魔法科高校で龍は生きる   作:ドンマッシュ

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皆さん、年内も残りわずかですね。ドンマッシュです。

話まとまった!なんとか年内間に合った!

そして...今回結構やりすぎたかも。でも楽しかったのでいいです。この作品の楽しみ方だと思ってます。

それでは、どうぞ!


2‐10 老師という存在

『そ、それでは気を取り直しまして…』

 

懇親会会場における注目が蓮司に集まっていながらも、声掛けを行いなんとか会を進行させることに成功した進行スタッフだった。なお、蓮司は多少意識を向けながらもまだ食事を進行していた。

 

「れ、蓮司さん…一端手を止めた方がいいですよ。後からまだ食べられますから…」

「そうじゃぞ蓮司。見よ、あそこにいる来賓たちの顔を。明らかにお主に苛立ちの視線を向け取るではないか」

 

ほのかと沓子がそれぞれ蓮司に注意を促すも、蓮司は特に気にも留めない。それどころか…

 

「何見てんだてめえら…あ?」

 

まさかの威嚇返しである。殺気を向けられた来賓たちは顔を青ざめ、速攻で視線を逸らした。まさか学生からそんな殺意を受けるなどとは微塵も考えてなかったのだろう。

 

「よし」

「「よしじゃない!!」」

 

蓮司のいかにも「問題は無事解決しました」という態度に対し、ほのかと沓子が同時にツッコんだ。意外とこの2人は仲が良くなるのかもしれない。

 

そうしている間にも懇親会は進んでいく。

 

『それでは、ここで来賓の方々を代表して、九島烈様よりご挨拶を頂戴いたします』

 

これに、会場にいたほとんどの魔法科高校生たちはざわついた。

 

九島烈。この二十一世紀の日本に十師族という序列を確立した人物であり、20年ほど前までは世界最強の魔法師の1人として目されていた魔法師だ。実質的な十師族の長老的な存在であることから、通称「老師」とも呼ばれている。

最強の名を維持したまま第一線から退き、依頼、ほとんど人前に出てくることのないこの老人は、何故か九校戦にだけは毎年顔を出すことでも有名だ。

 

そんな伝説の存在をこの目で見ることができる。初めて九校戦に参加する者たちは期待に目を輝かせ、そうでない者たちは目を輝かせながらも緊張感を漂わせていた。

蓮司もまた、緊張感を漂わせていた。それは、九島烈の名を聞いた瞬間に食事の手を止めるほどだった。

 

(九島烈…十師族の設立者にして、魔法師界でもトップの存在。まさかそんな奴を見れるとはな…)

 

最強の名を欲しいままにした存在がこの場に現れる。これだけでもここに来た甲斐があったかもしれないと、蓮司は静かに考えていた。

 

『それでは、お願いいたします』

 

司会者が告げた瞬間から、会場にいた魔法科高校生たちは九島老人の登壇を心待ちにしていた。

 

そして現れた人物に、会場にいたほとんどの者は息を呑んだ。

 

眩しさを和らげたライトのもとに現れたのは、パーティドレスを身に纏い髪を金色に染めた、若い女性だったのだ。

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

会場中にざわめきが広がった。そこには息を呑む達也の姿もあった。

 

(スタッフの手配ミスか…?…!いや、違うな…)

 

ここで達也はその舞台を注視し、ようやく真相に気付いた。壇上に現れていたのはこの女性だけではなかったのだ。

女性の背後には、一人の老人が立っていた。ただ自分たちの意識が、派手に装った若い美女に吸い寄せられているだけだ。

 

(これは…精神干渉魔法)

 

恐らく、会場すべてを覆う大規模な魔法が発動されているのだ。目立つものを用意して人の注意を逸らすという「改変」は事象改変と呼ぶには些細なものだ。だが、その「改変」を全員に引き起こすための、大規模だが微かで弱く、それ故に気づくことが難しい魔法だ。

 

(これがかつての最強、いや「最高」にして「最巧」と謳われた「トリックスター」九島烈の魔法か…)

 

