いやあ、昨日お話を投稿してからのUAの数がすごくてびっくりしました。待っててくれてたんですね...本当にありがとうございます!これからも頑張ります!
さて、今回のお話ですが...またも蓮司君の主張があります。そして変わらず極端です。そういう考え方もある、ということでお願いします。
それでは、どうぞ!
授業が終わった後、達也は深雪と合流し生徒会室に向かっていた。というのも…
「まさか俺がエンジニアをすることになるとはな…」
そう、達也は今日の昼休みに九校戦におけるエンジニア、つまり技術スタッフに選考された。昼食時にエンジニアに悩んでいる姿を見せていた真由美たち上級生の前で、あずさが達也をエンジニアにしてはどうかと提案したのだ。それからはあっという間に話が進んでしまったのだ。最初は二科生であることや選手側との信頼関係を切り出し、達也は辞退しようとしていた。しかしここで思わぬ援護があったのだ。しかも敵側への。
「私は九校戦でも、お兄様にCADを調整していただきたいのですが…だめ、でしょうか」
なんと深雪も達也をエンジニアに推薦したのだ。こうなってしまってはもう遅い。
「そうよね!やっぱりいつも調整を任せている、信頼できるエンジニアがいると、選手として心強いわよね、深雪さん!」
「はい!兄がエンジニアとなれば、私だけじゃなく、北山さんや光井さんも安心して試合に臨むことができると思います!」
「よーし!それじゃ決定!今日の放課後の準備会議で正式に協議しようと思うので、今日は一旦生徒会室にきてね、達也君!」
こうして、達也のエンジニア入りの可能性がぐっと高くなった。
そんなこともあり、現在達也と深雪は生徒会室に向かっていた。達也は若干自嘲気味だが、深雪はとてもご機嫌だ。何せ、九校戦でもCADを見てもらえるかもしれない上に、上級生たちが達也を高く評価しているのだ。お兄様大好きな深雪がこれを喜ばないわけがない。
こうしてそれぞれの思いを抱きながら生徒会室に入ると…
「辞退で!」
「させるわけないでしょうこの暴れん坊後輩!?」
突然、言い争いの場面に遭遇してしまった。当事者は同級生の蓮司と先輩の真由美だった。あまりにも珍しい組み合わせだったため、達也と深雪は訳が分からずその場で固まってしまった。
そうしている間にも言い争いが進んでいく。
「なんでっすか!出るかどうかなんてそれぞれの意思でしょうよ!」
「理由も聞かずに認めるわけないでしょこのあんぽんたん!」
「メンド―だから!」
「それで認められると本気で思ってるの!?」
「じゃああれだ!当日ケガするから無理だ!」
「今してないなら却下よ!」
「何で認めないんすか!こんないたいけな後輩の頼みを!」
「いたいけな後輩は、殺気で人を脅さないし、先輩に暴言吐いたりしないし、怒りに任せて人を攻撃したりしないのよ!」
「だあもう!この横暴!分からず屋!お子様低身長!」
「言ってはならないことを言ったわねえええええ!」
ますますヒートアップしていく両者の主張。だが段々内容が幼稚なものになっている。このままでは埒が明かないと判断した達也と深雪は、最も冷静と思われる鈴音に事情を聞くことにした。
「蓮司はどうしたんです?あいつがあんな風に感情的になるなんて珍しいんですが…」
「…九校戦のことなんですが、龍童君は学年主席ということで選手として代表になることはもちろん、2種目出場が決定していたんです」
「当然だと思います。それで何が?」
「先ほど、唐突に生徒会室に来たと思ったら、突然の辞退を言いだしたんです。理由は先程のような適当な内容ばかりで…はっきり言って、そんなものが認められるわけがありません」
それはそうだ、と達也と深雪は同時に思った。先ほどの内容が理由なら、絶対に認められるわけがない。それが本当の理由なら。
達也たちはともにため息をつきながら、二人を宥め始めた。
「蓮司、落ち着け。そんな適当なことばかり言っていては、何も進まないぞ」
「達也…」
「会長も落ち着いてください。こういう時こそ冷静にです」
「はあ、はあ…そうね、彼のペースに呑まれていたわ…ありがとう深雪さん」
仲裁が入ったことで、なんとか落ち着きを取り戻した両者。生徒会室が静かになったところで、
「なんだ、もう終わりか。真由美がペースを乱されるなんて珍しかったから、もっと眺めていたかったのに」
「敢えて放っておいたのね、摩利…恨むわよ…」
摩利が涙目でそう発言し、真由美がジト目を送った。どうやらここまで摩利が静かだったのは、場の空気に呑まれたからではなく、珍しい親友の姿を見るのが楽しくて黙っていたかららしい。
そうして空気がリセットされたところで、今度は達也が蓮司に尋ねた。
