また期間が少し空いてしまいました。やはり、週2、3話ほどが現在のペースになっていますね。年明けにはもう少しペースを戻せるかな?でも今度は年度末で忙しくなってくるし,,,中々うまくいかないもんですね。読んでくれる皆さんに少しでも楽しんでもらえたらと思います。
それでは、どうぞ!
途中、事故に遭遇したものの、昼過ぎには宿舎に着いた第一高校代表メンバー。それぞれが荷物を移動させている中、達也、深雪、そして蓮司の3人は先の事故について話していた。
「では、先程のあれは、事故ではなかったと…?」
「あの自動車の跳び方は不自然だったからね。調べてみたら案の定、魔法の痕跡があった」
「やっぱりか、妙だとは俺も感じてたが」
そう、先程の事故は、蓮司も感じていたように魔法によるものだった。その違和感を覚えていたのは達也も同様であり、だからこそ調べていたのだ。
「小規模な魔法が、最小限の出力で瞬間的に行使されていた。恐らく、専門の訓練を積んだ工作員だろう。使い捨てには惜しいくらいだ」
「使い捨て…ですか」
「予想は付いてたが…まだ面倒な話になってきやがったな…」
“使い捨て”という物騒な表現に2人の声は自然と引き締まった。
「最初はタイヤをパンクさせる魔法。二回目が車体をスピンさせる魔法、三回目がガードレールをジャンプ台に車体を跳び上がらせる魔法。いずれも車内から放たれている。魔法が使用されたことを隠ぺいするためだろう」
「では、魔法を使ったのは…!?」
「…運転手、自爆攻撃だな」
「ああ、俺もそう思う。サイオンの感知をしてみたが、あの場に他の魔法師はいなかった。一校の連中にも俺たちの存在を搔い潜って魔法を使える奴なんていないだろうからな」
「…お前、同じ学校の生徒も疑ってたのか」
「可能性は0じゃねえと思ったまでだ」
運転手による自爆攻撃。その目的が真っ当なものであるはずがない。
「卑劣なっ…!」
「もとより犯罪者やテロリストなど卑劣なものだ。そんなことで怒っていたらキリがないぞ?」
あまりに酷い魔法師の活用の仕方に、深雪は強い怒りを覚える。荒事に慣れている達也は、そんな深雪を宥めていた。
「目的は第一高校の妨害ってとこか…。だがその理由が分からねえな。俺たちに危害を与えて、得をする奴らがいるってことか?それともまさか、全校に似たような妨害があったのかねえ」
蓮司はそう推測するが、結局現状では情報が足りず、答えは見えてこなかった。
「まあ、今はいいか。…それよりねみぃ…俺の安眠を妨害しやがって…今日はもう休むか」
「…本気で言ってるのか、蓮司?まさかこの後のスケジュールを忘れているのか?…いや、お前の場合、最初から確認してないな」
「あん?」
蓮司の発言に対して、達也は呆れていた。達也の言う通り日程を確認していなかった蓮司は、達也が言っていることが分からなかった。
その様子に、深雪は苦笑を浮かべながら、蓮司に教えることにした。
「龍童君、この後は各校のメンバーが全員集合して懇親会があります。…サボらないでくださいね?」
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そもそもの話だが、真由美をリーダーとした第一高校の代表メンバーが大会開催の前々日の午前中に集合していたのは、この日の夕方に予定されている立食パーティー、他校の代表生徒との懇親会に出席するためだ。
この懇親会は選手だけでなく、技術スタッフなどの裏方メンバーも参加する。何かと理由をつけて欠席する生徒もいるが、それでも毎年300人~400人ほどの規模のパーティーになる。そしてこの懇親会はプレ開会式の色合いが強いため、和やかさよりも緊張感の方が目につく。
だが懇親会が開催されて間もなく、例年にはないものが目につく、というよりかなり目立っていた。それは…
モクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモク…
