蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

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今回は新しい先生が登場!しかし!彼等にも言い分がある訳で…


第五問 常識とはなんぞや、非常識とはなんぞや

「え〜、教育実習の鈴代先生だが大学のサークル活動で不在だ」

 

朝のHR、担任の高良が阿来の不在を告げる。彼がサークル活動をしているという意外な事実に誰もが物珍しそうに唸る

 

「おろ?サークル活動なんかしてたんか?あの人は」

 

「ああ、聞いた話ではダイビングサークルのようだ。私も若い頃にかじった程度だが知識はあるからな、鈴代先生のサークル活動には肯定的なのだ」

 

「なるほど…そいで?鈴代先生が不在の間はあの騎士学とか言う変な授業はどうするんよ」

 

「ああ…其れなんだが、実は…」

 

「私から話してやろう!久しぶりだなぁ!道化師(クラウン)とそのお供たちっ!!」

 

高良の話を遮るように一人の男性が姿を現す。特徴的な痩せこけた頬に下衆な笑みと共に天哉のもう一つの顔である道化師(クラウン)の名を呼ぶこの男。彼の名は蔵田段蔵、何を隠そうあのクラディールである

 

「おろ?何方さん?」

 

「私だっ!そうっ!アスナ様の護衛にして守護神!クラディールこと蔵田段蔵だっ!」

 

「高良先生。今すぐに警察を呼びましょう、明日奈に危険が及ぶ前に」

 

「誰か、スコップをくれないか?コイツを今から埋めてくる」

 

「はいはい、そこの明日奈大好きコンビはちょいと落ち着こうな。しかしまぁ、まさかまたお前に会う日が来るなんてな……大串くん」

 

「誰だそれはァァァ!」

 

最早、忘却の彼方に忘れ去っていた蔵田の存在。適当に思い付いた名前を呼ぶが違ったらしく、天哉は疑問符を浮かべていた

 

「というのが今朝の話だ」

 

「えっ!?今のって回想だったの!?」

 

「しかしまぁ……蔵田先生の授業は」

 

今までのは流れが回想という事実に驚愕を示す深澄を他所に天哉と和人達は爽やかな笑みを浮かべた後、顔を見合わせる

 

「「(はらわた)が煮えくりかえるっ!」」

 

「あの野郎っ!人を下に見やがって!!」

 

「其れもテメェの授業が退屈なのを「私のレベルについて来れない貴様たちに非がある」とか言いやがって!」

 

「昨日は好物の焼き鳥を我慢してまで……予習した…」

 

「僕なんか!夕飯のカレーの仕込みを母に任せてまで、勉強したのに……末代までの恥ですっ!!!」

 

「俺なんか……俺なんかなぁ……!」

 

「落ち着きな…おめぇさんたち。用はアイツに一泡吹かせりゃいい訳だろ?なら、教えてやろうじゃねぇの…俺らの流儀ってヤツをな……」

 

仮面こそは無いが不敵に笑う道化師の姿に、誰もが息を呑む

 

「さぁ、彩り返してやろうじゃねぇか!!!野朗どもっ!」

 

「はぁ…アホばっかりね…ホントに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。始業ベルが鳴り響くと同時に、蔵田が姿を見せる

 

「良いか?お前たち。この私から有り難い教えを受ける事を光栄に思うがいい!では、タブレット端末に送ったファイルの56を開くんだ」

 

授業を始める為に、教師らしい指示を出す蔵田。刹那、彼の耳に何やら物音を捉えた

 

「誰だっ!飲食をしているのはっ!水を飲むなど、言語道断だ!貴様か?桐ヶ谷」

 

「やだなぁ、飲食なんかする訳ないでしょう?此れは午後のティータイムです」

 

「うむ、水ではないな」

 

「紅茶」

 

「良い香りです」

 

飲食というよりも優雅なティータイムを洒落込む和人の隣で肯定する様に天哉が頷き、彩葉が水では無い事を確認し、菊丸が香りに表情を綻ばせる

 

「飲み物を飲むなと言っているのだっ!」

 

「先生!授業の続きをたのむぜっ!」

 

「純平の言う通りだ。我々は学びに来ているんだ、授業を受ける正当な義務があるからな」

 

「良いだろうっ!ならば、気の済むまで授業を受けさせてやろうではないかっ!む?緋泉!今しがた隠したのはなんだっ!」

 