「それで、どうしたんだ蓮司?お前が面倒なことを嫌う性格なのは理解しているつもりだ。だが、今回のことは唐突すぎるぞ」
「それを言うならこの選出だってそうだろうが。知らねーぞ俺はそんな選出基準…それが分かってたら、端から試験なんて手を抜いたっての…」
「私に勝っておいてそんな我儘は許しませんよ、龍童君」
試験で手を抜けばよかったという蓮司に対して、深雪は冷ややかな視線を送る。やはり、試験結果は相当悔しかったようだ。対して蓮司はどこ吹く風といった様子だ。
「この学校では常識だし、通知だってされていたはずだがな。それに普通の生徒は九校戦の出場を1つの目標に掲げている者も多い。今まで怪我や病気でない限り、出場を辞退する生徒などいなかったはずだ。」
「んな名誉に何の意味があるんだよ阿呆らしい…」
どうやら、相当九校戦に出ることが嫌らしい。嫌だの一点張りで話が全く進まない。達也はため息をついた。普段からは考えられない頑固さに、どうしたものかと達也が考えていると…
「龍童君。どんな内容でも構いません。ちゃんと理由を話してくれませんか?」
深雪が蓮司にそう話しかけた。これには達也が驚いた。こういう時、いつも前に出ていたのは達也だったからだ。
「さっきも言ったろ…面倒なんだよ。それに出る意味を感じねえ…」
「それが全てではないはずです。確かにあなたには高い実力、それを活かす知能もあり、同年代の魔法科高校生たちはレベルが低く感じるかもしれません」
そこで深雪は一旦話を区切り、改めて蓮司をまっすぐに見つめた。
「ですが…魔法師の弱肉強食を肯定しているあなたにとって、九校戦の舞台はある意味であなたの求める場なのではないですか?」
「…っ」
「各校の実力者が集い、鎬を削ることは、龍童君の思想に合っているはずです。だとしたら、それ以外の理由があるはずです。それをちゃんと話してくれませんか?」
「…」
深雪はただ真っすぐに蓮司を見つめ、そう問い詰めた。全員が事の成り行きを見守っている。正直、蓮司が深雪に押されるなど、考えもしなかっただろう。
深雪はただ黙って、しかし蓮司からは一切目を離さなかった。その視線を受けた蓮司は、う~~、だとか、あ~~、だとか唸り、頭をガシガシ乱暴に描いた後、静かに話し始めた。
「…嫌なんだよ」
「何がですか?」
「…魔法を使うのが」
「?…普段と何か違いますか?」
「大勢の前で使うのがだよ…」
「…つまり、どういうことですか?」
「~~~ッ…だから、一般人も含めた大衆の面前で使うのが、だよ!」
『!』
その言葉に全員が反応した。鈴音とあずさにはよく分からなかったが、あのブランシュ襲撃事件後の保健室にいた他のメンバーは、ようやく蓮司が何を言いたいのかを理解し始めた。
蓮司はそこまで話し、乱暴に椅子に座った。
「…前にも言ったが、”人間”と”魔法師”は何もかもが違う。決して超えられない壁が存在している」
蓮司は苦虫をつぶしたような顔で話し始めた。できれば話したくなかった、という顔だ。
「一般人どもは、魔法師が活躍する場を見て魔法師に憧れる。”私もああなりたい”って、魔法師の放つ光に目がくらむ。そうして下の世代のやつらは魔法師になろうとする。…その結果が、ブランシュの襲撃事件なんじゃねえのかよ。魔法師に憧れなんか抱かせるから、ああいう連中に利用されることになるんだろうが」
九校戦は魔法科高校の全国大会でもあり、その様子はテレビ中継される。普段魔法と関わりのない人物でも、その瞬間は魔法をその目で見ることができる。
だからこそ、蓮司は危惧する。また魔法師に”なろう”とする人間が増えると。何より…
「その片棒を俺に担げと?冗談じゃない。政府の魔法師擬き量産計画に手を貸すなんざ御免だ」
面倒だなんだと言っていたが、それが蓮司の本音だった。蓮司にとって、魔法師はそういう存在として生まれる者だ。だからこそ、国や政府が掲げるような魔法師の量産計画は嫌いだった。その計画の一端である九校戦に参加することは本当に嫌がっている。無論、
面倒くさいというのも本音だが。
全員が蓮司の主張を黙って聞いていた。特に、襲撃事件の日に保健室にいたメンバーはより真剣に聞いていた。自分たちとは全く異なる考えを持つ蓮司。しかもそれは、魔法師の闇を体現していたようなものだった。それが全てではないとは理解していても、その闇があることも事実。だからこそ、迂闊な発言が出来ないでいた。
「龍童君、話してくれてありがとうございます」
そんな中で、一番最初に発言したのは深雪だった。全員が、事の成り行きを静かに見守っていた。
「九校戦の優勝を目指している先輩方を前に、本音を言いたくはなかったんですよね?例えあなたが関心を持ってなくても、目標を持って努力している皆さんに水を差したくなかったから」
「…」
