蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

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今回のソウテンはちょっと真面目です。あっ、そこ!らしくないとか言わない!しかーし!ご安心めされよ!しっかりとボケます!


第五幕 攻略会議

ミトとの再会から1ヶ月。デスゲームは着実に人々の命を奪っていた

開始時には213人だった死者は約2000人へ、その数字を確実に増やしていた。その時、とあるプレイヤーがゲームクリアを目指すプレイヤーたちを集めていると情報を手に入れたソウテン達は迷宮区から程近くにある町、《トールバーナ》に来ていた

 

「で………俺たちは何しに来たんだ?ここに」

 

「もう忘れたの?テン。今日は攻略会議に参加するって、何度も説明したわよ。相変わらず、頭の中も迷子なのね」

 

「……そんな話、いつした?俺は聞いてないぞ。あと迷子じゃない」

 

「無理もないさ、ミト。相手はテンだからな。百の説明で一すらも読み取れないようなヤツなんだよ、コイツは」

 

「そうね。期待した私が馬鹿だったわ、ごめんね?テン」

 

「気にすんな……って!その優しさが逆に傷つくわっ!」

 

目的地の劇場に向かう途中で行われる相変わらずのやり取り。最初は状況を理解出来ずに困惑していたアスナであったが1ヶ月も行動を共にすれば、次第に慣れ、今では気に留めすらもしない

 

「見えてきたわ」

 

「ほー…まーた、よくもまぁこれだけの人数を集めたもんだな」

 

「集めたというよりも集まったの方が適切ですね。通常、1パーティーにつき組める人数は6人、フロアボス攻略なら6人パーティーを8つ用意したレイドパーティーを組まなければならない。そして、フロアボスを死人0でクリアするなら、そのレイドパーティーが最低でも2つは必要となりますので」

 

「さすがはヴェルデだな。でも…見たところ、40人くらいしかいないな」

 

「これじゃあ…レイドパーティの条件も満たせてないわね」

 

「しっかし……物好きなヤツらだよな。ボスを攻略する為に大規模な会議を開くなんて」

 

「リーダー。何事も前座は大事なんだよ?焼き鳥屋でもいきなり焼き鳥は出ないでしょ。其れと同じだよ」

 

「焼き鳥チビは黙ってろ。余計に分からなくなんだれうが」

 

「チビじゃない、成長期。そもそも迷子野郎にだけは言われたくないよ、頭の中も迷子な癖に」

 

「誰が迷子だっ!俺は--ぐぼっ!?」

 

「はいはい、喧嘩しない。最前線に遅れたくないなら、しっかりと攻略会議に参加しなさい」

 

最年少と同レベルの口論を繰り広げるソウテンの頭を鎌の反対側で叩き、物理的に黙らせたミトは伸びる馬鹿を引きずりながら、腰を下ろす

 

「………ミトの言う最前線に遅れるって言うのは、偏差値70以上キープしたいとか、学年10位以下には落ちたくないとかと同じモチベーションって解釈でいいの?」

 

「えっと………まぁ、似たようなもんかな?」

 

「その見解で相違ありません。しかし、アスナさんは勉強熱心なんですね、リーダーやグリスさんにも見習っていただきたいものです」

 

「だってよ。グリス」

 

「勉強?生憎ながら、俺の辞書にはそんな言葉はねぇ」

 

「そもそも辞書がねぇだろ」

 

「よしコラ、アホリーダー。表にでやがれ」

 

「残念だったなー。ここが表だ」

 

「むきっー!!すげぇムカつく!おいミト!このアホをどうにかしろ!お前の管轄だろ!」

 

「ごめん。私、ゴリラの言葉はちょっと」

 

「誰がゴリラだっ!!俺は人間だ!」

 

「「「「「えっ」」」」」

 

「真顔で驚いてんじゃねぇっ!!」

 

真顔で驚愕するソウテン達にグリスが突っ込み、次第に劇場内に多くのプレイヤーが集まりだす

 

「はーい!それじゃあ、そろそろ始めさせてもらいます!」

 

あらかたの人数が集まると、青い髪にブロンズ系の防具、大振りの片手直剣にカイトシールドを装備した青年が登場した

 

「皆!今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!俺の名はディアベル!職業は、気持ち的に騎士(ナイト)やってます!」

 

騎士(ナイト)だってよ。んなジョブあったか?つーか、このゲームにジョブシステムあったか?」

 

「ないわね。だから、あの人は気持ち的にはそういう立ち位置だって主張したのよ」

 

「なるほど。どうやら、彼はユーモアセンスに相当な自信があるようですね。負けてられませんね?リーダー」

 

「あ?俺はユーモアとか言ったことねぇぞ?生まれてから一度も」

 

「冗談はその凶悪面だけにしろよな、テン。お前以上のユーモアの塊を俺は見たことないぜ」

 

「ぼっちだからだろ」

 

「誰がぼっちだ!ぐべっ!」

 

「会議の邪魔になるから騒がない」

 

