蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

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今回はヨツンヘイム編です、全てを一話に詰め込んだから何時もよりも少しだけ長いです


第二十一奥義 ガキガキガキーン!お寒い中、ようこそいらっしゃいました?極寒の世界!!!

妖精の世界の地下に広がる世界、邪神級モンスターが支配する闇と氷の世界《ヨツンヘイム》。中央都市《アルン》を目指し、旅を再開させたソウテン達であったが、休息の為に足を踏み入れた村の宿屋が実は擬態モンスターであり、彼等は紆余曲折を経て、この極寒の地に落とされたのである

 

「仕方ないわね……取り敢えず、夕飯にしましょうか」

 

「わぁ!久しぶりにミトさんの鍋が食べれるんですねっ!」

 

「かーさんの鍋?其れは、delicioso(美味しそう)だねぇ。ユイは食べたことあるんか?」

 

「はいっ!一度だけ食べましたっ!美味しかったですっ!」

 

「喜んでもらえて嬉しいわ。あら、リーファにフィリアはどうして、困った顔をしてるの?」

 

この状況で、鍋の準備を始めるミトの周りで和気藹々と盛り上がる面々。しかしながら、急な雰囲気転換に付いていけないリーファ、フィリアは引き気味に苦笑していた

 

「いや、あのね?ミトは状況を理解してるのかなー……って」

 

「してるわよ?目的地とは違う地下世界に落下して、耐空制限以上に厄介な飛翔不可能エリアに足止め状態よね」

 

「理解した上で、その対応してるのっ!?正気の沙汰じゃないよっ!」

 

「バカね。私たちはこういう修羅場を何度も潜り抜けたのよ?作戦くらいはあるわよ」

 

「「そ、そうなんだ……」」

 

冷静なミトにリーファが突っ込みを飛ばすも、彼女は自分たちが培った知識の豊富さをアピールし、二人に安心感を与える

 

「それで、その作戦って?」

 

「……………テン。何かある?」

 

「おろ?俺はてっきり、キリトが考えてるもんだと思ってたんだけど?」

 

「え?こういう場合はミトだろ?どう考えても」

 

「何を言ってるんです?作戦立案はリーダーの担当ではありませんか」

 

「えっ?ヴェルデじゃないの?だって、この中にいるのってヴェルデ以外はバカだし」

 

「やだなぁ、ヒイロってばー。作戦はヒイロの担当でしょ?」

 

「ん?シリカじゃなかったか?」

 

「私は貴殿だと思っていたんだが?ディアベル」

 

「あ?オッさんの担当なんじゃねぇのか?」

 

「結論から言っておく、作戦等は存在しないと思え。言わば其れが作戦だ」

 

「「期待を返せっ!!!」」

 

全員が互いに作戦担当だと思っていたらしく、アマツが出した完全的な結論は作戦が存在しないという暴論。其れに期待を裏切られたリーファ、フィリアが突っ込みを放つ

この場所は宿屋でもなければ、安全地帯でもない区域。つまりはログアウトすれば、一定時間の間、無防備状態となったアバターが取り残される事となる。其れは、モンスターを引き寄せる擬似餌となり、最後のセーブポイント《スイルベーン》までの強制送還を意味するのだ

 

「そう言えば、邪神級モンスターが居るんだよね?ここ」

 

「居るわよ。ミトさんが追い返した最強火妖精(サラマンダー)も、流石に二十秒も持たなかったみたいよ」

 

「そうなのね……」

 

「ミト。言っとくけど、ワクワクすっぞとかは無しだからな」

 

「わ、分かってるわよ……」

 

自分と互角の鍔迫り合いを繰り広げた火妖精(サラマンダー)も相手にならない邪神級モンスターに興味を持つミトであったが、即座にその意志を汲み取ったソウテンに冷静な声色で、咎められ、残念そうに目を泳がせる

 

「ミトが言ってたけどよ、マジでこのヨツンなんちゃらで飛ぶのは無理なのか?気合いで翅を動かしゃあ飛べんだろ」

 

「無理ね。翅の飛行力を回復させるには、日光か月光が必要なの。でも、此処にはどっちも無いじゃない」

 

闇妖精(インプ)なら地下でも少しだけは飛べるみたいだけどね」

 

「そうなんか。となると……ロト」

 

「ほい来た」

 

飛行不可能エリアである事を再確認した後、ソウテンは鍋の側にいたロトに呼び掛けた。すると、何も告げていないにも関わらず、即座に理解した彼は、瞼を閉じ、数秒も経つと、軽いため息を吐き、首を横に振る

