、最後に制圧の中心にいた蓮司が集まっていた。
壬生の動機を要約すると次のようなものだ。
昨年の新歓において、壬生は摩利に対して指導の手ほどきを依頼したことがあった。ちょうどこの頃、剣術部が思い上がりによって騒動を起こしたことで、それを摩利が直接対処した。摩利のその魔法剣技に魅せられた壬生は、摩利に指導を申し込んだ。摩利のその姿は、壬生にとって理想的なものだったこともあるだろう。
しかし摩利はそれをすげなくあしらった。「お前とは、戦うまでもない」と冷たくあしらわれた壬生のショックは大きかった。二科生だから、魔法の才能がないから…と壬生は悲観にくれた。
そんなときに話しかけたのが司甲だった。その頃の剣道部は既に司によってブランシュの思想に犯されていた。そしてそれ以外にも、非魔法系サークルにもその魔の手が伸びており、1年以上の時間をかけて今回の襲撃は計画されたのだ。
この内容に三巨頭、特に摩利はひどく狼狽した。何故なら彼女にはそんなことを言った記憶が全くなかったからだ。摩利もその剣術部の騒動は覚えており、その日の出来事として、壬生に指導を申し込まれたことも当然覚えていたし、なにより摩利は壬生のことを入学する前からよく知っていた。
剣道の中学生大会で全国準優勝を果たした美少女剣道家の壬生紗耶香。“剣道小町”と言われたその剣の腕は、摩利をしてかなわないと言わせるほどだった。魔法剣技ならともかく、純粋な剣の腕では敵わないことは一目瞭然だった。だからこそ指導を断ったのだ。
改めて摩利と話をして冷静になった壬生は、徐々に記憶を思い出し、顔を青ざめていた。自分の動機がただの勘違いなど、なんと愚かなものだったのだろうかと、心を絶望が支配し始める。
「…バカみたい…勘違いで勝手に傷ついて…逆恨みして…そんなことで1年も無駄にして…っ!」
ついには涙を流し始める壬生。他の者たちも、どう声をかけるか判断に迷っている様子だった。そんな中、達也は今までの話を統合していた。
強い思い込み、1年も冷めなかった激情、そしてそれに増長した他の生徒たち。敵は洗脳の類を使っている可能性が高い。恐らく、壬生の記憶もそれによって操作されたものだと判断した。
このままでは壬生は絶望で押しつぶされてしまう。そう考え、達也は壬生に声をかけようとした。しかしここで想定外のことが起こった。
「くだらねえ」
そうはっきりと告げる声が聞こえた。全員がそちらに顔を向けた。そこには腕を組んで壁に背中を預けている蓮司の姿があった。
「敵の情報を得られると思ってわざわざここにいたが…聞かされたのがそんな阿保みたいなもんとはな。時間の無駄にもほどがある」
蓮司は視線を合わせず、淡々とそう告げた。その横顔は無表情だった。しかし、腕を組んでいるその手は強く握り占められており、相当力が入っているようだった。
「あんたの今の話、要約してやるよ。強い魔法師に憧れた弱い奴が、相手にされなかったことで癇癪を起して、その後に犯罪者に誘惑されて自分も共犯者となった。ただそれだけ、何の面白みもない、ただの無駄話だ」
「龍童君!」
「蓮司君!やめないか!」
蓮司の話も極端なものだ。そんな話を聞かされては、本人でなくとも気分がいいものではない。事実、深雪と摩利は強い口調で制止にかかった。
「…あなたに何が分かるのよ…」
すると壬生は俯いたまま、しかし強く手を握りしめ、その感情を蓮司にぶつけた。
「あなたみたいな人に何が分かるのよ!?魔法の才能に恵まれて!ありえないような力を簡単に扱えて!上級生だけでなく、たくさんの人の信頼を勝ち得ているあなたに!私の何を理解できるって言うのよ!」
それは壬生の心からの叫びだった。例え摩利とのやり取りが誤解だったとしても、他の一科生から受けた屈辱は確かなものだ。事実、一科生はその驕りから、時に二科生の存在すら否定する言葉をかける者も多かった。
「あなたみたいな強い人に!弱い私たちの心なんて分からないわよ!」
はぁ、はぁ、と息を切らしながら、壬生は全てを出し切った。その剣幕に、他の者達も口を挟むことが出来なかった。
対して思いをぶつけられた蓮司は、それでもどこ吹く風といった様子だった。そして静かに話し始める。
「…先輩。あんたさ、この学校やめなよ」
あくまで静かに、しかしはっきりとそう告げた。
「いや、そんなんじゃ足りねえな。…あんたさ、魔法師やめなよ。向いてないよ、あんたには」
その時の蓮司の瞳に全員何も言えなくなった。
そこにあったのは確かな”悲しみ”の感情だった。そんなものは、蓮司を知る者たちにとって、あまりにも蓮司からかけ離れたものだった。
