蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

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えっと……お待たせしまして申し訳ありませんでしたぁぁぁ!違うんです!サボってた訳じゃないんです!

ソウテン「安心しろ、俺たちはおめぇさんの味方だ」

テン………あれ?ねぇ、下にある水槽はなに?なんか前にも見たことあるんだけど?ねぇ?ちょいと?テンさん?

ソウテン「良い質問だな。此奴は美ら海水族館にあるサメの水槽だ。沖縄に行ってたお前にはピッタリだろ?」

イヤァァァァ!やめて!助けて!食べるのは好きだけど、食べられるのはイヤァァァァ!!

ミト「はじまるわよ♪」


第十問 昔話も時には大事だよね。あれ?なんか見たことある……

「テン………俺は長年、お前と親友をやって来たが今日限りだ」

 

「まさか、おめぇさんと分かり合えない日が来るなんてな……カズ」

 

昼休みの食堂で、今日も今日とて昼食に舌鼓を打っていた我等が道化師一味。然し、今日は冒頭から不穏な空気が流れていた

 

「どうしたんでしょうか?珍しいですね。絵に描いたようなアホの二人が喧嘩するなんて」

 

「圭子。其れは褒め言葉じゃない」

 

「然しですね……これは由々しき事態ですよ。喧嘩の内容が内容なだけに」

 

「おうよ。業界でも名高い論争が始まるとはな……」

 

好物を口に含みながら、やり取りを見守る純平たちの視線の先には昔ながらのチョコ菓子が置かれている。天哉の方にはクラッカー生地の有名チョコ菓子が、和人の方にはクッキー生地の有名チョコ菓子が置かれている。これ即ち長年の派閥争いが繰り広げれてきた菓子業界の二大菓子論争である

 

「テン。お前がピーナッツバターばっかりを食べるアホンダラな事は言わずもがなで周知の事実だ。でもな………常識でモノを語れ」

 

「はっ……何を言い出すかと思えば、味音痴でぼっちなカズには分からねぇだろうが、此奴にはチョコと塩が織りなす無限のハーモニーがある。例えるなら、バタピーがいい例だ」

 

「ならバタピーでも食ってろよ。迷子」

 

「あ?やんのかコラ?」

 

正に一触即発。何時もの戯れ合いとは異なる睨み合いの喧嘩に普段の騒がしさは無く、互いに明確な敵意を見せている

 

「深澄……あれはなに?何がどうなってるの?」

 

「あれはね、宇宙の真理とされる菓子業界に於ける派閥論争よ。昔から「何方が好きか」という些細な話題で先人たちは争ってきたのよ。一説によれば、フランス革命も、アメリカ独立も、其れがキッカケになったと言われているわ」

 

理解出来ない明日奈が隣にいた親友に問えば、彼女は流れる様に説明を行う。然し、後半に関しては全くの出鱈目であると為に信憑性に欠けていた

 

「深澄はどうだ?勿論ながら、クラッカーだよな?」

 

「明日奈。クッキーが一番だよな?ユイもクッキー好きだし」

 

「「人として恥ずかしいわ」」

 

「「‼︎」」

 

まさかの直球意見、天哉と和人が目を剥き、驚愕する。思いの外、響いた言葉は二人の心を容赦なく抉る

 

「「人として恥ずかしいわ」」

 

「「二回言われたーーーっ!!!」」

 

追い討ちを掛ける深澄と明日奈に、天哉と和人は完全に真っ白な灰のように燃え尽き、床に崩れ落ちる

 

「ですけど、結局はどっちが美味しいんでしょう?」

 

「主観は人それぞれですからね…僕からは何も言えません」

 

「でもリーダーとカズさんの喧嘩って何時以来?久しぶりに見た」

 

疑問符を浮かべる圭子に菊丸は肩を竦め、冷静に答える。その隣では、彩葉が久しく見ていなかった兄貴分たちの喧嘩に疑問を抱いていた

 

「最後に見たのはあれだろ。ラフコフの時」

 

「あったわねー……あっ、でもアレは長かったわよね。覚えてる?湘南の時のやつ」

 

「あぁ〜……そんなんあったな」

 

「なんですか?それ」

 

「興味あるんだけど」

 

「教えてあげるわ。あれは確か……私がテンに出会ってから一年後くらいだから、小学六年生の時だったかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おうコラ、カズ。海に来てんのにゲームしてんのはどういう事だ」

 

時は遡り、今から5年前の湘南の海水浴場。天哉はビーチパラソルの下で携帯ゲーム機に興じる和人を睨み付ける

 

「暑いからだ」

 

「夏だぞ!?海だぞ!?イカれてんのか!」

 

「ギャーギャーと喚くなよ。暑苦しい奴だな……砂に埋まってろ」

 

「あぁん!?」

 

「どうしたら……」

 

互いに一歩も引かずに睨み合い、口論さえもしない姿は正に冷戦状態と言える。その様子を見守る深澄は初めて見る状態に困惑は隠せない

 

「まーた始まったか。テンの世話焼き病が」

 

「仕方ない……だって、リーダーだし」

 

「カズさんに関しても何時もと変わらない安定の暗さですね」

 

「私がおかしいの?」

 

慣れている純平、彩葉、菊丸とは異なり、出会いか日の浅い深澄は自分に非があるのではないかと思うほどに困惑していた

 

「おろおろ………」

 

その時だった、広い海水浴場で周囲を見回す挙動不審な少女が視界に入ったのは。迷子らしい彼女は不安からか泣きそうになりながらも、道行く人に声を掛けようとしているが小さな彼女の声は誰にも届かない