その時、達也の凝視に気付いたからか、烈は僅かに口角を上げて笑った。そして間もなく頭上を見上げ、更に楽しそうにしていた。

 

烈が女性に囁き、女性はスッと脇へどけた。次にライトに照らし出された老人の姿に、大きなどよめきが起きた。ほとんどの者には、烈が突然現れたように見えたことだろう。

 

『まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪しよう』

 

その声は齢90近い人物とは信じられないほど若々しいものだった。

 

『今のはちょっとした余興だ。魔法というよりは手品の類だ。だが、手品のタネに気付いた者は、私の見たところ6人だけだった。そして…』

 

そこまで話したところで一度止まり、そのままある方向を指差した。

 

『その中でも、既に迎撃態勢を整えている者が1人』

 

その発言と指摘に、会場の者たちがそちらに視線を向ける。そしてまたも驚愕に包まれることとなる。

 

烈の指した方向にいたのは蓮司だった。蓮司も同様に烈に向かって手を向けており、その手元には砲撃用の魔法陣がいくつも展開されていた。後は蓮司次第で、文字通りいつでも迎撃が可能だった。

 

『つまり…もし私がテロリストで、毒ガスなり爆弾なりを仕掛けたとしても、それを阻むべく行動できたのは6人だけ。そしてその中でも、すぐさま鎮圧に移ることができたのは1人だけだったということだ』

 

老人の言葉は決して荒げられたものではない。だが会場は、それまでとは別種の静寂に覆われていた。

 

『魔法を学ぶ若人諸君。魔法とは手段であって、それ自体が目的ではない』

 

『!!!』

 

烈のこの言葉には、会場にいたほとんどの者が息を呑んだ。そして、烈の言葉を一言一句聞き逃すまいと、更に集中した。

 

『私が今用いた魔法は、規模こそ大きいもの強度は極めて低い。魔法力の面から見れば、低ランクの魔法でしかない』

『だが…君たちはその弱い魔法に惑わされ、私がこの場に現れると分かっていたにも拘わらず、私を認識することが出来なかった』

『魔法を磨くことはもちろん大切だ。魔法力を向上させる努力は、決して怠ってはならない。しかしそれだけでは不十分だということを肝に銘じて欲しい。使い方を誤った大魔法は、使い方を工夫した小魔法に劣るのだ』

 

そこまで話した後、改めて全体を見回して、微笑みながら話を締めた。

 

『魔法を学ぶ若人諸君、私は、諸君の工夫を楽しみにしている』

 

そうして、九島烈の挨拶は終了した。そして会場は徐々に拍手が広がっていった。達也も同年代たちと同様に拍手をしていたが、同時に笑ってもいた。

現代魔法師社会はランク至上主義と言ってもいい。だが魔法のランクではなく使い方を重視する考えは、現在の魔法師社会の在り方に喧嘩を売るようなものだ。この国の魔法師の頂点に君臨しながら、今の在り方に逆らうよう促す老魔法師。これが口先だけのものなら達也ですら反感を覚えただろう。だが老師は、それを分かりやすい形で実現して見せた。

 

―これが、「老師」か…―

 

この国にはまだまだ学ぶべき存在が多くいることを達也は改めて感じていた。同時に、研究室に籠っているだけでは決してできなかった体験をできたことに感謝もしていた。

 

しかし、話はここで終わらなかった。

 

『ところで…』

 

拍手が会場を満たしている中、烈は改めて話を再開した。先ほどのもので終了したと思っていたのは、高校生たちだけでなく他の来賓たちも同様であったため、今度はざわめきが立ち込めていた。

その空気の中で、烈はもう一度指をさし、発言を開始した。

 

『君は、いつまで私にその手を向けるのかね?』

 

そう烈が話すと、またも全員の視線がその指の先に集中する。そしてまたも驚愕に包まれることとなる。

全員の視線はまたも蓮司に集中していた。何故なら、先程展開していた魔法を、蓮司はまだ解除せず烈に向けたままだったからだ。

 

