My Dear, Gold Ship   作:イチ氏

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今の今まで、これからも、何ひとつ
姿が変わったぐらいでこいつの中身が変わるものか


月まで何マイル?

 シーツの上の出会った時に比べて随分と小さくなってしまった体を見下ろす。自分達ウマ娘に比べればヒトは脆くて危なっこい生き物であるからして、それが歳食ったらもっとやわやわになっちまうというのが面白いなあと昔思った覚えがある。ウマ娘だって歳を取るのだが、ヒトに比べればある一定を過ぎた辺りからはゆっくりだ。

 

 もっとも、頭が真っ白になろうが縮もうが細くなって皺くちゃになろうが彼女はちっとも気にしちゃいないのだが。初めて出会った頃からこいつの本質は何一つ変わってはいないことをゴールドシップはよく知っているからだ。

 たとえ体が燃やされて骨と灰の欠片になっても、きっと壺ひとつに収まるぐらい小さくなっても、こいつはずっとあの三年間とそれからの数十年を共にしてきた、ゴールドシップのヒマ人のままであり続けるだろう。

 

 だって、このゴールドシップについていけるこの世一番の変わり者だ。

 

 そんな、散々振り回されても食らいついて離れず、根気よく自分と長いこと付き合い続けた変わり者のヒマ人がなんだかとても満足そうな顔で眠っているものだから、ゴールドシップもいつも通り笑った。

 

 ……潮騒が穏やかに聞こえている。海が見えるところがいいと言い張ってここを選んだのは自分ではなくてこいつだというのを、他の奴らはきっと知らないだろう。マックイーン辺りはゴールドシップがワガママを言って押し通したと思ってるに違いない。

 ま、そう思われる自覚ぐらいはある。具体的にはドワーフフェアリーミノーの体長ぐらい。

 

 手を握ればまだ生温い体温が残っている。

 それを自分の額に当てて目を閉じた。

 

 窓から遠く見える月は白く、猫の爪のように細くくっきりとしている。

 百年先の待ち合わせ場所。

 

 行くまでにやることはたくさんある。ラップはサランラップ派かクレラップ派かで決着をつけなくちゃならないし、持っていくドーナツを厳選しなくちゃならないし、フラッシュの貯金箱にこっそり五百円玉を入れて、バナナはおやつ。焼きそばを食い溜めして、いつも遊んでくれるおっちゃんにお別れ言って、そっから星海域航行許可証を取らねばならないし、出してくれないようならマックイーン達を巻き込んでシャコ投げデスマッチの開幕だ。………ん?いっそ無許可で海賊ってのも悪くないな。

 

 なに、百年なんてすぐだ。ドーナツ一・四億個並べた距離の土星(八十光年)に比べたら楽勝ってなもんで、ひとっ飛びで今すぐにでも行ける。このゴールドシップ様にかかれば何の問題もなくスムーズに快適な宇宙への旅がスリリングにお楽しみいただけます、詳しくはお手元のしおりをご確認ください。確認する時間ねーけどな。秒で着いちまうから。

 でもこいつの足はゴルシちゃんよりずっと遅いのでハンデのひとつぐらいくれてやろう。合わせてゆっくり行ってやる。

 

 

「またな、百年後に月だぞ。忘れんなよ」

 

 

 アタシに辿り着けないわけがない。

 何せ自分はこいつの黄金船なのだ。

 

 

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