今年最後の更新となります!
来年度もよろしくお願いいたします!
では7話どうぞ!
岡山での依頼演奏後の話。
帰る前に悠斗は里親である水川竜也の墓参りをしていた。
東山の上にある斎場の近くの墓地に彼の遺骨は埋まっている。
一通りの掃除を済ませたあと帰ろうとすると1人の女性が話しかける。
「悠斗くんで間違いないよね?」
「あなたは…」
「覚えてる?孤児院の。」
「美奈海さん。」
「少し話さない?」
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岡山駅の裏にある喫茶店。
そこにて彼は彼女と話していた。
「そっか竜也さんの言った通り東京に…。」
「はい、代々木音楽でクラリネットや作曲の勉強してます。」
「で、そのギターは何?」
「誘われてスクールバンドに。」
「スクールバンドかぁ。」
美奈海の顔が曇る。
「どうしたんですか?」
「ねぇ、それって竜也さんがほんとに望んだ事なのかな?」
「どういうことですか?」
「竜也さんはあなたにクラリネットを与えた。クラリネットで上を目指して欲しいんじゃないかなって。だからギターなんかにうつつを抜かしてる暇はないんじゃないかなーって。」
その言葉はしばらく悠斗の中で反芻され続けることになる。
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夏休みも開け、いよいよ二学期。
「授業つかれたなぁ。」
可夢偉がため息をつきながら歩いていると第1個別練習室からクラリネットの音が。
♪クラリネットソナタ/悠斗
真剣に練習していたのは悠斗だった。
吹いては練習番号ごとで止めて吹く。ただひたすらに繰り返し練習をしていた。
「何かあるのかな?」
すると練習を終え楽器を片付けて練習室から出てくる。
「あれっ可夢偉?」
「やっほー。」
「ちょうどいいところにいた。今日練習出れそうにないわ。よろしくー。」
そのまま廊下を走り駐車場に向かっていった。
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「可夢偉さん遅いぞ〜。文化祭のために練習するんでしょ?」
スティーブが待ちわびたかのように話す。
「ごめんごめん。」
「あとは悠斗だけだな。」
「悠斗くん今日来れないって。」
「まぁそっかソロコン近いもんな。」
「ソロコン?」
「あれ?聴いてない?」
「特に何も。」
慶洋が話を続ける。
「あいつ、うちの管弦楽専攻の学内選考会でぶっちぎりの1位取ってソロコンにうちの学校代表で出るんだよ。」
「へぇ〜。」
「でもなんかあれなんだよなぁ。演奏がいつもより硬いというか、滑らかさや温かさがないんだよなぁ最近のあいつのクラリネットの演奏。」
「学校代表ってことを重く受け止めすぎてんじゃねぇのか?」
「そうかもなぁ。」
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その日から悠斗は1週間連続で練習に来なかった。
どころか学校に来ても練習室に篭もり練習をただひたすら続け、周りと顔を合わさないようにしているようにも見て取れた。
1度だけ慶洋もコンタクトが取れそうだったが。
「悠斗、練習どんな感じだ?」
「まぁぼちぼちかな、全国金賞取るからまっとけよー!」
とだけ行って足早に駐車場に向かっていった。
「変だ。」
「何が?」
「明らかに悠斗の様子がおかしい。」
「どうしてそう思うの?」
「なんか隠してる気がするんだよなぁ。気のせいだといいんだが。」
その予感は当たることとなる。
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千砂都のバイト先のたこ焼き屋。
「いらっしゃいませー、あ、悠斗くん。」
「どうもー、たこ焼き1つ。」
「ういっすー。」
器用な手つきでたこ焼きを作り始める。
「最近バンドの方はどうなの?」
「まぁ…ぼちぼち?」
明らかに声が曇る。
「千砂都もスクールアイドル、始めたんだって?」
「かのんちゃんのおかげでね。ほい、たこ焼き。」
「ありがとう。」
お代を払い帰ろうとする。
「何かあったでしょ?」
「…まぁ。」
「無理はしないこと。いい?」
「はい。」
「じゃ、気をつけて。」
悠斗は振り向き車に歩いていこうとする手前で止まった。
「慶洋には言わないで欲しいんだけど、バンド辞めようと思ってる。」
「えっ、どういうこと!?」
「俺さ、クラリネットのプロになりたいんだよ。他のことにうつつを抜かしてる暇ないなって。」
「…そっか。」
「絶対内緒にしておいて。時が来たら自分から伝えるから。」
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慶洋は自宅のパン屋の店番をしていた。
「8時だぜ?もう来ねぇよさすがに。」
そう呟いた瞬間ドアが開く。
「はい、いらっし…」
そこには息の上がった千砂都がいた。
「千砂都。どうしたんだそんなに慌てて。」
「慶洋くん!大変!悠斗くんが、悠斗くんが!!」
「悠斗がどうしたんだ?」
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「スクールバンドをやめる!?!?」
「なんでもクラリネットを本気でやりたいらしくて。」
「どうして相談しなかったんだよ。」
「でも気持ちは分かる。決めた道を邪魔して欲しくないんだと思う。慶洋くんには言わないでって言われたけどどうしても言っておいた方がいいと思って…」