授業を受けたいと懇願する純平、茉人に耳を傾け、蔵田は黒板の方に向き直るが彩葉の動きに違和感を感じ、彼のタブレットを取り上げる

 

「早弁」

 

「飲食は禁止だと言ったろうがっ!」

 

「俺だけじゃない」

 

彩葉の言葉に蔵田は周辺を見回し、怪しい動きを見せた和人、純平、菊丸、天哉のタブレットを取り上げる

 

「代金は蔵田段蔵という人が払います」

 

「ズルズル」

 

「うん…美味です」

 

「おっ…鍋が煮えた」

 

「貴様らぁ!授業中に何をしているっ!特に蒼井っ!」

 

ピザを頼む和人、蕎麦を啜る純平、カレーを食す菊丸。そして、一番の元凶である天哉は鍋の前に座っていた

 

「見て分からんか?鍋だ」

 

「授業中に鍋はおかしいよなぁっ!?」

 

「何を言うか。寒い時に鍋を囲むんは宇宙の常識だ…なぁ?深澄」

 

「今は夏よ?テン」

 

「全員!カバンの中身を出せっ!持ち物チェックだっ!」

 

何が出るか不明な禁断の鞄から中身を出すように全員に指示し、教卓に全ての中身が並ぶ

 

「携帯ゲームに雑誌……まあ、分からんでもないな。お前たちはゲーム世代で、雑誌から情報を吸収していく若者だからな」

 

「学生ですからね。時には遊ぶことも大事なんよ」

 

「よく遊び、よく学ぶ。これ即ち人の本文ですよ」

 

「なるほどな。貴様たちなりに考えているようだな……しかし、これは何だ?」

 

学ぶ意識は高い天哉達であったが、蔵田には理解出来ない事があった。彼が示す教卓の上には、明らかに異質な物体が乗っていた

 

「やだなぁ…掃除機ですよ」

 

「さすがはリーダーです。気を使える真面目系男子ですね、正に」

 

「よっ!迷子の中の迷子!」

 

「尊敬してるよ。迷子ピーナッツ」

 

「迷子ある所にお前ありだぜっ!テンっ!」

 

「迷うテンあれば迷わぬテンありだな」

 

「気を使える系男子はポイント高いわよ?良かったわね、テン」

 

「そうだろう、そうだろう……おろ?なんかバカにしてなかった?今」

 

「「やだなぁ、気のせい気のせい」」

 

「ハモってる!?」

 

教室で何時もと変わらぬ日常が繰り広げられる中、早足で廊下を歩く少女が一人。名を綾野圭子、売れっ子アイドルと学生の二足の草鞋を履く女子中学生である

 

(収録が長引いて、遅れちゃった…間に合うかなぁ…あれ?なんかある……掃除機…?)

 

教室の窓から一部露出した掃除機に違和感を覚える圭子。教室内を覗いた彼女の視線の先に広がるのは、鍋を囲む深澄達と湯気を掃除機で吸い込む天哉の姿であった

 

「今の時代、副流煙なんかで他者にも影響がある時代なんよ。だからこその気遣いです」

 

「素敵よ。テン」

 

「正に生徒の鏡だ」

 

「おのれっ!この常識人どもめっ!」

 

正に気を遣える系男子の天哉を深澄が笑顔で見守り、茉人が彼の行動を満足そうに敬う

 

(………常識以前に非常識だと思う…よし、今日は早退して、レッスンに行こう)

 

余りの異様な光景に圭子は早退届け手に教室の前を後にした。その付近を通り掛かった校長と高良は教室内を覗き込む

 

「学校で教師に逆らう!これ即ち、落第への一歩なりっ!貴様らに単位などやらんっ!」

 

「「上等じゃァァァ!!!変態護衛!!!」」

 

「高良先生。鈴代先生が戻り次第、彼は副担任補助に降格という事でよろしいかな?」

 

「ええ、勿論です。西田校長」

 

後日、蔵田は副担任補助という副担任よりも下の存在に降格となった。そして、阿来は御土産のちんすこうにより沖縄に居たことが露見し、天哉達から袋叩きにあったのは別の話である




ALOにログインすると、システムエラーで子どもになっちゃった!?何時もとは掛け離れた輪を掛けたハジケが爆発する!

NEXTヒント 子どもは風の子!

一周年記念!もう一度読みたい再編集話は?

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