「え〜っと、《総督府》は……アッチだな」
「「待てコラ、迷子」」
「迷子じゃない」
店の前で、次の目的地である《総督府》を目指そうと一歩を踏み出したソウテンの両手を、ミトとキリトが掴み、御決まりの文句を言い放つ
「良いか?此処は《
「あのな、子どもじゃないんよ?俺は。最悪、シノンに案内してもらえばいいだけだろ」
「すごいわ。其処までの知恵が働くなんて、成長したのね」
「褒められてんのに、素直に喜べないのは何故……?」
褒めているのに貶しているようにも取れるミトの言葉に、複雑な思いを抱くソウテン。《総督府》までの案内がてらに、シノンは街中を説明しながら、楽しそうに笑っていた
「…………ありがとよ、ガキンチョ。お前たちのお陰で久しぶりに笑ってるシノンを見れた…」
「おろ?どしたんよ。急に」
「ある日を境に、アイツは笑う事をやめた。其れでも……
「あの日……?」
「ああ……忘れもしねぇ……あの忌々しいデスゲーム……《SAO》が巻き起こした地獄の二年間を……!!!」
苦虫を噛み潰したように、怒りを見せるツキシロ。その姿は、昔の自分が、あの頃の自分が、全てを捨てようと闇に全てを任せた自分が重なる。一度は《家族》と呼んだ大事な仲間たちを拒絶し、刃を交え、楽になろうとした。だが、其れは彼が望む自由に続く道ではなかった、その先に待つのは、快楽のままに全てを闇に葬り去る《血塗られた道化師》の姿。世界を彩る為に生まれた《蒼の道化師》とは対局に位置する存在だ
「………って、俺はガキンチョ相手に何を言ってんだ…。すまねぇ、忘れてくれ」
「………忘れんよ。あの日があるから、俺は此処にいるんだ、あの日があったから、今の現実があるんだ。ソイツを忘れるって事は、俺たちの幾重にも折り重なった糸を解いちまうってことだ……其れにだ、
荒野の街に一陣の風が吹く。棚引く青いマフラー、仮面の奥に浮かぶ含みのある笑み、懐かしい雰囲気を見せる彼。まるで以前に出会った事がある誰かを彷彿とさせるその表情に、ツキシロは思考を止めた
「な、なぁ……前に会ったか?俺たち…いや、気のせいだよな?何せ、年齢が違い過ぎるぜ…」
「一概にも無いと言い切れんよ。なんたって、人生は一期一会と申しますから」
「一期一会……あれか!イチゴを見つけたら、誰かに取られる前に食えって諺だよな!」
「話の腰を折るんじゃねぇよ。ぼっち」
「誰がぼっちだぁ!!!この迷子!」
「んだとコラァ!やんのかっ!?」
「やめんかぁ!!みっともない!!」
「「ぐもっ!?」」
名言を放つソウテンを遮るように沸いた
「………ふぅ、見苦しい所を見せたみたいでごめんなさいね?」
「「い、いや別に……」」
「其れはそうとアレってなに?何かのゲームみたいだけど……」
「アレ…あぁ、アレね」
話題転換を図るミトが視界に映したのは、一種のミニゲームだ。ゲーマーである彼女は興味津々にシノンへと問う
「ちょっとしたギャンブルゲームよ。手前のゲートから入って、奥のNPCガンマンの銃撃を躱しながらどこまで近づけるか、ってゲームプレイ料金が500クレジットで、10mで1000、15mで2000クレジットの賞金。ガンマンに触ればいままでプレイヤーがつぎ込んだお金が全額バックするの。まぁ……子どものミトにまだ早いかな…?」
「そう……」
「えっ……あっ!もしかして、やりたかったの!?ご、ごめんね!気が回らなくて!」
しゅん……と落ち込むミトの姿にシノンは慌てふためき、取り繕うように彼女を慰める
その時、ゲームの様子を観察していた彼が動いた
「ねぇ、ちょいと質問。このゲームにルールはあるんか?」
「あぁ?ルールなんかねぇよ。近付けばいいだけだ」
「なんだ、ちびっ子。お前が挑戦すんのか?」
「ソイツは無謀だぜ?ぎゃははは!帰って、ママのミルクでも呑んでなっ!」
「無謀かどうかは分からんよ?………派手に行くぜっ!」
他のプレイヤーたちからの返答と笑い声に、不敵な笑みを浮かべると彼は、道化師は金属バーの前に立つ
「えっ…?」
「な、何してんだ?アイツっ!?」
シノンとツキシロも驚いた様子で、彼を見る。然し、ミトはその後ろ姿を見据え、キリトも額に手を当てつつも笑っていた
やがて、スタート開始音が響き、彼は走り出した。迫りくる弾丸を紙一重で交わし、その双眸は只管に前だけを見据え、NPCガンマンがレーザーを放つ
