年内残すところ、10日を切っております。あと何話投稿できるかな...可能な限り出していきたいです。
それでは、どうぞ!
バスに乗った後、蓮司はすぐに睡眠に入った。同じ代表チームとはいえ、必要以上に仲良くなろうとはしなかったことや、クラウド・ボールでの練習の影響でより男子側との仲が悪くなってしまったこともあり、移動中は眠ることとした。
何事もなければ、会場に着くまで眠り続けることだろう。
何もなければ。
「っ!」
会場に向かう道中、蓮司は目を覚ました。それは、外で魔法の反応を感じたからだ。学校でならともかく公道、しかもこんな移動中にそれを感じるなど、通常ならありえない。
(どこだ?)
その発生源を探り始めた時だった。
「危ない!」
1人の生徒が前方を指して叫びをあげた。そちらに視線を向けると、対向車線を走っていたであろうトラックがガードレールを飛び越えて、こちらに向かって横転しながら突っ込んできていた。
バスは急ブレーキにより何とか急停止した。その間にも、こちらの道路に乗り上げたトラックが、炎上しながらこちらに突っ込んできていた。
「吹っ飛べ!」
「消えろ!」
「止まって!」
目の前の事態に、数人の生徒が対処しようと魔法を発動させようとした。その中には雫の姿もあった。親友の姿を見て、ほのかも何とかしようと魔法発動の準備に入る。だがそれは、蓮司に腕を掴まれたことにより叶わなかった。
「れ、蓮司さん!?どうして…」
「無闇に魔法を発動するな。やたらと魔法を発動させれば、互いの魔法が相克を起こして碌に発動しない。授業で習わなかったか」
その言葉に、ほのかははっとした。無秩序に魔法を同一の対象に発動してしまえば、互いの魔法が無秩序に事象改変を起こし、結果として魔法が相克を起こしてまともに発動しなくなる。以前に授業で習ったことを慌てて忘れてしまうとは情けない。
蓮司の言葉と存在で冷静さを取り戻したが、それでも状況は変わらない。
「バカ!やめろ!」
摩利の言葉もむなしく。複数の魔法は発動されてしまい、一帯はサイオンの嵐に包まれていた。それはさながら、強力なキャスト・ジャミング下にあることと何も変わらない。ここから更に魔法を発動するためには、発動中の魔法を圧倒するほどの魔法力が必要だ。
「十文字!」
摩利は唯一可能性のある十文字の方を見た。十文字も次の魔法発動の準備には入っていたが、その表情は険しい。摩利は絶望に囚われそうになった。
「私が火を!」
ここで深雪が声を上げ、さらには消火すべく魔法発動の準備を終えていた。それを見て、十文字も同様に魔法発動の準備を終わらせた。
しかしここで彼らにとって予想外のことが起きる。
「蓮司さん!だめぇ!」
突如として悲鳴が上がった。悲鳴を上げたのはほのかだった。全員が何事かと声の発生源の方を見ると…
蓮司が窓を開けて外に飛び出し、トラックとバスの中間地点に立った。
「蓮司君!?何をするつもり!?」
「龍童君!?」
「龍童!戻れえ!」
突然の奇行に、何人もの生徒が声を上げる。その間にも、蓮司は態勢を整えた。
蓮司は瞬時に両腕にサイオンを集め、より大きな腕を形成した。その大きさは蓮司の背丈を遥かに超える大きさだ。そして左のサイオンの手を地面にめり込ませて固定し、右腕はそのまま引いた、正拳突きの構えを取り…
「オォォオオオアアァ!!」
雄たけびとともに前方へ突き出し、突っ込んでくるトラックを受け止めた。
ガシャアアアアアンッッ!!!と激しい衝突音が鳴り響く。蓮司は苦悶の表情を浮かべて、何とか衝撃に耐えている。しかしそれでもトラックの勢いは強く、僅かに蓮司が押されていた。なんとか耐えようとしたとき…
無秩序に発動していた魔法式が、一瞬で全てかき消された。
