完全オリジナルってやっぱり難しいですね。作っては消し、作っては消し...そうやっていたら遅くなってしまいました。楽しんでいただけたらと思います。
それでは、どうぞ!
「あ、おーい!やっと見つけたのじゃ!どこにおったんじゃまったく!」
蓮司の目の前で揉め事が行われていたためスルーして通り過ぎようとしたところ、その喧騒の中心にいた小柄の女子に大声で呼ばれた。全く予想もしていなかった展開に、流石の蓮司も固まってしまった。
そうしている間にも小柄な女子は、蓮司のもとへ駆けつけていた。もはや訳が分からず、ただ蓮司は立ち尽くすばかりだった。
「まったく~、今日は儂らを案内してくれるという約束だったじゃろう!どこに行っとんたんじゃ?」
いかにも「昔馴染みです」といった話し方だが、蓮司は本気でこの二人を知らなかった。ここで蓮司は、目の前の少女の顔を改めて見た。
こちらに笑いかけているが、若干引き攣っている。どうにも焦っている表情だ。どうにか話を合わせてほしい、といった様子だ。
(うわあ…面倒にもほどがある…)
奥の方をちらりと見ると、男たちは突然の展開について行けずただ茫然としており、そこに取り残されている短髪の女子は相当動揺しているようだ。気持ち的には「お前何言ってんの!?」という気分なのだろう。
さてどうしようか、と少し考え…
「阿呆か
敢えて乗ることにした。理由は特にない。強いて言うなら暇だったから。新作ドーナツを大量購入出来て気分がよかった、というのは関係ないと蓮司は自己完結させた。
対して、目の前の加奈子と命名された少女は乗ってくれることに安堵したのか、親し気に会話を開始した。
「あれ、そうじゃったかの?確かに駅の出口にいたはずじゃが…」
「どうせ出口を間違えたんだろうが。こっちから連絡してやったのに出ねーとかまじでねーわ」
「す、すまん…」
「普段から落ち着けって言われてんだろ。これだからお子様体型なんだよ」
「今は関係ないじゃろう!?会って早々に失礼じゃな!?」
話の方向性がおかしくなりつつあるが、ここまで話せば知り合いどころか昔馴染みに十分見えるだろう。そう判断した蓮司は、奥にいる短髪の女子に声をかけた。
「
「いい加減にせんか!」
小柄な女子が変わらずピーピー言っているが蓮司は無視した。すると、短髪の女子の方もクスリと笑い、
「そうね、早く行きましょう」
絡んできていた男たちから離れて蓮司の側へ進んだ。そうして移動が完了したところで、蓮司は改めて男たちに声をかけた。
「連れが悪かったな。つーわけでナンパは失敗だ、他を当たりな」
しっしっと手首で軽く追い払う仕草を見せて2人を連れて行こうとした蓮司だったが、
「待てよお前、誰の許可得てここから離れようとしてんだよ」
「つーか王子様気取りかよ?悪いこと言わねーからその子たち置いてけ。痛い目に合いたくないだろぼくちゃん?」
どうやらこの2人組は相当しつこい類らしい。自分たちに従わないやつが許せない、といったところだろう。男の1人は去ろうとする蓮司の肩を後ろから掴んで止めた。
しかしこの場にいる者は当然だが誰も知らない。目の前にいる男がどういった存在なのか。無闇に手を出したらどうなるか。
それはその身をもって知ることとなる。
ガッ!と蓮司は自身を掴んだ腕を掴み、握りつぶすかのように力を入れた。
「が、ああ!?て、てめ…」
「誰の許可を得て俺を掴んでんだ…てめえ…」
ドスの効いた声で言葉を放ち、殺気を込めた視線で相手を睨む。その間にも込めた力は一切抜かず、寧ろどんどん強くなる一方だ。
突然の殺気と腕の痛みに、目の前の男の中にあるのは恐怖しかなかった。
(な、んだよ、こいつ…こ、こ、こ、殺される!!)