「そっか…ありがとう。」
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次の日、ENEOS南青山SS。
バイトが終わり悠斗は帰ろうとすると慶洋が待っていた。
「ちょっと話そう。」
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「怒ってる?練習休み続けてるの?」
「心配なんだよ。何か様子が変だって。」
「…俺さ、バンド辞めようと思ってる。」
「…考え直せねぇのか?」
「俺の親。ほんとの親じゃないんだ。俺は捨て子なんだ。その育ててくれた竜也さんのようになりたいんだ。あんな感じのクラリネットのプロに。だから余計なことしてる暇がないんだ。」
「でも俺は!お前がいたから…」
「分かってる…でも、俺はこっちをしなきゃならないから…ごめん。」
そう言ってワークスに乗り込み帰って行った。
「悠斗…どうして…」
慶洋には目の前の点滅赤信号が眩しく見えた。
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次の日。
「今日から水川はソロコンのために練習をするため学校に来ないから知っておいてくれ。」
先生が朝のホームルームで話す。
(悠斗…)
「岸田?聞いてんのか??」
「あぁはい、すみません。」
「文化祭も水川は参加できるか分からない。専攻での演奏も同じクラリネット担当は考慮して編成、練習をして欲しい。」
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慶洋の自宅。
「ただいまー。」
「おー慶洋帰ったか。どうした?元気ないじゃないか。」
「俺をバンドに誘ったやつが辞めるって。」
「そうか…俺もそんな時期があったな。仲良いバンドメンバーがクラリネットでプロになるためにやめようとしたことが。結局辞めずに両方叶えやがった。なのに突然交通事故で死んでさ。あいつ。その時の写真あるぞぉ、見るか?」
そう言いながら父は1冊のアルバムを取り出す。
慶洋はページを開く。
そこには悠斗の育て親、竜也の顔が見えた。
「これ…悠斗の。」
「悠斗?ひょっとしてお前の友達って水川って苗字か?」
「その通りだよ!まさかここで通じるとは。」
「そうか竜也の倅か。これを渡す日が来るか。」
そう言いながら自分の車の鍵に着いているもうひとつの鍵を外す。
「これ、いつか俺の子に何かあったらきっと解決できるって言いながら預かってたものだ。今役に立つかは分からないが、きっと悠斗くんの何かを変えれるかもしれねぇ。」
「親父…ありがとう。」
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一方かのん、可可、すみれ、千砂都の4人は生徒会戦でゴタゴタしていた。
「ざ…、惨敗…。何でったら何で!?」
「当然デスね。」
「じゃかましい!」
「っていうか、何でマイナス?」
「それは、たこ焼きの件のペナルティがあるから。」
「まあ、それがなくても結果は変わりマセンけどね。だから、可可は、最初からかのんがいいと言っていたのデス。」
「でも、やっぱり葉月さんが生徒会長で良かったような気がする。」
「私も。」
「アンタ達…。」
「いや、すみれちゃんが駄目って訳じゃないんだよ? ただ、学校全体の事を考えたり、色々決めていったりしなきゃいけない事を考えると…。」
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夜。かのんのカフェにて。
「どうもー。」
「あ、慶洋くん。カフェオレでいい?」
「今日はブラックで。」
「珍しい。わかった。」
かのんはコーヒーを入れ慶洋に差し出す。
「ちぃちゃんから聞いたよ。悠斗くん、バンド辞めちゃうかもしれないって。」
「いや、させねぇよ。俺はあいつがいたからこうやって音楽を続けられてると思ってる。あいつももっと色々話してくれればいいのに。」
1口飲む。
「やっぱ苦いなぁ、悠斗はどうしてこれを好んで飲んでるんだろうなぁ。」
「やっぱり悠斗くん意識してるんだ。」
かのんが隣に座る。
「まぁな。…親父があいつの親と知り合いだったらしくて、これを届けて欲しいって。」
慶洋はポケットから鍵を取り出す。
「慶洋くん、やっぱ話すべきだよちゃんと。あ、そうだ!いいこと思いついた!」
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数日後。
アルトワークスがかのんの家の付近の駐車場に止まる。
「こんにちはー。」
「あ、悠斗くんいらっしゃい。」
そこには慶洋も座っていた。
「ちゃんと話をしよう。」
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「どうして?」
「竜也さんのこと、色々調べたんだ。東都芸大に通いウィーンに留学、ウィーンであっとゆう間に首席奏者になり帰国後大学も首席で卒業。その後J響のトップになり、東京ウィンドハーモニーのトップ、更には吹奏楽の課題曲の作曲、吹奏楽連盟の理事までしてた。そりゃすげーわ。」
「ちょっと変な人だったけどな。」
「で、この写真を見て欲しい。」
そこには慶洋の父と竜也がベース、ギターを持ち肩を組み、笑顔で写った写真があった。
「これは…」
