「今日限りで退職させてもらいやすぜ…長い間、世話になった恩を仇で返すことになることをクソ御容赦くださいませ」
退職願と書かれた封筒を雇い主の芳子に投げ渡す近藤。その歴史的瞬間を見ていた天哉は先程のシリアスな雰囲気を顰め、両眼を瞬きさせる
「おやまあ、こいつはたまげた。まさか、人が無職になる瞬間を見せられることになるとはな」
「高額収入からの没落とかウケる」
「違う、今から俺の職業は時の流れに身を任せる職業にジョブチェンジしただけだ。断じて、無職じゃない」
自分から職を手放した筈なのに、あくまでも無職ではないと主張する近藤。最初こそ、天哉と彩葉は揶揄っていたが彼の言い分に何を言ってるんだ?と言わんばかりの白けた視線を向ける
「兄の失業に伴い、私も職を失ったワケですが………何か良いバイトはありますか?兄でもお役に立てる職業であると幸いです」
「コンちゃんには勿体無い出来た妹さんだ。どうだ?うちのおバカ娘とトレードしませんこと?お安くしときますぜ」
「テンちゃん。殴られたいの?ていうか、殴っていい?いや、殴るね」
「ぐもっ!?」
自分を顧みずに兄の心配を第一に考える布里の健気さに心を打たれた天哉は、自らの妹とトレードを要求するが件の人物である琴音にアッパーを放たれ、御決まりの叫びと共に吹っ飛ぶ
「アホなことしてる場合かっ!!ちっとは戦えやっ!バカリーダー!!」
「おろ?何とだ?今しがた黒服さんたちは蹴り飛ばしたんだが……取り敢えずだ、コンちゃんを殴ればいいか?」
「協力はどうしたっ!!やっぱ嫌いだ!!お前!」
「「というか何時の間にっ!?」」
純平が激を飛ばし、天哉にも戦う様に強要する。然し、其れは杞憂だった。既に襲い掛かってきた黒服を無力化し、制圧した彼の足元には物言わぬ黒い山が積み上がっていた
「貴女の負けよ」
「負けてませんわ…………止まった時間を……お兄さまの時間を動かす為に私は負けられない………
馬の耳に念仏、負けを認めようとしない芳子。彼女は
「さっきから聞いてりゃ………お兄さまばっかりだな。大事な兄貴の大切な人を取り返したいが故に他は巻き込まれようが気にしないってか」
「気に留める必要がありませんから……なぜなら、お兄さまを想う気持ちは誰にも負けませんわ!!私にはお兄さまがいれば良い!!他に何もいらない!!お兄さまだけが!!私を必要としてくれた!!」
誰かに必要とされる喜び、其れは他ならぬ天哉が誰よりも知っていた。仲間たちと出会い、彼等と過ごす時間の中で楽しそうに笑う深澄の姿。その側には何時も自分が、和人たちが、何よりも明日奈がいた。だからこそ、許せなかった。湧き上がる怒りは黒く、暗く、あの頃の様に囁く。「目の前にあるものを壊せ」と囁いている。勿論、根源であるロトは既に自立した一人の人間。故に此れは天哉が新たに生み出した更なる闇であることは明白だ
「かつて、日の本を創造した神は黄泉の国に妻を迎えに行こうとしたが、そこに居たのは醜い姿に変貌した妻の姿だった。おめぇさんたちがやろうとしてるのは其れと同じだ。私欲を満たしたいが故に自分のエゴを正当化しようとしてるだけだ。此処がお前の人生の幕引きだ」
「何も知らないくせに………失う痛みを知らないくせに……アンタに何がわかる!!!」
お嬢様口調が崩れる程に激昂した芳子は何処からか取り出したナイフを握り締め、天哉目掛け走り出す。最早、説明するまでもないが説明しておかなければならない。冷静さを失くした者の思考は脆い。其れを長年の喧嘩漬け生活で知る天哉は、ナイフを握る手を蹴り上げ、即座に軸足を固定し、ありったけの力を込めた蹴りを叩き込まれた芳子は脱力し、壊れた機械のように意識を手放した
「知りたくもねぇが知ってるよ」
仮面は無くとも、前髪に隠れた蒼き眼はしっかりと彼女を見据えていた。その瞳は優しくもあるが儚さを帯びているようにも見える
「大切な人を失う辛さも……痛みも……誰よりも……俺
手を差し出し、不敵に笑う彼は彼女を前に優しくも厳しい言葉を投げかけるが、不思議と頼りたくなる妙な衝動が駆り立てる
「この世で起きたことに解決出来ねぇことはねぇんよ。その手はまだ汚れてないだろ?一緒にお兄さまの間違いを正しに行こうぜ…アンタに歩くための理由があるなら、尚更だ」
何故かは分からない。然し、彼を信じたいと思った。友人が、執事が、メイドが信じた彼を芳子は信じたいと心の底から思ったのだ
「お嬢……こいつは信用できやす。俺が保証します。ボンを解放してやりましょう」
「出来るでしょうか……私に……」
「出来る出来ないかは誰にも分からないわ。重要なのは……何をやるかよ」
「深澄さん……そうですわね……改めて、お願い申し上げますわ…!天哉さん!お兄さまを!後沢鋭二を!止めてくださいませ!成功の暁には皆さまの記憶を解放する事を御約束致しますっ!!」
芳子が頭を下げると、青いメッシュが目立つ前髪から蒼き眼が不敵に光る。そして、道化師は深々と頭を下げ、不敵に笑う
「………
「……………テン?怒らないから聞かせてもらえるかしら?ここが何処かを」
「みんな大好き激安スーパーマーケットですな」
優しく笑う深澄の問いに呑気に答える天哉。エイジの元を目指していた彼等は最寄りの激安スーパーマーケットに来ていた。其れはなぜか?言わずもがな、皆さんも御存知かつ御馴染みである彼の悪癖が原因に他ならない
「いいか?ライブ会場までは時間が掛かるんだ。此れは会場での物販を防ぐ為の時間稼ぎだ。お分かりか?深澄さん」
「其れらしい事を言ってるけど、要するに迷子よね?何時も通りの御約束よね?迷子くん」
「迷子じゃない」
「迷子よ」
「迷子って言うヤツが迷子だ」
「やっぱり迷子なんじゃない。其れで?これから、どうする?迷子くん」
「やめろ、迷子を連発するな。まるで俺が迷子みたいだろ」
「実際に迷子なのよ?バカテン」
迷子扱いに非常に敏感な天哉は迷子くんと呼ばれる事に、難色を示すも深澄は冷静に彼を咎める
「近藤……布里…今更なにを?と言われるかもしれませんが……私、頼る相手を間違えたかもしれませんわ」
「「お嬢さまの意見に同意します」」
ユナのライブ会場、全ての運命が交差する時……遂に刃は解き放たれる。ここからがラストステージだ!!
NEXTヒント 魂の繋がり
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もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気