「があ、ああああ!?わ、分かった!俺たちが悪かった!だからっゆるっ、許してくれ!」
「ああ?」
「い、いや、許して、くださ、ああああああ!?ゆ、ゆるし」
「何言ってるか分かんねーよ。…まあ、今日の俺は気分がいいからな」
そこで蓮司は殺気を抑え、掴んでいた腕も離した。
「は、はあ、はあ!」
「これで見逃してやる。悪いことは言わねーからさっさと消えろ」
―死に目に合いたくはねえだろ、ぼくちゃん?―
「は、はいい!」
「す、すみま、せん!おい、い、いくぞ!」
手を出されなかった方の男が、もう1人に肩を貸し、一目散に逃げて行った。余計な怪我を負わせなかっただけ、蓮司は十分加減したつもりでいた。無論、そう感じていたのは蓮司だけだったが。
「…我ながら、なんという男に助けを求めようとしとったんじゃ儂は…」
「私たちまで殺されるかと思った…」
そう声が聞こえたためそちらを向いた。小柄な女子の顔は盛大に引き攣っており、短髪の女子は顔を青ざめていた。よほど生きた心地がしなかったのだろう。
「あ~~~…まあ、悪かったな。…だが俺は巻き込まれた方だし、巻き込んだのはお前らだし…うん、やっぱ俺悪くねえわ」
「すぐに手のひら返しおった!?」
「まあ落ち着けって。ほら甘いもんやるからよ」
「さっきといいお主は儂をなんだもぐぅ!?」
小柄な女子が変わらずギャーギャーと何かを言っていたため、とりあえず手持ちのドーナツを口に突っ込み黙らせた。そしてもう1人の方にも視線を向け、
「ほら、1つやるよ。今日の限定品だそうだ。味は中々だったぞ」
そう言いながらドーナツを食べるよう促した時だった。
「沓子!栞!どうしたの!?」
1人の少女がこちらに走ってきた。
鋭い目つきをしてこちらに近づいてくるが、日本人離れしたウェーブのかかった金髪が目立つ少女であった。
「おお、愛梨!実はさっき男に絡まれての…」
「なんですって…」
「それを、この人が助けてくれた」
愛梨と呼ばれた少女は2人より事情を聞き、蓮司の方を向いた。
「危ないところを助けてもらって、ありがとうございました」
「どっちかってーと、巻き込まれたって言い方が正しいな。まさか顔も名前も知らないやつに大声で呼ばれるとは思わなかったな…」
「私が少し離れている間に何してるのよ、あなた達…」
「達って、私を巻き込まないで。声をかけて近寄ったのは沓子」
「なにおう!?栞も最終的には乗ったじゃろう!」
そんなことを話していると…
ぐうう~~~ぎゅるるる~~~
突然そんな音が聞こえた。女子たちが不思議に思って発生源の方を見ると…
「腹減った…余計な体力使った…」
蓮司が何とも言えない表情をしていた。そんな様子に3人は呆れるばかりだった。
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ちょうど正午になったため、蓮司たち4人は近くの喫茶店で昼食をとることにした。
「そういえば、お名前を伺ってませんでしたね」
先程愛梨と呼ばれていた女子が、蓮司に改めて尋ねた。
「龍童蓮司だ。まあ、この辺に住んでるただの高校生だ」
「ただの高校生はあんな殺気は放たんと思うのじゃがな…」
適当な挨拶にもしっかりツッコミが入る。なんだか一校の仲間内での会話のようで蓮司は密かに楽しんでいた。
「はあ…改めて、一色愛梨です。よろしくお願いします」
「十七夜栞。よろしく」
「四十九院沓子じゃ。さっきは話を合わせてくれてありがとうの。ところで蓮司よ。1つ聞きたいのじゃが…」
互いに挨拶を交わしたところで、沓子が蓮司に質問した。
「なんだよ」
「お主、魔法師なのか?」
「…なんでそう思った?」
「なんとなく、お主の雰囲気や空気といったところか。後は…儂の感かの」
突然の話の展開だったが、蓮司は特に驚きはしなかった。蓮司もまた、目の前の3人の少女が魔法師であることは肌で感じていた。
