年末はやはり忙しいですね。パソコンを開くことすらできずそのまま寝てしまう日もあります。投稿ペースもう少し早くしたいなあ...
それでは、どうぞ!
8月1日。夏休みに入り、いよいよ九校戦へ出発する日となった。
「達也」
「なんだ」
「暇だ」
「…だからどうした」
「なんか話せ」
「無茶ぶりにも程があるだろう…」
バスの外には達也、蓮司、摩利の3人が立っていた。今、第一高校の代表メンバーは、1人を除いて全員が集合している。達也は乗車確認のため外に待機していたが、後輩だけ外に出しておくわけにはいかないと摩利が出て、暇になったからと蓮司も出ていたのだ。
「大体話ってなんだ。お前の興味のありそうなものなんて食べ物くらいだろうに…」
「そうだな…じゃあ、深雪の家での様子を聞かせてくれよ。学校では優等生なお前の妹は、家ではどんな感じなんだ?」
「ほう、それは私も興味あるな。是非聞かせてくれ、達也君」
「委員長まで悪乗りしないでください…」
このままでは、深雪のことを色々吐かされてしまいかねない。しかもこの手の話においては、厄介な2人だっただけに、どう回避しようかと考えていたところ…
「ごめんなさ~~~い!」
ぱたぱたと、真由美がこちらに走ってきていた。集合していなかった1人とは真由美のことで、今日は家の急な用事で遅刻してしまったのだ。
近づいてきた真由美に対する反応は二極化した
「会長…ありがとうございます…!」
「た、達也君?なんでそんなに嬉しそうなの?」
達也は今までで一番真由美に感謝していた。なお当然ながら、感謝を向けられた真由美は困惑していた。一方で…
「ちっ…今来たのかよ」
「ああ、遅れるならもっと遅れてほしかったな。もう少しだったのに…」
「あなた達2人も何なのよ!?特に蓮司君!あなた今舌打ちしたわね!?」
いい話を聞きそびれた蓮司と摩利は残念がると同時に、ある意味悪いタイミングで到着した真由美に対して悪態をついた。真由美にとってはいい迷惑だ。
「蓮司、それに委員長、もういいでしょう。全員集合しましたので出発しましょう」
達也が最後の出欠確認を済ませ、移動を開始するよう促した。摩利はそのままバスに乗り、真由美もバスに乗ろうとしたところで、蓮司と達也の方へ振り向いた。
「…忘れ物ですか?」
「ううん、そうじゃないんだけど…ごめんなさいね、2人とも。私のせいで暑い中待たせてちゃって」
「中でブリザードに浸るよりゃましっすよ」
蓮司が親指でバスの中を指すと、真由美はその言葉の意味を理解した。
バスの中には非常に不機嫌な深雪の姿があった。恐らく達也が厚い中外で待たされている状況が嫌だったのだろう。笑みはなく、無の表情を浮かべていた。
「…改めてごめんなさいね、色々と…」
「いえ…」
「ところで2人とも」
改めて謝罪をした後、真由美はいたずら好きな笑顔を浮かべて達也に尋ねた。
「これ、どうかな?」
これ、というのは間違いなく、真由美の服装についてのことだろう。
真由美が現在着用しているのは花柄のサマードレスだ。腕は完全に露出していて、現代のドレスコードに照らし合わせば、少々大胆ともとれる服装だ。幅広の帽子も夏らしいデザインで、ポーズを取ればモデルともとれる姿だった。
「とてもよくお似合いです」
余計なことを言えばまたからかわれると判断した達也は無難なことだけ言うことを選択した。
「そう?ありがと!…もうちょっと照れながら言ってくれたら言うことなかったかな」
指を絡めた両手を腰の前へ伸ばしながら上目遣いで達也を見る真由美。しかしそれ以上の反応がなかったからか、今度は蓮司へ視線を向けた。
「蓮司君はどう思う?」
「そうっすね…」
この場にいる以上、矛先が向けられることは予想していた蓮司。しかしこの場において間違った選択をしたのは真由美の方だった。