突然の出来事に蓮司は驚いたが、蓮司自身はこれに近い現象を一度その目で見ている。
「はっ!ナイスフォロー!」
蓮司は笑みを浮かべ、硬化魔法を発動して自身の位置を固定し、衝撃に耐えた。魔法式が全て消されたおかげで、改めて魔法を発動させることができた。
そしてそれと同時に深雪が魔法を発動させ、消火を完了させた。こうして1年生の現主席および次席により、事態の鎮圧に成功させることができた。
トラックが完全停止し、消火も完了したことを確認した蓮司は、腕にサイオンを集めたままトラックに駆けつけ、ドアをサイオンの腕で破壊して運転席を確認した。しかし当の運転手は、既に息絶えていた。
「ちっ…」
蓮司は苛立ちを見せ、舌打ちをした。もし運転手が生きていたなら、聞きたいことが山ほどあったからだ。
(さっきの感覚、不自然なトラックの動き…恐らく魔法によるものだ。だが、今付近を探ってるが、魔法師の気配はない)
蓮司は感覚を集中させ、付近に不審なサイオンがないかを探っていた。しかし、この場以外に魔法師らしい存在は感知できなかった。もし近くにいて魔法を発動させたなら、サイオンの残照を感知出来て場所が分かるからだ。
しかしいくら探ってみても、第一高校の生徒意外に魔法師の存在は感知できない。これはつまり…
(まさか、こいつが?自爆特攻でも仕掛けてきやがったのか?…だが何のために?まるで目的が見えねえ…)
蓮司の頭は疑問に支配されたが、いくら考えても答えは見えてこなかった。
(しょうがねえ…不本意だが、あいつに確認を取るか…)
よって、蓮司は落ち着き次第美琴に連絡を取ることにした。気が進まないがあの女のことだ、何か情報を持っているはずだ、と蓮司は今後の方針を決めた。そうこうしているうちに、達也を含めた数名の男子生徒が、現場検証や記録のために集まってきた。
それを確認し、蓮司はその場をその生徒たちに任せ離れることにした。途中、達也とすれ違う際に
「ナイスフォロー。助かったぞ」
「…ああ」
短く言葉を交わし、蓮司はバスへ戻った。
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「蓮司さん!」
バスへ戻った蓮司は、悲壮な表情をしたほのかに真っ先に迎えられた。
「怪我は!?怪我はありませんか!?」
「別に、大したことはねえよ。表面を少し剥いただけだ」
そう言いながら、蓮司は掌を見せた。言葉通り、蓮司の両の掌は所々が焼けて剥けており、血が流れていた。
蓮司のサイオンの鎧は直接触れることなく物体を掴むことができる。そしてその強度次第で様々な物から身を守ることができるが、決して万能ではない。
今回で言えば、確かに暴走するトラックを止めることは出来ていたが、トラックの火が放つ熱まで防げたわけではない。加えて、向かってくるトラックの衝撃に耐えるためにより手にサイオンを集めたため、蓮司の手にはより負担がかかっていた。結果、蓮司はトラックの火の熱と自身のサイオンの鎧の負担により、腕に怪我を負った。
その手を見た瞬間、ほのかは更に顔を青ざめた。
「は、早く手当を!絆創膏、いや包帯!」
「落ち着け、表面を少しやっただけだ。何ともねえよ」
「何ともないとか関係ないよ!!」
蓮司の言葉に対し、ほのかは怒号を上げた。周囲はもちろん、親友の雫や当事者の蓮司も固まってしまった。
ほのかは多少思い込みが激しくなる時があるものの、基本的には大人しい性格だ。事実、蓮司はほのかが怒ったところは見たことがなかった。だからこそ、自身に向けられた怒りに、思わず固まってしまった。
「急に飛び出して…魔法だって発動できるか分からなかったのに…何をするか知らなかったし…もし死んじゃったらって…すごく…怖かった…」
