でもギャグはしっかりと注ぎ込んだ
「ゴーカイに行くぜっ!」
「「了解っ!」」
最終決戦を前に、一同に会したのはソウテンが集めた精鋭部隊。彼の号令を皮切りに、次々と守護騎士と相対する彼等を、ミト達は知っていた
「あらら、新しいVRMMOでも皆の空腹ステータスや味覚再生エンジンは健在なのね」
「うぉぉぉ!VRじゃ無敵だぜぇぇぇぇ!」
「この借りはトイチにしておいてやる」
「ふっ……何時ぞやの鍋の御礼がまだでしたからな……不詳、このニシダ!借りを返しに来ましたぞっ!」
((河童がいるーーーーっ!?))
フライパン片手に笑顔を絶やさない火妖精の女性、刀を手に突貫する火妖精の侍、この状況でも交渉を忘れない土妖精の商人、そして何の種族であるは不明だが河童の格好をした初老。彼等はいずれも、終わりが見えない世界で知り合った頼もしい仲間たちである
「おやまあ、ニシダさんも来てくれたんか」
「もちろんですとも。他ならぬ貴方の頼みですからなっ!釣り大会での恩返しをさせていただきますぞっ!」
「助かるわ、ニシダさん。このバカたちは目を離すと直ぐにふざけるから」
「何をおっしゃる。ミトさん……俺たちの何処がふざけてるんよっ!」
「「全くだ!」」
如何なる状況でも自分のペースを乱さないバカたち基《
「そういうところよっ!このバカどもっ!!!」
「ふざけるんじゃないっ!!!」
「「ぎゃぁぁぁぁ!!!」」
ミトの鎌、アマツの包丁が降り注ぎ、逃げ惑うソウテン達。その姿は最終決戦であるにも関わらず、加勢のクライン達には見慣れた光景で、知り合って間もないサクヤ達に、不思議と緊張感を感じさせない光景である
「何故だろうな。ソウテンくん達と楽しそうにする純くんを見ていると、不思議な力が湧き上がるのを感じる」
「ホントだネ、本来はグランドクエストは真剣勝負。でも、この人たちは如何なる時も自分を忘れなイ……其れが持ち味なのかもネ」
「ミトとやらが言っていた仮面とはアイツか……なるほどな。確かに良い面構えをしている」
「いやぁまさか、こんな風に他勢力と組む日が来るなんてなぁ」
「別にいいんじゃないか?ディスカ。ゲームは楽しくやってこそだろ」
「ははっ、違いねぇや。カゲムネ」
守護騎士を前に物怖じしない《
しかし、その幻想は、夢は、じつに儚く、浅はかであった
「なんなんだっ!!!その姿はっ!」
「この姿は終わりの見えないデスゲームで、
「る…さ…い……うるさい!うるさい!うるさいっ!虫ケラがァァァ!!!」
キリトの言葉に我を失った須郷は、手にしていた黄金の剣を振り被る。だが、恐ろしい程に軽い刃は最も簡単に止められた
「軽い…軽すぎるんだよ、お前の剣は。お前は知らない…あの世界がどれだけの地獄だったのかを、そして、あの世界の刃がどのくらいの重さだったのかを。アイツらが、どんな想いを背負いながら戦い抜いたのかをっ!そして、俺のエゴに巻き込まれてまで、またあの
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!だまれぇぇぇぇ!!!」
「お前は所詮、茅場の足元にも及ばない……魔王に成り損ねた泥棒の王だっ!!!」
「茅場……だと?そうかっ!アイツの仕業かっ!どういうつもりなんだっ!死んでまで、この僕を邪魔するのかぁ!!!茅場ァァ!!!」
茅場の名を聞き、錯乱にもきた半狂乱状態で我を忘れたように虚空に須郷は叫び出す
「この仮想世界の結末は……俺が決めるっ!」
