コボルトロードの討伐達成、記念すべき一瞬に静寂が訪れる
構えていた槍を肩に担ぎ、ソウテンは軽く息を吐く
「ふぅ……」
「テン。お疲れ様」
「ん…ああ、お疲れ」
ミトに労いの言葉を掛けられ、同じように彼女を労う。目の前に獲得経験値と分配されたコルが表示されており、周りからも歓声が上がっている
「ソウテンはん。アンタが最後に仲間たちとボスモンスターを倒した件は目をつぶったるわ。あの時、アンタが助けに入らんかったら、ディアベルはんはこの瞬間におらんかった。礼を言わせてもらいたい、ありがとうな」
自分の眼から見たソウテンの姿、其れに納得がいった様子のキバオウは彼に深々と頭を下げた
「なーに、こんくらいはお安い御用だ。で?俺はアンタの御眼鏡には敵ったのか?」
「充分にな。これからもよろしゅう頼むわ」
「こちらこそだ。さて、さっそくで悪いがちょいと付き合っちゃくれねぇか?」
「お安い御用や」
不敵な笑み、此れが何を意味するかは理解出来ないが折角の協力者からの願いだ。聞き入れない訳にはいかない、彼の側に近づき、耳を傾ける
その様子をミトが黙って、見ているとディアベルが彼女へ声を掛けた
「ミトさん。君たちやソウテンさんのお陰で無事にボスを討伐することが出来た、ありがとう」
「御礼なら私じゃなくて、テ……ソウテンに言ってあげて」
「そうするよ。彼なら、今後の攻略組を率いる最高の指揮官になれるだろうな」
「攻略組……なるほど、そういう呼び方をするのね」
「ああ、全プレイヤーの先頭に立ち、率先してフロア攻略をする者たち、《攻略組》。彼ならきっと、そのリーダーに相応しいと思うんだ」
「ディアベル。残念ながら、ソウテンはその座に収まるつもりはないと思うわ」
「え?何故だ?」
ミトの言葉にディアベルは耳を疑った。彼は既にソウテンを攻略組の正式なリーダーにするつもりだった、しかしながら彼を良く知るであろうミトは微笑していた
「彼の一番の行動理由は仲間よ。でもね、彼の言う「仲間」は同じ志を持つだけの人たちのことじゃないの」
「というと…?」
「ソウテンにとっての家族なのよ、あの人たちは」
「家族…?」
ミトが見詰める先に視線を動かすと、
彼等の表情はこの場にいる誰よりも明るく、騒がしい。今まで、ボスと向き合っていたプレイヤー達と同一人物だとは思えないほどに、其れはまるで少年のようにも見えた
「よし、キリト。第二層へ行ったら、直ぐに
「するかっ!」
「なにっ!お前ら!こいつ、手柄を独り占めにする気だ!」
「なんだとっ!?キリトのくせに上等じゃねぇか!表に出ろ!」
「グリスさん、今は外ですから既に表ですよ。それはそうとキリトさん、独り占めはよくありませんね。どうでしょう?ここは僕が一先ず、預かるというのは」
「預かってどうするつもりなんだ?」
「無論、最後は売ります」
「結局は売るんじゃないか!!」
「大丈夫、あとで似たようなヤツを買っておけばいい。キリトさんはバカだから、気付かない」
「ヒイロくーん?本人がいるのによくもまぁ、ぬけぬけとそういうことが言えるよなぁ?お前は」
「………居たんだ」
「居たわっ!!!」
「どんまい、元気出せよ。キリト」
「慰めるなっ!バカテン!!」
漫才にも似た相変わらずなやり取りを続ける面々。しかし、その楽しい雰囲気も長くは続かなった
「なんでや!」
「キバオウ……?」
「どうしたんだ?急に」
「急にもへったくれもあるかい!お前らは見てへんかったんか!こいつらは、ボスの使うスキルのこと知ってたんやぞ!?おかしい思わへんのか!」
「い、言われてみれば…」
「まさか!アイツら、全員がβテスターなのか!?」
「βテスターでパーティを組んでたのか!?卑怯だぞ!」
キバオウの発言に周りが騒めき出す。彼が何故、今のような事を言ったのか理解出来ないキリト達であったが背後に佇むソウテンだけは不敵に笑っていた
「……テン。まさか、お前の仕業か?」
「さあ、なんのことやら。ただまあ?この場を平和的に収めたいんなら……どうするかは分かるよな?キリト」
「……ったく、相変わらずだな。うちのリーダーは。仕方ないから、その策略にまんまと嵌ってやるよ」
「さっすが。おめぇさんのそういうとこ、嫌いじゃないぜ?」
「うわっ…出た。相変わらず、自が出ると胡散臭さを増すな、お前は」
「うっせ」
ソウテンとキリトの会話を聞き、ミト達も全てを理解したらしく、二人が口を開くのを黙って待つ。しかし、アスナは違った
「ちょっと待って!β時代の情報は私達も攻略本で得ていたわ。あのボスの情報について大きな差はなかったはず。ただβ時代と同じだと思い込んだ私達が窮地に陥りそうになった時、彼はもっと先で得ていた知識を応用して教えてくれた。そう考えるのが自然じゃない?」
「俺もそう思う。それに、攻略本には情報はあくまでβ時代の物で、正式版とは差異があると注意もあった。俺たちは、その注意を忘れ、偵察戦を怠った。彼等に感謝こそすれ、批難するのは違うだろ」
