魔法科高校で龍は生きる   作:ドンマッシュ

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皆さんいつもありがとうございます。

タイトルにもあるように、今回で入学編は終了となります。うまくまとめられたかなぁ。落ち着いた辺りの話を作るのも難しいですね。

ここで1つお話が。17話での蓮司君の主張について。あれがかなり賛否両論あるみたいですね。あれはあくまで「訳アリ15歳の主張」なので、正解も不正解もありません。そういう考え方もあるということでお願いします。

それでは、入学編最後です。どうぞ!


1-19 エピローグ

「それじゃ、かんぱーい!」

『かんぱーい!』

 

エリカの音頭を皮切りに、全員が乾杯し、宴会が始まった。ここにいるのは、達也、深雪、エリカ、レオ、美月、ほのか、雫、そして蓮司という、今となってはお馴染みのメンバーだった。

 

時は壬生紗耶香の退院の少し前に遡る。達也たちは、彼らの行きつけの喫茶店、「アイネブリーゼ」に集まっていた。そこにはたくさんの料理が並び、それぞれの手にはコップが握られていた。

 

「よーしぃ!今日は飲むわよー!」

 

エリカがテンション高めに盛り上がっていた。ちなみに蓮司はただひたすらに黙々と料理を堪能していた。

 

「エリカちゃんテンション高いね…」

「酔ってんじゃねーだろーなコイツ…」

 

美月とレオが苦笑しながらそう呟いた。まあこのテンションも仕方がないのかもしれない。入学して早々にあんな騒動に巻き込まれたのだ。いくら普段から鍛えていようが、そこは高校生。やはり遊びたいときには遊び、食べたいときには食べ、はっちゃける時には全力ではっちゃけるのだ。

 

「私たちも来てよかったのかな…」

「もちろん!ぜひ来てほしかったわ」

 

ほのかが自身なさげに言うが、深雪は笑顔でそう返答する。なのでほのかと雫は楽しむこととした。

 

「賑やかだねえ。今日は何の集まりだい?」

 

そう言いながら、奥から喫茶店のマスターが新たな料理を運んできた。なお、蓮司はすかさずその料理にも手を付け始めていた。

 

「お疲れ様会のような…」

 

達也がそう返答するが、ここでエリカが爆弾を投下した。

 

「達也君のお誕生日会だよ!」

 

『えっ!!』

 

美月、レオ、ほのか、雫が驚きの声を上げる。なお、深雪は当然声を上げることはせず、蓮司も話は聞こえていたが目の前の料理に集中していた。

 

「エリカちゃん、なんで言ってくれなかったの!?」

 

美月が代表して真っ先にエリカを問い詰めた。本当に誕生日会なら、色々用意する必要があるからだ。しかしエリカはまたもあっけらかんと告げた。

 

「いやー、正確な日付は知らないよ?」

「え?」

「どうせ4月中でしょ?誤差の範囲かなって昨日深雪に…」

 

そう、確かにエリカは達也が何日生まれかは知らなかった。知っているのは、達也が4月生まれで、深雪が3月生まれだということだけだった。

なので、お疲れ様会を兼ねて誕生会にした、というのは本当だ。

 

「そう、よく知ってたのねって、ビックリしたわ」

 

ここで深雪が更なる爆弾を投下しなければ、ただ周りを驚かせただけだった。だが深雪の発言によって、エリカの頭に疑問符が発生し、少しして答えにたどり着いた。

 

「…まさか、本当に今日?」

「ああ、驚いたよ、ありがとう」

 

エリカが最終確認し、達也が答えたため判明したこと。それは本当に今日この日が達也の誕生日だったということだ。これにはエリカも恨み節を吐かざるを得ない。

 

「深雪~~~…謀ったわね…」

「あら、否定はしていないはずよ」

 

対して深雪はどこ吹く風、といった様子である。そこには普段の優等生な姿からは思いつかない、いたずらが成功して楽しいといった様子の、高校生らしいものだった。

 

しかし、こうなると更なる問題が発生することとなった。

 

「しまった…プレゼント…」

「うん…」

「お二人とも、気にする必要ないですよ!って私が言っていいのか分からないですけど…」

「俺らも全く知らなかったからな。同じクラスなのに…」

 

