「よっ、テンきちにキー坊」
「アルゴか。どうした」
ソウテンとキリトが明日の対策についての会議を行っているとフードを被った女性プレイヤーが姿を見せる
「テンきちに呼ばれてナ」
「テンに?何を頼んだんだ?言っとくがアルゴはぼったくりだぞ」
アルゴ、そう呼ばれた彼女を指差しながらソウテンに問いを投げかける
すると彼は軽いため息を吐き、牛乳を口に運ぶ
「ぼったくりかどうかは二の次だ、今は情報が欲しいんだ。特にディアベルに関する情報収集をな。どーも…あいつは何かを隠してるみたいだったし、其れにだ。キリト、お前を明らかに警戒してた。気付いてたか?まあ…気付いてないわけねぇわな」
「そんな警戒されるようなことをしたかな…?身に覚えがない」
「コイツは確認だが、ここ最近で変わった取り引きを持ち掛けられなかったか?例えば、アルゴ辺りに」
「アルゴ……あっ、そういえば!」
思い当たる節があるのか、アルゴをチラッと見た後でキリトは自身の《アニールブレード》をストレージから取り出す
「この剣を3万9800コルで買いたい、そういう取り引きを持ち掛けられた。でもその取り引きとディアベルにどういう関係があるんだ?」
「アルゴ。追加で2000コルを出してやるから、説明してやってくれ。依頼人の素性も明かしてくれて構わねぇ、ヤツとは取り引き済みだ」
「あいヨ。剣を売って欲しいと言っているのは昼間に大騒ぎしてた奴ダ」
「昼間って………まさかキバオウか?」
キリトが問うとアルゴは肩を竦めながらも、直ぐに頷き、口を開いた
「そうダ。キバオウはディアベルからある事を頼まれタ。それがキー坊から剣を買い取ることでの戦力低下だヨ」
「戦力低下……まさか、俺がβ上がりだからか?」
「半分正解…だが、それだけだと完全に正解とは言えねぇな。あいつはお前の技量を知ってるからこそ、戦力低下を狙ってんだ」
「………まさか、ディアベルもなのか?」
「正解ダ、キー坊。ディアベルはオレっちたちと同じβテスターだ。でも、ヤツにはオレっちたちとは違う確固たる目的がある」
「その目的ってのは?」
キリトが問うとアルゴは少しだけ考えた後、にかっと笑う。鼠、誰が呼び始めたかは定かではないが今の彼女はその名に相応しく見えた
「おっと…ここからは別料金だヨ」
「ここまで言っといてかよ…」
「これも商売だからナ」、と言い残し、颯爽と去りゆくアルゴ。完全に彼女の気配が消えたのを確認するとキリトはソウテンに視線を向ける
「相変わらず、情報屋の扱い方が上手いな。テンは」
「何時も言ってんだろ?俺たちみたいな溢れ者には情報が貴重な生命線なんだよ。そりゃあ、何処に居ようが変わらねぇ。それにだ…こういう場所だからこそ、情報が武器になることだってある」
「へぇ?意外にも考えてるんだな。どうだ?ギルドとか作って、ギルマスとかになってみたら」
「お断りだ、お前らみたいなバカどもをこれ以上は面倒を見切れねぇよ。俺はお前らのリーダーで充分に満足だ」
「なるほどな、迷子の割には良い答えだな。成長したんだな。俺は親友として嬉しいぞ、テン」
「はっはっはっ、コミュ力が上がったからって調子に乗んなよ?ぼっち」
「誰がぼっちだ!この傍迷惑迷子!」
「なんだとっ!真っ黒ぼっち!」
「「うるさいっ!寝れないじゃない!」」
夜中にも関わらず、言い合いをしているとその声で目が覚めたのか、ミトとアスナが扉を開く。そして、元凶の二人の頭上に鎌と細剣が振り下ろされた
「「ああっーーーーー!?」」
「………何故、リーダーとキリトさんはボロボロになの?」
「粗方、僕たちが寝ている間にレベリングに出かけていたんでしょう」
「へぇ?そうなのか。アイツらもしっかりと先を見据えてんだな」
「ええ、何処かのパワーゴリラとは違うようです」
「ゴリ……グリスさんも頑張ろうね」
「待てコラ、誰がゴリラだ。俺は純然たる人間だぞ」
「えっ…」
「嘘…」
「張り倒されてぇか!?ガキども!」