「いいや違うね、アルゴとかいう情報屋とそいつはグルだったんだ。元βテスター同士共謀して、善意のふりをして俺達を騙して、自分たちだけ美味しいところを掠め取っていこうとしたんだ」
ディアベルのパーティーメンバーのシミター使い《リンド》がアスナ、エギルに物申す。自分の仲間が恩人を悪く言うのを許せず、ディアベルは彼に歩み寄る
「待ってくれ!彼等は悪くない!俺だ!俺が悪いんだ!だから、責めるなら俺を!俺を責めてくれ!」
「ディアベルはん。すまんけど…ふんっ!」
「ぐっ……!き、キバオウさん…な、なにを…」
「ソウテンはんとの約束や。あんさんを悪者には出来ひん、許してや」
キバオウの放った拳が腹部に命中し、ディアベルは意識を失う。其れが合図だったのか、ソウテンがキリトの肩を叩く
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
突如、響く笑い声。全員がキリトの方に視線を向けた
「元βテスターだって?俺をあんな素人連中と一緒にしないで貰おうか。いいか。SAOの
「βテスターの時に誰も到達出来なかった層まで到達したキリトさんから事前に刀スキルのことを聞き、対策を立てていた。いやぁ…実に滑稽でしたよ。情報に踊らされる貴方たちは」
「全くだぜ、思わず笑いそうになっちまった。どいつもこいつも何でも鵜呑みにしちまうんだからよぉ」
「ホントだね。それでもゲーマーなの?笑いを通り越して、欠伸が出そうだよ。特にディアベル…だっけ?君は面白かったよ、ボスに襲われた時なんか最高だった」
「ここだけの話、私たちの狙いは最初から
キリト、ヴェルデ、グリス、ヒイロ、ミトの順に元βテスターへの矛先が自分たちへ向くように誘導していく
今回の作戦は攻略を最優先とするチームを作り上げ、テスターへの怒り全てを彼等が背負うというモノだ。ディアベルは知らなかったがキバオウには事前にソウテンが取り引きの対価として、要求していた。故に最初、彼が叫んだのは芝居であった
「ふざけるな!やっぱり、お前らが悪いんじゃないか!」
「最低な奴らだな!揃いも揃って!」
「俺たちはお前らの操り人形じゃないぞ!そこでへらへらしてる奴もグルか!?この道化野郎!」
「道化……いいね、その響き。なら、俺は今から、こう名乗ろう」
道化。その単語に反応したソウテンの笑みが更に不敵で軽薄な微笑に変化し、より一層の胡散臭さを演出させ、アイテムストレージから取り出した仮面を、ゆっくりとその不敵な笑みを隠すかのように冠る
「我々は
「同じく片手剣使いのキリト。βテスターにしてチーター、略してビーターとでも名乗ろうか。これからは、元βテスターと一緒にしないでもらおうか」
「同じくハンマー使いのグリスだぜ!誰からの喧嘩でも買ってやる!まあ、返り討ちにしてやるがな!」
「同じくヴェルデ。我が武器は細剣、それと情報。貴方たちの行く末が我々の旅路の邪魔にならぬ事を深くお祈り致しております」
「同じく曲刀使いのヒイロ。我等がリーダーの命に従い、今をもって、アンタらは単なるプレイヤーからビギナーへ格上げだ。良かったね」
「最後に鎌使いのミト。金輪際、私たちに関わらないことをオススメしておくわ。そうそう…言い忘れてたけど、私もβテスターよ」
「如何でしょう?この
ソウテンを中心に深々と御辞儀する面々、全員が全てをまるで嘲笑うかのような表情を浮かべている
「第二層の転移門は俺たちが
「あっ、でも初見のModとかに殺されないようにね。そうなっても私たち、助けてあげないから」
「じゃ、そういう訳で」
第二層へと続く階段を上がっていくソウテン達。その後姿に誰も何も言わなかった
それはまるで彼等の誕生を祝うかのように
道化の仮面を冠った、六人を見送るかのように
「で……
「知らずに言ってたのかよっ!?」
「やっぱり、テンは可哀想な頭ね。だから、可哀ソウテンなのよ」
「やめろ!へんな造語を作るな!定着したら、どうする!」
「安心しろよ、俺たちはお前がどんなに可哀想でもリーダーだと思ってるからよ。おとぼけソウテン」
「全くです。例え、可哀想で馬鹿野郎だとしても僕たちのリーダーは貴方だけですよ。おバカリーダー」
「そうだよ。誰が何と言おうがリーダーはリーダーだよ、迷子しか取り柄がないけど」
「お前ら、バカにしてるだろ!?」
これは彼等の騒がしいデスゲームの世界での話。そして、終わりの見えない旅路への始まりの一歩である
遂に誕生、
ちなみにこの作品はミトがヒロインではありますが基本的には原作版を中心に進みますのでプログレッシブの内容には触れたり、触れなかったりしますのでご了承ください
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気