さて、今回は蓮司君の無双回!...になったかな?結果はきっと無慈悲に終わるでしょう!
それでは、どうぞ!
クラウド・ボールは、圧縮空気をシューターから射出された直径6cmの低反発ボールを、ラケットまたは魔法を使って制限時間内に相手コートに落とした回数を競う競技だ。1セット3分の制限時間で透明な箱に覆われたコートの中へ20秒ごとに追加射出され、最大9個ボールを選手は休みなく追いかけることになる。ちなみに女子は3セット、男子は5セット行われる。
「この試合、真由美はどう見る?」
場所は部活連本部から移動して校内にある競技場。クラウド・ボールようにセッティングされたコートには2人の生徒がいた。
1人は蓮司、もう1人は真由美に抗議した2年生だ。
蓮司の選出に納得しなかった2年生選手が蓮司との口論(一方的に捲し立てただけとも言える)の末、納得できないなら試合をして実力を示す、ということになった。
その試合の様子を、本日の会議にいた全員が観戦している。
ここで、真由美の隣にいた摩利が彼女に尋ねた。
「予想が付かない、というのが正直な感想ね。彼だって去年の新人戦クラウド・ボールで3位の実績を残しているわ」
「ああ、だからこそ蓮司君に勝負を挑んだんだろう。あいつも言っていたように、魔法が使えることと、試合ができることはまた意味が違う。それでも…」
「ええ。蓮司君が負けるところが想像できないのよね」
結論から言うと、根拠はないが蓮司が勝つ、というものだ。それは実際に蓮司が魔法を使うシーンを目撃しているからかもしれない。
一方、同様に勝負の予想を1年生たちもしていた。
「アイツ、本当はバカだったんだな」
「ああ、実績ある先輩と試合して決めるとか、無謀すぎるだろ。なあ森崎?」
「ああ。…ようやくアイツの鼻っ柱が折れるところを拝める」
男子の予想は蓮司の敗北だった。それは先輩の実力もそうだが、調子に乗っている(と思い込んでいる)蓮司に負けてほしい、という願望もあった。
女子の方はというと…
「蓮司さんが負けるところなんて想像がつかないよ!ね、雫?」
「うん。何か飛び抜けたことをしてくれそう。」
「確かに!蓮司君なら何かやってくれるんじゃないかな!」
「あり得るね。僕たちの予想を裏切る何かをしてくれるんじゃないかな」
こちらも真由美たちと同様、根拠はないが蓮司の勝利と判断していた。ほのか、雫、エイミィ、スバルという蓮司と仲のいいメンバーを中心に話が進んでいるため、女子グループは蓮司寄りになっていた。
「お兄様は、この試合をどう思われますか?」
1年生グループとは少し離れたところで、深雪は達也に話を振った。
「そうだな。蓮司の最大の武器はサイオンコントロールだ。針の穴を通すことより繊細にサイオンを操り、1つの魔法を放つのに適切なサイオンを放出できる。余計なサイオンを使わないから、スタミナ勝負は特に強いだろう」
「確かに、龍童君のスタミナはかなりのものだと思います」
「加えて魔法の大量展開も武器だ。クラウド・ボールは極論、自陣にボールが落ちなければ失点しない。相手のコートに返す魔法を連続で発動するか、自陣に返ってくるボールが落下する前に打ち返せば勝てる」
「…どちらで考えても龍童君に有利ですね」
想えば、これほど蓮司に最適な魔法競技もないだろう。これはもしかしたら、ある意味で悪い結果になってしまうかもしれない。
そうこうしているうちに、それぞれの準備が整ったようだ。
2年生選手は動きやすい半袖短パンのスポーツウェアであり、ラケットを構えている。そのスタイルからして、加速魔法で自身のスピードを上げ、ボールを打ち返すスタイルなのだろう。
一方の蓮司は、体育の時に着用する体操着を身にまとっている。その姿でポケットに両手を入れて、仁王立ちしている。手首にいつものCADをつけていたが、まだ構えていない。
少ししてブザーが鳴り、試合が開始された。
シューターよりボールが射出され、2年生選手のコートに向かった。それを瞬時に動き、打ち返す。
「え、動き速い!」
「流石、新人戦3位は伊達じゃない」
