蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

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今回はヒイロがメインです。最年少メンバーの彼にまさかの恋の予感…!


第十一幕 ビーストテイマー

2024年2月23日 第35層 迷いの森

 

「何、言ってんだい。ヒールクリスタルは分配しなくていいでしょ」

 

「そういうあなたこそ、ろくに前線に出ないのにクリスタルが必要なんですか!?」

 

「勿論よ。お子ちゃまアイドルのシリカちゃんみたいに男達が回復してくれるわけじゃないもの」

 

小柄でショートツインの美少女の名はシリカ。中層域ではその可憐な容姿や稀有なビーストテイマーであることから、アイドル的存在としての地位を持つ少女だ

 

そして、彼女と対立するのはロザリア。槍使いの女性プレイヤーだ

 

「わかりました!アイテムなんて要りません!あなたとはもう絶対に組まない!あたしを欲しいっていうパーティーは他にもあるんですからね!」

 

「ちょ、ちょっと!シリカちゃぁ~ん!」

 

男性プレイヤーの一人が呼び止めるがシリカは余程、ロザリアの言葉が気に障ったのか迷いの森の奥へと一人で歩いて行くが其れは誤算だった。地図を持たない状態で行動していシリカは道に迷い、辺りには人気も無い。更に、目の前には迷いの森でも最強クラスのモンスター≪ドランクエイプ≫が3体

 

使い魔のピナが回復ブレスでサポートしてくれているが、その回復量は微々たる物

 

刹那、彼女を一体の≪ドランクエイプ≫の強烈な一撃が襲った。しかし、その攻撃がシリカに届くことはなかった

 

恐る恐る彼女は恐怖で閉じていた瞳を開け、何が起きたのか確認する

そして、その理由は直ぐに理解出来た。自分を庇い、HPバーを減らしていくピナの姿

 

「ピナ………!ピナ!ピナーー!」

 

そして完全に体力が尽き、ピナはシリカの呼びかけも虚しく、一枚の羽を残して霧散した

失意の底に叩き落された彼女の背後から3体の≪ドランクエイプ≫が迫り、シリカは自分の死を覚悟した

 

「邪魔」

 

一瞬だった。≪ドランクエイプ≫の頭上を曲刀が通り過ぎ、その首を切断。風切り音を立てながら、戻る曲刀の行く先に視線を向ける

其処に佇んでいたのは夜風に尻尾のような後髪を靡かせ、赤いベストに身を包んだ少年。彼はシリカに気付くと手を差し出す

 

「大丈夫?キミ」

 

「うぅ……ピナ…。あたしを一人にしないでよ……、ピナ!」

 

「大丈夫ではないか。キミもビーストテイマー?」

 

「キミも…ってことはあなたも?」

 

「一応ね。ほら、あれ」

 

少年、ヒイロはシリカの問いに自分の頭上を指差す。その先に居たのは一匹の鳥型モンスター、自分以外のビーストテイマーを初めて、見たのか彼女は驚いたように瞳を瞬きさせている

 

「名前はなんて言うんですか?」

 

「ヤキトリ」

 

「えっ…なんて?」

 

「だからヤキトリ。火属性の鳥型モンスターだから、ヤキトリって名前がピッタリだと思って」

 

「へ…へぇ…。あっ!そうだ!ピナが!あたしのピナ!」

 

「大丈夫だよ。そういう情報に詳しい変わり者が身内にいるから」

 

「ほ、本当ですか……?」

 

「本当だよ。ちなみに俺はヒイロ、キミの名前は?」

 

「シリカ………シリカです」

 

「よし、行こうか。シリカ」

 

名を聞いた後、ヒイロは彼女に改めて手を差し出す。その手を掴み、二人で迷いの森を抜け、主街区へと歩いて行く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第35層主街区ミーシェ 彩りの道化(カラーズ・クラウン)のギルドホーム

 

「遂にヤツが動いた」

 

「なに…ソイツは本当か?ベルさん」

 

「ああ、間違いない。テン」

 

部屋の二階に位置するソウテンの部屋、此処にいるのはギルドリーダーで家主のソウテンとサブリーダーのミトとキリト、更に仲介役のディアベルの四人だ

 