 

「う〜ん……データを参照できる範囲内に他のプレイヤーの反応はないかなぁ」

 

「わたしも調べましたけど、それ以前に、あの村がマップに登録されていません」

 

「此方も同じ見解です。マスター・フィリア」

 

「う〜ん……どうしよう?テンちゃん」

 

《プライベート・ピクシー》からの結論を聞き、フィリアは鍋に舌鼓を打つ兄に問う

 

「簡単じゃねぇの、やるだけやってみりゃいいんよ。よし、取り敢えずは…この棒が倒れた方向に進むって事でオーケーかな?おめぇさんたち」

 

「そんなことしてるから迷子なんだぞ?お前は」

 

「全くです」

 

「学習能力ないの?」

 

「仕方ないよ。だってリーダーさんだし」

 

「辛辣過ぎねぇかっ!?」

 

提案した進み方を却下され、更に飛び交う悪口の嵐にソウテンが突っ込む。すると、その様子を見ていたリーファが、何かを思い付いたように、手を叩く

 

「まあ、テンくんの迷子振りはどうでもいいとして……あたしも、その案には賛成よ。確か、何処かに階段があったはずだわ。邪神の視界と移動パターンを見極めて、慎重に行動すれば行けるはずよ」

 

「そうだろう、そうだろう……あり?序盤にちょいと罵倒しなかった?」

 

「気のせいだよ」

 

「はぁ…ん?今の何かしら…」

 

威厳の欠片さえも感じられないソウテンに、ため息を吐いていたミト。刹那、遠くの方から大音響な咆哮が、彼女の耳に反響した

 

「恐らくは邪神の鳴き声かと……」

 

「デカい足音してる…」

 

「うぇっ!?た、大変じゃないですかっ!逃げましょう!リーダーさんっ!」

 

近付く邪神の足音に、シリカが慌てふためきながら、撤退を要求するがソウテンは、その場を動こうとしない

 

「どうしたんだぁ?テン」

 

「ちょいと様子が変じゃねぇか?」

 

「ああ、一匹じゃないな」

 

邪神の鳴き声に混じり、聞こえるもう一つの鳴き声にソウテンが気付き、その異変に気付いたキリトが確認するように呟く

 

「二匹もっ!やっぱり逃げましょうっ!」

 

「シリカちゃんに同感だわっ!早くっ!お兄ちゃん、テンくん!」

 

「いんや、そいつは大丈夫みたい」

 

「ロトくんの言う通りです。接近中の邪神級モンスター二匹は……互いを攻撃しているようです!」

 

「えっ?邪神が邪神を?どうなってるの?」

 

「うーむ、見てみない事には分からないかなぁ……其れは」

 

「そういうことなら、行ってみるか。ちょいと」

 

邪神が邪神を攻撃しているという状況を理解出来ないが故に、ソウテンの提案で、全員が件の現場に足を踏み入れる

視界に映ったのは、二匹の邪神。縦三つ連なった巨大な顔の横から四本の腕を生やした巨大な邪神、そして、象と海月を足した小柄な邪神、優勢は前者の方で、後者の小柄な方は明らかに劣勢である

 

「かわいそう………ねぇ、きっくん…お兄ちゃん」

 

「はい、虐められてる方を助けましょう」

 

「だな。スグもそうしたいんだろ?」

 

「うんっ!でもどうするの?」

 

「御安心を。既に準備は万端です……走りますよっ!」

 

「えっ?ちょっ!な、なにっ!?」

 

突如、走り出す幼馴染(ヴェルデ)。彼に手を引かれ、訳も分からずにリーファは疑問符を浮かべるが、追随するキリトは意図を理解していたようで、腰からパスタの束を取り出し、三面邪神に投げ付ける

 

「喰らえっ!ハジケ奥義・パスタシュート!!」

 

「えぇーーーーーっ!?パスタ投げたっ!!」

 

投擲されたパスタは、邪神の眉間に突き刺さり、一瞬で狙いがキリトに切り替わり、彼と併走していたヴェルデとリーファも対象となる

 

「よしっ!後は頼んだっ!兄弟っ!」

 

Estamos listos.(準備は整った)。グリス!打ち上げろっ!」

 

「あいよっ!」

 

グリスにハンマーで、かち上げられたソウテンは極寒の世界で空高く飛び上がる。本来は、有り得ない光景にリーファは眼を疑った。その道化師は、不敵な笑みを浮かべ、蒼き衣を棚引かせ、誰よりも高く舞った