キリトの頭に御約束が決まり、会場の雰囲気がよくなるのを感じると、ディアベルは手を上げ、制した

 

「今日、俺たちのパーティーが迷宮区の最上階で、ボスの部屋を発見した」

 

その言葉に、会場のプレイヤーたちが息を呑む。ボスの部屋、其れは攻略の第一歩となる重要な言葉だ

 

「俺たちはボスを倒し、第2層に進む。そして、≪はじまりの町≫で待ってる皆にこのゲームがクリアできるってことを伝えるべきなんだ。それが、ここにいる俺たちの義務だ。そうは思わないか?」

 

ディアベルの言葉に皆賛同するかのように拍手が起こる。しかし、その時だ

 

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 

独特な口調のサボテンの様な髪型の男性プレイヤーが立ち上がった

 

「仲間ごっこする前に、こいつだけは言わしてもらわんと気が済まんのや」

 

「こいつと言うのは何かな?まぁ、なんにせよ積極的な意見は大歓迎だ。でも、発言するなら、先ずは名乗ってもらおうか?」

 

「ふん………ワイはキバオウや。会議を始める前に、こん中に何人が詫び入れんとアカン奴がおるはずや」

 

「キバオウさん、詫びと言うのは誰にだい?」

 

「決まっとるやろ!死んでった2000人にや!それもこれも、全部β上がり共の所為や!」

 

キバオウの発言に、広場に居る何人かのプレイヤーが反応を示す。その何人かには、キリトとミトも含まれていた

 

「β上がり共は、自分らだけうまい狩り場やボロいクエストでかっぼり儲けとる。そんでもって、9000人のビギナーは知らんぷりや。あいつらがはなから情報やアイテム、金を分けとったら2000人は死なんかったし、今頃、2層、3層、突破できとったはずや!せやから、ため込んだ金とアイテム、全部出して謝罪と賠償せい!」

 

「へぇ?そいつは素敵な提案だな。だがな……俺は反対だ」

 

キバオウがβテスター相手に敵意を剥き出しにする中、広場に居たプレイヤーから何人か賛同する声が上がった

しかし、約一名だけは違った。誰も居なかった筈の隣から聞こえた声に気付き、振り向くとそのプレイヤーは不敵な笑みを携え、佇んでいた

 

「誰や。お前は」

 

「俺か?俺は通りすがりの風呂屋だ。気にすんな」

 

「そうか、風呂屋か……って!こないなとこに風呂屋がおるわけないやろ!」

 

「ちっ…勘のいいサボテン頭だ。まあ、話を戻すがお前の言い分だとβテスターはゼロの状態で冒険をスタートしろと言ってるようなもんだ。其れは……死ぬと言ってるのと同意義だって理解してる上での発言なんだろうな?サボテンオウさんよォ」

 

「キバオウや!キバオウ!さっきも言うたが失った2000人の命に詫びを入れろってワイは言うとるんや!」

 

「おいおい、そいつは偽善ってもんだぜ?責任ってのは自分が取れて、初めて成り立つんだ。考えてみろ…逆の立場なら、アンタは同じことを言われて、素直に従うか?」

 

「ぐっ……そ、それは…」

 

「よく言った、アンタの言う通りだ。兄ちゃん」

 

ソウテンの最も意見を聞き、立ち上がったのは身長が190㎝ほどある、スキンヘッドが特徴的な黒人のプレイヤーだ

 

「俺の名はエギルだ。キバオウさん、金やアイテムはともかく、情報ならあった」

 

そう言うと、エギルは懐に忍ばせていた手の平サイズのハンドブックを取り出す

 

「コイツだ。このガイドブックは道具屋で無料配布されていたやつだ。新しい村や町に行くと必ず置いてあった。情報が早すぎるとは思わないか?」

 

「だ、だからなんや!!」

 

「俺は、コイツに載ってるモンスターやマップのデータを提供したのは、元βテスター以外にあり得ないと思ってる」

 

「だ、だけど、死んだ2000人の中には他のMMOじゃトップ張っとるベテランも居ったんやぞ!それは、どう説明するんや!」

 

「ベテランだったからこそ死んだんだろう。SAOを他のMMOと同じように計り、引き際を誤った。だが、今はそのことを追及する暇は無いと俺は思うんだが?」

 

エギルの強い目力に、キバオウは気圧されたのか静かになった。するとディアベルが手を叩き、場の空気を仕切りなおす

 

「キバオウさん、君の気持ちはよくわかるよ。でも、今は前を見るのが先だ。それに、元βテスターがボス攻略に力を貸してくれるなら、これほど頼もしいことはないと思う。君も……えっと」

 

「ソウテン」

 

「ソウテンさんも其れで納得してくれないか?」

 

「ああ。話の腰を折って、悪かったな。でも、これだけは言わせてくれねぇか?」

 

「なんだい?」

 

キリト達の座る場所に戻ろうとする背中にディアベルは問う。風が吹き、青いマフラーが怪しげに棚引く

 