『ついでに言わせてもらうなら、この頭上にある魔法も解除してもらいたいものだね。話しながらも、いつ魔法が発射されるか冷や冷やしたものだよ』

 

そう言いながら、烈は頭上を確認した。その発言を受けそちらも確認すると、蓮司が展開しているものと同様の魔法陣が展開されていた。

 

何故今もなお解除しないのか。会場は疑問に包まれていた。達也にももはや訳が分からなかった。

 

その空気の中、蓮司は言葉を発した。

 

「悪いな。俺は九島烈に会ったことがないんでね。目の前のあんたがそうだとは信じられないもんで警戒を怠れないんだよ、爺さん(・・・)

 

それはそれは楽しそうに話していた。反対に、第一高校の面々や近くにいた生徒は一様に青ざめた。なお、心境は皆同じであった。

 

 

 

―お前、何してんだよ!!??―

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

蓮司は烈の演説が始まってからも、一切の警戒を怠らず魔法を展開し続けた。しかし、それは決して目の前の老人を疑っていたからではない。

 

寧ろその反対。目の前に老人が、魔法師として高みにいることを本能で理解することができた。そしてその考えも知ることができた。今の魔法師社会に喧嘩を売るような発言も、蓮司には好印象だった。

 

こんな愉快な悪戯やサプライズも行ってくれたのだ。ならば…自分も若人代表としてサプライズで返そう。それが蓮司の判断だった。

 

「悪いな。俺は九島烈に会ったことがないんでね。目の前のあんたがそうだとは信じられないもんで警戒を怠れないんだよ、爺さん」

 

故に、まずは悪態をついてみることにした。この老人ならば、付き合ってくれるかもしれない。そんな期待も持ちながら。

 

「れ、れ、れ、蓮司さん…も、もう止めた方が…周りのめ、目がすご、すごいことに…!」

 

ほのかが涙目で蓮司をなんとか宥めようとする。現に第一高校の面々や知り合い以外の人たちは、すごい顔で蓮司を睨んでいた。

 

だが、こうなった蓮司はもう止まらない。ハラハラする周囲を置いてけぼりに、蓮司と烈の会話は続いていく。

 

『ふむ…私もそう言われたのは初めてだよ。私が私であることの証明か…』

「口舌なら文章を作れば他人にもできる。それらしい雰囲気だって練習すればできる。さっきの演説やちょっとした手品で自分を九島烈だとするには、俺からすればお粗末にもほどがある」

『そうか…では少年よ。どうすれば私を本物だと定義するかね』

「そうだな…じゃあこういうのはどうだ、爺さん?」

 

蓮司と烈は楽しそうに話していたが、ここで蓮司が提案をした。そしてその提案を聞いた烈は更に楽しそうに、周囲は絶望にすら包まれそうになった。

 

「俺はこのままあんたに魔法を放つ。それを対処して見せろよ爺さん。天下の九島閣下なら容易いだろ?」

 

最早、正気の沙汰と思えない展開だ。

 

「やめなさい蓮司くん!いくらなんでもやっていいことと悪いことがあるわ!」

「いい加減にしろ!出場前に失格になりたいのか!」

「くそ、だからこいつを代表にするのは反対だったんだ!」

「よりにもよって、九島閣下に楯突くとか…」

「ちょっと、私たちどうなっちゃうの!?」

 

真由美や摩利を筆頭に蓮司に怒りを表し、第一高校のメンバーは絶望し始める。何故こいつを選んでしまったのか、と。しかし…

 

『いいだろう』

 

他ならない烈がそれを了承してしまった。

 

『君の魔法をそのまま放ってみなさい。そして私の行動を見て、改めて判断しなさい』

「はっ、後悔しないようにな」

『その言葉、そっくりそのまま返そう。そして、恥をかかぬようにな』

 

もはや2人のやり取りを止められるものはいなく。後は運命に任せるしかなかった。

 

「お、お兄様!止めなくていいのですか!?もう止められるのはお兄様しか…!」

「落ち着きなさい、深雪」

 

