蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

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第七幕 ボス攻略戦

午後12時半、迷宮区最上階。ここまでの道中に於ける死者は0名。何度が危機的場面に遭遇したが、ディアベルの的確な指揮もあり、切り抜けることが出来た

そして、遂にプレイヤーたちは獣頭人身の型が彫られた扉の前へと到達した

 

「まっ、これくらいはしてもらわねぇとな。仮にもリーダーを任されてる訳だし」

 

「珍しいわね。テンが人を褒めるなんて」

 

「そうかぁ?割と頻繁にしてんだろ、こんくらい」

 

「えっ?見たことないけど、そんなの。強いて言えば、何時もバカにされてるイメージしかないかな…。迷子、バカ、可哀ソウテンとか呼ばれたりしてるし」

 

「あのなぁ…」

 

軽いため息を吐き、ソウテンは自分の頭を掻き乱す。槍を肩にかつぎなおし、僅かに自分の目線よりも下にあるミトの頭に手を置く

 

「俺だって、毎度のようにバカにされてる訳じゃねぇんだよ。人が間違えたら叱るし、逆に正しいことをしたら褒めたりもするんだよ。だから…あれだ。ミト、最近のお前はアスナの為って動機はあるかもだが…頑張ってるんじゃねぇか、と俺は思う」

 

「テン…。ありがとう」

 

「礼は後にしてくれ。生きて、この層を突破すんのが先だ……いいか?何があっても止まるな、絶対にだ」

 

「うん。わかったわ」

 

ソウテンの言葉にミトが頷くとディアベルが左手を扉に添える。此処を開ければ、本当の一歩目が始まる

 

「さぁ、行こう……!」

 

その言葉と共に扉が開かれ、最初にヒーターシールドを持った戦槌使いの人が率いるA隊が突入し、次にエギル率いるB隊が左斜め後方から、右からディアベルが率いるC隊と両手剣使いがリーダーのD隊、其れに続く形でキバオウの遊撃用E隊と長柄武器装備のF隊、G隊が3パーティーで並走する

最後にソウテン、ミト、アスナの三人パーティー、キリトの率いる四人パーティが突入

 

20mほど進むと巨大なシルエットが空中で一回転しながら地響きとともに着地した。

 

青灰色の毛皮に、2mは超える体躯、赤金色に輝く眼。右手に骨斧、左手に革盾、腰には《湾刀(タルワール)》。その獣の名は《イルファング・ザ・コボルドロード》

 

猛々しき咆哮は全ての者を萎縮させ、体を強張らせる。雄叫びに呼応するように、三体の《ルインコボルト・センチネル》が姿を見せる

 

「主武装は骨斧!副武装は湾刀(タルワール)番兵(センチネル)が三体!情報通り!行けるぞ!俺に続け!」

 

走り出すディアベルに続き、コボルトロードを相手する本隊が突撃。猛攻が続き、戦いはミトが行っていた予想を遥かに上回る形で進行していく

βテスターである彼女は誰よりも情報を得ていたつもりだ。しかし、現在の戦闘状況は極めて安定していると言える

味方同士のHPの管理もできているし、キバオウのE隊と自分の属する三人組も、キリトのパーティも余裕をもってセンチネルの相手が出来ている

 

「これなら!」

 

行けるかもしれない、そう思った時だ。コボルトロードが今までを遥かに上回る猛々しい咆哮を放った

そして、持っていた骨斧とバックラーを投げ捨て、腰の武器に手を伸ばした

 

「副武装の湾刀(タルワール)!に変わるぞ!スキル変化は憶えているな!基本は変わらない!《武器を打ち払い喉元を撃つ》だ!」

 

「次で決めるぞ!C隊、前へ!」

 

C隊がラストアタックを仕掛ける瞬間、コボルトロードは手にした武器を抜刀。だがソウテンの眼が捉えたのは別のモノだった

湾刀とは刀剣の一種に分類され、インドやパキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンに見られる大きく曲がった細身の片刃刀を指す

 

「あれは刀!情報とは異なります!」

 

「なにっ!?情報が間違ってたってのか!?」

 

「βテストはあくまでも試作段階、本サービスと仕様が異なるのは珍しい話じゃない」

 

「なんやと!それはホンマか!?」

 

「ああ、確実に違う。気をつけろ!ソードスキルも湾刀のとは異なるぞ!」

 

キリトの叫びにも似た声が響く。だが時既に遅し、C隊はコボルトロードの攻撃範囲に入り、刀専用ソードスキルの一つ重範囲技《旋車》が命中。HPは半分まで減少し、更に《一時行動不能(スタン)》状態に陥る

 

其れでもコボルトロードは止まらない。猛追を掛けるように刀を振り上げる

 

「うおおおおおおおおおっ!」

 