「なあ先輩、1つ聞かせてくれよ…何で魔法師になろうと思ったんだ?」
「え…」
「エリカから先に聞いてたし、委員長もさっき話してた。あんたは剣道の達人で、しかもその容姿も相まって全国でも人気が高かった。加えて勉学の成績も優秀、人柄もとてもいい。人としてこれ以上ないものを兼ね備えている」
壬生は話の流れが読めなくなっていた。突然魔法師をやめろと言ったかと思えば、今度はこれまでの壬生の経歴を称賛し始めた。
「そんなあんたが、なんでわざわざ魔法師の道を選んだ?そのまま剣道の強豪校にでも進めば、よりいい生活があったはずだろ」
「…」
そう言われ、壬生は思わずそんな未来を思い浮かべてしまった。剣道に打ち込み、仲間と切磋琢磨し、勉学に勤しみ、もしかしたらあったかもしれない恋…。そんなものを考えた。そして同時に思う。なぜ自分はその道を選ばなかったのか、と…。
「当ててやろうか」
そんな壬生に構わず、蓮司は話を続ける。
「…憧れたんだろ?魔法の神秘性に。心を奪われたんだろ?魔法の放つ"光"に」
そう言われ、壬生は改めて考える。なぜ自分は魔法師になったのか、と。そして蓮司の発言はまさにその通りだった。
「…うん、私、魔法師になりたいと思った。たまたま見た魔法がとても綺麗だったから。それで…自分にも魔法を使える可能性があることを知って…憧れの存在になれると思った。魔法師になれるかもしれないことが嬉しかった…だから…」
「壬生…」
摩利もその言葉を聞き、壬生がどれだけ魔法師というものに憧れていたかを理解した。壬生も、自分の心を整理してようやくその答えが出た。
しかし話はここで終わらない。
「魔法の”光”にばかり目が行って!魔法の”闇”に目を向けないからそうなるんだろうがぁ!!!」
ここからが本題なのだ。
全員があまりの展開について行けなかった。話の中心にいた壬生でさえだ。
これまで蓮司が怒ったことは何度もあった。だがその怒り方はとても静かなもので、威圧的なものだった。
だが今の蓮司の怒りは、感情をむき出しにした、まるで幼い子供のようなものだった。事実、蓮司の表情はこれ以上ないほどに歪んでおり、今にも泣きそうなものだった。
「綺麗ごとばっか言ってんじゃねえよ!魔法が綺麗だった?憧れた?ふざけんじゃねえよ!そんなもんばかり見て、“魔法師の現実”を知ろうともしないから、どうでもいいような苦しみでつぶれるんだろうが!」
“魔法師の現実”。その言葉が何を指すのか、達也たちは朧気ながらも理解していた。対して壬生は、何のことを言っているのか、理解が出来なかった。
「年間で世界の魔法師は数十万人以上が戦闘や実験で死んでる。裏組織の実験も含めれば年間数百万人単位で一般人を含め死んでる。生きてる魔法師だって、一部の魔法師が圧倒的な年収を稼いでるだけで、多くが低収入で碌な生活が出来ていない。中には実験で一生を終えるやつだっているし、途中で不要と判断されて破棄される奴だっている」
それは現代の魔法社会が抱える”闇”だった。
「何でこんなことが起こるか分かるか?あんたみたいなのが居るからだよ!中途半端な力で魔法師になろうとして!そんな奴らが溢れ始めて!力の無さに絶望して!それでも魔法の力を手放さないから、下らねえもんに手を出し始める!」
蓮司は周りに構わず感情を爆発させる。その姿は、まさに幼い子供そのものだった。
「てめえらみたいな奴らがそもそもの前提を間違えるから!本物の魔法師は苦しめられることになる!」
「…そもそもの前提だと?」
ここでようやく達也が口を挟んだ。蓮司の様子もそうだが、彼の語る内容は、まさに魔法師の闇そのものだからだ。だがここで出た”そもそもの前提”の内容は検討もつかなかった。それは他の者も同じだった。
「…魔法師は、なろうとしてなるもんじゃねえ。なるべくしてなるもんなんだよ。魔法師として生きるかどうかは、生まれた瞬間から決まってんだよ!“人間”と“魔法師”は何もかもが違う!生まれも!存在も!“種族”がそもそも違うんだよ!!」
『っ!』
それが蓮司の根幹を形成する思考だった。その内容に、全員が息を呑む。“人間”と“魔法師”は種族が違う。そんなことは考えたことがなかった。
同時に、達也と深雪は以前八雲に言われたことを思い出した。
『彼は良くも悪くも”魔法師”だ』
『言ってしまえば彼の思考は魔法師主義のようなものさ。”人間”と”魔法師”は異なる存在だ、という意識が強いようだね。それだけは気を付けなさい。』