「俺は……いや、俺たちは友達を傷付けるヤツを絶対に許さない」

 

その瞳には確かな()が宿っていた。彼の先に座る仲間たちも同じように睨みを効かせている

 

「了解した、その言葉は確かに俺の胸に刻ませてもらったよ。ともかく、今は第1層のボス攻略会議が先だ。それじゃあ、二人も席に戻ってくれ」

 

「………ええわ。今だけはナイトはんに従うといたる。せやけど、ボス戦が終わったらキッチリ白黒つけさせてもらうわ。ソウテンとか言うたな?覚えたで」

 

「男に覚えられても嬉しくねぇよ。バキオウさん」

 

「キバオウや!」

 

「はいはい…ぐもっ!?」

 

席に戻り、何事もなかったかのように座り直すとソウテンの頭に鎌が振り下ろされた

更にキリトは目潰しの準備、グリスもストレージから赤い粉を取り出していた

 

「テン。目立つなって言わなかった?私」

 

「目立つなとは言われたが意見するなとは言われてないから約束は破ってねぇだろ」

 

「……キリト、グリス」

 

「「了解!」」

 

「んあ…?ぎゃぁぁぁぁ!目が潰された!痛っ!なんかすげぇ染みる!目が痛い!そもそも見えない!なにこれ!?新手の拷問!?」

 

「ヴェルデくん。グリスくんの持ってるあの粉はなんなの?」

 

「香辛料ですよ、現実でいう一味唐辛子に相当するモノですね」

 

「なるほど。この世界にも香辛料ってあるのね」

 

「てことは焼き鳥が作り放題だね」

 

「ヒイロくんは焼き鳥が大好きですね、本当に」

 

「それじゃあ、改めて攻略会議を始める!先ず、6人のパーティーを組んでくれ」

 

ディアベルがそう言うと、周りのプレイヤーたちはパーティーを作り始める

殆どが知り合いで固まっていたらしくパーティーは次第に作られていくがソウテン達とは誰とも組もうとはしない

 

「とりあえず、余り者同士で組まないか?」

 

「そりゃ構わねぇけどよ。人数が多いだろ、さすがに」

 

「三人と四人に分けたらどう?内訳はそうね……私とアスナ、あとテン。キリトはグリス達と組んで」

 

「分かった。テンも其れでいいか?」

 

「ああ」

 

6人パーティーが七つ、3人パーティーが一つ、4人パーティが一つ。全てのパーティが揃うと会議が再開され、第1層ボスの情報についての説明があった

 

ボスの名は≪イルファング・ザ・コボルドロード≫で武器は骨斧と革盾で、HPバーが4つあり最後の1つになると腰の曲刀カテゴリーの武器《湾刀(タルワール)》に変え、使ってくるスキルも変化する

 

取り巻きには、≪ルインコボルド・センチネル≫が3匹現れ、HPバーが1つ減るたびにポップされる

 

作戦は、壁部隊2つがボスを交互に受け持ち、攻撃部隊の2つがボスに、1つが取り巻きに、支援部隊はディレイスキルをメインに使いボスと取り巻きの攻撃を阻害する

 

そして、ソウテン達の余りパーティーは取り巻きを相手にする攻撃部隊のサポートをすることになった

 

「これで攻略会議を終了する!明日は朝8時にここに集合。全員揃ってボス部屋へと移動する。それじゃあ、解散!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テン。どうかした?」

 

攻略会議後、第一層の空を見上げていたソウテンにミトが呼び掛けた

辺りは暗くなり、夜が訪れ、静寂の世界を創り出している

 

「不思議だな」

 

「不思議って?」

 

「この世界にも当たり前に朝が来て、夜が来るんだな。現実にいた時は当たり前だと思ってた。夜が明ける度に何気ない毎日を繰り返して、アイツらとバカやるのが当たり前みたいに過ごしてた。なのに……今の方が生きてるって思う自分がいる。帰りたい筈なのに、このまま、この世界が終わらなければいいと思う俺がいるんだ」

 

月明かりに照らされる、その横顔は寂しそうに見えた。出会った頃よりも退屈そうで物足りないと感じているかのように

 

「テン……テンは現実が嫌い?今でも」

 

「嫌いだ、親の敷いたレールの上を歩くだけの操り人形みたいな人生しか送れない世界なんか。そのくせ、大人は自分の言い分を俺に押し付けてくる。一度の失敗で千の罵詈雑言を投げかけられる……だから、俺は夜の街に逃げた。現実から少しでも遠退きたくて、怒りの吐け口を探したくて、彷徨って、彷徨った。その先にあったのが……いや、コイツはまた後にするか」

 

「なによ、言いたいことがあるなら言いなさいよ」

 

「続きはまた今度な」

 

ミトの額を小突き、笑うソウテンはこの一ヶ月で見たどの表情よりも晴れやかに見えた

もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…

  • ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
  • キリトとアスナが司会の正規の雰囲気
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