「龍童…聞いたことないわね。一般家庭の出かしら?」
「少なくとも名家じゃねーな。一般かどうかは知らねーよ。そういうお前らも魔法師なんだろ?つっても、第一高校じゃ見たことねえがな」
「ええ、私たちは第三高校の生徒よ」
国立魔法大学付属第三高校は、石川県にある魔法科高校である。尚武の校風を掲げていて、戦闘系の魔法実技を重視し、実践的な魔法師の育成を看板にしているらしい。
「第三高校か…確か実践系の魔法師の育成に力を入れてるってとこだったか…しかし、なんでわざわざ東京に来てんだ?」
「な~に、気分転換じゃよ。九校戦まであと少しじゃが、たまには休んでもいいじゃろ。それでどうせなら、遠出をしようかと思っての」
わざわざ東京に来た理由はそういうことらしい。そして先の話から、この3人も九校戦の出場者だと知ることもできた。とはいえ、知ったところでどうにもならないが。
「お主は第一高校の生徒なんじゃな?」
「ああ」
「ではお主も九校戦に出るのか?」
「まあな」
沓子の言葉に対して蓮司はそっけなく答えた。元々九校戦そのものに興味がないから、仕方がない。
「まあ、勝つのは第三高校です。せいぜい頑張ってくださいね」
ここで、愛梨が若干の嫌味を混ぜながらも勝利宣言を入れてきた。彼女のプライドは相当高いようだった。対して蓮司はそっけなく答えた。
「おう、まあ頑張れ」
「頑張れって…あなたも出るんでしょ?その言葉はずれてるんじゃない?」
「九校戦に興味はない」
続いて出た蓮司の言葉に3人は固まった。対戦相手がその大会に興味がないと言ったのだから、仕方がないのかもしれない。
「…どういう意味かしら。よければ話していただける?」
愛梨は鋭い視線で蓮司を睨んだ。自身が高みへ上るための九校戦。そしてその舞台での優勝という目標。それを目の前の男は「興味がない」の一言で切り捨てた。無視できるはずがない。
一方の蓮司は胡乱な瞳のまま、肘をつきながら答えた。
「…全員がそうとは言わないが、九校戦に出るほとんどのやつらは”魔法師擬き”だ。中途半端な志、たかが高校生の魔法師の中での順位付け…そんなもんに固執する程度のやつらばかりだ」
蓮司のこの感想は、クラウド・ボールの練習相手がいなくなったことにも起因していた。九校戦に出る生徒がどれほどのものか興味があったが、蓋を開けてみれば相手にならなかった。
「そもそも、魔法は秘匿されるべきもんだ。他者に知られないからこそその神秘性は増し、より力を発揮する。一般人どころか、権力に固執するような阿呆どもの前で魔法を使うことにも納得がいかない。…今の世の中は、魔法を公開しすぎなんだよ。その一環の九校戦も好かないな」
蓮司の主張に対し、3人は静かにその話を聞いていた。蓮司の話は、これまでの自分の常識にはなかった考えだが、一理あるとも考えていた。幸か不幸か、この場に集まった者たちは全員が魔法に深く関わる者たちだったからだ。
「…お主、中々興味深い思考をしとるの。その発想は思いつかなんだ。しかしの蓮司よ、少々考えが足りんぞ」
最も早く反応したのは沓子だった。しかも蓮司の主張には不足する点があると指摘までした。
「…どう足りないんだよ」
「確かにお主の言う通り、九校戦に出る者たちの中には有象無象が多いかもしれん。…だがの、その中で上位に入る者たちにとって、九校戦は通過点にすぎんということじゃ」
「ほう…」
「それに一般人に見せたところで、手の内を曝すという意味では関係ないの。一般人に魔法の力は理解できんからの」
「ふむ…」
「己をより高みへ登らせるために、九校戦を”利用”する。そう考えた方が楽しくないかの?」