「永遠にadieu」
直前で、持ち前の脚力を活かした跳躍に寄り、レーザーを回避するとNPCガンマンの前にゆっくりと降り立つと決め台詞を放ち、革ベストに触れる
「オーマイ、ガ―――――――ッ!」
絶叫が響き渡り、短くも華やかではあるが僅かに不協和音の混じった音楽が鳴り響く。レンガが崩れ、金貨が大量に傾れ込む
「おやまあ……フィーが見たら、お宝ちゃんばんざーい!とか叫びそうだなぁ、こりゃあ…」
金銀財宝が大好きな
「おろ……?なんか、やらかした?俺」
「今に始まったことじゃないでしょ。テンの場合は」
「全くだ、何かをやらかすのがテンだからな」
「ふぅむ……褒められてる筈なのに、貶されてる気になるんは何故だ?」
「……ちょっと、テン?」
ミトとキリトの言い分に、難色を示しながらも首を左右に捻るソウテン。すると我に返ったシノンが彼に呼び掛ける
「ほいほい?何か用かにゃ?シノンのねーさん」
「アナタ一体、どんな反射神経をしてるの…?最後のレーザー、あんな距離だと、回避なんて不可能に近いのに…」
「んむ……?何を言ってるんよ?あんくらい普通じゃねぇの。相手が手を出す前に、先読みを重ねれば、瞬間的にある程度の行動は出来るだろ」
「出来るかぁ!!!」
「元が元だからな……」
「培った経験が明らかに常識人ではないのよね……」
「……テン……いや、まさか……でも……そうなのか…?」
シノンの突っ込みに、けらけら笑うソウテン。その姿に懐かしい雰囲気を感じたツキシロは自身の眼を疑う、目の前にいる彼が、彼奴である訳が無い。明らかに、身長差が足りない、其れでも疑わずにはいられない
「な、なぁ……」
「おろ?今度はツキシロのにーさんか。どしたんよ」
「いや、聞きたいんだけどよ」
「あぁ!?ちょっと!テン!ヤバいわよ!時間!」
「なにぃ!?しまった…!!!」
「こんの傍迷惑迷子がぁ!お前のせいだぞっ…!!!」
「喧嘩してる場合かっ!!!さっさと急ぐわよっ!ちょっと!其処のおじさん!そのハーレーを今すぐに貸してっ!」
「えっ?誰…うごぉっ!?」
身近にいたバイク乗り的な男性を物理的に黙らせたミトはハーレーに跨り、その後ろにソウテンが跨り、キリトが跨る
「飛ばすわよっ!!!」
「あり?ミトって、免許あんの?」
「大丈夫よ!ゲームセンターでレースゲームはやり込んでるし、初めてプレイしたのは配管工カートよっ!任せなさいっ!」
「おぃぃぃぃ!!!不安要素しかねぇよ!誰かぁ!助けてくださーい!アスナぁぁぁぁ!!!」
「安全運転でな」
「オメェは少し危機感を持てコラァ!!!」
「発進!ミト!行きまーす!!!」
「ぎゃぁぁぁぁ!」
「じゃ、そういうことで」
嵐の様に去りゆく三人。唐突な展開に乗り遅れたシノンとツキシロは取り残され、唖然としていた
「………あれ?総長じゃん。何してんだ?」
「其れにシノンも」
「ん……おぉ!お前はバイク乗りのリッパー!」
「あっ!シュピーゲル!丁度よかったわ!乗せて!」
バイクに跨ったプレイヤー、リッパーとシュピーゲルに声を掛けられ、二人は其々の友人の背に跨る
「あのハーレーを追え!」
「任せとけ!へのつっぱりはいらんですよっ!」
「言葉の意味は分からんがすごい自信だ!流石だ!リッパー!」
「おうともよっ!あっ、そうだ。シノンに言いたいことがあるんだ」
「な、なに…?」
いざ発進しようと、ハンドルに手をかけるリッパー。彼はシノンに視線を動かし、真剣な瞳で彼女を見る
「あの装備って、へそ出てるけど寒くないの?いや嫌いとかじゃないけど、逆にエロさが目立って----…………」
「さっさと行け」
「全く、どいつもこいつも分かってねぇな。いいか?シノンの魅力は尻だって、何度も言っ----…………」
「シュピーゲル。出しなさい」
「う、うん……」
銃剣を刺されたままのツキシロとリッパーを放置し、シノンはシュピーゲルとソウテン達の後を追うのであった
荒れ狂う鉄騎に跨り、遂に第二の目的地である《総督府》にたどり着いたソウテン、ミト、キリトの三人!果たして彼等は受付に間に合うのか!?そして、ツキシロとリッパーの安否は!
NEXTヒント チェリーパイ
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気