”人間”と”魔法師”は異なる存在。だからこそ、分かり合えるわけがない。
それが蓮司の思いの全てだった。
「だから“人間”は決して“魔法師”になんかなれねえ。存在が違うんだ。憧れたからってなろうなんてそもそもが間違ってる!それに…!」
そこで一度話を止めた。蓮司の瞳には一層の悲しみが宿ったようにも感じた。
「“魔法師”は…“人間”になることだってできやしない…!」
今にも泣きだしそうな蓮司の姿に全員が戸惑いを覚える。そこまで話し、蓮司は壬生のもとへ歩き始めた。そして傍まで来ると、その胸倉を強く掴んだ。
「おい!?」
摩利が止めようとしたが、傍にいた十文字がそれを止めた。十文字は、今の蓮司が壬生に危害を加えることはないと判断したようだ。
そして、蓮司は俯きながら話し始める。
「…あんたに限らず、この学校のほとんどの連中は”魔法師擬き”だ。中途半端にしか魔法を使えないくせに、多少できるからって一科生どもは虚構の優越感に浸り、二科生どもも阿保みたいな劣等感を抱える」
「…龍童君…」
「魔法師はそんな簡単な存在じゃねえんだよ…己に降りかかる不幸も、屈辱も、絶望も…あらゆる闇を全部呑み込んで己の力に変えられる奴じゃなきゃ…魔法師ではいちゃいけないんだよ…」
そこまで話し、蓮司は手を離した。そして踵を返して扉へ向かい始める。
「“人間”のあんたは”魔法師”にはなれない」
蓮司は努めて平静を保って話す。
「たかがそんな出来事で癇癪を起してこんな騒ぎを起こすなら…あんたは魔法師でいちゃいけない…そんなんじゃ…近い将来に“魔法師の現実”に押しつぶされる。だから転校することを勧める」
蓮司は一度も振り返らずにそう告げる。どんな表情をしているかはわからない。
「それでも魔法師に“なろう”と足掻くなら…覚悟を決めろ」
蓮司は扉を開けながら、それでも変わらず語り続ける。
「理不尽を呑み込んで…時には友すら蹴落として…それでも生き残る覚悟を」
その言葉を最後に、蓮司は保健室から出ていった。
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「…やっちまった…」
蓮司は保健室を出た後、自己嫌悪に陥りながら歩いていた。蓮司にとって壬生が話した内容は許しがたいものだった。「魔法師は生まれながらに魔法師」という考え方を持つ彼にとって、中途半端な動機で魔法師を目指す者は最も憎い存在だった。
“人間”と“魔法師”は分かり合えない。それは蓮司が築き上げた価値観だった。
(俺は…間違ってるだろうか…。だが間違ってるなら…俺は…)
そこまで考えていると、不意に連絡が入った。
こんなタイミングで連絡を入れる奴など、あの女しかいない。嫌々ながら、連絡に応じた。
『どうちまちた蓮司君?駄々をこねてはいけまちぇんよ~?帰ったらお姉ちゃんのおっぱいでも吸いまちゅか~?』
「…吸うっつったらどうすんだよ」
『君はそんなことで冷静になれるわけでもないし、できないからこそDTじゃないか』
そして一拍おいて、今度は慈しみを持って話し始める。
『…君の苦悩は知っている。だが溜め込んではいけないよ。その憎しみは本当に世界を滅ぼしかねないし、そうなったら絶望するのは君自身だ』
「…ああ、わかってる」
『前にも言ったけどね。学校では“人間”を学ぶんだよ。そして知りなさい。“魔法師”だって“人間”にはなれるんだ』
「……」
それは蓮司の根幹を否定するものだったが、蓮司は反論しなかった。今はそれについて語る時ではない。
『それじゃ、奴らの場所を送るよ。後は頼むね。あと、かち合うかもしれないから特に回収は必要ないよ。好きに判断して暴れるといい』
そこまで話すと通話は切れて、地図データが送られた。
ここから先は、蹂躙しかない。
はい、というわけで第17話でした。いかがでしたでしょうか。
今回のお話、、、”人間”と”魔法師”の違い、、、これは今作のテーマの1つです。
魔法科高校の劣等生を読み進めて思ったのが、「物騒すぎるから一般人はマジで魔法師になるのやめた方がいいんじゃね?」ということでした。いや正直ね、この世界物騒すぎるんですよ。なので本当に覚悟のある人しか魔法師になっちゃいけないと思ってしまったんですよね。そんな私の思いも込めたお話でした。
それを言った蓮司君も、きっとつらい思いをしてきたのでしょう。ここでは言いませんが。
補足ですが、私は紗耶香ちゃん嫌いじゃありません。むしろ好きです。でも反省するところはしてもらいましょう。
さて、今回はここまでです。次回、第18話でお会いしましょう。それでは!