漆黒の夜空を貫き、飛翔する影が一つ。対空制限の無くなった翅で、彼女は空気を切り裂くように何処までも加速する
この世界は一度崩壊した。しかし、新たな芽吹きを受け、甦った。全ての妖精が無限に飛べる世界、かつての自分が、兄と再会する前の自分が、望んだ翅を彼女は手に入れた
(あたしは……あそこには行けない……フィリアみたいに…)
親友であるフィリアは直ぐに帰還組と意気投合し、今では彼女を中心にトレジャーハンターギルドを結成している。兄であるキリトも、ソウテン達とゲームを楽しんでいる
しかし、彼女は、リーファは其処に馴染めなかった
先週開かれた《アルヴヘイム横断レース》で一位を獲得したが、彼女は名誉よりも自由を愛していた。唯只管に飛び続ける自由が、やがて雲を突き抜け、目の前に満月が顔を見せる
「おや、スグちゃん。妙な所で会いますね」
「きっくん……」
満月の光を浴び、まるで透き通るように光る翅を旗めかせるのはヴェルデ。リーファの幼馴染であり彼女が出会った最初の《
「悩み事ですか?」
「うん……今日のオフ会さ。楽しかったよね」
「そうですね。まるで昔みたいに騒ぎました、あの世界で僕たちが過ごした二年間と同じくらいに」
「でもさ…遠いよ、あたしには遠すぎる…。この先、VRはもっともっと発展を遂げる…でも、あたしは…その先を見れない…だって、あたしには遠すぎるもん…」
《SAO》というデスゲームが如何なる物であったかをリーファは知らない。故に、その世界で数多くの出会いと別れを経験したキリト達に自分は敵わない。その先を共に歩むことも出来ない。しかし、彼は違った
「………確かに遠いです。僕もあの二人の背中を目印に、今まで必死に遠い道のりを歩みました。でも、そうじゃなかった。自分の歩幅で良いんですよ。大丈夫、スグちゃんが追い付けない時は、僕が手を引きます。スグちゃんが迷った時は、僕が手を取ります。だから、泣かないでください。君に泣き顔は似合わない」
「……覚えてたんだ…」
「当たり前です」
其れは出会いの日、彼と交わしたやり取り。兄と疎遠になり、只管に剣を振る彼女の前に現れた彼が放った優しい言葉だった
『君に泣き顔は似合わない。僕は菊丸、君と僕には縁が出来ました。喜びなさい、君は僕の親友です!』
「あの頃のきっくん、少しバカだったよね」
「其れを言えば、スグちゃんは泣き虫でした」
「むっ…いじわる」
「何とでも言ってください。其れにです、僕が尊敬している道化師と勇者はきっとこういうでしょう」
顔を顰めるリーファに対し、ヴェルデは年相応の笑みを浮かべた後、瞼の裏に浮かぶ二人の尊敬する兄貴分を思い出し、口を開く
「彩られたら、彩り返せばいい。其れが俺たちのやり方だ…とね」
「あはは、言いそうだね。お兄ちゃんとテンくんなら」
兄貴分達の決め台詞を口にするヴェルデにリーファは自然と笑みを溢す。暫くすると下から声が聞こえてきた
「ヴェルデ!リーファに指一本でも触れてみろっ!俺はお前を敵と見做し、駆逐するぞっ!」
「おやまあ、次はシスコンか」
「末期ね、これは。どうしようもないわ」
「ママ。パパの洗濯物とわたしの洗濯物は別にしてください」
「ユイちゃんは知らない間に反抗期を迎えたの?」
「いやァァァァァァ!娘がグレたぁぁぁぁ!」
「おやまあ、キリトは騒がしいね。とーさん」
「うむ、反面教師だ。覚えておきなよ?息子よ」
「一番の反面教師は黙ってなさい。さて、リーファ?貴女に見せたいものがあるんだけど、時間は大丈夫よね?まあ、答えは聞いてないんだけど」
「強制なのっ!?」
傍若無人なミトの言葉にリーファが驚愕していると、満月が蒼く光り、円形状の何かが徐々に姿を見せる。耳元に響くのは、重々しい鐘の音、やがて、円形は円錐形の幾重もの層が重なった巨大な城の全貌を見せる
「あ……まさか……まさかあれは……」
「スグちゃん。アレが浮遊城《アインクラッド》、僕たちが攻略を目指した最悪にして最高の記憶…どうです?僕たちと、あの城を彩ってやりませんか?」
「………仕方ないなぁ。きっくん達だけじゃ、絶対に先に進まないもんね。あたしがきっちりと道案内してあげるよ」
「何を仰る、スグちゃん。道案内するのは僕の方ですよ」
「そいじゃあ行くか。何時も通り……派手に!」
「「了解!リーダー!!!」」
ソウテンの号令を皮切りに、浮遊城へと彼等は飛ぶ。其々の想いを胸に、彼等は、《
そして、道化師は眼下に広がる妖精達が暮らす街、《ユグドラシルシティ》へ、深々と頭を下げる
「夢か現か、一癖も二癖もある妖精達が彩りし、幻想世界での浪漫喜劇…お楽しみいただけましたか?皆様の御眼鏡に称う日々を彩れておりましたら、拍手御喝采の程、御願い申し上げます。其れでは、今宵の舞台は……此れにて、幕引きと致しましょう。また会う日まで、暫しのお別れに御座います、
此れは仮想世界を艶やかな色彩で、己の色に彩りし、十人の勇士たちの物語
一癖も二癖もある者たちを率いるは、仮面から覗く蒼き眼で万物を見透かし、不敵な笑みを携えし、槍使い
その名を、『蒼の道化師』と申す
此度の浪漫喜劇をお楽しみいただき誠にありがとうございます。暫くは日常回を挟み、新たな世界に彩りを加えていこうかと思います。其れでは今宵はこの辺りで幕引きと致しましょう、
一周年記念!もう一度読みたい再編集話は?
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