魔法科高校で龍は生きる   作:ドンマッシュ

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お待たせしました。ドンマッシュです。

前話は個人的に盛り上がりに欠けるかなと思いましたが、今回は少しでも盛り上がれるかなと思います。少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。

それでは、どうぞ!


1‐9 対峙

「それではこれより、服部副会長VS蓮司君の試合を執り行う!」

 

汎用型のCADを構え、いつでも動ける準備を行う生徒会副会長、服部刑部。

気怠そうに、しかし視線は鋭く、目の前の獲物を逃がすまいとする蓮司。

 

なぜこの二人が対峙しているのか。それは少し前に遡る。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

昼休憩の後、クラスメートの英美や鋼に先ほどの一件を伝えたり、その後の授業で眠ったり(教師がいくら呼んでも起きなかったが、起きた直後に指名してもちゃんと答えたため、その授業中は不問となった)と、色々ありながらも放課後を迎えた。

 

睡眠学習のせいで教師に呼び出しをくらい注意されたものの、あまり細かいことは言われず、そこまで時間を浪費せずに済んだ。

 

そうして約束した生徒会室に向かい、ノック後に入室すると

 

「思い上がるなよ…補欠の分際で!!」

 

そんな怒号が突然聞こえた。その言葉を発したのはとある男子生徒。昼間におらず今ここにいるということは、恐らく生徒会副会長「はんぞーくん」なのだろう。そして蓮司はその生徒に見覚えがあった。

 

(こいつ、入学式の日に会長の後ろにいたやつじゃねーか。糞真面目でめんどうーそうな雰囲気だった奴)

 

そんな感想を抱いていると、達也が僅かにほほ笑んだ

「何がおかしい!」

「魔法師は常に冷静であるべき、なのでしょう?」

「っ…!」

「別に風紀委員になりたいわけではないですが…妹の目が曇っていないことを証明するためならば、やむを得ません。」

「…いいだろう。身の程を弁えることを教えてやる。雑草」

 

そこまで聞いて、おおよその流れが理解できた。恐らく、あの副会長と思われる人物は一科生であることに強い誇りがあり、達也の風紀委員入りに強く反対したんだろう。そんなものを聞けば、当然お兄様大好きっ娘の深雪が黙っているわけがない。そこでさらに副会長と深雪が口論になったところを達也が止め、自分の実力を見せることで証明することにした。そんなところだろう。

 

(くだらねぇな…)

 

ここで蓮司は一気に冷めていた。彼にとってそんなプライドは塵ほどの価値もない。そんなものにこだわるから物事の本質が見えてこない。目の前の男はその典型例だった。

 

「ん?ああ蓮司君、来ていたのか」

 

そこで摩利がこちらに気づき、全員がこちらを見る。その中で、達也が真っ先に蓮司の雰囲気に異変を感じていた。

 

(なんだ?昼間と違って、ずいぶん不機嫌だな…)

 

そんなことを考えていると服部が摩利に話しかける。

 

「委員長、彼は?」

「ああ、彼は龍童蓮司君。新しい風紀委員だ」

「…確か例の問題を起こした生徒ではなかったですか?そんな生徒をなぜ…」

「渡辺風紀委員長」

 

そこまで服部が話したとろで、蓮司が割り込んできた。そこでその場の全員が、蓮司の雰囲気に気づく。代表して、呼ばれた摩利が話しかけた。

 

「…どうしたんだ、蓮司君?」

「風紀委員会入りはなしでお願いします」

「な!?」

 

突然の拒否宣言に全員が驚く。

 

「ど、どうした!?いきなり何を…」

「こんな阿保な選民思想に取りつかれて虚構の優越感に浸ってる低能野郎の近くで働くなんて、死んでもごめんだ」

 

そこまで蓮司が言いきり、今度は沈黙が場を支配する。少しして服部が言われたことを理解し、怒気を込めて睨む。

 

「それは私のことを言っているのか、1年生?」

「自覚があるだけ褒めてやるよ、ゴミ野郎」

「貴様…」

 

二人の間の空気が急速に冷えていくのを感じる。あまりに突然の展開に周りはついていくことができない。その中で、蓮司は次に達也に話しかける。

 

「達也」

「…どうした、蓮司」

「この後、こいつと試合やんだろ?」

「ああ、その予定だ」

「それ、先によこせ」

 

もはや周りは状況を呑み込めない。だが摩利と真由美は気づき始める。彼は先程の服部のような発言は嫌っていたと。単に差別することが許せないのではなく。優越的な地位に自分が存在していると考えていることを嫌悪していることに。

 

「…なんのつもりだ、新入り」

「あんたの立場を分からせてやるって言ってんだよ。黙ってありがたがれ先輩」

「…いいだろう、先に貴様をしつけてやる」

 

そうして話は冒頭に戻る。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「審判は私がする。相手を死に至らしめる術式、回復不能な障害を与える術式、相手の肉体を直接損壊する術式の使用は禁止。ただし捻挫以上の傷害を与えない攻撃は許可する。また武器の使用は禁止するが、素手の直接攻撃はあり。けり技の場合は専用のシューズに履き替えること。勝敗は一方が負けを認めるか、審判が続行不可能と判断したときに決する。以上だ」

 

摩利がルールを説明し、双方が同意する。ギャラリーは先程生徒会室にいたメンバー、そして…

 

「ごめんなさいね、十文字君。忙しかったでしょう?」

「気にするな七草。奴の実力は一度見て起きたかった」

 

そう真由美と話すのは、部活連会頭の十文字克人だ。彼とはここに来る途中で会い、事情話すと試合を見ると言い出した。

 