「ヤツが動いたということはまたギルド狙いのPKが行われる。何としても俺は其れを阻止したい。協力してくれるか?テン」

 

「当たり前だろ?俺とベルさんの仲だ、無償で協力する」

 

「恩に着る。それじゃあコイツを渡しておく、回廊結晶だ。行き先は黒鉄宮に設定してある」

 

「了解。その間の前線は頼む」

 

「任してくれ!これでも彩りの道化(カラーズ・クラウン)の騎士だからな。テンたちが抜けた穴は俺が埋めるよ。騎士の名に賭けてね」

 

相変わらずなディアベルを見送り、手にした回廊結晶を見詰めるソウテン。彼なりに策を練っているのだろうと、ミトとキリトは黙って指示を待つ

 

「ミト、キリト」

 

「なに?テン」

 

「どうしたんだ?」

 

名を呼ばれ、彼の方に視線を向ける二人。当の本人は回廊結晶を手にしているのに変わりはないが窓の外を見ている

 

「ヤツって誰?」

 

「「知らないんかいっ!!」」

 

まさかの発言にミトが御約束を放ち、キリトも蹴りを放つ

 

「ぐもっ!?いやだって!唐突に言われたから、話を合わせないと不味いと思って!」

 

「はぁ…ホントにバカなんだから…」

 

「ヤツってのはオレンジギルド《タイタンズハイド》のリーダー、ロザリアのことだよ。迷宮区を探索するパーティに混ざっては手頃な獲物を物色し、誘い出して、犯罪者(オレンジ)プレイヤーの部下に狩らせる卑劣な手段で有名だって最近は噂になってる」

 

「ふぅん?ソイツはいただけねぇな…」

 

「そうね。依頼を受けたからには完遂以外は許されない」

 

「ああ。彩りの道化(カラーズ・クラウン)の名の下に」

 

「彩り返してやろうじゃねぇか」

 

仮面越しに不敵に笑うソウテン、同じくミトとキリトも其々の得物を片手に微笑する

刹那、一階から物音が聞こえてきた

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!ゴリラはいやァァァァァァ!」

 

耳を劈くような少女の悲鳴。メンバーであるミトでもなければ、彼女の友人のアスナでもない悲鳴に慌てて、ソウテン達は一階へと駆け降りた

 

「誰がゴリラだ!小娘!」

 

「ヒイロ!ゴリラが!ゴリラが口を聞いた!」

 

「シリカ、落ち着いて。確かに限りなくゴリラだけど、ああ見えても人間なんだ」

 

シリカ、そう呼ばれた少女とヒイロの前には怒り気味のグリスの姿。どうやら、ゴリラモンスターと彼をシリカが見間違えたようだ

 

「えっ?ホントに?あんなにゴリラみたいなのに」

 

「誰がゴリラだ!!そもそもソイツは誰だ!」

 

「シリカです。よろしくお願いします、ゴリラさん」

 

「おう、よろしく!ってゴリラじゃねぇわ!!だいたい!ギルメンじゃねぇヤツが----ぐもっ!?」

 

「小さい子を怖がらせないの!」

 

騒ぐグリスの頭にミトが御約束を見舞い、シリカに目線を合わせるように向き直り、彼女へ笑顔を向ける

 

「ごめんね。騒がしいゴリラだけど、悪気はないの」

 

「は、はい。それでその…ゴリラさんは大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫だよ。頭の中には何もないから、この人」

 

「ああ、空だ。だから振っても音すらしないよ」

 

「おーい、グリスー。大丈夫か?好きな筋肉とか言えるかー?」

 

散々な言われようのグリスを突き、反応を見るソウテン。すると気絶していた彼が飛び起き、着ていた装備を外す

 

「好きな筋肉……やっぱり、腹筋だな!!見ろ!シックスパックだ!」

 

「え?なに?真空パックがどしたって?」

 

「シックスパックだ!このアホリーダー!」

 

「服を着ろ。ゴリラ」

 

「セクハラ容疑で黒鉄宮に送るわよ」

 

「あっ、回廊結晶ならあるぞ」

 

「さすがはリーダー。頼りになるね、普段は迷子しか取り柄がないくせに」

 

「そうだろう、そうだろう……ん?おいコラ、誰が迷子だと?焼き鳥チビ」

 