ほのかと雫は驚いていた。流石は去年の新人戦で結果を残しているだけあった。
だが、すぐに試合の展開が変わる。
蓮司が僅かにCADを操作したかと思うと一瞬にして大量の魔法陣が展開された。それもコートの真ん中に、まるで壁のように展開されていた。
『はあああ!?』
これには蓮司の魔法を見たことがないほとんどの生徒たちが悲鳴を上げた。魔法を展開してボールを返す場合、普通はバウンドする箇所に魔法を展開し、相手に打ち返すことが普通だ。それを壁のように一度に魔法を展開し、そもそも自陣にボールを来させないなど、一体誰が考えるだろうか。
20秒ごとにボールが増えていくが、蓮司のコート側から射出されたボールが魔法陣の壁にぶつかる直前、その部分の魔法陣が消されている。そしてボールが相手コートに入った瞬間、再び魔法陣が出現するため、ただ時間の経過とともに相手のコートにボールが増えていくだけだった。
2年生選手がいくら高速移動しボールを打ち返そうと、目の前に壁として立ちはだかる魔法陣に当たり、また自陣に返ってくる。壁を突破しようにも、その干渉力は相当なもので、突破することが出来なかった。
一方の蓮司は相変わらず立ったまま、しかし暇そうにあくびをしていた。
「お兄様、これは…」
「ああ…あまりにも相手選手が可哀想だ…」
「真由美、これは…いいんだろうか…」
「ルール上はCADのスペックは競技の規定範囲のもので、その範囲で展開できたのであれば問題ないけど…これはもう…」
「雫…これってあり、かな?…」
「問題がないことはない、けど」
「さすがに私も哀れに思うよ…」
「そうだね…これはもう試合じゃなくて…」
この時、観戦していた全員の心が一致していた。
『これは試合じゃなくて、リンチだろう…』と…
目の前には、ただ壁打ちをしている2年生選手と、それを退屈そうに見つめる蓮司という、なんとも哀れな構図が誕生していた。
3分後、決着がついた。結局、2年生選手は蓮司の魔法を突破することが出来ず、時間経過とともに増えるボールにも対抗できず。ただただ点を取られ続けた。一体何点取られたのか、途中から訳が分からず何も見えなくなった2年生は、倒れながらもスコアを確認し…絶句した。スコアボードには無慈悲な数字が載っていた。
231―0
勝負どころか、遊びにすらならない、圧倒的な敗北。まだ1セットだが、この後2セット以上も続けるスタミナは、もう2年生選手には残されていなかった。
「そこまでだ。試合の続行は不可能と判断し、龍童蓮司の勝利とする」
ここで十文字が試合を終了させた。
「先ほど、龍童の実力が不透明という話が出ていたが、これでもう十分だろう。これ以上何かあるなら、今度は俺が話を聞こう」
達也の時と同様、十文字が発言してしまえば、もうそれ以上反論することなど、できるわけがない。こうして蓮司の代表入りは正式に決まることとなり、同時に、出場種目もクラウド・ボールで決定することとなった。
試合後、蓮司は未だに起き上がっていない2年生選手に歩み寄り、しかし手を差し向けることもせず、ただしゃがんで話しかけていた。
「よう先輩さん、どんな気分だよ?魔法が出来ても試合は…なんだっけ?」
「はあ、はあっ…だ、まれ…!」
「散々言いたいことを言って、意気揚々と受けた試合も無様に負けて…みっともないよなあ?実績持ちさんよ」
「…っ」
「別にあんたの功績をバカにしちゃいねえよ。ただな…」
そこまで話し、蓮司は立ち上がって背を向け、最後の言葉を放った。
「噛みつく相手は選びな。魔法の世界にゃ俺より年下で…俺より強い奴だって探せばきっといるだろうぜ」
それを最後に、蓮司はコートから退場した。2年生選手はその背中を、地面に倒れながら見つめることしかできなかった。
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「見事だ、龍童。あれほどの魔法をそのいつもより低スペックのCADで発動させたその魔法力は称賛に値する」
「どうもっす、会頭」
「だが、奴が言っていたように、お前の上級生に対する態度は看過し難い。これからはちゃんと敬意を持て」