(あいつが十文字克人。十文字ってのは確か現十師族だったか。…強いな)

 

蓮司の興味は、目の前の服部ではなく、途中参加の十文字に向いていた。それを見て、服部はさらにいら立ちを募らせる。

 

「貴様、これから試合なんだぞ。目の前の相手に集中したらどうだ。それとも集中力がそれほどしか持たないのか?」

「あんたの何に価値を感じて興味を持てばいいんだよミーハー野郎」

「へらず口をっ…!」

 

服部はさらに怒りを感じたが、これ以上は不毛だと断じ、改めて集中し直す。

 

「ふむ…あれはいかんな。先輩への態度はなっていない。俺が正そうか」

「空気を読んでね十文字君。今はそれどころじゃないでしょ」

 

ここに若干の天然を発揮する十文字と、それに突っ込む真由美という何ともあべこべなコンビが誕生していた。

 

「双方準備はいいか?」

 

摩利が改めて声をかける。服部も構え、蓮司は変わらず呑気に突っ立っている。そこで摩利が異変に気付く。

 

「ん?蓮司君、はやくCADを構えないか」

「いらねえよそんなもん。ハンデだハンデ」

 

これには周りも困惑を隠せない。現代魔法において、CADの存在は非常に重要だ。これがないと魔法を発動することはかなり難しく、発動できてもあまりに遅すぎるからだ。しかし蓮司はあくまで姿勢を変えない。これ以上は待っても仕方がないと判断した摩利は、試合の合図を開始した

 

「それでは…始めっ!」

 

真っ先に動いたのは服部だった。CADを僅かに操作し、敵を吹き飛ばすための魔法を発動する。第一高校でも実力者に数えられる服部のスピードはさすがの一言に尽き、この場の観戦者たちは素直に感心していた。

 

そうして放たれた魔法を。

 

 

 

 

対戦者の蓮司は。

 

 

 

 

 

蹴り上げて吹き飛ばし(・・・・・・・・・・)無効化した(・・・・・)

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「………………はあぁっっ!!??」」」」」」」

 

蓮司以外のほぼ全員が信じられないと言った声を出した。唯一声をあげなかったのは十文字のみだったが、それでも驚嘆は隠せなかった。それもそうだろう。

 

一体どこの世界の、魔法を蹴って無効化するも者がいるというのか。しかし残念ながらそれは目の前にいる。そして忘れてはならない。まだ試合は続行中だということを。

 

「隙しかないぞ、ボケ」

 

そこで服部はハッとして声の方角を探すがもう遅い。蓮司は次の攻撃の構えに入っていた。拳を引き、素手の攻撃の構えをしていた。服部は何とかしようとしたが慌てすぎていたため何もできない。そうして放たれる蓮司の攻撃。

その拳は、直接服部に触れなかった。しかしそこに込められた何かを食らった瞬間、服部は強烈な痛みと突然の呼吸困難に陥り、倒れこむ。そして、それ以上試合の続行は不可能と判断された。

 

「し、勝者!龍童蓮司!」

 

それを聞き、自分は負けたのだと理解する。そして服部は蓮司を見上げた。そしてその瞳に唖然とした。

 

それはまさしくゴミを見る目だった。目の前の存在を底辺と確定させ、圧倒的な差があることを表している目。そして蓮司は屈み、服部にはっきり聞こえるように呟く。

 

―どうだよ、負け犬の気分は。てめえが見下し続けたゴミどもと同じ穴にはまった気分はよ―

 

「っっっ!!!」

 

服部は悔しさが急速にこみ上げたが、言葉を発せない。それは蓮司の攻撃を受けたからだが、同時に返す言葉が見当たらなかったからだ。

蓮司の言葉はその通りで、正真正銘、自分は負け犬となった。変化する状況に対応することができず慌てた挙句、何もできなかった。目の前の存在との圧倒的な差を理解し、超えられないと感じてしまった。それは正しく、第一高校の二科生の大半が一科生に感じていることと全く同じだった。

第一高校の一科生としても、魔法師としても、今の服部は敗者だった。

 

「ま、悔しいと感じるならまだいいんじゃねえの」

「…?」

「あんたのいう雑草どもは、その悔しさすら捨ててるやつが多いからな。そこは俺もいら立ちを感じる」

 

そこまで話して立ち上がり、背中を向ける。

 

「その気があるならまた受けてやるよ。何度だって叩き潰してやる」

 

そうして蓮司はそこを離れる。十文字が服部に肩を貸す中で、服部はわずかに笑った。

 

「…なるほど、俺の負けだな」

 

ぞういう服部の顔は、僅かだが晴れやかであった。

 




はい、というわけで第9話でした。いかがでしたでしょうか。

今回は蓮司君の実力の一端をお見せしました。そう、一端です。これが彼の全力なわけがありません。補足すると、服部君は弱いわけではありません。むしろ実力者側です。しかしそこはまだまだ高校生、予想外のことがあると冷静ではいられなくなるものです。それに彼はきっと今後成長できるでしょう。根拠はないですが、ていうか今作品には直接関係ないですが。「悔しい」って感情はそれだけ動力源になると私は考えてます。さて、今話はここまでです。

話は変わりますが、誤字脱字報告をくださる皆様、本当にありがとうございます。執筆して、読み返して、気を付けてはいるつもりですが、やはりそういうミスが出てしまうようです。すみません。そしてご指摘いただきありがとうございます。
さらに個別メッセージも頂き、ありがとうございます。なるべくお返事を返していければと思いますので今後もよろしくお願いします。

それでは第10話でお会いしましょう。それでは!
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