そう、当然だが誰も誕生日プレゼントを用意していないのだ。この事実にほのかと雫は背景に”ズーン”というエフェクトが出そうなほど落ち込んでしまい、美月とレオがなんとか慰めようとしたが、自分たちも何も用意していないことから積極的に発言できないでいた。

 

「まあまあ。君たちに気を使わせたくなかったんだろう」

 

そう言いながら、マスターが奥から追加の料理を持ってきた。それはとても美味しそうなケーキだった。

 

「このザッハトルテを僕と君たちからの誕生日プレゼントとして手を打たないかい?」

『さすがマスター!!』

 

マスターの提案に全員が乗り、さらに盛り上がった。するとそこへ

 

「マスター、このスペシャルローストビーフと、パーティーオードブル追加で」

 

そんな注文があった。声の主は蓮司だ。全員がそちらに視線を向けると

 

「誕生日のと…あれだ、迷惑料だ」

 

食べながら蓮司はそう告げた。これには周りも苦笑を浮かべた。蓮司は蓮司なりに、迷惑をかけた自覚があったということで、その認識がなんだかおかしかった。

 

「…ああ、ありがとう、蓮司」

「おう、これで今後もなんかあれば奢ればいいということで、既成事実成立だ」

「それについては却下だ。奢れば迷惑をかけていいだなんて考えるな」

「ちっ…」

「お前は本当に素直じゃないな…」

 

もはや漫才のようなやり取りに、ついに周囲も笑いだす。

 

「あっははは!おっかしー!」

「エリカちゃん、わっ笑いすぎ…ふふっ」

『ははは!』

 

そんな笑いが巻き起こったところで、マスターが追加の料理を持ってきた。こうして急遽とり行われた達也の誕生日会は盛大に盛り上がった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

「それじゃあ、またねー!」

 

盛り上がったパーティーも終わり、店前で解散となった。会計も済ませ、その場に残ったのは、達也、深雪、そして蓮司の3人だけとなった。

 

「じゃあ、俺も帰るわ。じゃあな…ふぁ…」

 

ここで蓮司もその場を離れようとしていた。その蓮司を達也は呼び止めた。

 

「そうだ蓮司、一つ聞きたいことがあったんだ」

「あん…?」

 

そう、色々タイミングを逃していたが、達也は蓮司にどうしても確認したいことがあったのだ。

 

「あの日…襲撃事件の日。保健室を出た後、どこに行ってたんだ?連絡もつかなかったから心配だったんだ」

 

そう、達也が聞きたかったことはこれだ。保健室で壬生に思いを語った後、蓮司は保健室を出てそのまま連絡が取れなくなった。ブランシュ殲滅メンバーの選出の際、戦力になるからと十文字より蓮司を呼び戻そうとしたが、連絡が取れなくなっていた。悠長に待っていることもできなかったため、その場のメンバーだけで出撃したのだ。

そうして向かった廃工場は既に殲滅が完了していた。物証はない。状況証拠すらない。それでも考えてしまった。あの廃工場を襲撃したのは…

 

「むしゃくしゃしたからそのまま帰った。連絡に出なかったのは知り合いと長電話しちまったからかもな。それがどうした?」

 

あっけらかんと、蓮司はそう答えた。

 

「…いや、何でもない。襲撃のあった後だったからな。少し心配だったんだ」

 

達也はそう返した。もとより、何かの確証があったわけでもない。達也は深くは聞かず、納得することとした。

 

「そうか、じゃあな」

「ああ、またな」

「それでは龍童君。また明日」

 

結局、それ以上話すことはなく、3人はそこで別れた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その日の夜、場所は達也と深雪の家。二人はティータイムを楽しんでいた。そんな中で、深雪はずっと気になっていたことを達也に尋ねた。

 

「お兄様、1つよろしいですか?」

「なんだい、深雪」

 

正直、これを聞くことは少し躊躇いもあったが、それでも確認したかった。

 

「お兄様は…龍童君がブランシュを壊滅させたとお考えですか?」

「……」

 