深雪も他の生徒と同様に慌てまくっていた。普段の彼女からは考えられないほど焦っている。対して、達也はどこまでも冷静だった。

 

(蓮司…お前の考えていることは、俺には正確に分からない。だが…知りたいんだろう。魔法師の頂点がどういう存在か、お前なりのやり方で)

 

達也はそう考えていた。蓮司は蓮司なりに、魔法師の矜持を持っている。魔法が関係する蓮司の行動は、常に明確な理由や目的が存在する。それをこれまで見てきたからこそ、達也は冷静でいられた。

 

「蓮司を信じよう」

 

故に達也は蓮司を信じることにした、これまでのように。

 

僅かな沈黙の後…蓮司の魔法が放たれた。

 

蓮司の手元、そして烈の頭上にある魔法陣より光弾が放たれた。魔法弾である以上、当たれば怪我では済まない可能性もある。周囲の生徒たちは悲鳴を上げた。

 

そうして放たれた魔法に対し…

 

九島烈は、何もせずただ直立していた。

 

 

『閣下!』

 

司会進行のスタッフが思わず悲鳴を上げるが、それでも烈は身じろぎ一つしない。

 

そしてそのまま光弾は烈に向かって飛んでいき…

 

 

 

烈に当たる直前で弾けた。その光は、まるで花火のようだった。

 

その結果に周囲は再び静まり返った。目の前で起きた現象は理解できたが、展開が急すぎて着いてこれる者は誰もいなかった。

 

「ちっ。微動だにせずかよ」

 

その結果に蓮司は舌打ちをしていたが嬉しそうでもあった。

 

『なに。攻撃する気はあっても、危害を加える意識が感じられなかったのでね。君の善良な心を信じたのだよ』

「心にもないことを…。初めから見抜いてたんじゃねえかよ」

 

烈の感想に蓮司は再び悪態をついた。しかし、この結果に蓮司は満足していた。

 

(この堂々とした振る舞い、圧倒的な余裕…これが老師か)

 

目の前の存在がいかに偉大かを理解できた。そして同時に、自分はまだその高みに届いていないことを蓮司は悟り、まだ見ぬ強さに感情が高ぶった。

 

蓮司はそのまま立ち上がり、右手を胸に当て、頭を下げた。

 

「閣下、あなたに疑念を持ったこと、この場にて謝罪いたします。そして約束しましょう。私は、あなたを退屈させないと」

 

恭しく、しかし力強い蓮司の発言に、烈は大きく頷いた。

 

『そうか。では、楽しませてもらうとしよう』

 

そこまで話し、今度こそ烈は舞台から退場した。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「彼が龍童蓮司君…例の子(・・・)か」

 

舞台裏にて、烈は先の会場での一件を思い出しながら独り言を呟いていた。

 

烈と蓮司は、確かにあの場が初対面だ。そして九島烈の名は魔法師では知らぬものがいないため、烈を一方的に知っている者は数知れない。当然、蓮司もそこは他の者たちと同様であった。

烈も蓮司と相対したのは今回が初めてだ。だが実は、烈は蓮司の存在を知っていた。

それが如何なる理由によるものか…それは烈本人にしか分からない。

 

(君がどんな輝きを放つのか…それを見極めさせてもらおう)

 

「龍童蓮司君。君は果たして、この世を救うのか。…それとも、この世を滅ぼすのか」

 




はい、ということで九校戦編第10話目、通算第29話目でした。いかがでしたでしょうか。

九島閣下の登場回でした。ここはほぼ原作通りですね。

問題はここから...蓮司君大暴走!多分周りはこれまでで一番生きた心地がしなかったでしょう。それだけ蓮司君も興奮していたんです。

そして最後。閣下は蓮司君を知っています。一体どこで知ったんでしょう。そして蓮司君の何を知っているのでしょう。今後にご期待ください。

それでは今回はここまでです。そして、年内更新も今話が最後となります。
今年から投稿を始めましたが、たくさんの方に読んでもらって、本当にうれしいです!来年もぜひよろしくお願いいたします。

では次回、第30話でお会いしましょう。それでは!
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