刹那、キリトの二対の剣を中心に槍、鎌、ハンマー、細剣、ブーメラン、短剣、片手剣、斧、包丁が飛来。そして、空高くに浮かび上がった十本の武器が一つになり、一振りの剣を形成する
この剣を彼は知っている。否!知っていた、あの世界で、終わりの見えない世界で、魔王を打ち倒した伝説の剣、勇者の剣である
「また力を貸してくれ……《
彼等の武器と想いが一つとなり、形になった剣。この世界が必要としている彩りを、そして、偽りの玉座を破壊する為に、剣をキリトは握り締め、二刀流スキル最上位剣技《ジ・イクリプス》による二十七連撃で須郷を斬り裂く。かつて、嘲笑った少年を前に彼は敗北したのだ
消えていく、理想の自分が、理想の世界が、全てを失い、平伏すしかない自分。彼は思い知った、誰かを思う強さの力を
「僕は神だぞぉぉぉ!!!認めないっ!認めないからなぁ!!」
「
敗北を認めようとしない須郷に、仮面の奥で妖しく瞳を光らせる彼は、不敵な笑みを携え、其処に現れた
「敗北を認めないんは、おめぇさんの自由だが……今回ばかりは度が過ぎたみてぇだなぁ?妖精王。次にその面を俺たちの前に晒してみろ………潰すぞ」
「ひぃぃぃぃ!!!」
怒りを含んだモノに変化した瞳は、まるで全てを破壊しようとする殺戮者のように見えた。須郷は戦慄し、灰のように真っ白になり、完全に世界から消えた
「何時から見てた?」
「お前が軽いとか言い始めた辺りだな」
親友に声を掛けると、彼は何時もの不敵な笑みを浮かべる
「そうか。これで少しは前に助けられた借りを返せたか?」
「おろ?なんだ、まだそんな事を気にしてたんか」
「当たり前だろ。一瞬の迷いがあったにせよ、俺はお前を死なせたんだ」
最後の最後で、気の迷いから、自分の前で、斬り裂かれた親友。その光景はキリトの瞳に鮮明に焼き付き、今尚、消えてはいなかった
「でも生きてる」
「それでも…!それでも、俺はずっとお前に謝りたかった!!!なのに、お前は何時もと変わらない姿で、俺のエゴに付き合ってくれた!!!ごめん…ごめんな……テン…」
「バーカ、俺に謝るんなら少しでも早くアスナんとこに行ってやんな。ミト達はもう向かってんぞ?」
「ああ…そうする……お前も早く来いよ…。行こう、アスナ」
「うん、キリトくん。ありがとね」
「ほいほい」
キリト、アスナがログアウトし、世界が静寂に包まれる。その上空を見上げ、不敵な笑みを浮かべる道化師は仮面を取る
「本来ならば有り得ない筈の連合を成立させる……毎度ながら、君の人徳には驚かされるな。ソウテン君」
その男、茅場明彦は白衣を棚引かせ、不敵に笑う
「いいや、別に俺がやったことじゃねぇさ。アイツらを動かしたんはキリトだ。何時の世も人を動かすんはアイツみたいに馬鹿正直で、真っ直ぐなヤツさ」
「相変わらずだな…君は。しかし、私のIDを勝手に使用した時は驚かされたよ」
「ああ、アレか。アレはクラディールがハッキングしたサーバー経由で知ったんよ」
「クラディール……なるほど、あの男にそれ程までの技術があったとは驚きだ。さて、頼まれたら断らない
そう言うと、ソウテンの頭上に光る結晶が現れ、彼の手に収まるように、ゆっくりと落ちる
「おろ?なんだ、これ」
「世界の種子、《ザ・シード》だ。芽吹けば、どういうものか解かる。その後の判断は君に託そう」
「おやまあ、芽吹くまでのお楽しみってことか」
「そういう事だ。いいか?間違っても、水を上げて、育てたりしないでくれ給えよ?君のことだ、やりかねないからな」
「やらんわっ!!!」
