2023年4月8日 第11層《タフト》。とある酒場
「ホントにごめんなさい!サチさん!」
「気にしないでください、ミトさん。私は大丈夫ですから」
「ホントに?よかったぁ〜」
「いや良くねぇよ。おめぇさんには見えてねぇんか?このでっかいたんこぶが」
サチ、と呼ばれた女性からの返答に安堵するミトの横には頭に巨大な瘤を作ったソウテンの姿があった
その理由は二時間ほど前に遡る。武器素材の調達を請け負い、アイテム収集に来たが例により迷子となったソウテンはミトと逸れ、サチの所属するギルド《月夜の黒猫団》に出会った
成り行きではあるがモンスター達に囲まれ、危険な状態だった彼等を救い出し、その御礼に食事を御馳走になっていたのだが…ミトの存在を忘れていた為に怒った彼女がソウテンに御約束を見舞ったのだ
「テン。私はね、貴方が迷子になったから怒ったんじゃないのよ?迷子のくせにいけしゃあしゃあと食事をしてるから怒ってるの」
「結局は迷子を怒ってんよな?それ」
「揚げ足を取るとまた叩き込むわよ」
「すみません、勘弁してください。マジで」
ミトが鎌をちらつかせると、素早い反応でソウテンは伝家の宝刀である土下座を繰り出す。これが自分たちを助けたプレイヤーと同一人物とは思えないサチたち、しかしながら現実はこれが真実なのだ
「そういえば…ソウテンさんとミトさんって、レベルの方はいくつぐらいなんですか?」
「俺が40でミトが37だったかな」
「リーダーなのにキリトと同じレベルって……少しは上げる努力をしなさいよ」
「別にいいじゃねぇか。レベルってのは単なる数字だ、それにレベルが高いから強いって訳でもねぇだろ?」
ミトの指摘に対し、へらへらと笑って見せるソウテン。その様子に質問したギルドのリーダーである棍使いのケイタが驚いたような表情を浮かべる
「37に40!?まさか!お二人は攻略組の方なんですか!?」
「攻略組といやぁ攻略組かな?一応は」
「最近は雑用メインで前線には出てないわ。主にウチのバカリーダーがやらかしてくれるせいでね」
「なんだよ、まだあれを怒ってんのか?大量のドランクエイプに追いかけられたくらいで」
「くらいじゃないでしょ……何処の世界にあんなに大量の猿型モンスターを相手に突っ込むバカがいるのよ」
「いや、あれに関しては俺は悪くねぇ。そもそもの原因はグリスだ。俺はその後始末をしようと思ってだな」
「テンの場合はその後始末に問題があるのよ。この前だって、夕飯の片付けをお願いしたら、御皿を大量に割ったじゃない」
「はんっ。いいか?ミト。皿ってのはな、割れる為にあるんよ。お前は其れを知らんのか」
「んな訳ないでしょ!」
「ぐもっ!?」
床に倒れ、動かなくなるソウテン。彼の安否を確かめようとケイタ達が駆け寄ろうとするがミトが待ったを掛けた
「心配しなくても直ぐに起き上がるわよ。慣れてるから」
「慣れてるって……そういう問題なんですか?」
「そういう問題よ」
「いってぇ!」
「うわっ!?ホントに起きあがった!」
即座に起き上がり、痛む頭を摩りながらもソウテンは食事の続きに戻った。慣れているミトとは違い、初見のケイタ達は困惑したような表情を浮かべる
「どうした?食わねぇんか?おめぇさんたち」
「「「「アンタに驚いてんだよっ!!」」」」
「サチ。おめぇさんはコント集団のギルドに入ってんのか?」
「あはは…」
「ギルドといえば……最近、みんながどうしてるのか気になるわね」
「言われてみりゃ…さては迷子か。アイツら」
「それはテンだけよ」
ドヤ顔で他のメンバーが迷子と言い放つソウテンに対し、ミトの的確な突っ込みが放たれる。するとギルドと言うのが気になったのか、サチが問う
「二人はギルドに入ってるの?」
「入ってるというかリーダーをやってる」
「私はメンバー兼お守り役よ」
「へー。ギルド名はなんて言うの?」
「「
『えっ!?』
「と言うことはソウテンさんはあの
「あーうん、そうだな。そんな呼ばれ方してる」