 

「永遠にadieu」

 

刹那、頭上から無数の槍が雨のように降り注ぎ、体を貫くも、三面邪神は反撃に転じようとリーファ達に近付く。しかし、逃げずに追ってきた小柄な邪神が、三面邪神を拘束し、動きを封じた事で、訪れた好機を、道化師は見逃さなかった。槍最上位ソードスキル《アルティメット・サイン》を模倣した技を放ち、三面邪神をポリゴンに変えた

 

「どうやら、この子に助けられたようですね」

 

「じゃあ、名前とかつけてあげようよ」

 

邪神を優しく撫でるヴェルデに、リーファが笑顔で告げると嬉しかったのか、眩い純白の光を包まれ、形状を変化させていく

放射状に真っ白い輝きを帯びた、四対八枚の翼が広げられた姿となった邪神は、背中にキリト達を乗せ、飛び上がる

 

「名前か…なら、俺がとっておきのを付けて--」

 

「はい!わたし、良い名前考えたっ!ゾウ・ゴリラ・サイ!」

 

「そんな変な名前あるかっ!!」

 

「シャチ・ウナギ・タコ!」

 

「ゾウは何処に行ったのよっ!?あとその動物の羅列をやめなさいっ!」

 

名前とは言い難い名前を付けようとするフィリアはリーファに鉄拳を見舞われ、頭に大量の瘤を作っていた

 

「なら、リーファは……リーファなら、どういう名前つけるの?」

 

「あたし…?あたしなら……そうだなぁ……トンキーとかどう?」

 

「トンキー……良い名前ですね。スグちゃんらしくて」

 

「だよね!だよね!さすが、きっくんは理解力あるなぁ!」 

 

急ではあったが、良い名前が飛び出した事にリーファは嬉しそうに飛び跳ねる

 

「なるほど、トンキーか。俺の考えてたセニョール・ピーナッツよりも」

 

「そうね。私のジンギスカンエレファントよりも」

 

「俺の長鼻丸よりも」

 

「俺のムッシュ・ミズクラゲよりも」

 

「あたしのエッフェル・レアチーズよりも」

 

「俺のヘア・バームクーヘンよりも」

 

「私のイチャリババナナよりも」

 

「俺のバナ太郎よりも」

 

「俺の長曽根象牙丸よりも」

 

「気は確かですか?みなさん」

 

トンキー、と名付けられた邪神に乗り、空を漂うこと数分。世界樹の根っ子付近に、金色に輝く物が見えた

 

「おろ?なんだ、アレ」

 

「アレは《聖剣エクスキャリバー》ってお宝ちゃんだよ」

 

「一つしかない最強の武器なのよ」

 

「最強の剣か……職人。アレを超える剣は作れたりするか?」

 

「無論だろう?キリの字。俺は《職人》だ、貴様らの要望には無理難題だろうと応える……いや、応えてみせる」

 

キリトの問いにアマツは誇らし気に笑い、拳を突き出す。其れに応えるように、キリトが突き出した拳を軽く当てる

 

「また来るからね、トンキー」

 

「今度はごちそうを持ってきますね」

 

《アルン》に続く階段近くで降ろされ、名残惜しそうな鳴き声を挙げたトンキーをリーファが優しく撫で、ヴェルデも笑みを浮かべる

其れに安心したのか、嬉しさに溢れた鳴き声を挙げた後、深い闇の底へと、溶けるかの様に姿を消していった

 

「そいじゃあ………いよいよ、敵陣に乗り込むとするかねぇ」

 

「待っててね……アスナ」

 

「今、行くからな」

 

「ママを助けましょう!絶対に!」

 

『応っ!!!』

 

かくして、最終目的地に辿り着いた《彩りの道化(カラーズ・クラウン)》。大切な仲間を救う為の最終決戦が幕を上げる




いよいよ、《アルン》に辿り着いた《彩りの道化(カラーズ・クラウン)》の面々!しかし、最終決戦を前にセーブは大切!そしてキリトは、妹のリーファを恋人のアスナと引き合わせる決意を固める……!

NEXTヒント セーブは大切

一周年記念!もう一度読みたい再編集話は?

  • 夜のバーカウンターwith ALO
  • テニスwith ALO
  • 闇鍋with ALO
  • 行列with 現実
  • ナイスハレンチwith 現実
  • カンニングwith 現実
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