ほのかは涙を浮かべて、その思いを吐露した。
蓮司にはトラックを止める手段があった。だからこそ行動した。
しかし周囲の生徒はそれを知らない。であれば、先ほどの蓮司の行動はまるで自殺行為のように見えただろう。それはほのかも同じだった。
もし目の前で死んでしまったら…そう考えるだけでほのかはとても恐ろしかった。
蓮司は改めて先の自分の行動を振り返った。
動ける者が自分だけだと判断し、緊急時において説明は無駄だと判断したから、誰にも何も言わなかった。結果として死者は出ず、負傷者も自分だけ、それも僅かに手に怪我を負った程度。蓮司の価値観で言えば上出来だった。
だがそれはあくまで蓮司の中の結果であり、他の者たちが全員それに満足しているわけではなかった。
「蓮司君。さっきは本当にありがとう。君が誰よりも前に出てくれたから。最悪の事態は避けられたわ」
ここで真由美が前に出た。言葉で感謝と称賛を述べながらもその表情は真剣なもので、笑みはなかった。
「でも誰にも何も言わなかったことはダメよ。君が何をするか分からなくて、とても不安だったわ」
「…」
「蓮司君の実力は知っているつもりだし、実戦において誰よりも動けることも知っているわ。…それでも、次からはちゃんと伝えてね。何もできなかった私が言えたことではないけれど…もう少し私たちを信頼してね」
「…はい、会長」
蓮司は素直に真由美の言葉に頷いた。信用してなかったわけではないが、何も言わなかったことは確かに蓮司に非がある。そう蓮司は判断し、受け入れることにした。
「言うべきことは、全て七草が伝えたな」
十文字も同様に蓮司のもとへ来たが、どうやら内容は叱責ではなさそうだ。
「改めて感謝する、龍童。あの状況下で不用意に魔法を使わず、迅速に行動したことは称賛に値する。そして…何もできずに済まなかった」
十文字からは称賛と謝罪が送られた。
十師族の一員として、そして第一高校の幹部として、あの状況下で何もできなかった己を恥じると同時に、自身の代わりに事態に対処した1年生をねぎらった。
「どうもっす、会頭」
「一先ず、お前は手の治療をしろ。光井、龍童の面倒を頼む」
「はい!蓮司さん、こっちに来てください」
「こんなもん放っておいたって…分かった分かった、ちゃんと治療するからそんな目で睨むな。眉間のしわが取れなくなるぞ」
「余計なお世話です!」
一先ず、現場記録や警察の事情聴取が完了するまで身動きは取れないため、各々が改めて休息を取ることとなった。その間に蓮司は持ち前の回復力を誇る治癒 魔法で手のケガを治し、それを見た周囲(主にエイミィ)の追求は躱し続けた。いちいち説明することは面倒だった。
そして約30分後に全ての作業が完了し、再出発した。朝の出遅れも含め、第一高校の代表メンバーが宿舎に到着したのは昼過ぎとなった。
はい、というわけで九校戦編第8話目、通算第27話目でした。いかがでしたでしょあまり
今作のトラック事故でトラックそのものを止めたのは蓮司君でした。十文字先輩、ごめんね活躍の場を奪って。
蓮司君の今回の技は。いつも使っているサイオンの鎧の強化版。よりサイオンを集めて巨大な腕を形成しました。同じ系統の強化技を出してみたかったので楽しいです。
そしてほのかちゃん。そりゃ、同級生がいきなりそんな行動に出たら戸惑いますし、心配しますよね。まして魔法が碌に使えない状況なのですから、ほのかちゃん含め魔法師が無力な状況なわけですから。深雪ちゃんは達也君の存在を知っているからこそ冷静なのです。
さて、今回はここまでです。またあまり話が進まなかったな。もう少し展開していきたいです。
それでは次回、第28話目でお会いしましょう。それでは!