終わることなく一心不乱に食事をとり続ける1人の男子生徒。立食パーティーにも関わらず椅子とテーブルをどこからか用意し、ただひたすらに目の前の料理をむさぼり続けている第一高校の制服に身を包んだ男子。交流会にも関わらず周りの存在を一切無視し、そもそも認識すらせず、目の前の命の恵みに感謝…しているかどうか分からないが、とにかく食し続ける龍童蓮司。
今、会場で最も目立っているのは蓮司だった。
「すげえ…な、なんなんだよアイツ…」
「もう何人前食べてるんだ?腹いっぱいどころか胸やけしそうだ…」
「でも飛び散らかってないし、きれいな食べ方…」
「口に入れて、噛んで、呑み込む…その動作が恐ろしく速いのね」
「こんな人がいるなんて…流石第一高校、油断ならないね」
「…なんか第一高校の評価のされ方がおかしい…懇親会ってもっと殺伐としてなかったっけ?」
真由美が何とも微妙な顔をしていた。第一高校は現在九校戦2連覇しており、九校戦優勝回数も全校の中で最多である。故にこの懇親会では、時に針の筵のような思いをすることもあった。故に、真由美はこの懇親会自体があまり好きではなかった。なのに…
「まあ、こういうことがあってもいいじゃないか」
そう真由美に話しかけたのは摩利だった。片手にノンアルコールのグラスを持って、少し楽しそうでもあった。
「彼が他校の生徒と揉め事を起こさないか心配だったが…こういうことならむしろ歓迎したほうがいいんじゃないか?いい意味で注目の的だし、これからの3年間は風物詩にだってなれるだろうさ」
「…ふふ。そうね、そういうことにしておきましょ」
なんだかんだで、蓮司の一心不乱な姿を見ることは楽しくもあった。普段は不遜で生意気なことがほとんどだが、食べ物のことになると面白いくらいに人が変わるところをこれまで何度も目にしてきた。なので今回も…
「弟みたいな後輩の成長でも見守ることにしますか。本当にしょうがないんだから」
そう言う真由美の顔は優しさに満ちていた。
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「わーお…ここでも蓮司君の食欲が爆発してるよ…」
「見るたびに思うが、彼の胃袋にはブラックホールでも仕込まれているのかい?異常を通り越しているよ…」
「あ、甘いものもあんなにたくさん…女子の敵だよあれ…」
第一高校の1年生女子は蓮司の食欲にドン引きしていた。
「何をしているんだあいつは…」
「あはは…」
ここまで誰とも交流せず、強いて言うなら料理とのみ交流している蓮司に、達也も他の生徒と同様に呆れていた。隣にいる深雪も、珍しく乾いた笑みしか浮かべられなかった。
「蓮司さん大丈夫かな…あんなにたくさん食べてたらお腹壊しちゃうよ。胃薬用意してあげなくちゃ」
「ほのか、それはちょっとずれてる」
ほのかは逆に蓮司の体調を気遣っていたが、感想が少しずれていた。そこをすかさず雫が突っ込んでいた。
最早、誰も蓮司を止められないのか。そう誰もが思って(思わなかったりして)いた時だった。
「おお、蓮司よ!久しぶりじゃな!相変わらずの食欲だのう!」
その空気を壊して、話しかける女生徒がいた。制服を見るに第三高校の生徒であり、古風な話し方が特徴的だった。突然話しかけた現実に第一高校の生徒も含め、蓮司を見物していた生徒たちは黙っていた。
対して話しかけられた蓮司は、口の中にあるものをドリンクで飲み下し、その第三高校の女生徒、四十九院沓子と会話を開始した。
「沓子…じゃなかった、ちんちくりん。しばらくだな、相変わらず小さいな色々と」
「今言ったじゃろ。名前をしっかり言ったじゃろ!敢えてちんちくりんと言い直すな!それと最後のは余計じゃ!?というかセクハラじゃぞ!」
「バカ言え、セクハラってのはもっと美人でナイスバディな女性にするんだよ。こんなもんお子様いじりだ」
「やかましいわ!」
「お前がな」
しかし会話を開始したかと思えば突然の言い争い。周囲の見物人はもはや訳が分からなかった。
そこへ、更に2人の女生徒が会話に参加した。
「相変わらずね…それに会って早々何をしているのよあなた達は…」
「2人とも静かに。目立ちすぎ」
話しかけたのは、同じく第三高校の一色愛梨と十七夜栞の2人。以前街中で交流した3人と蓮司は、約束通り九校戦の場で再会を果たした。