「さっきも言いましたけどね、敬意を表す相手は選んでるんすよ。あいつにはそれがなかっただけだ」
「お前から見てそうでも、上級生たちはお前より1年以上も魔法科第一高校の生徒として、この学校に貢献している。そのことに敬意を表せ、と言っているんだ」
「…」
「今のお前は誰でもない、魔法科第一高校1年生の龍童蓮司だ。その意味を正しく理解しろ」
「…はいよっす」
蓮司が十文字の言うことをおとなしく聞いている。これには彼を知っている面々は唖然とした。これまでどんな先輩の言うことにも素直に頷いたことなど、ただの一度もなかった。それが、淡々と述べた十文字の言葉には素直に従っていた。もっとも、素直に受け入れているかと言われれば、そういった様子ではないが。
「ほら、言った通りでしょう?龍童君と話すときは、下手に詭弁を使うより真っすぐに言葉をぶつけた方がいいと」
深雪はにこにこしながら達也にそう告げた。自分の考えが当たって、少し楽しそうだ。
「なんなら、見た目だけ大きい子供に言い聞かせるつもりでいいんだと思いますよ?」
「敵わないな…流石だな、深雪」
達也は深雪をそう褒め、頭をなでた。それに深雪はさらに嬉しそうだった。
真っすぐ蓮司と向き合う。それを今後の参考にしようと達也は誓い、ほのかたち女子メンバーと言葉を交わしている蓮司のもとへ向かった。
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『なあなあ蓮司君。ハーレムが出来つつある気分はどうだい?同級生から先輩、お子様体型からスレンダー、巨乳ちゃんまで選び放題!1人分けてよ蓮司君!私のテクなら必ず堕とせるから!』
「要件がそれなら二度と連絡すんじゃねえよこの雑食淫魔」
帰宅後、また例によって美琴からの連絡がきたかと思うと、開口一番にそんなことを言い始めた。蓮司はこの手の会話は何度もされているとはいえ、いい加減うざったかった。
『しかし、君が九校戦にねえ…なんの冗談だい?君はこういうのは特に嫌いだったと記憶してたけどねぇ』
「…別に…気まぐれだ…」
『気まぐれで信念を曲げるほど、君はやわじゃないだろうに。まあいいさ、それよりも…』
不意に美琴の視線が鋭くなった。普段のお気楽な様子からは想像もできない表情だったが、蓮司も同様に視線を鋭くした。
『今回に関して言えば私は反対だね。それは、君も分かっているだろう?
「…」
『今からでも遅くない、辞退したほうがいい。なんなら…』
「美琴」
美琴の話を遮って、蓮司が言葉を発した。表情は真剣なもので、冗談は許さない雰囲気だった。その声を聞き、美琴は発言を中断した。
「どんなに小さいものでも…約束を破ることだけは嫌だ。出ると自分で言った以上出るし、優勝すると言ったからにはそれ以外はありえない」
蓮司らしからぬ、真っすぐな瞳だった。だがそれだけ、その思いは本気だった。
少しの間、沈黙が支配したが、やがて美琴が折れた。
『はあ…分かったよ、まったく。そういうところは本当に変わらないねぇ、君は。頑固で律儀、苦労性だよ』
「ほっとけ」
『でも本当に気を付けるんだよ。何かあってからじゃ遅いんだからね』
「…ああ、じゃあな」
はい、というわけで九校戦編第4話、通算23話目でした。いかがでしたでしょうか。
2年生選手...哀れ...
この戦法ありですよね?ルールには抵触していないはずです。周りもあんまりな光景に唖然としていました。
ちなみに、十文字さんは蓮司君の意外な天敵であることが今回判明しました。この関係性は使えるぞぉ。
そして最後の美琴さんとの会話。果たしてどういうことでしょう。今後を楽しみにしていてください。
さて、今回はここまでです。
皆さん2年生選手相当ボコボコにしてほしかったみたいですね(笑)感想コメントに思わず笑ってしまいました。
そしてここで1つ補足です。前話における選定会議ですが、原作ではここに深雪さんはいません。しかし本作ではそれに気づかず出していました。大変申し訳ありません。一応、この作品のオリ展開の1つとしてください!
それでは次回、またお会いしましょう!それでは!