「うおおおおおおおっ!!?」
キリトの指導でフィールドに出た一行は其々の得物を手にフレンジ―・ボアと言う、雑魚モンスターと向き合っている
「牡丹鍋だな。今日は」
「いやモツの方がうめぇだろ」
「リーダーもグリスさんもわかってない。一番のご馳走は焼き鳥だよ」
「鍋の話に割って入るな。お前は黙って串を頬張ってろ、鳥チビ」
「迷子ピーナッツに言われたくない」
「おい、ピーナッツバターを舐めんなよ。あれはな、何にでも合うように作られてんだ」
「だからって、食べる料理全般にピーナッツバターを掛けるのは辞めた方がいいぞ。テン」
「パスタ馬鹿は黙れ」
「パスタを馬鹿にすんなよ。パスタはな、手軽で美味いんだ」
「かと言って、具無しはよくありませんよ。キリトさん」
真剣に向き合うクラインを他所にソウテン達は食べ物談義に熱中している。その片手間で、キリトは自分が持ち得る知識を全員にレクチャーしていく
「大事なのはモーション。モーションを起こしてソードスキルを発動、後はシステムが命中させてくれるって」
そう言うとキリトは《投擲》スキルを使い、足元の小石をフレンジー・ボアにぶつけると彼に狙いを定め、一直線に突っ走ってきた
その攻撃をキリトは片手剣で受け止めつつ、躱す
「モーションか………」
「そうだな……グッと力を込めて、そのあとスパンッて打ち込む感じだ!」
「投擲スキル…あっ、こうか。あらよっと!」
クラインがキリトの指導を親身に聞く横で、肩に担いでいた槍をソウテンが他のフレンジー・ボア目掛け、投擲すると綺麗な放物線を描き、目標の脳天を直撃
「おっ。刺さった」
「よし。次は俺だぜ!どっせい!!」
グリスが追随するように《片手棍》スキルの《パワーストライク》を叩き込む
「……えい」
「ヒイロ!?剣は投げるモノじゃないぞ!!」
その様子を見ていたヒイロが手にしていた曲刀を投擲。衝撃の行動にキリトが慌て気味に突っ込む
「だって、曲刀の形ってブーメランみたいだし。本来はこう使うんじゃないの?」
「違うわっ!というか…どれだけ、ブーメランにこだわりがあるんだ?お前は」
「ブーメランは太古の昔から存在する万能武器だと聞いてる」
「いや、知らんけど」
「それでは…トドメは僕にお任せを」
こてん、と首を傾げるヒイロにキリトの更なる突っ込むが飛ぶ。細剣を手に二人の間を駆け抜けたのはヴェルデ、参謀の立場にある彼だが身の軽さは仲間の中でも群を抜いて高いのだ
「なぁ、ヴェルデのヤツさ。武器屋で斧欲しがってたよな?」
「そういや…そうだな」
「なのに…細剣を装備してる。何故?」
「今更だろ。ヴェルデの訳分からなさに関しては」
「おめぇら、楽しそうだな。毎日が」
「まあな。にしても…あの猪肉はもう居ねえのか?」
「おおっ!そうだ!あの中ボスは何処だ!」
「いや、あれはスライムクラスだぞ。どこの世界に、中ボスを序盤の街を出た所に配置すんだよ」
クラインの謎発言にキリトが空かさず、突っ込む。その様子にソウテンが思い出したように口を開く
「俺が前にミトとやったヤツはそうだったぞ」
「テン。それはお前が騙されてるだけだ」
「なにっ!?ミトのヤツ!俺を揶揄ったのか!?」
「ミト?誰だ、そりゃ」
聞き慣れない名にクラインが首を傾げた。確認する限り、このメンバーで「ミト」と呼称された人物は居ない
すると、ヴェルデが口を開いた
「リーダーの恋人ですよ」
「リーダーの愛人だよ」
「テンの彼女だ」
「テンの幼馴染だ」
「おう、ソウテン。ちょっとそのミトって子を紹介してくれ」
「やだ」
「なんだとぅ!?」
「リーダーは独占欲が激しいからね」
「うるせぇ。ハナタレ」
「誰がハナタレか。迷子」
「迷子じゃねぇ!」
陽は傾き、時刻は17時13分を迎える。当たりのモンスターを狩り尽くし、黄昏れているとクラインが口を開いた
「しっかし、信じらんねぇよな。ここがゲームの世界だなんてよ」
「だな。この時代も捨てたもんじゃねーな」
「大げさな方々ですね」
「だって初のフルダイブ体験だぜ!」
「てことはナーヴギア用のゲームもSAOが初めか?」
「どっちかって言うと、SAOの為にナーヴギアも揃えたって感じかな。一万人限定の初回ロットを手に入られたのは、我ながらにラッキーだった。ま、そんな中でも、βテストに当選したキリトはその十倍ラッキーだけどな」
「そりゃな。コイツはゲームだけが取り柄だからな」
「迷子が取り柄のヤツにだけは言われたくない」
「そんなのを取り柄にした覚えはねぇ」
「そうですよ。いくらリーダーが迷子になり易いバカだからって、それはあまりにも失礼ですよ」
「うんうん、リーダーにも取り柄くらいあるよ。焼き鳥を奢ってくれるし」