「どうして代々木音楽に来たのか、どうしてバンドをやる流れになったのか。全てお前に見せてやる。こい!」
そう言って慶洋は悠斗の手を取り店をでた。
「行ってらっしゃい、慶洋くん。」
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代々木音楽の4階北側。今の練習拠点。
「ここにお前の答えがある。」
ポケットから鍵を取り出し悠斗に渡す。
「ロッカールームの横に開かずの木箱がある。そこには全て入ってる。」
悠斗はロッカールームに入り木箱を開ける。
「これは…」
かつて竜也の使っていたクラリネットのリガチャーや、ギターピック。そして手紙が入っていた。
[悠斗へ。久々だなぁ、と言ってももうこの手紙を読んでるってことは親子としての縁を切ってる訳だが。まずは答え合わせといこう。どうしてお前を代々木に入れたか。それはお前の音楽の可能性を広げて欲しかった。お前のクラリネットだけでは無い、様々な音楽に触れて、字の如く音を楽しみ、世界を広げて欲しかった。俺は確かにクラリネットで多くの世界を渡り歩いた。だが色々な可能性はある。お前はそれを望めばどれでも手に入れられる。それがここだった。俺もここ出身だから。だから周りなんか気にするな。俺の事もいい。お前がやりたいことを全て心のままに、挑戦できるものは全てやってみればいい。お前にはその環境に居る権利がある。お前の耳は異常なほどいい。もし迷ったらこれを読み返せ。恐らくホントの気持ちはすぐそこにあるはず。頑張れよ、お前のたった1人の父親より。]
「竜也さん…」
悠斗は溢れ出た涙を拭きながらつぶやく。
「それは最後の気持ちなんだと思う。結局はできるかじゃない。やりたいかどうかなんだ。」
「そんなの…やりたいに決まってる!クラリネットも、ギターも、全部全部やりたい!」
「決まりだな。」
後ろから龍樹が来る。
すると他の2人も後から来る。
「みんな…」
慶洋がカバンから1冊の楽譜を渡す。
「文化祭用に書いたんだけど、お前が帰って来ることを信じてお前のための曲を作ったんだ。この曲は悠斗に歌って欲しい。」
「みんなで考えたんだ。」
「悠斗には1番の曲だ。」
「歌って欲しい。これは僕らからのお願いだ。」
慶洋が手を差し出す。
「悠斗、もう一度俺と、俺らとはじめよう!」
「…あぁ。」
悠斗は静かに頷き慶洋の手を取る。
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文化祭当日。
「悠斗、行けるな?」
「もちろん。」
「こうやって5人でまたやるわけだしやりたいことがあるんだ。」
可夢偉がスティックを目の前に出す。
「なるほどね、スクールバンドと言ったらこれだよな。」
慶洋もベースのヘッドを出す。
5人はこうして円陣を組む。
「さぁ俺らで最高のフィナーレをみんなに届けよう!Divide love into me!Divide love into you!
「「「「「Divide love into all!」」」」」
♪Shooting Voice!/Codα
悠斗の低く伸びやかな声が響く。
やがてそれは会場に人を集め、一体となる盛り上がりを見せた。
「これが俺たち!」
「「「「「代々木音楽スクールバンドです!!」」」」」
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その後のソロコンでも見事全国大会にて金賞を受賞。
その賞状を受け取りに理事長室を悠斗は訪ねる。
「失礼します。」
「水川くん。おめでとう。さすが竜也の見込んだ子ね。」
「え…?どういうことですか?」
「私が竜也と大学の同期なのよ。同じ東京ウィンドハーモニーにも所属してたし。それに彼の元カノは私。」
「えぇー!?そうだったんですか!?」
「これを何かすごいことをしたら悠斗に渡せって言われてて。」
机の中からE♭クラリネットが出てくる。
「E♭クラ…これは竜也さんが吹いてたモデルだ。」
「はぁ、迷惑な男。勝手に別れてウィーン行って、いざ久々に会うとこれを頼む。ほんとに迷惑な男だったわ。…でも、ちゃんとあなたのことを考えてた人だった。」
「そうですか…」
「頑張ってね。これからも。」
「はい、失礼します。」
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一方かのん、可可、すみれ、千砂都の4人は恋の尾行を終えた後だった。
「葉月さん、そんなことを抱えてたなんて…」
すると向こうから見覚えのある紺色のアルトワークスが現れる。
「あれって悠斗くんの車…」
目の前に止まり、窓を開ける。
「あれ?なんでいるの?」
「やっぱ悠斗くんだ。」
「家この辺なの?」
「そこ。」
さっきいた葉月亭の目の前のアパート。
「真ん前じゃない。」
「ねぇ、ひょっとして家の前の娘のこと知ってる?」
「恋の事か?…まさか事情を聞いたのか?」
少し考えて悠斗は呟いた。
「…ちょっと家に来れるみんな。」
offlive!superstar!!
「はい、岸田慶洋でーす。」
「水川悠斗でーす。まさか竜也さんとお前の親父が知り合いだったとはねぇ。」
「しかも同じバンドメンバー。どっかで縁って繋がってるもんだなぁ。」
「こっから更に結ばれていったりして」
「かもなぁ。」
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ではまた来年!
通常通り次回は1月2日日曜日にはあげます!