「ふぅ…何とか間に合ったわね」
「ギリギリだったけどな……」
《総督府》に辿り着き、大会エントリーを済ませたミトとキリトは項垂れるように椅子に腰掛け、だらんとしていた
「アナタたち……何時もあんな感じ?」
「まぁね……行き当たりばったりがデフォルトではあるわ」
「そういや、あの仮面のボウズはどうした?一緒じゃねぇのか?」
同様にエントリーを済ませたシノンの問いに、苦笑気味で答えを返すミト。すると辺りを見回していたツキシロが、ソウテンの姿が見当たらない事に気付く
「ああ、テンなら………」
「おやまあ、おじさん」
「おい……オヤジ……」
「ん?なんだ」
問いに応える様に、視線を動かすキリトの目線を追うとカウンター席に座り、チェリーパイにがっつく迷子と一人の男性が居た
「「このチェリーパイは………」」
「ブラフみてぇな味がすんね」
「本物の味だ!」
「「ん……?」」
ブラフ、つまりは嘘みたいに不味いと述べるソウテン。其れとは裏腹に本物、つまりは現実と変わらない味だと述べる子ども染みた口調の男性。互いに顔を見合わせ、次はドリンクに手を伸ばす
「「このドリンクは……」」
「本物だ」
「仮想らしい味だね!」
「……おめぇさん、舌イカれてんじゃねぇんか?」
「君こそ、頭おかしいんじゃないの〜?」
「んだとコラァ!フード外したろかっ!オッサン!」
「オッサンって、歳でもないけどね…。其れよりもさ、ソウテンって名前、まさか……」
真逆の味覚を持つ男に難色を示し、喧嘩を売るソウテン。しかし、男が放ったであろう、ある言葉を最後に、仮面の奥で表情が歪んだ
その変化は遠目にいたミトの視界にも映った。普段の不敵な笑みとは異なる、彼女が見た彼の表情の中で一番苦手な表情……つまりは《黒い衝動》を秘めていた頃の彼が、其処には居た
「………おい、テメェ。ミトとキリトに何かやってみろ……殺すぞ…」
「あぁ……やっぱりぃ〜、そうなんだー!知ってるよ〜?その眼っ!」
「………失せろ」
威圧感と殺気を込めた睨みは、男を一気に震え上がらせる。然し、彼にはその震えが堪らない程に生きる実感を与えるものである事をソウテンは知らない。ギリーマントを纏った男が側に現れると、彼はその後を追う様に姿を消した
「…………おろ?どしんたよ、お二人さん」
「知り合いか?今のは」
「んにゃ、ぜーんぜん」
「の割には親そうにして……というか、殺気が漏れてたわよ」
「まぁ……ちょいとね。そういうキリトも、あのマントの人は知り合いなんか?」
「全く知らん!」
「相変わらずね……記憶力の無さは…」
話を逸らすソウテン、キリトの表情の奥に隠れた何かを感じ取ったミトは口では馬鹿にしているが内心では、その想いを理解していた
(やっぱり……何かを隠してるわね…まあ、別に構わないけど…)
「お〜い、ボウズたちはどのブロックだ?俺はFの24番だったぜ?」
「私はFの33番よ」
「俺はPの7番だ」
「おろ?キリトも同じブロックなんか、俺はPの4番だよ」
「私はNの44番よ」
ミト以外の四人は、其々が同士討ちに成りかねない対戦表となっている。勝ち進めば、確実にぶつかり合う事は明白である
「なぁ、テン……あの時、着かなかった決着を着けようぜ」
「ソイツはおもしれぇ……最初に言っておくけど、俺はかーなーり強い!」
「なにおうっ!?なら、俺は最初からクライマックスだ!」
「ねぇ、ミト。聞いていい?」
「なに?シノン」
訳の分からない対抗意識を剥き出しに張り合うソウテンとキリト。その姿を傍観していたシノンがミトに声を掛けると、彼女はきょとんとした様に問い返す
「もしかして……バカなの?…コイツら…」
「もしかしなくてもバカよ」
「総長!本戦で会おうぜ!芋洗って、待ってろよ!」
「言うじゃねぇか……なら、次に会う時は敵だぜ?シノンの尻を見る暇も与えないくらいにブチ殺してやるよ!」
「おぉ!マジか!なら、俺もへそを拝む暇もねぇな!張り切るぜ!」
「あっ!総長!届けにきたよ!シノンちゃんにも!はいよ!ニーハイ!その美脚に傷が付いたら大変だしな!」