「それにチャリが壊れたら、無料で直してくれるしな」
「そうだな、俺が悪かったよ。テン」
「やかましい!その優しさが逆に痛いわっ!!」
「ホントに賑やかだなぁ。毎日が楽しいだろ?お前ら」
クラインの問いに全員の動きが静止した。その視線は遥か彼方に見える、アインクラッド城を見据えていた
「楽しい…か。考えたこともなかったな」
「ああ。当たり前にバカやって、騒ぐ毎日だもんな」
「仮想世界なのにな…。何時もより、生きてるって思える、不思議だな」
「ど、どしたんだ?急に。リアルでなんかあったんか?」
「いえ、何でもありませんよ。ただ…僕たちはリアルよりも仮想世界向きの人間というだけのことです」
「どう?クラインももう少しだけ、俺たちと遊んでいかない?安くしとくよ」
「金取る気かよっ!?生憎、即答してやりてぇがよ……実は、17時30分にピザの配達予約してんだ。じゃ、また後で」
ヒイロの発言に突っ込みながら、クラインは立ち上がる。そして、右腕を振り、ログアウトをしようとする
「あれ?」
「ん?どうした?」
「いや……ログアウトボタンがねぇーんだよ」
「は?何言ってんだ?ちゃんと底の方に………」
「おいおい、キリトまでボケをかましてる場合かよ。ログアウトボタンなら……ここに」
「どしたよ?テンにキリト。ログアウトボタンが見つからねぇみたいな顔して」
「今、クラインがそう言ったのにグリスさんは聞いてなかったのかな?ヴェルデ」
「でしょうね。グリスさんはリーダーに次ぐ馬鹿野郎のすっとこどっこいでアンポンタンなゴリラですから」
「誰がすっとこどっこいだ!眼鏡!」
「眼鏡をバカにしないでいただきましょうか。眼鏡は頭脳明晰の証なんですよ」
「それにしてもログアウトボタンが無いのは何故?これはGMに苦情を入れないと」
慌てる面々を他所に一人だけ冷静な最年少のヒイロはGMコールを試みるが一切の反応を示さない
「そうだ!ナーヴギアを頭から外しちまえば!」
「無理だ。俺達は現実の体は動かせない。ナーヴギアが、身体を動かす信号を全て、遮断してる。外に居る誰かが、外さない限りは………」
「そんな!俺一人暮らしだぜ!誰もいねぇよ!お前たちは!?」
「ああー…それがな。今は家じゃねぇとこからログインしてんだよな…俺たち」
「ミトが俺たちの異変に気付けば、何とかなるかもだが…。あいつ、用事があるとかで来なかったしなぁ」
「厳しいですね、これは」
「そうだ。今の自分を殴ればいいんじゃね?」
「わかった」
「ぐぼっ!?いきなり!殴んな!ヒイロ!」
「だって殴れって言った。グリスさんが」
「だからって極端に程があるわっ!ちびっ子!!」
「チビじゃない、成長期」
状況を把握しているのかは不明だが、どうでもいいやり取りを行う仲間たちを他所にキリトは思案していた
「おかしい…どう考えても、おかしいぞ」
「んなにおかしいか?バグくらいゲームに付き物だろ。普通に」
「テン、だからお前はテンなんだ。これはバグにしては余りにも異常なことだ。明らかに今後の運営に支障をきたすぞ」
「言われてみりゃ……ん?おいコラ、最初のはどういう意味だ。事と次第によっちゃ、タダじゃおかねぇぞ」
「キリトさんの言い分は一理ありますね。この場合、普通であれば、サーバーを一時停止し、プライヤーを全員ログアウトさせるはず………然しながら、運営からのアナウンス一つ無い…」
ヴェルデがそう呟いた瞬間、鐘の音が鳴り響いた
突然のことに驚いていると、ソウテン達の体が鮮やかなブルーの光に包まれる。光が収まると、其処は最初にログインした場所、つまりは《始まりの町》だった
彼らだけでは無い。他にも、たくさんのプレイヤーたちが集まっており、見方によれば、全てのプレイヤーが集まっているのではと錯覚してしまう
数秒が経過した後、辺りがざわつき出す。やがて、それが苛立ち変わり始めた頃だった
空に【System Announcement】の文字が浮かびあがったのは。運営側からのアナウンスが始まると誰もが安堵した
だが……夕焼けに染まった空の一部がどろりと垂れ下がり、空中で留まった
そして、そのどろりとした塊が形を変え20メートルはある人間の形を形成した。形はSAOに出てくるGMの恰好をしているが、そのローブの中に顔は無く、袖からは腕すらも見えない
そう、この存在には肉体自体が存在していなかった。急拵えのようにアバターの恰好だけを用意した正に人形の呼び名が相応しい姿である
そして、GMの両手がゆっくりと挙がり、言葉が放たれた
『プレイヤーの諸君。私の世界へようこそ』
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気