前回中々シリアスだったんで、今回は比較的落ち着いてると思います。
それでは、どうぞ!
蓮司が思いを吐露し、保健室を出た後。その場に残ったメンバーは今後のことを話していた。
その時、達也が真っ先にブランシュの殲滅を提言した。真由美や摩利は反対したが、このまま大人たちに任せていれば、紗耶香が家裁送りにされることになる。何より達也にとっては、このまま放置するということはありえない選択だった。
達也にとって最も大切なものは、言うまでもなく深雪である。そして”深雪と達也の日常”を害するものは、何であろうと排除しなければならない。これは達也にとって最優先事項であり、故にブランシュの殲滅は決定事項であった。
その後、保健室の外に控えていたカウンセラーの小野遥より位置情報をもらい、話し合いの末、達也、深雪、エリカ、レオ、十文字、そして保健室の外にいた桐原武明が参加を申し出たため、計6名がブランシュ殲滅作戦に参加することとなった。
そしてブランシュのアジトである、近隣の廃工場まで移動した後、達也が真っ先に異変に気が付いた。確かにそこは廃工場のため活気あふれるものではなかったが、それにしても人の気配がなさすぎる。そこで達也は、全員で行動し侵入することに決めた。
しかしいくら進めども、テロリストはおろか誰にも遭遇しない。ここで参加メンバー全員が流石に違和感を覚え始めた。
「…ねえ、なんかおかしくない?いくら身を潜めてるからって、こうも何の気配もないことなんてある?」
「確かにな…」
エリカが真っ先に発言し、達也が同意する。
やはり誰もいないのか。情報が誤っていたのか、それともすでに撤退したか。
前者については、自分たちに襲撃犯の目的について伝達した九重八雲の弟子である小野遥からの情報であるため、考えにくかった。
ならば後者かと考えるが、それも考えにくい。1年以上にわたって計画を立てたブランシュが、簡単に第一高校から手を引くとは考えにくかった。
疑問は持ちながらも、それでも進んでいく一行。そして進んだ先に一つの扉を発見した。
中の気配を探るが、やはり人の気配はない。施錠されていなかったため、達也がそっと扉を開けた。そしてその中を確認し…絶句した。
そこには大量の死体が転がっていた。床には大量の血が水たまりを作り上げるほど流れており、死体のほとんどが手や足といった体の一部分を無くしていた。戦闘があったのか、
床や壁を確認するとえぐられたような跡があった。
「な…」
「な、なにこれ!?」
「おい、まじかよ!?」
「…」
桐原、エリカ、レオは一様に驚き、十文字は比較的冷静だったが、それでも絶句している。それだけの光景が目の前に広がっていた。
「お兄様…」
「ああ…」
深雪、そして達也も言葉が出ない。
目の前の光景は戦闘の後ではない。もはや一方的な蹂躙の後だった。
(どの死体にも銃痕がない。ならば襲撃犯は拳銃の類は使っていない。そして壁や床は削られているが、これは剣によるものではない。やはり…魔法師の仕業なのか?)
そこまで考え、達也はある人物を思い浮かべる。それは達也体よりも先に保健室を出ていた、第一高校の”恐怖の帝王”の姿だった。
(…いや、早計だ。なんの物証もないんだ)
そこまで考え、まず達也は現状を把握することを優先した。
「行きましょう。他の部屋を確認します」
その言葉に、唖然としていたメンバーも集中し直し、先に進んだ。
しかしどの部屋も似たようなものだった。人の姿はなく、あるのは欠損した死体の数々だった。そうしてかなり進んだ広い部屋に、
「…ぐ、ひ…ひいぃ…」
うめき声が聞こえた。やっと生存者を発見し、死体ばかり見ていたことから僅かに安堵したが、目の前の生存者を確認して、再び唖然とした。
生存者は白衣を纏った青年だった。ただし、身に着けている白衣は既に血に染まっており、白衣とは呼びにくいものだった。
そして青年の状態もひどいものだった。両腕と片足は既になく、残っている方の足もあらぬ方向に曲がっている。上半身は斜めに割かれた跡があり、そこからも血が飛び散っていた。青年の顔も涙や鼻水、そして血でぐちゃぐちゃになっており、見るに堪えないものだった。
そんな青年に対して、達也が代表して話しかける。
「お前がブランシュのリーダー、司一か?」
質問すると、青年は力なくコクリとうなずく。
まさか敵の首領とこんな形で対面するとは…と一校メンバーは絶句した。