だが、そのプレイヤーを庇うように一人のプレイヤーが割り込んだ。其れはディアベルだった。寸前で気付いた彼は防御体制となり、《一時行動不能(スタン)》しなかった

故に危機一髪の所で割り込むことが出来たのだろう。しかし、HPは半分まで減少し、万全の状態とは呼べない。数発の攻撃を喰らえば、確実にその命は終わる状態だ

コボルトロードが再び、刀を構える。今度は別のソードスキルを使うようだがディアベルは盾で防ぐべく、防御体制を強める

 

「待って!」

 

ミトが叫んだ。彼女の視線に先には耐久値が残り僅かな罅割れしたディアベルの盾が、これでは受け止めきれずにHPが尽きてしまう

コボルトロードの一撃が振り下ろされる。誰もがディアベルの死を思った

 

「グリス!吹っ飛ばせ!!」

 

「あいよ!リーダー!!」

 

その言葉と共にコボルトロードの腹部に強烈な突き技が命中。その技を放ったであろう人物が飛んで来た背後に視線を向ける、其処にはハンマーを射出台(カタパルト)のように構えたグリスが佇んでいる

 

「ディアベル。お前は下がってろ」

 

「し、しかし!」

 

「下がれって言ってんのが聞こえねぇのか!」

 

「すまない……!」

 

ソウテンの怒号にも似た声に威圧され、ディアベルは後退。空かさず、ヴェルデが彼に駆け寄り、ポーションを差し出す

 

「飲んでください」

 

「た、助かる…」

 

「ディアベルさん。アンタが何をしようとしてたかはリーダーに聞いて、知ってる」

 

「……そうか。許してくれとは言わない…でも!それでも……俺は…俺は…LAB(ラストアタックボーナス)を手に入れなければならなかったんだ…。例え、それが君たちを騙すことになったとしても…」

 

彼にもそうしなければならない目的があった。故にキリトの存在が厄介だった、戦力を削ごうとしたが彼はソウテンの仕掛けた別の取り引きに利用された

其れが自分の素性を明かすことになっていようと誰が思っただろう

 

「騙したのは確かに褒められた行動じゃない……でも、テンが貴方を助けたのは貴方が悪い人間じゃなかったからよ。もしも、貴方が利己的で私利私欲の為にLAB(ラストアタックボーナス)を手に入れようとしてたなら、あの瞬間にテンは貴方がどうなっても見捨てたわ」

 

「どうして……どうして…彼はそこまでして…」

 

「聞いてなかったのか?ディアベルは。テンの奴が言ったじゃないか、仲間を傷付けるヤツは絶対に許さないって」

 

キリトが放った言葉、其れは攻略会議の際にソウテンが告げたのと同様のモノだ

彼のように不敵な笑みは無いが言葉の真意を理解し、放たれた言葉はディアベルが抱いた焦りを和らげていく

息を吸い、呼吸を整え、キリトに向き直る。今度は偽りなく、自分の意思で真っ直ぐに

 

「キリトさん。他の人には俺が指示を出すから、ソウテンさんの助力を頼んでもいいか?」

 

「ああ、任された。聞いてたな?ミト!グリス!ヴェルデ!ヒイロ!それにアスナ!今日は全員でリーダーをサポートだ!」

 

「とか言って、ちゃっかりとLAB(ラストアタックボーナス)を手に入れるつもりでしょ」

 

「し、しないよ!そんなこと!」

 

「やりかねぇな。キリトなら」

 

「やりかねませんね」

 

「というかやるだろうね」

 

「やりそうよね。キリトくんって空気読めないとこあるし」

 

「アスナまで!?」

 

アスナにまで言われるとは思っていなかったらしく、キリトは驚きを隠せない

相変わらずのやり取りをしながらもコボルトロードの猛攻を躱し、流れるような槍捌きでタゲを切らさないように応戦するソウテンの助力に向かう

 

「ちっ…!さすがに固い…!こうなりゃ、とっておきを披露してやらぁ!」

 

「タンクは任せとけ!」

 

「行くよ!テン!」

 

「あいよ!」

 

グリスが刀を抑え、アスナとヴェルデが《リニアー》で攻撃。キリトが《ソニック・リープ》を放ち、ヒイロが《リーバー》で真上から斬りかかる

 

「今だっ!」

 

ミトが叫ぶ。其れと同時に彼女が鎌を振り被り、その先にいたソウテンが風圧で前に押し出される

 

「おりゃあああああああ!」

 

《アニールランス》が光り輝き、コボルトロードに回転攻撃を叩き込む。槍スキル《ヘリカル・トワイス》、無数の回転攻撃を叩き込み、最後に槍を振り被り、ありったけの力を込め、叩き付ける

 

「スイッチ!」

 

「任せろっ!」

 

最後にキリトが飛び出し、片手剣縦二連撃の《バーチカル・アーク》でトドメを指す。コボルトロードはポリゴンとなり、バリンッ!と砕け散った

同時に後方のセンチネルも砕け散り、長い初陣に終止符が打たれた




ディアベル生存です。これで少しはキリトの立ち位置もマシになるといいなーと思う今日この頃です

もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…

  • ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
  • キリトとアスナが司会の正規の雰囲気
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