そう深雪に聞かれた達也は、しばしの間黙っていたが、やがて静かに答えた。

 

「…ああ、正直、なんの証拠もないけどね。タイミング的にも、どうしても考えてしまうんだ」

「お兄様…龍童君は…」

「何度も言うが、確証は何もないんだ。ただ、そんな気がしたというだけさ」

 

そう答えながら達也は深雪の頭をなでた。深雪は一瞬驚いたものの、達也に身を任せ甘えることとした。

 

「心配かけたね、深雪。…それに、確かに蓮司のことを考えていたが、襲撃そのものを考えていたわけではないんだ」

「では…?」

 

では達也は何を考えていたのか、まだ深雪には分かりかねた。

 

「保健室で蓮司が言っていたことが気にかかってな…」

「!…それは」

「ああ」

 

そこで達也は蓮司が言っていたことを復唱した。

 

「魔法師は、なろうとしてなるものではなく、なるべくしてなるもの。魔法師として生きるかどうかは、生まれた瞬間から決まっている。“人間”と“魔法師”は何もかもが違う。生まれ、存在、“種族”がそもそも違う」

 

そう、達也が引っかかっていたのはこの言葉だった。事前に八雲から話を聞いていたとはいえ、こうもはっきり本人の口から聞けば、蓮司が魔法師主義であることは明白だった。

 

「…ですが、その考えは横暴とも取れませんか?世の中には…」

「もちろんそうさ。普通の出自から魔法師になって成功した人だっている。蓮司の考えは極端なものとも言えるさ」

 

だが…とここで達也は話の方向を少し変えた。

 

「だが蓮司が言っていたことも真実の1つだ。中途半端な力ではこの弱肉強食の魔法師世界は生きられない。そして、魔法や魔法師界の危険性を知らないまま、あるいは知らされないまま安易に魔法師になろうとする者が多くいる。政府や国は敢えてそれを知らせず、魔法師を量産しようとする。それはとても危険なことでもある」

「お兄様…」

「そして、その危険性は、俺たちのように魔法に深くかかわっている者ほど理解している。俺たちは、このことをよく考えなければいけない」

 

達也は、そう深雪を諭した。確かに蓮司の考えは極端なもので、それだけが真実とはならない。しかし蓮司の思考は1つの真実を語ってもいた。だからこそ、安易に違うと否定してはいけない。そこで思考を止めてはいけないと、達也は考えた。

 

「それにな、深雪…俺にはあの時の蓮司が…泣いているように見えた」

「泣いて…ですか?」

 

達也の言葉の真意を測りかねた深雪は、ただ疑問を浮かべることしかできない。

 

「人間は魔法師にはなれないし、魔法師は人間にはなれない。一見、差別的な発言に聞こえる。だがあの時の蓮司の姿から、俺には蓮司がこう言っているように聞こえたんだ…」

 

 

―”魔法師”としてではなく、”人間”として生きたかった。”魔法師”になんてなりたくなかった、と―

 

 

 

―かつて全てに絶望した少年がいた―

―人間に。魔法師に。世界に。そして自分自身に—

―全てに絶望し、己の境遇、そして運命を呪った―

―だがそれでも、彼は生きることを選んだ―

―それは答えを得るため。己の存在、その意味、その先の答えを得るため―

―これは、そんな”魔法師”の物語―

 

 




はい、というわけで第19話、入学編のエピローグでした。いかがでしたでしょうか。

今回の達也君のお誕生日会は無理やりにでもやりたくて、時系列が前後する形になりましたが、ちょっと無理やり入れてみました。話に違和感を感じた方がいるかもしれませんが、どうにかしてやりたかったんです。

最後の達也君と深雪ちゃんの会話。蓮司君の主張を良し悪しだけのものにしたくなくて入れました。正解はないな、というのが私の感想です。

では、今回はここまでです。

ここで1つお知らせです。次回から九校戦編に入りますが、話を改めて纏めたいので、少しの間投稿をお休みします。劣等生、優等生ともに読み直して再開したいと思います。
続けようと思えるのも、この作品に気にかけていただける皆さんのおかげです。本当にありがとうございます!

それでは次回、第20話でまたお会いしましょう。それでは!
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