「すげぇ!てことはミトさんは戦闘狂で有名な鎌使いの《紫の死喰い》!?」
「待って、私は戦闘狂じゃないわ。というか誰よ…そういう出まかせを流してるのは」
「グリスだろうな。アイツの口は綿毛より軽いから」
「………ごめんね?みんな。私は用事が出来たから帰るわ。テン?迷子にならないように帰ってくるのよ」
「ほいほい」
慣れているが故に生返事を返すソウテンであったがサチ達は違う。彼女の笑っていない笑顔に戦慄し、震えていた
「あ、そうだ。暇だから戦い方を教えようか?ウチには色々なヤツがいるから参考になんぞ、きっと」
「いいんですか?」
「あー、敬語はいらん。堅苦しいのとか好きじゃねぇから」
「わ、わかった。でも良いのか?」
「いいよ。攻略組には鬼強いギルドが結構、居るし。其れに信用できるフレンドも何人か、居るしな」
最近、《血盟騎士団》という名のギルドが頭角を現してきている。25層のボス戦で突如現れ、《アインクラッド解放軍》、通称《ALF》を壊滅させたボスを初参加であるにも関わらず、犠牲者を一人も出さずに攻略したのだ
ソウテンも
更に言えば、アスナが《血盟騎士団》に身を置き、副団長の座に付いている。故に下手な策略は皆無となり、ソウテンの出番はめっきりと減少しているのだ
「見たとこ、パーティーで前衛が出来るのはメイス使いのテツオだけ、しかし…それだと前衛が危ない。そんで、サチの武器を槍から盾持ちの片手剣に変更させようと思ってる……こんな感じでオーケー?」
「ああ、完璧だ。良くわかったな」
「まあ、極めて単純な人間観察ってヤツだ。そいで?サチ的にはどう?片手剣を使えるようになりたい?」
「で、出来れば……」
「オーケー。だったら最強の先生を紹介しよう」
「最強……?」
サチが顔を上げると仮面越しにソウテンは不敵に笑い、着ていた青いコートと首のマフラーを夜風に揺らめかせ、彼女を見た
「そっ、最強にして最悪と呼ばれる黒の剣士……《ビーター》をな」
「という訳なんよ。あとは頼む」
第35層主街区ミーシェ。白壁に赤い屋根が立ち並ぶ放牧的な農村、ここは主に中層プレイヤーが利用している。更に
「何をだよ…」
「だから、コイツらのコーチを」
キリトの問いにソウテンは自分の背後に立つ《月夜の黒猫団》を指差す
「引き受けたのはテンだろ。俺には関係ない」
「そうか、そうか」
異様に聞き分けの良いソウテンにキリトは首を傾げる。何時もならば、此処で悪口を呟く筈だが彼は何も言わない。それどころか、普通にキリトの意見を聞き入れた
リーダーらしくなった親友に心が安らぎ、微笑するが…直ぐにその安らぎは崩れた
「残念なお知らせだ、諸君。どうやら、《ビーター》さんは君たちに教える自信がないらしい。まぁ?仕方ないよなぁ、所詮はぼっちが取り柄のゲーマーだしぃ?悪いな、サチ。アイツはダメだ、他をあたろう」
「えっ、あっ…うん」
「おー、アイツなら。おーい!ヒイロー」
「んあ?って!リーダー!後ろ!」
「おろ…ぎゃぁぁぁぁ!!!」
ヒイロに呼び掛けたのも束の間、ソウテンの眼前を黒い剣が通り過ぎた。その先には黒い笑みのキリトが立っている
「サチさんだったか」
「は、はい」
「片手剣の使い方を教えるよ。狙いは的確にするのがコツだ」
「ぎゃぁぁぁぁ!キリト!てめぇ!この野郎!お前がその気なら、俺も本気だ!!串刺しにしてやる!」
「上等だ!今日こそはみじん切りにしてやる!」
槍と片手剣、二つがぶつかり合う。だがその戦いも一瞬であった。二人の頭上に何かが落ちる
「「いっ……!!」」
「やめなさい!バカどもっ!」
ミトの制裁により、全てが丸く収まった後にキリトは改めて《月夜の黒猫団》のコーチを引き受けた。その一ヶ月後、徐々に力を上げ最前線の7層分下でも十分に戦えるまでになった彼等は
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気