2022年 11月6日
世間は沸き立っていた。VRMMORPG《ソードアート・オンライン》の正式サービス開始という一大イベントに
そして、この寂れたゲームセンターにもこの日を待ち侘びていた五人の少年たちがいた
「どうしたんだよ?テンにカズ。今日は集会の予定じゃねぇだろ?」
ダークブラウンの髪が特徴的な少年、
「聞いて驚くな。実はな…」
「ええっ!?」
「リーダー。まだ何も言ってないよ、カズさんは」
天哉をリーダーと呼ぶ赤味を帯びた茶髪が特徴的な
「彩葉くん。リーダーを責めてはいけませんよ、リーダーは御約束をやらないと気が済まない性分なんです。何せ、頭の大半がピーナッツバターで出来ている変人なんですから」
彩葉を咎めつつ、天哉を遠回しに罵倒する緑色のフレーム眼鏡が特徴な
「おいコラ。ピーナッツバターを悪く言うな、ピーナッツバターは最強だ」
「テンのピーナッツバター談義は無視してくれ。今日はなんと」
「ええっ!?」
「やかましい!!」
懲りずに御約束を続けようとする天哉の顔面に鉄拳が飛ぶ。物理的に黙らせ、軽く咳払いをした後に和人が口を開く
「ナーヴギアは知ってるよな?勿論ながら」
「知ってるというか持ってるぞ。ていうか持ってきた」
「カズさんが持ってこいって言った」
「コレを人数分も手に入れる事が出来たのは僕の素晴らしい交渉術があってこそというのを忘れないでいただきたいですね」
「お前はオッさんを相手に話し込んでただけだろ。何を威張ってんだ、眼鏡をかち割るぞ」
「リーダー。眼鏡には眼鏡のやり方があるんですよ」
「何を言ってんだ?お前は」
ナーヴギア。民生用フルダイブ型VRマシンの第一号機で、ユーザーの脳に直接接続して仮想の五感情報を与え、仮想空間を生成する画期的なハードである
このハードを天哉等が入手した経緯は一月程前に渋谷の辺りに足を運んだ時、とある男性が自分たちとは異なるカラーギャングに因縁をつけられていた事から始まる。最初は無視しようとしたが唯一の女性メンバーである深澄が天哉に意見した
『テン。私との約束…忘れてないわよね』
『……へいへい。お前等、あのオッサンを助けんぞ。但し……サツにパクられるような真似はすんな』
『『『りょーかい!リーダー!』』』
後日。助けた男性がアーガスの重役だったらしく、親切にも人数分のナーヴギアを礼に贈呈してくれたのだ。そして、今日のこの瞬間に備え、其々が持参したという訳だ
「そーいや、ミトはどした?テン。何時もなら、おめぇと来るだろ」
「ああ。ミトは用事があるとかで今日は来ねぇよ」
「ほう。用事……さては愛想を尽かされましたか?リーダー」
「それだね。リーダーはバカで、方向音痴で、ピーナッツバタージャンキーな可哀想な人だから。ミトさんも愛想が尽きたに違いない」
「違うわっ!バカども!」
「さて可哀想なテン、略して可哀想テンはほっておいてだ。今日、集まってもらったのは他でもない……これの為だ!」
「ちょっと待て!人を可哀想扱いして話を進めるな!俺は可哀想じゃない!」
騒ぐ天哉を無視し、和人の取り出した物体に純平と彩葉、菊丸の三人が食い入るように集まった
「なっ!こ、コイツは…!!」
「まさか!!」
「驚きました。正に渦中の話題作、《ソードアート・オンライン》ではありませんか」
「しかも人数分だと…!?」
「一万人限定の初回ロットをどうやって…?リーダー、まさかだけど買った人から奪った?」
「奪ってねぇよ。ちょいと臨時のバイトがあったからよ、その報酬にもらってきた」
「どんなバイトしたら、人数分のソフトが手に入るの?」
「きっと非合法に違いありません。リーダーだけを警察に突き出して、我々はゲームと洒落込みましょう」
「だな。カズ、確かβテスターだよな?色々とレクチャーを頼むぜ」
「任せてくれ。じゃあ、テン。俺たちはゲームするからお前は警察に行けよ」
「リーダーなのに扱いが雑すぎるわっ!!というかバイトは普通に合法なヤツだ!!」
「「「「えっ…」」」」
「真顔をやめろ!真顔を!」
騒がしくもたわいもないやり取りをしながら、ナーヴギアを天哉達は被る。そして、仕上げにスロットにソフトを挿入
『リンクスタート!』
仮想世界へ飛び込む合言葉を唱えた。暗闇の世界に誘わると、案内音声が耳に届く