唐突な茅場の指摘にソウテンが突っ込みを放つ。その様子に僅かに微笑し、彼は白衣を翻す
「では、私は行くよ。いつかまた会おう……
「
茅場が去り、静寂の世界に一人になったソウテンはログアウトする。意識が現実の自分に返ると、ナーブギアを取る
「さて……行くとするか」
ゲームセンターを飛び出し、入り口付近に停めていたバイクに跨がり、彼は目的地に只管に走らせる
雪が降り、世界を銀色に彩り、季節感を感じさせる風が頬を撫でる
病院の駐車場付近にまで差し掛かると、見慣れた姿が視界に入ってきた
「遅いよ、キリト君。僕が風邪を引いちゃったらどうするんだよ」
「引けばいいだろ」
手にサバイバルナイフを持った黒いスーツ姿の男性。和人の手から赤い血がしたり堕ちる
「是非とも引いてもらいたいですね」
「でもバカは風邪引かない……純平さんみたいに」
「バカじゃねぇ!筋肉馬鹿だっ!」
「やっぱり馬鹿なんじゃないの」
その男、須郷を矢継ぎ早に罵倒するのは深澄を筆頭にした和人の親友達だ
「君たちにも借りがあったなぁ?」
「「いやぁ、そんな借りだなんて……」」
「何故……照れてるんだっ!?まぁいい……くたばれぇぇぇぇ!!!」
突然、照れ笑いを浮かべる深澄達に須郷は突っ込みを放つも、即座に我に返り、手にしたサバイバルナイフを振りかぶる
「ハジケ奥義・突貫ヘルメット!」
「ぐおっ!?」
サバイバルナイフが深澄達に迫り、誰もが身構えた瞬間だった。須郷の後頭部にヘルメットが直撃した
「悪いね、ちょいと遅れちまった」
「「テン(さん)っ!」」
その少年、天哉は不敵な笑みを携え、其処に佇んでいた。風で靡くのは
「須郷。お前の策略もここまでだ、アメリカ行きを企てたようだが、お前を欲しいと言ってた企業は全てが不正を暴かれて、倒産しちまったらしい……残念だったな」
「ふざけるなっ!僕は本物の王に、神に、この現実世界の神になるんだ!」
「人が神を語るか……滑稽だな。いいか?かつて、イカロスという男は自分の力を過信し、太陽に近付き、その翼を焼かれた。お前は其れと同じだ、自分の才能を過大評価し、茅場という太陽に近付き、その翼を焼いたんだ。此処がお前の人生の幕引きだ」
「舐めるなぁ!!!」
須郷はナイフを手に天哉目掛け、走り出す。しかしながら、冷静さを失くした者の思考は脆い。其れを長年の喧嘩漬け生活で知る天哉は、ナイフを握る手を蹴り上げ、即座に軸足を固定し、ありったけの力を込めた蹴りを叩き込まれた須郷は脱力し、壊れた機械のように意識を手放した
「………死んだのか?」
「流石に殺してはねぇさ。ちょいと久しぶりに現実での喧嘩だから、加減は忘れちまったかもだけどな」
「そうか。ありがとな……」
「お礼を言うんは、アスナと再会してからだ。ほら行け」
「おう」
天哉が促すと和人は、ふらふらとよろけながらも病院に入っていく。その姿を見届けた後、暫くすると数台のパトカーがサイレンを鳴らしながら、駐車場に停車した
「………須郷伸之だな?」
一台のパトカーからトレンチコートを着込み、無造作に頭を掻く一人の男性が乗降し、須郷を見下げる
「蒼井警部っ!被疑者は気を失っているようです」
「そうか………おい、そこのガキ」
蒼井、そう呼ばれた刑事は無視を決め込み、話に参加しようとしない天哉に声を掛ける
「何かようか?見知らぬ刑事さん」
「お前がコイツを蹴ったのだろう?一撃で、大人を仕留められる蹴りを放てるのは、私が知る限りでは……お前くらいだ」