「まず服装のチョイスがいい。この暑さ、季節に合わせたサマードレスをそこまで着こなせる人はそういない。少々露出がすぎる気もするが、それが逆に持ち前の美貌をさらに強調出来ている。ビーチサンダルもドレスとの組み合わせでより会長の上品さを表している。何よりも自身のスタイルがより強調されているところがたまらない。スカートから覗く膝、完全露出している腕、鎖骨。何より俺の視線からよく見える胸の谷間が素晴らしい。小柄ながら女子が羨むであろうスリーサイズ、出るとこは出て引っ込むところは引っ込むという素晴らしいボディ。いつ欲情してもおかしくな…」
「ストップ!もういい!十分よ!恥ずかしいからやめなさい!というか途中から体型のことしか言ってないじゃない!?」
蓮司の褒めちぎった言葉を、真由美は顔を真っ赤にして遮った。普段は他人をからかいがちな真由美だが、以外にも自身がこういう目に合うことは慣れてなかった。まして蓮司が相手だ。真由美がこれまで蓮司を相手にして、この手のことで勝てたことは一度もなかった。
どうにかして蓮司の言葉を止めた真由美だったが、今度は涙目でキッと蓮司を睨んだ。対して蓮司は悪戯が成功したようないやらしい笑みを浮かべていた。
「どうだっていうから感想言ったのに…我儘な先輩ですね」
「覚えてなさいよ蓮司君…いつか必ずやり返してあげるから…!」
ここに、新たなライバル関係が誕生していた。
「…そろそろ出発しませんか?」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「まったく、蓮司君は…」
蓮司に褒めちぎられるというからかわれ方をした真由美は赤い顔のままであった。蓮司を睨むように視線を送るも、当の本人は完全に熟睡中だった。
「…会長が手玉に取られ続けているなんて珍しいですね」
「まったくよ…こんな気分初めてだわ…いつか絶対やり返してやるんだから…」
鈴音が指摘した通り、真由美が誰かにからかわれるなど、真由美を知る者たちからすれば想像できないだろう。まさか後輩にそんな存在が現れるとは…と、鈴音は密かに感心すると同時に、現在隣にいる同級生の姿に新鮮さを覚えていた。
「会長は…龍童君のことをどう考えているんですか?」
なので思わず鈴音は聞いてしまった。真由美の蓮司に対する態度は、明らかに他の人物に向けるものとは違いすぎていたから。
「え?」
対して、真由美はそんなことを聞かれると思っておらず、少々気の抜けた声を出していた。
そして言われてから改めて、蓮司について考えていた。
不遜で、かなりの自由人というのが主な印象だ。一方で、誰よりも魔法師の”闇”を理解している稀有な存在である。もっと言うと、蓮司は”闇”を知りすぎており、”闇”に浸かりすぎている。
あの日。ブランシュの襲撃事件があった日の保健室にて語られた蓮司の思い。そこには強い憎しみと深い悲しみが垣間見えた。”魔法師”と”人間”は異なる存在であり、交わることはないという言葉は、その全てを物語っていた。色々な意味で不安定な蓮司という存在は、総括すると…
「放っておけない弟…かなあ…」
というところに落ち着いた。
「弟…ですか」
「今までいなかったような男の子なのは間違いないわね。はっきり言って、私を”七草”と理解したうえであんな態度を取ってくる男の子なんてまずいなかったわ。だから彼との関りは新鮮に感じるわね」
恐らく、同様に接してくるのは十文字くらいだ。しかしそれは同じ十師族だからだ。
「だから楽しんでいる自分もいるのよね。彼と話していると…色々なしがらみから解放されて、素の自分で居続けられる気がするわ」
「会長…」
「でも!」
そこで言葉を区切り、強気な表情で後方の蓮司を見つめた。本人は変わらず爆睡しているため、その視線に気づくことはない。
「やられっぱなしは性に合わないわ。だから…いつか必ずやり返してやるんだから」
そう呟く真由美の顔は、とても楽しそうだった。
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真由美たちがそんな話をしていた頃、バス後方の席ではとある問題が起こっていた。それは、不機嫌な深雪をいかに宥めるか、というものだ。