『《ソードアート・オンライン》の世界へようこそ。まずはプレイヤーネームを入れてください』
「名前か…さすがに本名とかは避けなきゃな。でもなぁ…あっちで俺だって分からねぇとアイツら、うるせぇからなぁ…。あっ、soutenなら」
姓と名の複合、余りにも安直ではあるが此れならば普段の呼ばれ方をされても問題は無いと判断。その後、アバターの設定画面に切り替わった
現実の極悪面と揶揄される切長の眼、手入れのしようがない癖毛をある程度の年相応な感じに変更する。この姿が天哉だと分かれば、身内には揶揄われるのは目に見えているが仮想世界でぐらいは夢を見たい。其れが天哉の秘めたる欲望であった
『それではゲームをお楽しみください』
アナウンスが終わると共に、虹色のリングをくぐる。大地に降り立つ感覚と共に開いた視界にSAOの世界が姿を現す。この瞬間、天哉はプレイヤーのソウテンへと自分が成ったのだと自覚した
「こりゃいい。体が軽く感じる」
モーションの動きを確かめようと軽く飛び跳ねる動作を何度か繰り返していると、肩を叩かれた
「よっ。仮想世界にようこそ」
「……ん?」
「俺だよ、俺。あっ…わかっても本名は無しだからな」
「……ああ、なんだ。お前かー、ビックリさせんなよ。か……こっちではキリトか」
「ああ」
キリト。そう呼ばれたプレイヤーはソウテンの仲間の一人で今回のゲームでは唯一にβテスターである和人だ。原則は本名呼びは御法度の為、普段の呼び名で呼びそうになったが即座に呼び変える
「門の前にみんな、集まってるぞ」
「俺が最後かよ」
「顔を弄るのに時間掛けてたんだろ?分かるぞ、リアルのお前は凶悪な面してるからな。ソウテン」
「るせぇ。あと無理して、ソウテンって呼ばなくていいぜ。いつも通りで構わねぇよ」
「りょーかい。じゃあ、テン。行こうぜ!」
「おうよ」
門の前に集合していたグリス、ヒイロ、ヴェルデの三人と合流を果たしたソウテンとキリトは武器屋に足を運ぶ
「ハンマーはあんのか?俺的にはモンスターの頭をかち割れるヤツが欲しいんだが」
「初期からある訳ないだろ、そんな高火力なヤツが」
「槍って、使い方とかあんのか?足で蹴る以外に」
「足で蹴るを前提の選択肢に入れるな。普通に手を使え、手を」
「手裏剣ない?キリトさん」
「剣の世界ってコンセプトだからな。ブーメランとかはあるかもしれないけど…手裏剣は流石にな」
「すみませんが店主。金の斧または銀の斧はありますか?できれば、出来損ないの斧があると非常に嬉しいのですが。ああ、泉があっても落としはしませんよ。この世界での武器は大変貴重ですからね」
「ヴェルデ、御伽噺をしたいなら店の外でやるといいぞ。というか真面に武器を探すつもりはあるのか?お前たちは」
聞く耳を持たないソウテン達に苛立つキリト。刹那、彼の肩を誰かが叩く
「なぁ、兄ちゃん。見たところ、βテスターじゃないか?そっちの兄ちゃんたちに武器の説明をする辺り、只者じゃないと見た」
「ま、まあ…そうだけど」
「頼む!俺にも色々とレクチャーしてくれ!この通りだ!」
「よし、気に入った。バンダナくん、君がレクチャーしてもらうのを特別に許可しよう。その後は全員でおにぎりを握ろう」
「ありがてぇ……って!誰だよ、おめぇは!!というか知らねぇヤツが握ったおにぎりはいらん!」
「誰が食っていいって言った。握るだけだ」
「何の儀式だよっ!?そもそも誰だ、お前は!名を名乗りやがれ!」
「俺か?俺はだな…」
「迷子癖のある味覚破綻者」
「味覚破滅気味の迷子野郎」
「迷子なのに迷子を認めないバカ」
「迷子が趣味な色ボケ」
「まだ迷子になってねぇのに迷子を連発すんな!!というか流れるように罵倒すんじゃねぇよ!傷つくだろうが!仮想世界なのに!!」
息を合わせたかのような流れる罵倒の嵐、其れに突っ込むソウテン。その光景を見ていた男性プレイヤー、クラインは思った
(声を掛けるヤツらを間違えたかも……)
タイトルには剣の世界とありますがキリト以外のメンバー達は剣系統の武器は使用しません。何故かって?そりゃあ、同じ武器ばっかだと個々の見せ場がないからですよ
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気