沓子の話を一通り聞き、蓮司は静かに思考を巡らせていた。確かにそう考えれば、本当の魔法師が勝ち残るのは明白であるし、その者たちにとって手の内を曝したところで関係ないのかもしれない。事実、蓮司が他人の前で魔法を使っても、それを他者が同じように使うことは出来ない。
「なるほど…そう考えればまあまだいいかもな。なら…」
そこで蓮司は言葉を区切り、好戦的な笑みを浮かべながら告げた。
「勝つのは第一高校だ」
その言葉に3人は顔を引き締めた。性別が違うから直接競うことはない。出る種目も分からない。それでも、同じ大会に出る以上はライバルとなる。
特に第一高校は優勝回数も九校の中で最も多い強豪だ。そこに所属する生徒からの挑発となれば、自然と気合が入った。
その言葉を受けて、愛梨、沓子、栞も力強く返答した。
「…あなたの考えは正直好まないけれど…その言葉は気に入ったわ。それでも勝つのは第三高校よ」
「そうじゃの。儂らもそれなりに強いからの。楽しんで勝つのじゃ」
「私は負けないわ、絶対に」
この3人の九校戦にかける思いは強いものだ。何より、己の力に自信と誇りを持っている。だからこその強気な発言だ。
(…いいな。こういう強気は好きだ…)
好戦的なのは蓮司も同様だった。蓮司は九校戦に出るのが億劫なだけで、元々勝負事は好きな方だ。そのため、こういった強気な発言をする人物は、蓮司の中では好印象だった。
「では、互いの宣誓も完了したところで…」
沓子が飛び切りの笑顔で告げた。
「今日は楽しむかの!案内頼むぞ、蓮司よ!」
「それは見逃してくんねーのかよ…やっぱちんちくりんに話を合わせたのが間違いだったか…」
「ちんちくりん言うな!?」
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その後、4人は街中を色々と歩いて回った。とは言っても、蓮司も特に詳しいわけではなかったので、気になる店をそれぞれが見つけてはそこに立ち寄るといったスタイルだった。なお、蓮司が気になった店は飲食関係ばかりで、途中から3人には止められることとなった。
「いやあ!今日は楽しかったのじゃ!」
「そうね、いいリフレッシュになったわ」
「うん、たまにはいいわね」
「お気に召したようで何よりだ…」
気付けばいい時間になり、そろそろ帰宅の時間となっていたため、蓮司は3人を駅まで送っていた。愛梨たちは満足そうな表情だったが、丸一日買い物や街の散策に付き合うことに蓮司は慣れていなかったため、流石に疲れた様子だった。
「それじゃあ、俺はもう行くぞ。」
「ええ、最後までありがとうね」
蓮司はそう告げ、3人とは別れた。蓮司が帰路に着いたところで、
「蓮司よ!」
後から大きな声で呼び止める声がした。何かと振り向くと、沓子が大きく手を振って笑顔で告げた。
「またの!次は九校戦じゃ!それが終わったら、また遊ぶのじゃ!」
さりげなく、九校戦以降も会う約束をしながら、笑顔で別れを告げた。
「ああ、またな」
蓮司もそれに対して、僅かに笑みを浮かべながら別れを告げたのだった。
「よかった…最後まで九校戦なんか面倒だって言わなかった…言ったら怒りそうだったしな…成長したなあ…俺…」
はい、というわけで九校戦編第6話、通算第25話でした。いかがでしたでしょうか。
三校女子組にいち早く出てもらいました。理由は好きだからです。
悩んだのは愛梨ちゃんです。こういう強気な子って割と好ましいんですが、この話を作るにあたって次の2つどっちにしようかすごく悩んだんです。
①蓮司君と愛梨ちゃんを喧嘩させる
②蓮司君と愛梨ちゃんを友達にする
色々考えた結果、②が採用されました。①も面白そうだったんですが、蓮司君に言わせる愛梨ちゃんへの悪口がまとまらなかったので没。
彼女たちの絡みは今後も増えます。そりゃあ、ここだけで終わらせませんよ!
それでは今回はここまでです。次回第26話でお会いしましょう。それでは!