2025年1月22日 東京都所沢総合病院
「ここって…確か」
「そっ。俺、もといミト達が入院してた病院」
深澄達に連れられ、到着したのは所沢市でも高い医療設備で知られる総合病院。琴音が此処に訪れるのは、今回が初めてではない
SAO事件の被害者となった兄を、何度も見舞いに訪れ、再会した日も彼女は誰よりも早くにその光景を目の当たりにした
何時ものように、物言わぬ兄を見舞い、その眠る姿を見守っていた時だ。自分の握る手に僅かではあるが力を感じ、直ぐに病院に務める神経科医の義父を呼びに行き、その事実を誰よりも早くに確認したのである
「やっぱり…テンも、この病院だったのね。私たちの記憶を消してくれたお陰で、再会するのに随分とまぁ…時間が掛かったわねぇ?」
「あー、はいはい。俺が悪かったな」
「反省の色なしですね」
「取り敢えずは焼き討ちで手を打とう」
「彩葉、流石に焼き討ちは良くねぇ。ここは貼り付けで妥協しようぜ」
「「それだっ!」」
「頭に注射打ち込まれたいんか?おめぇさんらは」
記憶消去の事を許していない深澄の発言を気に、不穏な会話を始める菊丸、彩葉、純平に天哉がジト目気味に突っ込みを放つ
病院付近であるが故に抑え気味のテンションであるが故、多少の物足りなさはあるが何時も通りの流れになるのは目に見えている為に、深澄は琴音と共に中に入っていく
「あら、和人じゃない。今日も来たの?」
「ん…深澄に琴音か。珍しい組み合わせだな?テンたちはどうしたんだ?」
受付で見知った顔を見つけ、声を掛けると和人もまた深澄に気付き、彼女の隣に立つ琴音を見た後、見慣れたバカたちが居ない事に疑問を抱く
「ああ、テン達なら……何時も通りよ」
「そうか。なら、ほっといても大丈夫だな」
「「今の一瞬で何が分かったのっ!?」」
僅かなやり取りから、状況を理解し、遠い目をする深澄と和人。その様子に琴音が突っ込みを放つと同時にもう一つの声が重なる
「あれ?スグ?何で…ここに?」
「そういうコトも何してるのよ?」
その声の主は和人の妹であり琴音の親友でもある直葉。ALOではリーファとして活躍する剣道少女である
「わたしはテンちゃん達とお見舞いだよ。えっと……深澄の友達だっけ?確か」
「そうなんだ、あたしもお兄ちゃんとお見舞いに来たのよ。確か恋人だったかな?本当かは疑わしいけど」
「……あんた、妹からの信頼薄いわね」
「うぅっ……素直な我が妹よ…何処さ、行ったの…」
「そう言えば、琴音。こちらは?」
「ああ、この人?この人はね」
「リアルで会うのは、初めてよね?私は深澄、兎沢深澄よ。ALOではミトよ」
「えっ!?み、ミトさん?わぁ!こちらこそですっ!桐ヶ谷直葉ですっ!」
「おやおや、騒がしいと思えばスグちゃんでしたか。それにしてもカズさん、私服が今日もゲキダサだぜっですね」
「おやまあ、スグっちじゃねぇの。おめぇさんもバカなぼっちに振り回されて大変だねぇ」
「似てねぇな」
「カズさんよりも頭良さげ」
「訴えるぞ?そして勝つぞ」
直葉が深澄に自己紹介する隣で、彼女に同情しながらも和人に対しての罵倒を忘れない天哉達。その姿に、顳顬を引くつかせ、御立腹な和人は彼等と騒ぎ始める
「さて、バカは放っておくわよ。目的地は最上階よ」
「「この人、リアルでも相変わらず冷静だっ!!!」」
自分のペースを崩さない深澄は、琴音と直葉を連れて、エレベーターに乗り込む。やがて、最上階で停止し、病室の扉前で深澄は歩みを止める
「アスナ…もうすぐよ」
「結城……明日奈さん?キャラネームも本名と同じなんだ。そう言う人って、あまりいないよね?」
「確かに。本来は、テンちゃんやカズみたいに本名のアナグラムが当たり前だよね」
「仕方ないわ、アスナはオンラインゲーム初心者中の初心者だったから。其れでもね?彼女は、私に生きる意味をくれた大切な人よ」
扉の施錠を解除し、中に入るとベッドに横たわった一人の少女が琴音と直葉の視界に映る。歳は自分たちよりも僅かに離れているが、その姿は美しさに溢れていた
「アスナ?今日はね、テンの妹とキリトの妹が来てくれたのよ。アイツらはまた何時も通りに喧嘩してるけど、直ぐに来るわ」
「初めまして、アスナさん。和人の妹の直葉です。兄が、お世話になってます」
「同じく天哉の妹の琴音です。兄が何時も迷惑かけちゃって、ホントにすいません」
静かに眠るアスナに、其々の兄の非礼を詫びると同時に自己紹介を済ませる。暫くすると、馬鹿騒ぎを終えた和人達が上がって来て、其々が持ち寄った見舞いの品を置き、アスナと積もる話がある和人以外は退室し、休憩所で彼を待つことにした
「それにしても…綺麗な人だったなぁ。アスナさん」
「ホントにね、どっかのお姫様かと思っちゃったわよ。あたしなんか」
「ですが、ちょっぴり怖い一面もあるんですよねぇ」
「俺、空手チョップされた」
「俺なんか細剣で串刺しにされたことあるぜ」
「俺は右ストレートを喰らったことあるねぇ」
「アンタたちが悪いんでしょうが、全部」
初めて見たアスナの姿に、目を奪われた琴音と直葉が弾ませる隣で彼女達が知らない隠された怖さを教える天哉達に深澄が呆れ気味に突っ込む
「んじゃ、俺は行くとこあるから。先に帰るわ」
「あっ!ちょっと!待ちなさいよっ!」
「また後でな〜」
引き止める深澄を筆頭に、唖然と見送るしかない面々。しかしながら、天哉は歩みを止める事なく、病院前のバス停まで足を進める。定刻通りに到着したバスに乗り込み、後ろの座席に腰を下ろす
携帯を弄り、病院内では確認していなかったメールに目を通していく
「ふーん……あいつ、出所したんか…。しっかし……あれがねぇ」
携帯に届いたメール、その内容に呆れにも似た溜息を吐くと同時に遠くを見る。送り主は天哉が和人達と行動を共にするよりも前、贔屓にしていた情報屋、他の面々は面識がない故に存在を認知していない
「お前の顔を見ると、未だにムカつく。私をコケにした事を忘れてはいないだろうなぁ?