「…てめえか!てめえが…てめえが!壬生を!」
そんな中で、桐原が怒号をあげた。そして同時に手にした刀を抜いた。それを十文字が制止する。
「よせ桐原。敵は既にこの様だ」
「会頭…」
「お前の心は分かるが…押さえろ。すでに罰をその身で受けている。それにこれなら、まだ死んだ方がましだっただろう」
そこまで十文字が伝え、桐原は完全に納得はしなかったものの下がった。
落ち着いたことを確認し、達也が改めて質問を続ける。
「ここで何があった?銃痕がほとんど確認できなかったから、同士討ちではないはずだ」
達也がそう聞くと、司一は出来事を思い出したのか、再び涙を流しながら話し始めた。
「…わ、わから…なひぃ…」
「何?」
「ひ、光…光が…現れ、て…目、の前を…過ぎたら…みん、みん…な、死んでた…」
「光だと?」
「光の、化け物が…殺した。キャスト…ジャミングも…効かな、か…た」
「……」
内容ははっきり言って意味不明なものだった。全員が訝しく思ったが、司はそれでも話し続けた。
「あれ、ば…化け物、だ…本物の、怪物だ…!…いやだあぁぁぁ…こわ、いぃぃぃ…!じにだくなあぁぁああっぁいいいぃぃいい!!」
そこで、重症に関わらず錯乱して叫び始めたため、十文字が気絶させた。その後、各部屋を確認したが生存者は他にいなかったため、十文字が外部へ連絡を取り、死体の処理と司一の回収をした。
こうしてブランシュによる襲撃事件は、なんとも言えない結末を迎えた。
そして今回判明した”光の怪物”については、結局何も分からないままだった。
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ブランシュによる第一高校の襲撃事件の後。
蓮司は1週間の奉仕活動(教員の手伝いや校内の清掃)に勤しんでいた。そしてそれを目撃した生徒からは親しみを覚えられていた。”恐怖の帝王”と呼ばれる蓮司だったが、その姿を実際に目撃した者は騒動を起こした生徒であり、生徒のほとんどはその姿を具体的に目撃したわけではなかった。だからこそ、奉仕活動に勤しみ、気だるげにしながらも決してさぼることをしなかった蓮司の姿は、多くの生徒の目につくこととなった。
これが、真由美たちの狙いでもあった。ともに過ごす中で、蓮司は約束を破らない、律儀な性格であることも理解していた。だからこそ、面倒そうにしてもしっかりやってくれると信じていた。
こうして蓮司は、自分の意図しないところで評価が上がっていくこととなった。
それから少し後、暦は5月に入っていた。達也に呼ばれて、蓮司はとある病院に来ていた。詳細については知らされていない。ちなみに傍にはほのかと雫がいた。
「逃げやしねえっつの…」
「あはは…」
「万が一を考えてだと思う」
なお、同行を依頼したのは達也だった。詳細を伝えていない以上訝しく思われてしまうことから、なんとか来てもらおうとしたためであった。
そうして僅かに会話を弾ませながら、蓮司たちは呼ばれた病院に入り、奥を確認した。
「…ああ?」
そしてそこにいる者たちの姿を確認して、訝し気な声を出す。
視線の先には、壬生紗耶香がいた。花束を受け取っている様子から、どうやら彼女は今日まで入院していたようだ。そして同時に、達也が詳細を伝えなかった理由を察した。
(あの野郎、やりやがったな…今更何の話をさせるつもりだよ…)
蓮司は非常に気まずかった。保健室において壬生に放った言葉は蓮司の本心だ。だが途中からは、もはや八つ当たりであったため、蓮司は反省していたし、美琴からも注意されてしまった。あんな人格破綻性欲中古女に注意されるなど不愉快極まりなかったが、今回ばかりは甘んじて受け入れていた。
「蓮司さん、行こ?」
立ち止まっていた蓮司をほのかが促し、蓮司たちは進んだ。するとそこで達也たちも蓮司に気づいた。なお、そこには達也や壬生のほかに、深雪、エリカ、そして桐原がいた。なお、蓮司は桐原と直接対面したことがなかったため、なんか知らないのがいるな、程度の認識だった。
「龍童君…」
「…」
二人の間に微妙な空気が流れる。ほのかが隣でハラハラし始めた。
「…なんのつもりだ達也。呼ばれたから来てやったが、どういうことだよ」
蓮司は自分を呼びつけた達也をジト目で見た。それに対して、達也は苦笑で返した。
「それはだな…」
「待って司波君。私から話すわ。…龍童君、あなたを呼んだのは私なの」