真由美が到着するまでの間、達也はずっと外で待っていた。誰が来ていないか分かっているのに、何故兄がわざわざ暑い思いをして外で待っていなければならないのか。しかも途中から兄は摩利と二人きりだったのだ(摩利が達也に対して申し訳なく思っての行動ということは考慮されていない)。そのうえ、移動中はゆっくりとしてほしかったのに、最愛の兄は狭い作業者に詰め込まれることになるとは(技術スタッフは全員作業者に乗って、機材を管理していることはこの際考慮されない)。深雪の不機嫌さは最高潮に達していた。
結果的に深雪を宥めたのは雫だった。雫は達也の誠実さや真面目さを指摘し、褒めたたえた。それによって、深雪はご機嫌になったのだ。この結果に、雫とほのかはガッツポーズをとった。
(はぁ~~~…なんとかなってよかった~~~…)
ほのかは人知れず、そっと胸を撫で下ろした。このまま到着するまでの間、隣の深雪に不機嫌で居られてはたまらなかった。
しかし落ち着いたことで、今度はほのかに別の問題が起きてしまった。
(蓮司さん…会長さんみたいな人がタイプなのかな…)
それは、ほのかの後ろの席で爆睡している蓮司についてだ。
真由美が到着して少し経った頃、外での真由美と蓮司たちとの会話を聞いてしまった。真由美が自身の格好について達也と蓮司に質問し、達也はコメント少なく回答した。しかし蓮司は次々と真由美を褒めたたえたのだ。最終的には真由美が顔を真っ赤にしながら会話を終了させたが、その時の様子がほのかの頭から離れなかった。
無論、蓮司は真由美をからかっていただけだ。しかしほのかにはそれが分かっていない。故に、蓮司の言葉をストレートに受け取ってしまっていた。
(会長さんは確かにとても美人だし…スタイルだってすごくいいし…)
同性のほのかから見ても、真由美はかなりの美形だ。魔法師はその能力が高いほど容姿が整っている特徴がある。十師族たる真由美も、その例に洩れてはいなかった。
(私は…どうかな…)
改めてほのかは自身について考えた。容姿は比較的整っている方だと言われるが、自分自身は童顔だと考えている。胸は…同世代と比べると育っている方だと思うし、ウエストだって決して太くはない。
改めて、ほのかは蓮司の方を振り返った。
異性の友達が多くないほのかにとって、蓮司は高校生になってからできた貴重な男友達と言っていい。最初こそ恐ろしかったが、話せばマイペースで、面倒くさがりだが、大事なことはしっかりやる、というのがほのかの蓮司に対する印象だ。
何よりほのかは、蓮司に命を救われたあの日を忘れたことはなかった。
生まれて初めて感じた死の恐怖。そこから彼は自分を救ってくれたのだ。加えて、恐怖に支配されそうになった心を癒してくれた。あの時にかけられた言葉は、今も色あせることなくほのかの中に残っている。
(私も…何か恩返しができないかな…)
いつか蓮司に恩返しがしたい。自分に何ができるかは分からないが、もらってばかりは嫌だ。
(そのためにはまず…私の頑張る姿も見せないと!)
蓮司のことも考えながら、ほのかはより一層大会に向けて気合を入れた。
ほのかの持つこの感情は何なのか…今の彼女にはまだ答えが出ていなかった。
「あぶない!!」
しかしその思考は、突然響いた叫び声に中断されることとなった。
はい、というわけで九校戦編第7話、通算26話目でした。いかがでしたでしょうか。
今回は主に真由美さんがメイン、ほのかちゃんがサブのような話でしたね。それぞれの思いが語られました。
これは...ヒロインに一歩踏み出したか?今後に期待ですね。
それと1つお知らせ、というよりは宣言です。この九校戦編でヒロインの路線を決定させようと思います!いつまでも「どうしようかなあ」では進まないので!
それでは次回、第27話でお会いしましょう。それでは!