古びたアパートの一室に辿り着いた天哉を待ち受けていたのは、痩せこけた頬が特徴的な男性。彼の口調から察するに、天哉の正体が《蒼の道化師》と呼ばれたSAO帰還者である事を知る者であるのは、明白だ
「ストーカーに成り下がるおめぇさんが悪いんだろうがよ。俺が知らねぇと思ってんのかよ?おめぇさん、ALOでアスナを探し回ってんだろ。どうせ……会話を盗聴してやがったんだろうがねぇ……違うか?《
「ふんっ……気安く呼ぶな。で?此処に来た理由は何だ」
その男、クラディールは天哉の意味深かつ不敵な笑みに応えるかのように呆れた表情で問いを投げ掛ける
「なーに……情報屋としてのアンタの腕を見込んでの依頼さ。総合電子機器メーカー《レクト》フルダイブ技術研究部門のメインコンピュータのハッキングを頼みたいんよ」
「其れはアスナ様に関係していることなんだろうな?」
「
不敵な笑みはより一層の不適さを増し、天哉が持つ胡散臭さを更に強調させる
「乗ってやろう」
「Gracias!」
渡ってはならない橋である事を理解していたが、クラディールはその提案に快く……応じる。天哉が礼を述べ、部屋を出て行こう扉に手を掛ける
「おい、天哉……。アスナ様を救い出せよ、絶対に」
「あいよ」
簡素な返事を返し、部屋から出る。降り止まない雪は辺り一面を銀色に彩り、まるで世界全てが凡ゆる色彩に彩られる事を待つキャンバスのように錯覚してしまう程だ
「話は終わった?」
雪を踏み締め、バス停までの道のりを歩いていると、唐突に隣から聞き慣れた声が聞こえ、振り向く
「げっ………み、深澄っ!?」
「「げっ」とは何よ?「げっ」とは。全く……私が知らないと思った?あの情報屋って、クラディールなんでしょ」
「誰から聞いたんよ……」
「アルゴ」
会っていた人物まで言い当てられ、苦笑気味に問うとその情報を流したであろう鼠の顔が天哉の脳裏に浮かぶ
「あんのおしゃべりネズミめっ!まあ、バレちゃ仕方ねぇ。まぁ、アイツは変態だけど仕事に関してはシビアなヤツだから安心しな」
「前科があるのを忘れたの?」
「あるけどまぁ……大丈夫だって」
「…………絶対にアスナには近付けさせないわよ」
「わかってるって……」
一方、その頃。純平はというと………
「純くんっ!今日は腕によりをかけたぞっ!」
自宅で待ち構えていたのは、大量の御馳走を用意した姉の姿
「いや、アネキ。普通に考えて、食い切れねぇんだけど……」
「純くんは育ち盛りの食べ盛りだからな。お姉ちゃん、張り切ってしまったよ」
「張り切り方を間違えてねぇかっ!?」
「なんだ、純くん。久しぶりにお姉ちゃんと二人きりだから照れているのか?」
「話を聞けぇぇぇぇ!!!」
こうして、今日も灰沢さん宅に純平の叫びが木霊するのであった
いよいよ始まるグランドクエスト!最強の敵と相対するは、我らが《彩りの道化》!さぁ、幕を上げましょう……フィナーレへと繋がる物語の幕開けに御座います
NEXTヒント ハジけるぜっ!彩りの道化!
一周年記念!もう一度読みたい再編集話は?
-
夜のバーカウンターwith ALO
-
テニスwith ALO
-
闇鍋with ALO
-
行列with 現実
-
ナイスハレンチwith 現実
-
カンニングwith 現実