「お前らもしばらくだな。あとこいつをどうにかしろ。ピーピーうるさい」
「あーはいはい、もう付き合うだけこっちが疲れるだけじゃなあもう」
蓮司が文句をいい、沓子が拗ねて、愛梨と栞がため息をつく。何ともおかしな空気に4人は同時に笑った。
「漫才はこの辺にしとくか。改めてしばらくだったな、沓子、栞、愛梨。調子はどうだよ」
「お主に大分狂わされたわ。まあ上々じゃの」
「そうね、いい感じに集中できてるわ」
「私は少し気が抜けてよかったかも。あなたの食事姿も相変わらずね。そっちも調子良さそう?」
「まあ、悪かねえな。でもまだ食いてえ」
「ふはは!相変わらずじゃのう!腹に焼却炉でも抱えてるようじゃ!」
そうして始まる談笑。さっきまで誰とも話していなかったのに、突然会話が行われたことに周囲は唖然としていた。
特に、第一高校の面々の反応は顕著なものだ。
「…摩利…なに、あれ…」
「言うな真由美…私だって自分の目を、いや頭を疑ってるんだ」
「おいおい、あの龍童が他校の女生徒と友達とか、笑えねえな」
「ふむ…意外と顔が広いのだな、龍童は」
「会頭…それは感想が少し違う気が…」
傍若無人な蓮司をよく知っている上級生たちは、目の前の光景に唖然としていた。
「え、と…蓮司君が他校の女子と話してる?…夢か何か?」
「エイミィ…君の心が手に取るように分かるよ。…だって僕も同じだから…」
「れ、蓮司さん…いつの間にあんな美人さんと…」
「うん、これはびっくり」
「お兄様…私、人生でもトップ3に入るくらい、とても驚いています」
「気持ちは分かるよ深雪…俺も似たようなものだ」
同級生たちも困惑の色が強かったようだ。
「お、おい…アイツ、”エクレール・アイリ”と普通に話してるぞ!?」
「何者なんだ…実は名家の出とか?」
「お前、さっき軽くあしらわれてたもんな…」
「他の2人だって”数字付き”だぞ」
周囲の生徒はどちらかというと、愛梨たちと普通に話していることに驚いているようだ。
「ジョージ…アイツのこと知ってるか」
「名前だけはね。龍童蓮司、第一高校の1年生選手で、出場種目はクラウド・ボールのみ。それ以上のことは知らないけど、一色達と話しているところを見るに、ただの生徒ではないようだね」
「ああ。それにアイツ…強いな…」
そして蓮司たちの様子を遠巻きに観察している2人の生徒がいた。
1人は一条将輝。第三高校の1年生エースであり、十師族である一条家の御曹司。この年齢で実戦経験のある数少ない魔法師であり、”クリムゾン・プリンス”の異名を持つ存在だ。出場する種目はどれも優勝候補とされている。
もう1人は吉祥寺真紅朗。第三高校のブレーンであり、若干13歳で基本コードの1つである「加重系統プラスコード」を発見した天才。その実績から”カーディナル・ジョージ”の異名を持っている。
両名とも魔法界では有名人だが、その2人をもってしても蓮司のことは何も知らなかった。だからこそ2人は揃って、今は無名の蓮司を警戒し始めた。
ここに、蓮司を中心とした新たな空間が誕生していた。
『あ、あのー皆さーん?そろそろ会を進めたいのですが…あのー、聞いてますかー?』
なお、司会進行を担当したスタッフは、ほぼ全生徒に無視されるという、なんとも貴重な経験をしていた。
はい、というわけで九校戦編第9話、通算第28話目でした。いかがでしたでしょうか。
蓮司君爆食い!もうこれやりたかったエピソードの1つでした。ただひたすらに食べている姿を周りが唖然として見る、というシチュエーションは個人的好みです。
そして他校の生徒、それも女子と仲良くする蓮司に驚がくする第一高校の面々。そりゃ、普段があんなんだから驚きますよね。
しかしここで思い返してみてください。...蓮司君の男友達って何人いますかね?実はかなり女子の友達が多い蓮司君でした。
最後の一条君と吉祥寺君。無名の蓮司君を少し意識しました。今後どうなるかは楽しみにしていてください。
それでは今回はここまでです。なお年内にあと1話投稿して、今年は終わりとなる予定です。
では次回、第29話でお会いしましょう。それでは!