「ああ?」
なんと実際に用があったのは壬生の方だったようだ。あれだけのことがあったにも関わらず、今更なんの話をするつもりか、と蓮司は少し身構えた。
「龍童君、あのね…私、魔法科高校に残るよ。やっぱり私は魔法師になりたい」
「…!」
その宣言に、今度こそ蓮司は顔をしかめた。あの言葉を聞いて、それでもまだ魔法師でいようとする。蓮司はその心が理解できなかった。
「…なんだよ、あれだけ言われてまだ分からないほど低能なのか?」
蓮司は敢えてそう返した。突然の罵倒に、ほのかと雫は驚き、桐原は怒りの表情を浮かべたが、達也に制止されていた。
蓮司はなおも言葉を続ける。
「もう一度言ってやるよ。魔法師はなるべくしてなるもの、目指してなるもんじゃない。生まれたその瞬間から魔法師は人間とは違う存在なんだ。あんたがどれだけ魔法の光に魅せられようと…あんたがなれるのは所詮”魔法師擬き”止まりだ」
蓮司は敢えてもう一度現実を突きつける。蓮司の価値観からして、そこは何があっても揺らぐことはなかった。
「どこまで行こうとあんたは”劣等生”だ。それでも…」
「それでも、目指すよ。だってもうそう決めたから。私の心が、そう決めたから」
「…!」
「私ね…みんなに言われて気づいた。誰よりも私を貶めてたのは自分自身だったって。剣道で実績を残して、魔法が使えることが分かって家族に期待されて…でも魔法科高校で現実にぶち当たって。ああ、私は”劣等生”だ、頑張ったって無駄だって諦めてた。」
「…」
「でもね、君に言われて、周りに励まされて、もう一度調べて知ったの。君の言う”魔法師の闇”は確かに存在する。能力のない人は生き残れない。でも、どんな能力も使い方次第で、たくさんの生き方がある。私の力でも、必ず生き残れる道があることを知ったの」
そこまで話し、改めて壬生は蓮司を見た。その瞳には強い意志があった。
「だから私は魔法師で居続けるよ。私の選んだ道に、後悔をしないために。何より…」
そこで壬生は、今度は後方の桐原を見た。
「好きな人と、そう簡単に別れるのも嫌だからね」
微笑みながら、そう告げた。その言葉に、桐原は頬を赤くして視線を逸らし、エリカはにやにやと嫌な笑みを浮かべた。達也と深雪は微笑ましそうに笑い、雫は無表情ながら驚いていたようで、ほのかは顔を赤くしてとてもうれしそうだった。
一方の蓮司は…
「…はい?」
軽く混乱していた。まさかそんな理由で残るとは思ってもみなかった。だが先ほどの瞳を見るに、もう心は折れそうにはなかった。
「…はあっ、随分と甘いこったな」
そう言って踵を返す。蓮司は帰ろうとし、ほのかと雫は慌てながら先輩たちに一礼し、蓮司を追いかけた。そして最後に…
「その甘い考えがどこまで続くか見といてやるよ。第一高校の風紀委員としてな」
蓮司はそう返し、その場を離れた。
見届ける。これからも見ている。見放されなかったと感じた壬生の口から、自然と言葉が出た。
「…ありがとう」
「蓮司さん…よかったの?」
「見た感じ、前に言い争いしたみたいだったけど」
ほのかと雫はそう蓮司に話しかけた。2人は蓮司と壬生の間に何があったのか、どんな話をしたのかを知らない。だが先ほどの会話から察するに、壬生の進退に関するものだったと感じていた。
先の会話は、どちらかというと壬生の報告、そして決意表明だった。まさかそのタイミングで恋人紹介が行われるとは思わなかったが。
すると蓮司は静かに返した。
「いいんだよ」
2人が不思議そうに蓮司の真横に進み、その顔を見た。
そして固まった。見惚れた、と言った方がいいかもしれない。
蓮司は笑っていた。それも、これまで見てきたような挑発的なものや、狂気に満ちたものではない。それは、優しさにあふれた微笑みだった。
「あの人は…大丈夫だろうよ」
そう蓮司は返した。
はい、ということで第18話でした。いかがでしたでしょうか。
前回、「蹂躙だ」なんて言っておきながら、その結果しかお見せしませんでした。すいません!これも今後のためなんです!
そして、紗耶香ちゃん、残留決定!正直転校させるか迷いましたが、せっかくなので残ってもらうことにしました。やっぱり原作キャラを簡単に退場させたくなかったので。これからの出番は...具体的にはまだ決まっていません。今後の展開次第です。
さて、今回はここまでです。次回で入学編は完結となります。
それでは第19話でお会いしましょう。それでは!