 

「嬢ちゃん。どうした?迷子か?」

 

「お前に迷子って言われる世も末だな」

 

「ああ?んだとコラ?やんのか」

 

「はいはい、喧嘩しない。二人はこの子の面倒をみてなさい。私は迷子センターに親が来てないかを確認してくるから、純平と彩葉は近くを探して来てもらえる?菊丸はライフセーバーを見つけて」

 

「寝かせとけ!腹がなるぜ!」

 

「菊丸。役割を変えてくれる?ゴリラと一緒は不安しかない」

 

「お断りします」

 

「ゴリラじゃねぇ!」

 

「「「「「えっ」」」」」

 

「真顔で驚いてんじゃねぇっ!!」

 

真顔で驚愕する天哉達に純平の突っ込みが飛ぶ中、深澄は少女に目線を合わせるように姿勢を低くする

 

「安心して。アナタのお母さんを直ぐに見つけてあげるわね」

 

「………ありがとう」

 

「さぁ!行くわよ!」

 

少女と留守番の天哉と和人を残し、深澄たちは其々の目的地に走り出す。流れる不穏な空気に少女は両隣の少年たちに視線を泳がせる

 

「……………」

 

「なんだ」

 

「いえ……別に………」

 

視線を泳がす彼女に天哉が声を掛けるが、彼女は直ぐに視線を逸らす。彼は少女の頭に手を置き、無造作に撫でる

 

「言いたいことがあんなら、はっきりと言え」

 

「あたし……言葉にするのが苦手だから……」

 

「知ってるか?言葉の裏には針千本って言ってな。千の言葉には常に一本の嘘が混じってんだ。でもな、其奴は裏を返せば、それだけの本音があるってことだ。何時かきっと、おめぇさんに手を差し出してくれる酔狂な奴がいるかもしれねぇ。だからよ、辛い時は腹の底から笑え」

 

天哉は何も考えずに当たり前の様に口にした言葉であったが、少女の心には鮮明に焼きついた。太陽の光に照らされ、笑う彼は誰よりも格好良く、彼女の瞳には映った

 

「圭子ー!」

 

「お母さん!」

 

遠くから聞こえた声に反応した少女が駆け出すと、女性が飛び付いてきた彼女を抱き締めた

 

「良かった!すいません!うちの娘がご迷惑を!」

 

「いやいや、困った時はお互い様っすから。またな〜」

 

「ばいばい!迷子のお兄ちゃんとぼっちのお兄ちゃん!」

 

「「誰がだっ!!」」

 

女性に手を引かれ、少女が去り際に放った呼び方に反応を示す天哉と和人。息のあった突っ込みに二人は互いに顔を突き合わせる

 

「なぁ……カズ。次はプールでも行くか?彼処なら割と室内だし、おめぇも楽しめるだろ」

 

「ああ。その時はスグとコトも連れて行こうぜ」

 

「だな」

 

互いに笑い合う姿は正に兄弟と呼べる関係性。彼等だから成り立つ関係に散り散りになっていた深澄たちは遠目で様子を見ていた

 

「長いにしては短い喧嘩だったわね」

 

「ですね」

 

「二人はそういう関係だから」

 

「仲良き事は美しきかな!これにてライフセーバーは御役御免だな!君たちは運がいい!何せこの騎士と呼ばれるライフセーバーを見つけられたんだからな!」

 

「誰だよ!おめぇは!」

 

「やかましい奴等だ。構わん、バラせ」

 

「若。流石に其奴は不味いですぜ」

 

「バナナソフトクリーム!なかなかに美味だ!沖縄から出て来ただけの理由はあったな!」

 

「お母さんが消えた!おろおろ………」

 

背後で繰り広げられる混沌極まりない騒動に天哉は空を仰ぎ見る

 

「なんでかねぇ………落ち着く自分がいるんは…」

 

其れは少し先の未来に出会う、彼が家族と呼ぶ者たちとの初対面の瞬間であった事を知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という話よ」

 

「へぇ〜…」

 

昔話を終え、一息を吐く深澄を除いた面々に明日奈は視線を向ける

 

「その迷子の女の子はアホですね」

 

「海水浴場で他人をバラすとはいただけんヤツだ」

 

「そのライフセーバーの青年はなかなかの騎士だな。騎士学を学ばせたいよ」

 

「バナナソフトクリーム……なんとも甘美な響きだ」

 

「おっさんも興味あるか?なら、食いに行こうぜ!」

 

「スグちゃんは溺れてしまいそうですが、彼女の為に連れて行きましょう。溺れてしまいそうですが」

 

「菊丸はスグさんに対しては鬼だね」

 

「カズ!切り株と実を見つけた!此奴等が揃えば無敵だぞっ!」

 

「なにっ!?マジか!よし食おう!」

 

話を聞いてから、妙に近視眼を覚えた彼女は窓から外を見上げる

 

(まさかね…………そんな訳ないか……)

 

「あら、鍋が煮えたわ」




次回は本編を更新出来たらなと思います。其れでは今宵はこの辺りで幕引きと致しましょう。この台詞も何度目かは分かりませんが最新話は頑張って考えております

一周年記念!もう一度読みたい再編集話は?

  • 夜のバーカウンターwith ALO
  • テニスwith ALO
  • 闇鍋with ALO
  • 行列with 現実
  • ナイスハレンチwith 現実
  • カンニングwith 現実
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