「リーダー……?この人ってリーダーなの?ヒイロ」

 

リーダー、そう呼ばれたソウテンをシリカが指差しながら問う。ヒイロは軽く咳払いした後に頷く

 

「こほん……この人はソウテンさん、俺の所属するギルド彩りの道化(カラーズ・クラウン)のリーダーで迷子の達人だよ」

 

「迷子の達人?」

 

「フィールドに出ると一秒で迷子になるんだ、この人」

 

「迷子になってない。道を間違えちゃうだけだ」

 

「其れを迷子っていうのよ?迷子くん」

 

「迷子じゃない!」

 

「あのリーダーを迷子って呼んでる全身が紫色で死神みたいな鎌を持った人はミトさん、リーダーの恋人さんでツッコミ役だよ」

 

「好きで突っ込んでないわ。あと死神みたいで悪かったわね」

 

「で、あれがぼっちにゴリラ」

 

「「扱いが雑っ!!」」

 

ソウテンとミトの紹介はしたがキリト、グリスに関する説明は簡潔だった。二人が騒いでいるが無視し、ヒイロはシリカと共に親友のヴェルデの部屋の前に立つ

 

「ヴェルデー」

 

「はいはい…おや、ヒイロくん。そちらのお嬢さんは?」

 

「あっ、シリカです。ヒイロから貴方なら、使い魔を生き返らせる方法を知ってるって聞いて」

 

「使い魔…なるほど、状況は把握しました。お入りください。あっ、申し遅れましたが僕はヴェルデと言います。以後お見知りおきを」

 

「は、はい!ご丁寧にどうもです!」

 

部屋に招き入れられ、中を見回すと沢山の書籍に囲まれた内装が目に入る。この世界で本を読むのに何の理由があるかは理解できないがシリカは、本屋のようだと感じた

 

「それで使い魔を生き返らせたいとのことでしたね」

 

「は、はい。何かありませんか?ピナはあたしの大事な家族なんです!」

 

「それはそれは是が非でも助けないといきませんね。そんなシリカさんに朗報です、第47層に思い出の丘というダンジョンがあります。其処の最深部にある≪プネウマの花≫という、アイテムを手に入れ、使い魔の一部に蜜を垂らせば、生き返らせることは可能です」

 

「本当ですか!?」

 

「ヴェルデ。期限はあるの?それに」

 

「いい質問です、ヒイロくん。期限は三日、それ以上を過ぎれば使い魔蘇生は不可能となります」

 

「三日………あたしになんか取れるでしょうか…?」

 

「情報をありがと。明日になったら行くよ、シリカ。あとリーダーとミトさんには言っておくから、今日は泊まっていくといいよ」

 

「あ、ありがとう」

 

表情は変わらないが自分に優しく接するヒイロにシリカの中で知らない感情が芽生える。名前も分からない其れは初めての感覚だが僅かに暖かくも思えた

ヴェルデの部屋から出て、律儀にお辞儀をする幼い背中にソウテンはある人物が重なって見えた

 

「………あいつは元気でやってるかな」

 

「あいつ?ああ、お前の妹か」

 

「どーせ、宝探しゲームとかに熱中してんだろうけど。二年も会ってないからな、ちょい心配にもなる」

 

「心配って…あいつ、お前と双子だろ」

 

「双子は双子でも二卵性な。それに我が妹はドジっ子だからな、何かをやらかしてないかが心配だ」

 

双子の妹、今は会えない彼女を心配するソウテンは何時になく兄らしく見えた。しかしながらキリトは此処で引き下がらない

 

「安心しろ。お前よりはマシだ」

 

「うるさい。ぼっち」

 

「はっはっはっ、叩っ斬る!」

 

「上等!」

 

「俺も混ぜろコラァ!」

 

「そこぉっ!食事の用意中に暴れないっ!」

 

三人に頭上にミトの鎌が振り下ろされるのを見て、シリカはヒイロに声を掛ける

 

「この人たちって何時もこうなの?」

 

「退屈しないでしょ?」

 

「うん、そうだね」




次回も引き続き、続きをお送りします

もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…

  • ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
  • キリトとアスナが司会の正規の雰囲気
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