「さぁて、どうだかねぇ。何せ、俺は唯の見舞客だ。ソイツは俺が来る前には既にそうなってた……って事もあるかもしれんだろ?」
「ふっ……そういうことにしておく……須郷を連行しろっ!」
「はっ!」
部下達に指示を飛ばし、彼等が須郷を連行する後ろを歩く蒼井は足を止め、僅かに天哉に視線を動かす
「………偶には、音葉の墓参りぐらいしろ。馬鹿息子」
「気が向いたらな……クソ親父」
この日、雪のように降り積り、氷のように溶けず、長年に渡り蓄積された彼等の溝が僅かに埋まった。蒼井天哉、蒼井天満が親子に戻る日もそう遠くはない……
「アスナ」
和人は傷を負いながらも一心不乱に彼女が待つ病室を目指す。扉を開き、想い人の名を呼ぶ
「キリト君……だよね?」
「ああ……ようやく……終わったんだ…最後の、本当に最後の闘いが……と言っても…終わらせたのは…テンなんだけな…」
「ごめんね。まだ音がちゃんと聞こえないの。でも、分かるよ…君の言葉。終わったんだね……ようやく……其れに」
彼女は和人を優しく抱き締め、笑う。力のない笑顔で、それでも愛が溢れる笑顔で、笑いかける
「また君に会えた……初めまして、結城明日奈です。ただいま、キリト君」
「桐ヶ谷和人です……おかえり、アスナ」
「「んっ……ちゅっ……んっ…」」
互いに本名を名乗り、再会を喜ぶ和人と明日奈。そっと口が触れ合い、朝の日差しに照らされながら、二人は再会を分かち合う
『あっ!ちょっ!深澄!押すなっ!』
『仕方ないじゃない!狭いんだからっ!ていうか、さっきから私の足を踏んでるの誰よっ!』
『俺じゃない。あと純平さん、公共の場で服は脱がないで』
『俺の筋肉は披露してこそ価値がある!』
『通報しますよ』
『全くです、いきなりディアベルさんに拉致されたかと思えば何をしてるんですか?グリスさんは』
『仕方ないさ、グリスだからな』
『うぬぅ……さすがに沖縄から首都は体に堪えるな!』
『コーバッツ。さては貴様、馬鹿だな?』
不意に扉前から聞こえた声に和人は、扉を開き、その声の主たちを中に引き入れる
「何時からいやがったっ!このバカどもっ!!!」
「おやまあ、カズ。お楽しみ中にすまんな」
「全く節度を持ってもらいたいわ…あっ、録画を切らないと」
「ミトさん。今、変なこと言わなかった?あっ、俺もタブレットの電源落とさないと」
「やれやれ……資料用の写真はこの辺りにしておきましょうか」
「見舞に俺のブロマイドをやるぜっ!」
「あたしの新曲のデモCDをどうぞ。サイン付きです」
「焼き立てのバームクーヘンを持ってきたぞ」
「うぬぅ、私はバナナ最中でいいか?今しがた、下の売店で買ったのだが」
「我が家に伝わる砥石だ」
「見舞いする気ないだろっ!!!」
病院内に木霊する和人の叫びを背に天哉達は一斉に走り出し、その後を追随するように和人も病室を飛び出す
「ホントに……あのままなんだね、みんなは。それと遅くなったけど、ただいま。深澄」
その日、深澄は心からの笑顔を親友に向けた。あの日、二人で始めたデスゲーム、やがて、恋人と仲間たちを巻き込み、更に新たな仲間たちも加わり騒がしさを増したあの世界での日々が、その日、彼女の中で終わりを告げた。だからこそ、彼女は親友に笑い掛ける
「おかえりなさい、明日奈。待ってたわ、貴女とまた会える日を」
あの戦いから4ヶ月、新たな日常を過ごす天哉達。その日々を少しだけ覗いてみると……
NEXTヒント 大円団
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