「あなたの思いは理解しました。そのうえで聞いてくれませんか?」
「…なんだよ」
深雪は蓮司から目を逸らさず、静かに話し始めた。
「確かにあなたの言うことも一理あるかもしれません。魔法の脅威や危険性を大人が誰も伝えず、ただ魔法師の輝いている場面だけを見せて魔法師になるように勧める。これはとても危険なことだと、私も思います。」
「…」
「魔法はただの技術ではありません。他のどの分野よりも未発達です。加えて、現在の魔法は大多数が軍事活用されています。現在の環境で魔法に関わるということは、文字通り己の命を危険にさらす可能性がとても高いです。そんな中で、一般の方が魔法師になろうとすることは、あなたにとってとても受け入れがたいことでしょう」
「…おう」
深雪は静かに、淡々と蓮司に話しかける。1つ1つ、確かめるように。
「それでも、私は九校戦のような舞台は大事だと思います。それは、ただ魔法師の光を見せるだけでなく、魔法師の可能性を、そして未来を広げることに繋がっていると思うからです」
『!』
蓮司だけでなく、この場の全員が息を呑む。
「九校戦において重要になるのは個の選手の実力だけではありません。魔法の使い方、見せるタイミング、組み合わせ、工夫、選手を支える技術スタッフとの連携…あらゆる要因が重要になります。そしてそこで披露される魔法は、必ずしも軍事利用されるわけではありません。今ではまだ少ない、魔法師の経済的な活躍の場を広げる可能性にも繋がります」
「…」
「そうなれば魔法の危険性も減らされ、より多くの魔法師の未来を広げ、安全な社会を作るきっかけにもなるんです」
「…理想論だ、んなもん」
「かもしれません。ですがそれに向かって努力をしている人がいることも、私はよく知っています」
そこで深雪は達也を見た。それは達也の目標の1つでもあったからだ。そして再度、蓮司を見つめた。
「あなたの過去に何があったかは私には分かりませんし、この場で問いただすこともしません。私には想像もつかないような、つらい思いをしてきたかもしれません。…ですが私は、そんなあなたにこそ九校戦に出てほしいと思います。魔法の危険性を誰よりも知っているであろうあなただからこそ、これからの魔法師のあり方を変えてほしいんです」
真剣なまなざしで、深雪は話していた。彼女も魔法に深く関わる者の1人であるからこそ、今の魔法師のあり方だけでは危険なことをよく理解していた。何より以前、達也と約束したのだ。魔法師のこれからについて、考えることを決して止めないと。
ここまで話し、今度は茶目っ気を交えて蓮司に答えた。
「それに今年の九校戦は、会長たち3年生にとって三連覇がかかった大事な大会でもあります。先輩たちの悲願に、普段から迷惑をかけているあなたも出場して協力してあげてもいいのでは?」
「サラッと嫌味を言いやがってこのやろう…」
蓮司は苦笑でそう返した。そこでようやく、重い空気が解放されたような気がした。
蓮司は深くため息をついた後、そっぽを向きながら答えた。
「…1種目だけだぞ、会長さんよ」
「え?」
「九校戦の種目、1つだけ出る。2種目は断る。断じてそれは嫌だ。その代わり…」
不貞腐れたように、しかしはっきりと不敵に答えた。
「出る種目は絶対優勝してやるよ」
相変わらず、先輩に取る態度ではなかったが、その宣言はとても力強いものだった。最近の生徒で、ここまで強気な発言をするものがいなかったからか、それはとても新鮮でもあった。
「はあ~~~~…君は本当に…」
真由美は大きくため息をついた後、苦笑しながら答えた。
「いいでしょう。君は1種目だけですが九校戦に参加してもらいます。そこまで言ったからには、優勝以外認めませんからね?」
「当然っすよ」
ようやく話がまとまった。こうして蓮司の九校戦出場が決まったのだった。
はい、ということで九校戦編第2話、通算21話目でした。いかがでしたでしょうか。
繰り返しですが、蓮司君の主張は偏りすぎです。悪いところを突き詰めたようなものです。ですが、この魔法師の世界では平然と起こっていることでもあるんです。そこはご理解ください。
あと、前回に引き続き蓮司君と真由美さんの言い争いがありました。あのやり取り自分で書いておきながら結構気に入っているんですよね。なので三度登場です。
ちなみに真由美さんがどこまで体型のことを気にしているかは分かりませんが、この作品では結構気にしていることにしました。
そして深雪ちゃん。19話目で達也君に言われていたことをしっかり活かしてましたね。内容については19話目をもう一度お読みください。その説得の甲斐あって、蓮司君の出場決定!何に出るかは後程。
さて、今回はここまです。また次話でお会いしましょう。それでは!