矢継ぎ早に姿を見せる尻、臍、脚を愛する三人の変態。その額に音速で銃剣が突き刺さり、急拵えの椅子に早変わりする
「ミトも座る?」
「大丈夫よ。私はテンの膝があるから」
「なんだ、ミト。甘えたいんか?」
「えぇ、お願いできる?私の可愛い道化師さん」
「お安い御用で」
ソウテンの膝に、ちょこんと座るミトの姿は今の愛くるしい見た目に相応しく、その可愛さを何百倍も引き上げている。見慣れたキリトは、「埋める?いや……燃やすか……」と物騒な事を口走っているが今は触れないでおく
「ほら、キリト。いくぞー」
「ん……ああ、そうだな」
我に返ったキリトはソウテン等の後に続き、控え室に向かおうと歩き出す
「ちょ、ちょっと!」
刹那、シノンが叫んだ。何事かと思い、ソウテンが振り返ると彼女はキリトの手を掴んでいた
「聞いてなかったの!?女子はこっちよ!」
「………はい?」
「「……ぶふっ!」」
シノンの言葉に、理解が追いつかないキリトは問い返す。その背後で二人の幼子が口元に手を当て、堪えながらも耐え切れずに吹き出す
「俺、男なんだけど……」
「え……?」
「ほら、これが証拠」
首を傾げたシノンに対し、自分のネームカードを渡すキリト。彼女は数秒の沈黙後に、カードを返却し、息を吸う
「早く言わんかぁ!!!」
「ぐもっ!?」
そして、怒号と共に彼女の銃剣がキリトの額を貫いた
「いやぁ、すまんね。ねーさん」
「隠してた訳じゃないのよ」
「別に良いのよ、勘違いしたのは私だから。という事はテンとミトも子どもじゃない……のよね?」
装備に着替え、席に戻ったシノンはソウテンとミトから事情を聞いていた。そして、目の前の彼等が身形に削ぐわない振る舞いを見せることにも納得したらしく、問いを投げ掛ける
「そうよ、本当はもっとカッコいいのよ?彼。迷子でバカだけど」
「もっと言ってくれ……おろ?なんかバカにしなかった?今」
「気のせいよ」
「取り敢えず、予選についての説明をするわね?」
苦笑しながらもシノンは説明を始める。彼女曰く、予選はドーム中央にあるホロパネルのカウントダウンが0になった瞬間、エントリー者全員が予選1回戦の相手と共にランダムで選ばれたフィールドに転送され、負けるまで勝ち進み、最後に残った二人が予選決勝を戦うという極めて
「こんな所よ」
「「「
「礼はいいわ。折角だし、全員が本大会に残れる事を祈ってる。そして、その本選で貴方達にもう1つだけ、あることを教えてあげるわ」
不敵に笑う、狙撃手。彼女は指を銃の形にすると三人に告げる
「敗北を告げる弾丸の味をね」
「やっぱり良い尻だ。この絶景を見ながらだと、生クリームが格別に美味いな!」
「ヘソには劣るけどな」
「あぁ〜!ニーハイ履いてないけど、生脚だぁ〜!これでお茶碗三杯は確実だぜぇ!」
生クリーム大福を頬張るツキシロ、ワインを嗜むリッパー、白米を掻っ込むキッド。三人の額に銃剣が突き刺さる
「人の見せ場を台無しにしてんじゃないわよっ!!!変態三人衆!!!」
「「「ず……ずび……ば…ぜ…ん…」」」
「殴るわよっ!!」
「「「いやもう殴ってんよね!?」」」
怒り心頭のシノンに、ソウテンとミト、キリトの突っ込みが飛ぶ。その時だった
『レディ〜〜〜〜ス!ア〜〜〜ンド!ジェントルメ〜〜〜〜ン!!!血気盛んな野朗供!遂に三回バレット・オブ・バレッツ予選トーナメントの幕開けだ〜!司会進行は私!最強にして最大!誰もが羨む魅惑のミニマムボディ!レンがお送りするよ!』
『解説はあたし、世界を自由に染め上げますっ♪でお馴染みの美少女彩りアイドルのシリカでーす!よろしくねっ☆』
《レン》と名乗るピンク色の装備が特徴的な少女の隣に姿を見せた一人のアイドル娘、見覚えのある姿にソウテンたちは息を大きく吸い込む
「「「いや、何してんのォォォォォォ!?お前ェェェ!!!」」」
『えへっ?来ちゃいました☆』
いよいよ幕を開ける予選、ソウテンの相手はおへそ大好きバイカー!しかし、問題はありません。今宵の天候は……雨に御座います故
NEXTヒント 局地的豪雨
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気