現在、ソウテン達はボス部屋へと向かう集団の最後尾を歩いていた。ミト、アスナは二人で会話し、偶に背後を振り返っては申し訳なさそうにするが直ぐに目を背けるという行動を繰り返していた
「ねぇ、ミト」
「なぁに?アスナ」
「私、実はね。昨日の夜にソウテンくんとミトが話してるのを聴いちゃったんだけど……。ソウテンくんって家族と上手くいってないの?」
唐突な問いにミトの表情が歪む。彼女の知るソウテンは全てとは言い難い、例えば彼女にも知らないことはある
アスナに問われた家族の存在だ、両親の有無は勿論ながら、兄弟の存在に関しても知らない。更に言えば、彼が住むゲームセンターとは異なる本当の家の所在なども知らないのだ
口頭では恋人、と名乗っているがミトは内心では不安だった
本当に自分がソウテンの恋人を名乗ることは正しいのか?時折、見せる寂し気な瞳に秘められた闇、その真意を汲み取れない自分は彼に必要とされているのだろうか…と
「アスナ。前にも言ったけど、私たちにとって、今はこっちが現実よ。リアルの話を持ち出すのも、リアルネームで呼んだりするのも禁止よ」
「そ、そうだよね。ごめん」
「まぁ……私も気になることはあるけど」
アスナを咎めながらもミトはソウテンに視線を向ける。彼は最後尾を歩き、空を見上げている
迷宮区前に到着したのは午前11時。改めて、装備品の確認をする面々とは別にソウテンはある人物に呼び出された
「すまんな。急な呼び出しを掛けて」
その人物はキバオウ。彼はソウテンの眼を真っ直ぐに見据え、真剣な面持ちで構えている
「いや別に。アンタには感謝してるよ、ディアベルの素性を探るのに協力してくれるとは思わなかったからな」
「ワイかて取り引き相手は選ぶ。其れに昨日のアンタの言い分には充分な筋が通っとった。ついでや…一つだけ、聞かせてくれへんか?」
「いいぞ。聞いてやる」
「ディアベルはんの真意を発いて、アンタには何のメリットがあるんや?」
その問いに僅かな沈黙が流れる。風が吹き、マフラーが棚引く
「第二の刃を持ちたいだけだ。言ったろ?俺は友達を大事にしてるって、ソイツらを守る為には少しでも多くの情報が必要になる。今後のより良い関係を築く当たって、アンタはもちろんだがディアベルとも上手くやっていきたい。だからこそ、裏でこそこそとやられちゃ、信用は出来ない」
「なるほどな…なら、ワイはアンタを信用していいんか?」
「そうだな、少なくとも今は信用してくれても構わないが…その先はこれから起こる戦いの中で判断してもらって構わない。信用するか、縁を切るか、その先はアンタ次第だ」
「分かった。ほな、小物は頼むで」
「かしこまり」
事情を知るキリトはその会話を聞き、内容を理解したようで戻ってきたソウテンに声を掛けた
「テン。本当にこの先も一緒にレイドを組むつもりなのか?」
「まさか、こいつは嘘も方便ってヤツだ。こうでも言っとけば、βのお前やミトへの風当たりが強くなってもキバオウっていう後ろ盾があれば、何かと立ち回り易くなると思ってな」
「なんでその考え方を普段からしないんだよ…。バカなのか?やっぱり」
「生憎と考えるのは嫌いでな。今だけはリーダーらしく導くが、これから先はヴェルデに任せるつもりだ。アイツは俺が知る中で一番の天才だからな」
「ありがとな。弟分をそんな風に言ってくれて」
「事実だからな。んじゃ……」
「ああ」
顔を見合わせ、頷き合い、背後に待つミト達に向き直る
「「攻略開始だ、野郎ども!」」
「「「「「了解!」」」」」
その言葉と共にレイドパーティは迷宮区に足を踏み入れた。2022年12月4日、解放への第一歩が始まる
シリアス路線は苦手なので、短めになってしまいました…
ですが!次回はいよいよ!初陣になります!更にカッコいいテンをお見せできるかと!
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気